フューチャー・アベンジャーズなコラム~征服者カーンという男~

 フューチャー・アベンジャーズもいよいよ最終回、というか記事作成時点で7時間後ぐらいに最終回!
 最終回を迎える前に、この男の解説だけは書いておねばならない。その名は、征服者カーン!
 フューチャー・アベンジャーズのラスボスを務めることとなったこの男は、何者なのか? カーンが抱えている複雑な運命とは?
 
 というか、フューチャー・アベンジャーズの毎週の感想&コラムが間に合わなくて申し訳ありません。ここは一つ、情報の鮮度のこともあり、カーンのコラムをひとまず先に書かせていただきました……!

 というわけで、数奇過ぎて知恵の輪も真っ青なカーンの話をどうぞ。

 

征服者カーン

 人類同士の争いにより、破滅の道へと進んでいた世界。だが、争いは突如現れた一人の英雄ナサニエル・リチャーズの手により終結した。その後に生じた混乱も乗り越え、遂に人類が平和な世界を手にした30世紀の未来世界にて、伝説の英雄ナサニエル・リチャーズと同じ名を持つ男が生まれる。新たなるナサニエル・リチャーズもまた、歴史に名を残すこととなる。過去の世界だけでなく平行世界をも渡り歩く、征服者カーンとして。

 カーンは未来世界の住人だが、コミックスの正史世界(Earth-616)の未来ではなく、良く似た世界の未来(Earth-6311)である。なのでカーンは、未来世界の住人でありつつも、並行世界の住人ということになる。

 

 なお、Earth-6311を立て直した英雄ナサニエル・リチャーズの正体は時間と世界線を超えてEarth-6311に現れたEarth-616であり、かのファンタスティック・フォーのリーダー、ミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズの父親である。

 ナサニエルも超天才であるリードに劣らぬ天才であり、リードの天才性の下地にはナサニエルの教育がある。ナサニエルもブラザーフッド・オブ・ザ・シールドという世界平和を護る組織に所属しており、アイアンマンことトニー・スタークの父親であるハワード・スタークとはこの組織の同僚だった。

 ちなみにブラザーフッド・オブ・ザ・シールドはかのSHIELDよりも遥かに古い組織であり、設立は古代エジプト王朝期となっている。元は宇宙からの侵略者に対抗するためイムホテップが設立した組織であり、その後も数多くの天才的偉人を組み込みつつ人類の平和を見守ってきた。メンバーはアルキメデスにレオナルド・ダ・ヴィンチに張衡にアイザック・ニュートンと、人類史の天才たちで構成されている。預言者ノストラダムスのような、外部の協力者も多い。

 そして物凄いメンバーとしては、なんとX-MENの大敵であるアポカリプスも設立期に参加している。

 彼が生まれた古代エジプト王朝期の組織だからこその奇跡である。

 

 当然ながら、リード・リチャーズの父親であるナサニエル・リチャーズと征服者カーンの本名であるナサニエル・リチャーズは別人である。リードはファンタスティック・フォーとして何度もカーンの侵略を防いでいるが、尊敬すべき父親と同姓同名なカーンの本名を思い出す度に、苦々しい顔をしている。名前はともかく性も一緒なので、ひょっとしたらリードの子孫である可能性もあるが、別の情報だとドクター・ドゥームの子孫という話もある。後述するが、カーンはドゥームに多大な影響を受けている。それに、リードの子孫とドゥームの子孫が何処かで血縁となっても、何らおかしくはない。Earth-6311に現れた後のナサニエルの子孫かもしれない。彼は、Earth-6311でも子を成している。

 遠い未来、しかも並行世界での話なので、追求は難しいだろう。それにおそらく、カーンはもはや血筋というくびきに囚われていない。もはや彼は、数多の世界と時間軸をくぐり抜けることで、超越的な存在となっているからだ。

 

 カーンが超越的な存在であることを説明する前に、カーンの能力について語っておきたい。カーンは既に老人であるがそう思わせない若々しい身体であり、科学者や政治家や軍人としての高い知識があり、素手でも戦える戦闘技術を持っている。着ているバトルスーツも未来の技術と金属で出来ており、5トンの鉄を持ち上げる腕力や電気ショックのような超人的な力を彼に与えている。核攻撃級の攻撃に耐える防御力に、栄養補給や排泄物の処理もおこなう高い生存性と、防御面でも死角は無い。

 このようにカーンの能力はバランスよく纏まっているのだが、マーベルが設定したパワーレベル(能力値表)を見ると、大ボス勢の中では平均より下である。ほぼカンストなギャラクタスやドーマムゥ、神としてのスペックを持つロキやインフィニティ・ガントレット抜きでも十分強いサノスよりも下であり、数値的に近いのはあくまで常人的な強さのレッド・スカルである。そもそも、5トンぐらいの物体ならハルクもソーも簡単に持ち上げられそうだし、アイアンマンのスーツの武装や能力はカーンのバトルスーツに見劣りしていない。単純に見てしまうと、複数の超人が所属するチームと単独で戦うのは厳しく思えてしまう。

 だが、レッド・スカルが数値では分析できぬ恐ろしさを持っているように、カーンにも数値で測れぬ力がある。彼が得意とするのは、時間や並行世界への移動なのだ。カーンは未来と並行世界から集めた様々な兵器やアイテムやロボットを収集しており、スーツにはそれらを瞬時に手元に出現させる能力もある。遥かに進んだ未来の武器、もしくはその世界の発想では開発できない技術。これらを駆使したカーンは、数値以上の力をたやすく発揮する。強力な神経ガスや無敵のバリアにハンドガンサイズのミサイルランチャーに巨大化能力を持つピム粒子の亜種と、彼のコレクションはかのコレクターにすら劣らない。

 更にカーンは何度も時間や並行世界への移動を繰り返した結果、タイムパラドックスを押さえ込み、他の次元のカーンとも接触することが可能な一種の特異点と化している。カーンは戦艦サイズのタイム・シップを使うことで時間移動をしているが、スーツ自体にも時間移動能力とナビゲーション機能が内蔵されており、更にこのカーンの資質が備わることで単独での時間移動も可能である。

 そして、並行世界のカーンたちは技術や記憶がある程度一本化されており、次元を超えて共有される知識が彼の強みとも言える。たとえ目の前のヒーローに負けそうになっていても、そのヒーローの弱点を突いて勝った世界におけるカーンと情報を共有できるというのは恐ろしいことである。この並行世界との共有能力は感覚的なものもあるのだが、カーンたちはある程度定期的に並行世界を超えて集まり“カーン評議会”とでも呼ぶべき会合をおこなっている。

 だいたい集まると統一化や粛清や全滅の憂き目にあっている気がするが、いつの間にか数は復活している。並行世界は無限ということだろう。現に、フューチャー・アベンジャーズへの登場で、カーンがまた一人増えたわけで。

 

 時間や次元の移動を極めたようなカーンであるが、実は半ば特異点と化している彼にも制御しきれていないことがある。カーンは時間移動を駆使して、古代で王となろうとしたり、少年時代の自分に干渉したりしたのだが、その結果、カーンを起点に歴史が分岐してしまい、数多くのカーンとは別のカーン、正義や悪の道を歩んだ別のナサニエル・リチャーズが誕生してしまっている。

 カーンの時間移動への積極性を見るに、コミックスやアニメ以外の所でもっと湧いている可能性もあるのだが……代表的な個体を、ざっと紹介しておきたい。

 

ラマ・タト

 ナサニエル・リチャーズが古代エジプトにタイムスリップし、エジプトの王となった時の姿。実は悪い方のナサニエルの初出は、カーンでなくラマ・タトとしての姿となっている。ラマ・タトの初登場は1963年刊行のFantastic Four #19であり、カーンとして初登場したのは1964年に刊行されたAvengers #8である。つまり、カーンの前身がラマ・タトである。彼の映像権利としての所属がファンタスティック・フォーに属しているのも、ここが根幹の一つなのかもしれない。

 古代エジプトに現れたラマ・タトは未来の技術を悪用し、永久のファラオとして君臨しようとするものの、ファンタスティック・フォーの妨害により失敗。自分がいた未来より先の40世紀の未来に逃げのびた彼は、荒廃した世界を征服し征服者カーンを名乗ることになる。なお、機械のスーツを着るというインスピレーションは、逃亡中に遭遇したドクター・ドゥームからいただいた。ラマ・タトはカーンの過去の姿だったが、時間軸や世界線のズレや他者の干渉により、カーンとは別の個体として存在している。

 ラマ・タトの数十年にわたるエジプト統治時代に人類史初のミュータントと呼ばれる男、エン・サバ・ヌルが産まれており、ラマ・タトの圧政と干渉が彼の力を最悪の方向に目覚めさせてしまう。

 このヌルこそが、後のアポカリプスである。

 

スカーレット・センチュリオン

 ラマ・タトもしくはカーンから分裂した個体。第二次世界大戦当時のキャプテン・アメリカを狙うという時間移動者らしい戦いを見せるものの、最終的にスカーレット・センチュリオンへのコスチュームチェンジは失敗だったと自分で認め、このアイデンティティは捨てられてしまう。だが、捨てられたはずのスカーレット・センチュリオンもラマ・タトと同じように別の個体として存在するようになってしまった。後にカーンの息子であるマーカス・カーンもスカーレット・センチュリオンの名を名乗っている。

 

イモータス

 征服者カーンはアベンジャーズとの戦いに疲れ果て、遂に時間の守護者タイムキーパーズの傘下に入る。征服者から部下になったカーンは、バトルスーツも脱ぎ、名もイモータスに改める。イモータスとなった彼は、アベンジャーズとも付かず離れずの関係となり、共に若き日の自分自身であるカーンと戦ったりもしたものの……今度は、イモータスとカーンが分裂。結果的にまたもナサニエルが増えてしまった。後にイモータスもアベンジャーズを狙ったが、今度はカーンがそれを止める。結果的に二人は、同程度の知識と能力を持つ宿敵同士になってしまった。

 

アイアンラッド

 平和な未来の世界で生きる16歳の天才的少年ナサニエル・リチャーズ。ひどいイジメにあっていたナサニエルだったが、ある日そのイジメと彼の今までの青春は唐突な終りを迎える。この日、重症を負わされる運命にあったナサニエルを救うために未来から現れたのは、未来の自分自身である征服者カーンだった。カーンは過去の自分と邂逅することで、ナサニエルが本来の歴史よりも早く征服者カーンとなることを望み、ナサニエルに思念操作型の高性能アーマーも与える。

 だが、ナサニエルは自分に定められた征服者の運命を拒否。カーンを何度も止めたアベンジャーズに助けを求め現代へとタイムスリップしてくるが、運悪くその時期はアベンジャーズが一時解散をしていた時だった。ナサニエルはカーンと戦うため、自分自身がヒーローとなりアベンジャーズを結成することを決意する。ナサニエルはアイアンラッドと名乗り、自分と同じ若き能力者たちを招集。若手ヒーローチームのヤング・アベンジャーズを結成した。

 アイアンラッドは、カーンの干渉により強大な力を授かった少年であり、ヴィランとなる運命を拒否しヒーローとなることを決意。同じ志の若者と共に若きアベンジャーズを結成した。
 一方、フューチャー・アベンジャーズの主人公であるマコトは、カーンのエメラルドレイン計画により強大な力を授かった少年であり、ヴィランとなる運命を拒否しヒーローとなることを決意。同じ志の若者と共に未来のアベンジャーズを結成した。
 こうやって書き出してみると、アイアンラッドとマコトの経歴は非常に似ている。マコトのキャラクター造形には、アイアンラッドの要素も加えられているのかもしれない。だが、唯一違う点があるとすれば、アイアンラッドの悪になる運命は、“決定”に近い拘束力を持っていることである。

 

キッド・イモータス

 ヒーローとして活動しようとしていたアイアンラッドが運命の前に心折れ、カーンを拒絶しつつ悪人としての道を選んだ姿。ドクター・ドゥームと手を組みアントマン率いる新生ファンタスティック・フォーと対決するが、時間流に飲み込まれ行方不明となってしまう。ここで悪人として生きることの決意と、ドクター・ドゥームの影響を受けたことにより、彼が後に征服者カーンやラマ・タトやスカーレット・センチュリオンやイモータスになるフラグが全て立ってしまったのかもしれない。今の(2018年 1月)の段階では、アイアンラッドの復帰も予告されているので、まだ希望も残っている。ただ、カーンの今までを見るに、またアイアンラッドとキッド・イモータスの二人に分かれた可能性も高い。

 

ミスター・グリフォン

 時間移動の不具合により、21世紀(現代)に取り残された新たなカーン。グリフォンは、何らかの理由でこの時間軸からの移動が不可能となっていたため、この世界に自分の王朝を作ることを目論む。現代の支配者、実業家として成功を収めたグリフォンは金の力と謀略でアベンジャーズを追い詰めるが、やがて正体が露見。時間の果てに飛ばされることとなった。

 

 彼らカーンより別れた可能性は、カーンと時には協力し、時には憎み合い、時には統一化されると、それぞれの思惑や意思を持ち動いている。このもはや自分自身ですら制御不能な状況こそ、時間や次元を言いように操ったカーンの代償なのかもしれない。

 

 カーンはタイム・シップを本拠地としているが、時空の果てにトロフィールームと呼ばれる部屋を所持している。ここにあるアイテムは、全てカーンの勝利の証であり、栄光の記録である。

 このトロフィールームには、アイアンマンのパーツやスパイダーマンのコスチュームのような替えの効くアイテムだけでなく、キャプテン・アメリカのシールドやソーのムジョルニアのような唯一無二のアイテム、ウルヴァリンの骨格標本やビーストにニック・フューリーの生首と、生命も奪わねばならないアイテムが所狭しと展示されている。ひょっとして、我々読者の知らないところでカーンはヒーローたちに記録以上の勝利を重ねているのではないだろうか……。

 舞台の上から第四の壁を壊し、観客席に殴り込んでくるのがデッドプール。だが、自分の居る舞台だけでなく、数え切れないほどの他の舞台を知り尽くし、思うがままに掌握できる力を持った演者。それが、征服者カーンと呼ばれる超越者だ。

フューチャー・アベンジャーズなコラム~その9~

 フューチャー・アベンジャーズ第9話!
 アベンジャーズがピンチとなれば、仲間たちが駆けつける……助っ人ホークアイ登場!

 俺が悪いんじゃない、コイツらの集中線とグラサンが被っているから並べたくなったんだ。

 

デッドプール「ふっ。ついにパープルアローが真の力を取り戻したようだな……それでこそ、俺ちゃんたちと並ぶに相応しい男よ」
ガンビット「ちょっと待て。なんで俺がここに呼ばれてるんだ?」

 ホークアイ、デッドプール、ガンビットでろくでなし親しみやすいヒーロー大三元でいいと思うんスよね。

 今回のホークアイは、仕事人ではなくホークアイ:マイ・ライフ・アズ・ア・ウェポンタイプな、近所の親しみやすい兄ちゃんみたいなキャラで参戦。マコトたちと同じヴィラン候補として育てられ、アベンジャーズでははみ出し者からリーダーまでなんでもこなし、数多くの恋愛やズッコケや悲劇や喜劇や死を経験……これら、酸いも甘いも噛み分けた生き様が、近年におけるホークアイの「隣りにいてくれるヒーロー」というスタイルを作ることに。世界を揺るがす大悪党と戦うこともあれば、街のチンピラに睨みをきかせてもくれる。一流なヒーローたちに比べ、かっちりとスタイルが固まらなかったことが、この親しみやすさの土壌にもなったのでしょう。この点似通っているデッドプールやガンビットも含め、彼らのことは超一流の二流と呼びたい。

 マーベル・シネマティック・ユニバースのホークアイも、家庭人たる顔が見えて、コミックスやアニメより歳上をイメージした親しみやすさはあるものの……演:ジェレミー・レナーな時点で、どうしても仕事人キャラが濃くなってるよネ!

 

 ヒーローは割に合わない仕事である。誰に頼まれたわけでもないのに、絶対感謝されるわけでもないのに、報われないかもしれないのに、ただ命をかける。むしろ、この点ではヴィランの方がわかりやすいのでしょう。ヴィランの原動力は、主に欲望。ならば、ヒーローはなんのために動くのか――これは、おそらく永遠の課題であり、絶対的な答えが出ることはないのでしょう。絶対と言い切ってしまった瞬間、輝かしいはずの答えは、欲望以下のおぞましい答えへと堕します。

 絶対的な答えが出ないのならば、求める続けるしかない。たとえ、アベンジャーズを全滅させた相手でも、戦うしかない。

 ストレートな熱血ではないものの、マスターズ・オブ・イーブル相手に挑むホークアイの姿は、まさしく答えを求め続け、他人にヒーローのあり方という疑問へのヒントを教えるヒーローの姿。キャプテン・マーベルやブラック・ウィドウは策略を練って動いていたものの、大筋危機的状況下にあったことは、ホークアイと変わりなく。今回はマコトたちがほぼお休みだった分、アベンジャーズはこちら(視聴者)に背中で語ってきましたね。言葉にならないならない何かを伝えようとする背中ってのは、いいもんです。

 

 キャプテン・マーベルとアイアンマンの作戦、そしてキャプテン・マーベルの能力により、アベンジャーズもマコトも無事かつ、リーダーからエメラルドレイン計画の情報も引き出せるという、最良の結果に。ヴィブラニウムが鍵で、次回の舞台はアフリカのワカンダ……このままリレーしていけば、そのうち宇宙に出ていきそうだな。

 さて、これにて大団円! といきたいものの、今回のタイトルは「W・ソルジャーの正体」。大事なのは、二人の神様の撃退でもリーダーの頭のいいバカっぷりでもなく、謎の傭兵ウィンター・ソルジャーの正体。そして、ウィンター・ソルジャーとキャプテン・アメリカの対峙――

 わかっていても、刷り込まれた記憶が和解を許さない。第二次世界大戦から現代にそのまま蘇ったのがキャプテン・アメリカなら、歪んで蘇ってしまったのがウィンター・ソルジャー。歪みを正す手段があるとすれば、必要なのは正義ではなく誠意。キャプテン・アメリカではなく、メットを取ったスティーブ・ロジャースとしてウィンター・ソルジャーと向き合う姿は、やけに新鮮。キャプテン・アメリカが、アニメでメットを取ること自体が珍しいからかね……?

 キャプテン・アメリカとウィンター・ソルジャーの和解は成されなかったものの、楔を打ち込んだ気配はあった。たとえ殺し合ったとしても、それは二度と言葉もかわせない死という状況に比べれば遥かにマシ、まだ何かが叶えられるかもしれない状況。だからこそ、キャプテン・アメリカは晴れ晴れとした顔で、友情を信じることが出来る。この救いこそ、同じ境遇であるマコトとブルーノに見せた、先行くキャプテン・アメリカの大きな背中なのでしょう。

 

 今日の紹介は、キャプテン・マーベル! とは言いつつも、サブレギュラーのキャプテン・マーベル(キャロル・ダンバース)ではなく、そもそも“キャプテン・マーベル”とはなんなのかというところを紹介。「キャプテン・マーベルって男じゃなかったっけ?」「キャロルってミズ・マーベルだったよな……?」という記憶のミッシングリンクを埋める感じで。

 おそらくフューチャー・アベンジャーズでは、キャプテン・マーベル=キャロルでミズ・マーベル=カマラとなりそうなので、男のキャプテン・マーベルに言及することは、アニメ連動のコラムとして微妙に的はずれな気がするものの……まあ、せっかくだしね!

 

 

キャプテン・マーベル(マー=ベル)

 列強の宇宙帝国クリー。クリーを支配する集合知性体スプリーム・インテリジェンスは、強大な科学力を持ちつつも進化の手を止めない地球人類を警戒するようになる。スプリーム・インテリジェンスは地球人の宇宙進出を妨害するため、幾多の戦争で多大な戦果を上げた英雄マー=ベルを地球に派遣する。地球における白人とよく似た肌と地球人同様の生理機能を持つ種族“ホワイト・クリー”であるマー=ベルは、潜入工作員としてもうってつけだった。

 地球に降り立ったマー=ベルは、身分を偽り地球人と接触。マー=ベルもスプリーム・インテリジェンス同様、地球人に秘められた多大な可能性を知る。だが実際に地球人と接触したマー=ベルはその可能性を肯定し、やがてその力で地球人を助け始める。彼の名はマー=ベル。その名を耳にした地球人は、彼はマーベル(MARVEL)と自称する新ヒーローだと、勘違いしてしまう。MARVELの単語が本来保つ意味は、驚異、そして驚くべき人。幸い、驚異の存在であるマー=ベルと意味はズレていなかった。

 なので、正確にはキャプテン・マーベルではなくキャプテン・マー=ベルであり、一部資料では書き分けの都合もあちキャプテン・マー=ベルとなっている。彼について英語でもいいので調べたい!という時はCaptain MAR-VELで検索すると、他のキャプテン・マーベルが引っかかりにくくなり、多少楽である。

 こうして地球に、キャプテン・マーベルと呼ばれる存在が誕生した。最初は下記のような緑のコスチュームだったが、後に赤を基調としたスーツに変更となる。

 マー=ベルが能力として持っているのは、まずクリー人としての能力。腕力、耐久性、俊敏性、反応共に地球人より優れているクリー人だが、マー=ベルはクリー人の中でも特級クラス。この時点で地球における超人レベルのスペックを持っており、素の状態でも1トン程度なら持ち上げることが可能で、銃弾程度なら軽くさばける。更にマー=ベルはネガバンドという自身の力を倍増させる装備も持っており、優れた身体能力は更に倍増。例えばネガバンドを装備した状態ならば、倍増した腕力で10トン以上の物体を持ち上げることが出来る。

 そしてヒーローとしてキャリアを重ね、様々なアクシデントに見舞われた結果、マー=ベルのスキルと能力はより一層の成長を見せる。腕力は数十トンクラス、飛行速度は光速。手から太陽光エネルギーを集積したファイヤー・ボルトを放つことが可能に。更に、相手の攻撃を広範囲で察知するだけでなく状況と弱点の分析までしてしまうコズミック・アウェアネス(宇宙意識)と呼ばれるレーダー能力も追加。優れた身体能力に、遠距離攻撃やレーダーが追加され、更に死角は無くなった。

 なおマー=ベルを地球に派遣した大本であり、クリー人の統治者と信仰の対象を務めている、クリー人の天才たちの脳と知識を融合した知性の怪物ことスプリーム・インテリジェンス。クリー人の天才たちの脳と知識を融合した知性の怪物である彼はキャプテン・マーベル誕生後も地球人を警戒し続け、ついには地球人の進化の可能性を自身に取り込んだ上での滅亡計画を画策する。

 だが、キャプテン・マーベルをも巻き込むスプリーム・インテリジェンスの計画はことごとく阻止され、やがて地球最強のヒーローチームであるアベンジャーズとも対立。幾度もの戦いの結果、クリー帝国は多大なダメージを負い、スプリーム・インテリジェンス自身も敗北を喫することになった。原因はクリー側にあるものの、ある意味、スプリーム・インテリジェンスの地球人への警戒は間違っていなかったのかもしれない。

 

 晴れてキャプテン・マーベルとなったマー=ベルは、地球を護るため、やがて宇宙全体を護るための戦いに挑む。クリー帝国の障害と反逆者を裁く告発人、ロナン・ジ・アキューザー。クリー帝国所属時からの敵でもある、地球を狙う変身種族、スクラル人。そして全宇宙の生命撲滅を企む巨悪、サノス。数々の強敵相手に勝利を重ねてきたキャプテン・マーベルは、地球の枠を飛び越え、宇宙の守護者と呼ばれるようになる。

 だが、マー=ベルの戦いは、思わぬ形で潰えることとなる。宇宙人による犯罪組織ルナティック・リージョンとの戦いで、マー=ベルは神経性のガスを浴びてしまう。ガスにより、クリー人でブラックエンドと呼ばれる病に冒されたマー=ベル。最初は体力で病を押さえつけていたものの、やがて身体も心も限界を迎える。ブラックエンドと呼ばれる病、それは地球における大病“ガン”であった。

 病による苦しみはマー=ベルを精神錯乱状態に追い込んだが、マー=ベルの精神は病の苦しみに耐え抜き、彼は最後までヒーローのまま、死んだ。クリーから見れば裏切り者であるマー=ベルだが、死を迎えようとする彼の周りには、地球での生活やキャプテン・マーベルとして得た友人や仲間たちが集い、更に死の女神デスと共に彼を死の世界へと導いたのは、宿敵であるはずのサノスだった。
 マー=ベルの生き様は、きっと間違っていなかったのだ。

 

 マー=ベル死後、マー=ベルの遺伝子を受け継ぐ息子、ジェニス=ベル。後にクェーサーという別のヒーローになるウェンデル・ボーン。ダークアベンジャーズ政権下にてキャプテン・マーベルを名乗ったクリー人、マーベルボーイことノー=バー。キャプテン・マーベルの名を名乗る人間は複数現れたものの、全員長期的な定着には至っていない。
 

 変わり種としては、スクラル人のクン・ナーが変身したキャプテン・マーベルがいる。クン・ナーはマー=ベルに変身し、実は生きていたキャプテン・マーベルとして登場する。やがて、スクラル人による地球侵略作戦シークレット・インベージョンが始まり、クン・ナーもまたスクラル側の戦力となる予定だった。だが、マー=ベルの記憶と精神もコピーしていた彼は、キャプテン・マーベルそのものとしてスクラル人と戦うことになる。多数の戦艦を道連れにクン・ナーは死亡するものの、彼の奮闘により、地球側は反撃の一手を打つことができた。

 自勢力を裏切り、地球のために戦うクン・ナーの姿は、奇しくもマー=ベルそのものだった。カテゴリー的には、偽キャプテン・マーベルと呼ぶのが正しいのだろうが、個人的に彼のことはキャプテン・マーベルの一人と数えたい。

 現在キャプテン・マーベルの名を名乗っているのは、フューチャー・アベンジャーズにおけるキャプテン・マーベルこと、キャロル・ダンバースである。生前のマー=ベルと接触し、偶然その力の影響により超人ミズ・マーベルとなり、宇宙人のマー=ベルに地球人の善き可能性を教えた者の一人である。黒いハイレグコスチュームがトレードマークな彼女だが、キャプテン・マーベルの女性版と言える、繋がりがわかりやすいデザインのコスチュームを着ていた。

 キャロルは長年、ミズ・マーベルとして活動してきたが、近年ついにキャプテン・マーベルの名を名乗ることとなり、フューチャー・アベンジャーズと同デザインのスーツに着替えた。

 複数人がキャプテン・マーベルの後継者になろうとしたが、今までのところ、初代の英雄精神に比肩した者はいない。ここまで言わしめる、キャプテン・マーベルの名を継いだキャロル。ここ数年の安定や扱いを見る限り、キャプテン・マーベルの名はキャロルに定着しようとしている。その座が、永く続くことを祈りたい。

 

 これは余談だが、DCコミックスのキャプテン・マーベル(現:シャザム!)とマーベル・コミックのキャプテン・マーベルの間に直接の関係はない。前述した通り、MARVEL自体が驚異的という意味を持っている単語かつ、そもそも現在シャザム!なキャプテン・マーベルの方が誕生自体は早い。

 最もこの辺りの事情は、元々シャザム!が所属していたのは別の出版社のフォーセット・コミックスだとか、フォーセット・コミックスとDCコミックスの間で色々あった末にDCコミックスがシャザム!の版権を得たとか、非常にややこしい。物語の枠を超え、アメコミ史全体に関わる学術的な話にまで及ぶので、また別の機会にでも。これは、本気で腰を据えて挑むべきテーマの一つである。

 それぞれ別の出版社に所属する、二人のキャプテン・マーベル。特別なクロスオーバー企画であるJLA/Avengers内、しかも一コマだけの光景であるものの、互いのライバルを入れ替え共闘する姿には、ややこしいからこそ生じた爽快感と面白さがあったことは伝えておきたい。 
 

 

フューチャー・アベンジャーズなコラム~その8~

 フューチャー・アベンジャーズ第8話!
 親友であったはずの男たちの戦い、それは身を削る痛みのある戦い。 

 

 キャプテン・アメリカの年齢も(あの世界の)アメリカ史に関わってきそうだけど、ソーの年齢も神代の謎を解き明かす上で一回ハッキリさせておいた方がいいと思うよ! つーか、キャップの年齢って、凍結期間があるから1918年ってハッキリ設定しても調整効くのよね。トニーなんか、時代ごとにアイアンマンになるきっかけの戦争が変わってるし……コミックスの第一話だと、敵は赤軍ゲリラで場所はベトナム戦争だったぞ。

 俺、映画キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャーのラストシーン、数十年の時を経て復活したキャプテン・アメリカが変わってしまったニューヨークに戸惑う所と、その後戸惑いつつもトレーニングを重ね今を生きようとする姿が大好きなんだ。だって想像してみてくださいよ、ある日起きたら、自分の周りの物も人も大半が無いか大きく様変わりしているんですよ? 自決を選んでもおかしくない孤独な浦島太郎が、勇敢に現代を生きる姿。それでも時折見せる疎外感が、キャプテン・アメリカの大きな魅力の一つかと。

 

 ヒドラ島は壊滅し、レッド・スカルは捕らえられ、ブルーノは死亡同然に姿を消した。だがまだ、全てが終わったわけではない。それどころか、何も始まっていなかったのかもしれない――

 謎のエメラルド・レイン計画とブルーノの復活とマコトの発作。全ての答えはザ・リーダーの頭脳の中に。これからフューチャー・アベンジャーズが終わるまで、俺は「マスターズ・オブ・イーブルのリーダーのリーダー」とややこしいことをわざわざ書きたくなる衝動と戦わなければいけないのか。そして正直、ハルクからレギュラーヴィランが来るとしたらアボミネーションかレッドハルク辺りだと思っていたので、ガンマ線の頭脳派ザ・リーダーの参戦は今でもビックリよ。

 組織はあるものの(単独では)不確かな知識しか無かったレッド・スカル。知識はあっても資金と工程の面で不安があったザ・リーダー。エメラルド・レイン計画が不安定な形でマコトやブルーノの中で育ってしまった理由はコレか。そして、ザ・リーダーという製作者で、レッド・スカルが使っていたナノマシンの謎も解けた。トニー・スタークも舌を巻く技術を持っている頭脳派ヴィラン、ザ・リーダーのデビューとしては上々よ。

 あと、ザ・リーダーのテレポート技術にトニーが驚いてましたが、何気にテレポート技術は様々な超人や超技術に溢れているマーベルユニバースでも希少なものです。自由自在となると、どうしてもねー。デッドプールのテレポート装置みたいに、安定性や信頼性がマイナス評価なシロモノを入れても、あんま無いね。多彩な能力者を抱えているミュータントでも少数、魔術だと人数や距離規模に応じて術者への負担が多大なものになる、科学で再現するならトニーがつきっきりで徹夜してなんとかなる域。

 これもザ・リーダーの能力の高さに含めてもいいんだけど……ひょっとして、別の協力者がいるのかもしれん。同程度の科学者や、別の視点を持つ技術者がいる可能性を考えたほうが、色々と面白いからな!

 

 雷神VS戦神! 科学VS魔法! アベンジャーズとマスターズ・オブ・イーブルの対決。だが、今回の戦いの本質は、旧友同士の戦いに有り!

 エメラルド・レイン計画の「進化」が引き起こした、マコトVSブルーノ。死んだはずの男という「過去」が交錯するキャプテン・アメリカVSウィンター・ソルジャー。新キャラ同士が進化で、既存のキャラ同士が過去。見事な好対照ね。途方もない進化の真実、過去を失った理由。これらが明かされるのは、おそらく先の話なものの、そこにはまず間違いなく、親友同士が戦わねばならない重みがあるはず。絆が濃いぶん、戦いは熾烈に、そして悲しいものになってしまうのです。

 次回は、キャプテン・マーベルだけでなく、助っ人ホークアイとブラック・ウィドウも参戦。敵も多いが味方も多い、それが広大な世界観を持つアメコミの強みよ。

 

 今回紹介するのは、ザ・リーダー! ガンマ線を浴びた者でありながら、その力は体力ではなく全て頭脳に。マーベルユニバース屈指の頭脳派ヴィランの危険度とは!?

 

 

ザ・リーダー

 サミュエル・スターンズという男が居た。高校は中退、身体能力も平均以下、優秀な実兄に比べ、頭脳体力ともに見るべきところのないサミュエルは家族にも見捨てられ、鬱屈とした思いを抱えたまま大人になった。サミュエルは、政府の研究施設に掃除夫として就職。ただただ、掃除と雑用の繰り返す日々を過ごす。

 だがある日、サミュエルの間近でコンテナがひび割れたことにより、彼の運命は一転する。コンテナから放たれた放射線を致死量まで浴びたサミュエルだったが、奇跡的な生存を果たし五体も無事だった。意識を取り戻したサミュエルは、ただただ貪欲に本を読み始める。難解な本を読むたびに、サミュエルの知能はどんどんと上がっていき、あっという間に学者すらおののく知識レベルに達してしまった。

 だが、サミュエルが知性を深めていくたびに、彼の肌は緑に染まり、頭蓋骨と頭脳が急激な膨張を繰り返した結果、その頭は長細い異形となってしまった。サミュエルは自身が浴びた放射線がガンマ線であることも理解し、知性の急激な成長はガンマ線の影響であることも理解する。そして何より理解したのは、自身が惰弱な全人類を支配下に収めるに相応しい知性を持つ存在であることだ。彼の鬱屈とした精神は、類まれなる知性を手に入れることで、傲慢そのものに変貌してしまった。

 全てを理解した日、サミュエル・スターンズは消えた。代わりに産まれたのは、人類の支配者(leader)を自認する、知性の怪物ザ・リーダーであった。

 

 ザ・リーダーは自身の頭脳を持って早速世界征服の計画を練るが、すぐに障害にぶつかった。

 自身と同じガンマ線で変貌した人間でありながら、全てを力に注ぎ込んだ男。後天的な天才であるザ・リーダーとは違い、元々優れた知性を持っていた天才。障害の名はハルク、そしてブルース・バナーである。

 ザ・リーダーは己の知性の全てを使い、強大な力を持つハルクと何度も対決。時には自らの身体を強化改造し、肉弾戦で。時にはリーダーらしく、様々なヴィランを率いて挑んだものの、結局緑の巨人を倒すことはできなかった。

 ハルクとの戦いにより、ザ・リーダーの知性はますます強化されていき、頭部の変貌現象などもあったものの、ハルクも戦いにより成長してしまったため、戦いが優位になることはなかった。

 

 ハルクと戦うには、パワーやスピード、何かずば抜けていないと勝負にならない。そんなハルクに頭脳で立ち向かうザ・リーダーの知性は、専門分野でありよく悪事に利用する遺伝子工学や放射線研究だけでなく、物理学やロボティクス、新兵器やアンドロイドの発明制作、制作からハッキングまでコンピュターを熟知と、実に多才である。肥大化した頭脳は恐ろしいまでの直感力と記憶力を有しており、その直感はもはや確定予測に等しく、無限に等しい容量を持つ記憶力は、地球上の図書館全ての蔵書を脳内に収めかねない。もはや、ザ・リーダーに知性に関わることで出来ないことはないとまで言われている。

 知性とは若干方向性の違うザ・リーダーの脳が持つ力としては、様々なサイキック能力がある。人を操るテレパシー能力や、機械の遠距離操作や直接攻撃もこなすテレキネシス能力は、ザ・リーダーの知性の可能性を広げ、弱点である身体能力の低さを補っている。リーダーで、高い知性を持っていて、サイキック能力が使えて、身体能力はそれほどでもない。特徴だけ抜き出すと、X-MENの創始者ことプロフェッサーX(チャールズ・エグゼビア)に似ている。最も、ザ・リーダーのリーダは自称なので、統率面に関しては、有名ヒーローチームの大きな要であるプロフェッサーXに大差をつけられているが。

 

 ザ・リーダーは何度か能力を失い、ただのサミュエル・スターンズに戻ったものの、そのたびにしつこく復活を果たしている。その中でも、目立った変化があった時期は、肌の色が赤かった時期だろう。ある時力を失ったサミュエルは、赤いガンマ線を浴びせられレッドハルクやレッドシーハルクのような、赤い肌のレッドリーダーになった。

 なんとこの時期は、ヒーローチームであるサンダーボルツにも所属している……だが、元々がヴィランにより結成された偽のヒーローチームであり、更生後や再編成後もどうにもクセがあるのがサンダーボルツというチーム。レッドリーダーが所属した時期のサンダーボルツは、レッドハルクをトップとし、パニッシャーやエレクトラやゴーストライダーやヴェノム(フラッシュ・トンプソン)やデッドプールがメンバーに名を連ねる、究極のシングルプレイヤーたちのチームだった。

 正直、レッドリーダーでもあまり目立たないぐらいに、全員キャラ立ちしていた。

 

 ガンマ線を浴びた結果、肉体が強化されたハルクやアボミネーションとは違い、何故ザ・リーダーは頭脳のみが強化されたのか。様々な説があるが、興味深いのは、子供の頃からずっと比べられてきた賢くて優秀な兄へのコンプレックスが原因で頭脳が強化されたという説だ。複雑な精神性を持ったブルース・バナーが強力無比のハルクとなったように、ガンマ線によるパワーは当人の精神構造が大きく影響している傾向もある。サミュエルの精神構造が、ザ・リーダーへの変貌に大きく関わっているというのも、有り得る話だ。

 なお、サミュエルが幼年の頃からコンプレックスを抱いてきた、天才たる実兄フィリップ・スターンズ。彼は高校大学と順調に進学し、大学院に入学するものの、そこでクラスの最下位という屈辱を味わうことになった。卒業後はガンマ線の研究者になるが、政府の期待も支援も、全て大学院時代クラス1位だった男、ブルース・バナーに注がれた。

 クラス1位の立場も期待の研究者の身分も、ブルース・バナーがハルクとなって手に入れた強大な力も、全部自分の物になるはずだったのに。見当違いの嫉妬に燃えるフィリップは、自分もハルクの力を手に入れるため、ブルース・バナーがガンマ線を浴びた状況を再現。ハルクにはなれなかったが、身体を自由自在に変化縮小出来る能力を手に入れる。だが、フィリップの精神は分裂してしまい、その心中には途方もない狂気が住み着いていた。ハルクを付け狙う狂気の男マッドマンは、こうして誕生した。

 フィリップとサミュエル。兄弟二人は、同じ男により、野望や夢を粉砕されたこととなる。ハルクという共通の敵を得たことで、兄弟二人の距離が縮まったのは、なんとも皮肉な話と言えよう。

 
 
 サミュエル・スターンズはマーベル・シネマティック・ユニバースに属する映画、インクレディブル・ハルクにも登場。頭部が不気味に膨張し、次回作でのザ・リーダーへの変貌を予感させるシーンがあるものの……今のところ、インクレディブル・ハルクの続編同様、ザ・リーダーとしての彼の登場予定は無い。

 映画のサイドストーリーとなるコミックスであるアベンジャーズ:プレリュードでその後のサミュエルがフォローされているものの……それはSHIELDに捕獲され、実験動物同様の扱いを受けている姿だった。映画でのサミュエルは、ブルース・バナーとハルクを実験動物として見ている面があったが、それがカウンターで返ってきたことになる。運命の移ろいを感じる、哀しい話だ。

フューチャー・アベンジャーズなコラム~その7~&日本で触れ合えるデッドプール特集

 フューチャー・アベンジャーズ第7話!
 待ちに待ってた出番が来たぜ、ここはお任せデッドプール! 
 ……意外と早く来ちゃったかー。ちなみに、こんなに早い時期にデッドプールがゲスト出演するのは、たぶんマーベルアニメ初です。

 あと、今回ノリが若干おかしいけど、そこんとこは気にしないでください。当サイトでは、デッドプールと書いて特別仕様と読みます。

 

アイアンマン「ここでハッキリさせておきたいんだが……俺達の中で、まず始めにデッドプールのニセ情報に引っ掛かったのは、誰なんだ?」

キャプテン・アメリカ「デッドプールはああ見えて、優秀な兵士だからな。騙されたのは、仕方ないことだろう」

アイアンマン「わかってるさ。でも、世間は、“デッドプールに騙されベンチャーズ”みたいに好き勝手言ってくるんだ。ちゃんと事情を把握して、二度と起こらないようにしておかないとアベンジャーズが世論に殺されるぞ!?」

 アベンジャーズをハメて、スタークタワーにも容易に潜入するという、前人未到の離れ業。でも、デッドプールなんだよなあ。負けたり出し抜かれたら大恥、かと言って勝ってもそんなに評価は上がらない。それでいて、実力だけは一流。お前は、コスプレキャラが先行してた頃の、長島☆自演乙☆雄一郎か。

 

 偶然……というか、デッドプールの作戦にアベンジャーズがハメられた結果、留守番役となったマコトたち。排除すべき侵入者は、無法、自由、傾奇者、CV子安の四暗刻ことデッドプール! 映画で吹き替えした加瀬さんはソーのCVやってるし、そりゃディスクウォーズ以来のCV子安でもおかしかないわ。

 いやー、正直、レッド・スカルとかサノスとかドルマムゥの方が、デッドプールよりはマシですよ、ホント。絡めば絡むほど、混沌と困惑のデッドプールワールドに引きずり込まれていくという恐ろしさ。身体よりも精神、そして何よりキャラが食われてしまうというね。

 怪我しようが死のうがどうにかなるのがアメコミ。でも、人気を食われてしまったら、そのまま打ち切りやお蔵入りになって、どうにもならなくなるんだぜ? そりゃ、実質死刑みたいなもんよ。

 ほら、しれっとアイキャッチ持ってかれてるし!

 

ワスプ「クロエちゃんの変身能力で、デッドプールを騙すっていい作戦だと思うのよ」

ソー「ああ。正攻法でデッドプールに立ち向かっても、あしらわれるだけだからな。浮かない顔だが、何か問題が? 悩みがあるなら、相談に乗るぞ」

ワスプ「なんで色気で騙すのに、私じゃなくて、キャロルに変身したのかしらね……」

ソー「そういえば、エンチャントレスが暴れていることを、我が父オーディンに報告するため、アスガルドに帰ろうかと思う。では」

ワスプ「ソー?」

 あえて言うなら、キャプテン・マーベル(キャロル)の新キャラボーナス?
 そういやデッドプールがいじくっていたコンピューターに、ディスクウォーズで暴れたバロン・モルドやブリザードやサーペントソサエティの面々がいましたね。サンドマンやグレイガーゴイルらしきディスクウォーズ未登場のヴィランもいたけど、彼らの出番もあるのだろうか。

 実際、どうにもこうにもならない相手であるデッドプールに、諦めずに立ち向かい奇策を張り巡らそうとしたのは、高評価なフューチャー・アベンジャーズ。ベテランヒーローでもデッドプールの相手するのは、嫌がったり諦めたりしがちだからね!

 でも問題は、奇策で立ち向かおうとすること、それすなわちデッドプールのフィールドであること。いやねえ、確かに熱々のコーヒーはしんどいけど、デッドプールのコミックスでの経験を見るに、女性に飲み物を用意してもらったら、良くて睡眠薬、最悪致死量の毒がブラックコーヒー反対派の砂糖みたいな勢いで頻繁に入ってるからね! たとえ口の感覚があったとしても、熱々のコーヒーぐらいじゃあ、めげませんとも!

 ……苦労してるよな、デップーさんも。
 
 

 マコトたちの主人公補正も無視して、任務を達成したデッドプール。しかしそれは、クロスボーンズの巧妙な罠だった!

デッドプール「くやしい……! でも……感じちゃう!」

 なんで俺は児童向けアニメの感想で、クリムゾンネタをぶち込んでるんでしょうね。

 まあ、それはどうでもいいとして、今回の一件の黒幕は傭兵クロスボーンズ。しかし、デッドプールだけでなくクロスボーンズもあっさり入ってきたことで、アベンジャーズタワーの警備わりとザルなんじゃないか疑惑が。空飛べるヴィランなら、楽勝なんじゃねえかコレ。

 マコトたちを遺伝子改造された被害者と考えればデッドプールと被るけど、実はヒドラの元で鍛えられたという意味では、クロスボーンズもマコトたちと被っていたり。クロスボーンズはマコトたちがあのままヒドラにいた場合の、未来予想図ってことですね。三人共、クロスボーンズのことは知っていたようだけど、あんなドクロのマスクを被ったプロレスラーみたいなオッサン観た瞬間、この組織ヤバいともっと早く気づきそうなもんだが……あ。そもそも、首領が赤いドクロのオッサンだったわ、ヒドラ。

 ヒドラはアニメ制作してないけど、日本のニンジャ集団ことザ・ハンドなら、偽装で引越し業者やったり新宿のど真ん中に事務所あったりするから、アニメ会社の一つぐらい抑えてるんじゃね? 

 

 ただ日本のアニメの凄さを語るのではなく、そんな日本の作画スタッフに「戦闘シーンで苦労かけませんように」と気を使う優しさ。やはりデッドプールは一流ですね。そのぶん、声優さんへの負担がかかりそうな戦闘シーン(音声オンリー)だったけどな!?

 今回のデッドプールは、正義と悪の間でゆらぐ中庸プール……というか、悪寄り。でも、アレはアレで無法のわりに空気を読んでいるのです。マコトたちへの手加減もそうだけど、ちゃんとデッドプールはマコトたちの相手をしているのよね。今までの構図だと、どのヴィランもあくまでアベンジャーズを相手していて、マコトもクロエもアディも眼中にほぼ無かったから。ある意味デッドプールとの接触で、初めて一線級のヒーロー兼ヴィラン兼ちゃらんぽらんの凄さを、身で学べたのではないでしょうか。こんな童貞の筆おろしにシュマゴラスが触手を唸らしながら来たような初めてで、今後彼ら大丈夫なんだろうか。

 

マコト「なあ、トニー。この間デッドプールが来てからずっと、毎晩夢に車椅子に乗ったハゲのオッサンが出てきて、こちらの学校ならばアベンジャーズよりも正しい能力の使い方を効率よく教えてあげられるぞって誘ってくるんだけど。クロエもアディも、同じ夢を観てるって」

アイアンマン「よし、わかった。おいハルク、ちょっとスキンヘッドの教授がいる学校で、暴れてきてくれないか?」

 映像権利としてはX-MENに属しているデッドプールが出てくるのは、今後のフューチャー・アベンジャーズにX-MENが関わってくる可能性を残したということで世界観的には大事件なものの、デッドプール登場のインパクトのデカさに隠れてしまったというオチに。いや、最近X-MENやファンタスティック・フォーって、映像権利を20世紀フォックスに持って行かれているせいか、アニメでの出番やゲスト出演が本当に無いんですよ。デッドプールのフューチャー・アベンジャーズへの出演が、全世界単位で見てもディスク・ウォーズ以来3年ぶりのアニメ出演だというのもおそらくこの辺りの事情が絡んでいるのではないかなと。

 アニメ関係に関して本国では放置状態で、日本発のアニメで2連続出演という状況なら、デッドプールが日本製アニメにこだわるのもわからんではないわ……いや、デッドプールは来年あたり本国でTVアニメ化するって話があるんだけどさ。やっぱ人気者になると、いろいろ動き始めるねー。

 

 今日の紹介はデッドプールで……と言っても、ここ数年で散々書いた上に、ファンサイトだけでなく商業サイトでも取り上げられるような身分になって情報が反乱している今、もう書くことが無いですよ!? ネタ被りの心配というより、他所のネタを潰しちゃアカンよねというのが大きいです。

 例えば、最新シリーズの邦訳も決まっているのに、その最新シリーズのストーリーを解説してしまったら、面白さを損なって、邦訳の足を引っ張ってしまう可能性もあるので。流行りという水流にさらされ、デッドプールという水車が回り始めた以上、単に好きなように力を振るうのではなく、水車が上手く回るバランスも考えなくてはいかんわけでして。がむしゃらにやる時期は、ある意味過ぎ去ってしまったというのが、ちと寂しい感じではありますがね。

 前にクロスボーンズについて書いてなかったら、しれっとそっち書いてたんだけどなー……。まあいい、なんとか視点を変えてやってみよう!

 

 

デッドプール


※日本で流行りのアニメを積極的に学ぼうとする、デッドプールの図。

 キャラ紹介? デッドプールでググれ! 以上!

 

 

 

 

 というのもアレなので、ちょっとだけ補足というか筋道を作っておきます。名付けて「日本で触れ合えるデッドプール」特集。オリジンや能力や設定は、そもそもフューチャー・アベンジャーズでざっとやっちゃったしネ! あとはあそこにエドくんがいれば完璧だったんだが。
 2017年現在、デッドプールが登場している、アニメやゲームやコミックスをざっくり紹介。解説も大事だけど、まずは本物に触れるのが一番と……えーと……アレだ……誰かが言ってたよ?(ネタが思いつかなかったパターン

 

ゲーム

 日本でのデッドプール人気の始まりとも言えるMARVEL VS. CAPCOM 3(マブカプ3)。だが、それより5年ほど前にPS3やWiiで発売されたマーベル アルティメット アライアンスにもデッドプールは初期実装キャラとしてプレイアブル化している。

 アベンジャーズにX-MENにファンタスティック・フォーに属する著名でまっとうなヒーローに囲まれ、なんでお前いるの状態だったものの、ちゃんとストーリー中に会話イベントも用意されているので一安心。相棒のウィーゼルとの会話だけでなく、偉大なる魔術師エンシェント・ワンに「お爺ちゃん?」と話しかけたり、声が破壊音波になっているブラックボルトを喋らそうとしたりと、全然安心じゃなかった。キャラクター性能としては、遠距離攻撃と近距離攻撃をしっかり備えた上で、テレポートや自動回復のような便利な能力に、挑発技のような小技も完備と、無駄に万能型なのがなんかこうイラっとくる。

 近年の作品だと、多数のヒーローが参戦したLEGO®マーベル スーパー・ヒーローズ ザ・ゲームにもデッドプールは登場している。なお、このゲームの続編となるLEGO®マーベル アベンジャーズには参加していないのでご注意を。


※デッドプール参戦


※デッドプール未参戦

 レゴアベンジャーズは、マーベル・シネマティック・ユニバースを中心としたゲームとなっており、ファンタスティック・フォーやX-MENと共に、デッドプールは未参加となっている。同様の事情かスパイダーマンも未参加であったものの、シビル・ウォーやホームカミングの影響もあってか、DLCキャラとして無料配信されることとなった。

 レゴマーベルのデッドプールは、まずアクションステージのいたるところでウロウロしているのが目撃できる。これは、ムービーシーンでウロウロしているスタン・リーと対のカメオ出演となっている。そしてオープンフィールドステージでは、ナビゲーションを担当しており、目的地を指定すると、デッドプールが目印を残しつつ全力疾走。プレイヤーはデッドプールの後を追うことになる。嫌だなあ。

 このゲームにおけるデッドプールの使用条件は、様々なステージやニューヨークの街中に散らばっているゴールドブロックを使用し、全11ステージのデッドプールミッションを解禁。デッドプールミッション内にあるデッドプールレッドブロックをフリープレイで回収。こうすると、SHIELDのヘリキャリアでチートコードを販売しているデッドプールの隠し部屋に、レッドブロックが11個ほど売りに出るので購入。ここまですると、デッドプールがようやくプレイアブルキャラとして使用可能になる。クリア後のエンドコンテンツ寸前なキャラだが、更にデッドプール解禁後、ニューヨークの街中に出現するデッドプールのミッションを受けることで、解禁されるキャラがいるのだから奥深い。なお、そんな超エンドコンテンツキャラの一人はメイおばさんである。何故。

 新作となるマブカプ4にはウルヴァリンや他のX-MEN共々参戦の気配がなく、マーベルツムツムにも未登場なものの、MARVEL Future Fightでは遠い親戚のようにみえて他人なグウェンプールの参戦に加え、他のX-MENが続々参戦し始めており相棒の一人であるケーブルが参戦発表に名を連ねたことからも、デッドプールの近い参戦は噂されている。

 ついでにグウェンプールは、ツムツムや後述のオールスターバトルにも参戦済みと、最近の注目株なキャラなので今後に期待したい。

 なお、格闘系アプリゲーことMARVEL オールスターバトルには参戦済みなので、安心して欲しい。こちらだと、本家デッドプールだけでなくヴェノムプールなどの亜種も参戦している。

 いやまあ、キャラの獲得が基本ガチャなので、運が悪いと中々使用できないんだけど。

 そして日本未発売なものの、忘れてはいけないのがPS3や360で発売されたDeadpool

 デッドプールを主人公にした、据え置きアクションゲームであり、ケーブルやウルヴァリンやボスキャラのミスター・シニスターも全員デッドプールワールドに巻き込まれて大混乱な本作。感覚としては、ライトなデビルメイクライといった感じで、そこに残弾数が少ない代わりにガンガン敵から弾が拾えるトリガーハッピーさやデッドプールならではの人をナメきったギミックが加えられ、非常にらしいキャラゲーとなっている。現在、DLCも全部入りなHDリマスター版がPS4で出ているので、興味が在る方は洋ゲー専門店やアマゾンで探してみて欲しい。全編英語だけど、わりとフィーリングでどうにかなる操作感覚なので、やるぶんには英語ができなくてもなんとかなる!

 しかし、Deddpoolの日本でのローカライズ販売ホントどうにかなりませんかね……。デッドプールとゲームのファン層の合致率も高いので、まだ間に合いますって! 日本のゲーム会社様、どうかお願いします!

 

アニメ

 90年代やマッドハウス版のX-MENに参戦しているが、カメオ出演なのでひとまずスルー。現物が手に入りやすいマッドハウス版だけ補足しておくと、最終回でナイトクローラーと共にカメオ出演している。

 まずデッドプールが声付きで初登場となったのが、ウルヴァリン VS ハルク。 ウルヴァリンとハルクの死闘に介入する、謎の組織の一員として出演しております。今回の同僚は、セイバートゥースやオメガレッドやレディ・デスストライクと、デッドプール含めウルヴァリンとの因縁がある者たち。ただ、あれデップーさん一人だけ浮いてない? とのイメージ通りに、途中から好き勝手に暴れやがります。ウルヴァリン VS ハルク VS デッドプールくらいには。なお、オチも持って行く気満々な模様。

 続いてTVアニメへの初出演となった、アルティメット・スパイダーマン。デッドプールはシーズン2のシリーズ通算41話“アルティメット・デッドプール”に登場。数回のカメオ出演をこなしたあと、満を持して登場。第四の壁をぶっ壊し気味な、アルティメット・スパイダーマンのピーターすらドン引きレベルの大活躍。実は本作でも、アルティメットなヒーローを目指すスパイダーマンのある意味先達なので、フューチャー・アベンジャーズにおけるデッドプールとある意味被っている。なお、被害者共演者はタスクマスター。

 問題は、アルティメット・スパイダーマンはソフト化してない上、このあたりのシーズンは再放送をしてくれているディズニーXDでも流していないので、見る難易度がものすごく高くなってしまっていることか……。

 そして肝心要な、ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ! デッドプールは第27話 禁断のヒーロー登場?第30話 クリス 決断の時に登場。ついでに第40話 ヒカルとソーと謎の声にもちらっと出演。

 近年の作品かつ日本発なので、公式経由で観る手段が多いのもありがたいところ。27話はDVDだと7巻で30話は8巻。あんま期待してもらうと困る40話は10巻ですからね!

 

コミックス

 今回は日本メインということで、オール英語な原書の紹介はナシ……なものの、軽いアドバイスとしては、Kindle経由の電子書籍での購入、もしくはブリスターコミックスヴァースコミックスのような専門店経由での購入がおそらくベター。前者はある程度のネットリテラシーが必要な直接購入にしては安全、後者は直に専門家に聞けるというのが何より良いですね。わからなかったらしっかり調べるか、人に聞く。うろ覚えでの特攻はしちゃダメですよ。

 で、そうなると邦訳を紹介すればいいんじゃね……というわけですが、多いねホント! これを全部紹介したら、あと数万文字は必要。てーか、現在進行形でデッドプール邦訳奇譚という企画もおこなっているのですが、現在停止中。ゴメンナサイね。
 というわけで、個人的にコイツぁオススメだぜ! という本を数冊紹介。

デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス

 局地的人気と思われていたデッドプールの本を出してみたら、その局地がとんでもないことになってたよ!? というのが判明した作品。336ページの厚さながらも、恐竜だらけのサベッジランドやゾンビだらけのゾンビバースを全ページノリノリで駆け抜けていく、僕らのデップーさん。デッドプールここにありというのを、日本に打ち立てた作品。(解説

デッドプールの兵法入門

 中国における伝説の軍師である孫武を殺っちまった結果、兵法書『孫子』をゲットしたデッドプール。コイツを出版して大儲けだ! でも、なんか話題性がないと出版社が出版してくれないらしい。じゃあ孫子を実際に使って、負け犬を勝たせてやろう。笑いの神じゃなかった悪戯の神ロキよ! 俺ちゃんがソーに勝たせてやるぞ! こんな、非常に頭の悪いショートストーリーです。価格も厚さもリーズナブルなものの、アスガルドだけでなく、アベンジャーズやX-MENやファンタスティック・フォーを巻き込んだシナリオやイラストは絢爛豪華。数多のビジネス書より、役に立つかもしれないぞ!(解説

デッドプール&ケーブル:スプリット・セカンド

 有名なコンビであり、実際この二人の名を冠した長期連載もあったデッドプールとケーブルのコンビ。だが、ケーブルがしばらく死んでたり、デッドプールが忙しいという事情もあり、彼らのコンビは(現実世界で)数年間休業状態だった。いったい、デッドプールとケーブルは、どんなコンビだったのか!? その答えとなるのが、このスプリット・セカンド。今のデッドプールと今のケーブルを、かつてデッドプールを創造し、ケーブル&デッドプールも担当したファビアン・ニシーザがライターを務めるというスキの無い構成。知っている人にとっては懐かしく、知らない人にとっては入門編。デッドプールとケーブルを知りたいなら、この一冊だ! このコンビをちゃんと1から追いたいのなら元祖ケーブル&デッドプールを訳したケーブル&デッドプール:青の洗礼に腰を据えて挑むのもアリだ!

スパイダーマン/デッドプール:プロローグ

 スパイダーマンとデッドプール。この二人のコンビは回数自体は少ないものの、多くのファンの興味を惹き、デプスパもしくはスパデプのカップリングは大人気となった。そんな人気を感じ取ったマーベルも、このウェーブに乗るっきゃ無いということで、本格的に二人のコンビを始動。スパイダーマン/デッドプールの本格連載開始に先駆けて、今までのデッドプールとスパイダーマンのコラボ作品を纏めてみたアンソロジー。ライトニング・ロッズ名義で、グレイト・レイクス・アベンジャーズも本格登場しているのは、このサイト的にオススメしたいポイント。9月20日には新シリーズとなるスパイダーマン/デッドプール:ブロマンスも発売されるので、要チェックだ!

デッドプール Vol.1:デッド・プレジデント

 外伝も含め全9冊が日本でも刊行された、デッドプールシリーズの第三レギュラーシリーズの第1巻。ゾンビとして蘇った歴代アメリカ大統領VSデッドプールのカードは、新シリーズ開始で不安になるファンの心をがっしりと掴んだ。あと当たり前の話だが、第1巻や第1話に読みたくなる勢いや土台となる設定がだいたい組み込まれるのは古今東西の基本戦略。なので、基本シリーズ第1巻を訳せば、だいたい読みやすい話になっている。目当てのヒーローが決まっていて、読みたい邦訳を探す時の狙い目はそれぞれの第1巻だ! 続きとなる第四レギュラーシリーズも邦訳予定には入っているので、続報を待つべし!

 

 まあアレだ。こんだけ本含めてメディアがあるし、なにより大正義な映画デッドプールもあるんだから……心の赴くまま好きなトコから触っていけばいいんじゃないですかね。

 こだわるな! 自由に行け! デッドプールを楽しむには、自由気ままがよく似合う!

フューチャー・アベンジャーズなコラム~その6~

 フューチャー・アベンジャーズ第6話!
 アディを押しつぶしそうになる後悔。だがアベンジャーズには、同じように後悔を背負い続ける男がいた――

 

 マコトが無邪気にヒーローになりたがりアーマーを欲しがるのは、本人の性格に加えてヴィランとしての活動期間が無いというのも大きいのでしょう。ヴィランとして育てられつつも、ヴィランとしての経験や悪しき心を宿らせる洗脳がなければ、それはヒーローにも成り得る無垢な力。妖刀だって、打たれてから何も切らなければ単なる名刀です。

 そうはいかないのが、ヴィラン“テクノプリースト”としての活動期間があるアディ。特に何をしたのかは語られなかったものの、斡旋がヒドラで、当人の能力が機械を自在に操れるテクニカルアクト。この近代化社会で機械を操るということは、ある意味万能にも等しい力です。

 その力をヒドラの指示通りに振るえば―― きっと、少年が背負うにはあまりに重すぎる荷が、容易く生まれてしまうでしょう。

 

 ヒーローとは正しくあろうとする者であったとしても、誰もが生まれてから今まで清廉潔白とは限らない。
 アイアンマンとなる前の、武器商人トニー・スターク。未だトニーが作った武器が世界中にあり、数々の悲劇を起こしているのは映画でも描かれたこと。それに、戦場で死にかけるという事故が無ければ、トニー・スタークは武器商人として今でも活動していたかもしれない。

 トニー・スタークは、ヒーローとして活動をするには汚れすぎているし、信頼できる過程でヒーローになった人物ではない。これもまた、一つの正しい指摘です。

 

 そんなトニーの過去を知り、それを認めぬと同時に恨みの炎を燃やす男、エゼキエル・ステイン!

 映画アイアンマンでもトニーの殺害を目論見、コミックスでも強大な敵として立ちはだかったオバディア・ステインの息子。死亡した映画や、自殺したコミックスとは違い、フューチャー・アベンジャーズの世界ではオバディアも生きて収監されているようですが、まあ十中八九、ロクでもないことをやらかしたのでしょう。つーか、キレイなオバディアって想像できねえ。

 エゼキエルが使用するのは、オバディアの遺産とも言えるアイアンモンガー。そして自ら強化改造を重ねたアイアンモンガー2。アイアンモンガー2のスーツは、エゼキエルがコミックスで装着したスーツに酷似してますね……ただ、アイアンモンガーとビジュアルが違いすぎる上に、元祖と2を作る間に技術が進歩しすぎてて、これ同型機扱いでいいのかな? とファンの間でも議論を読んでいますが、それはさておき。ガンダムで言うなら、一年戦争と∨ガンダムのMSぐらいの差があると言ってもおかしくないもんな。

 

 アイアンマンの罪を糾弾しつつ、過去のデーターより完璧な対策を打ち立てたエゼキエルの二段構えな作戦。罪をただ黙殺すればヒーローとしての資格が疑われ、単に敗北すればそこでオシマイ。非常に狡猾です。そしてエゼキエルは知らないことですが、トニーが罪との向き合い方を誤れば、アディもおそらく潰れてしまっていたでしょう。

「過去は変えられない。だが、未来を選ぶことはできる」

 トニー・スタークのあり方は、エゼキエルからすれば不条理で、厚顔無恥な答えなのかもしれません。でも、トニーは世界中で少なくない人間が向けている自身への恨みと、武器商人としての罪を自覚している。自覚しつつも、自分ができることをやり続け、ヒーローに相応しい人間として振る舞い続ける。厚顔であったとしても、その内では恥も罪も渦巻いている。それでも、前に歩み続ける。

 トニーの過去のデーターを分析することで満足してしまい、過去の恨みが原動力であるエゼキエル。とどまったまま追いつこうとする人間が、先ゆく人間に勝てるものか。この辺、エゼキエルは、足を引っ張ることに頑張りすぎた、どこかの魔女にも似てますね。せっかくノベライズでヒロイン力上げたんだから、笑顔で幼女の爪とか剥がしてんじゃないよ、もう。

 トニーの生き方は、過去を忘れ去るよりも辛く、一方誠実な生き方。実際アディもトニーのあり方に救われましたし、この生き方はメイン視聴者層である子供にとっても、早く知っておくべきことではないですかね。子供や若者はやってしまったという後悔を背負いがちで、処理の仕方を知らないまま、潰れてしまうこともあるので。忘れるのもいいけど、こうやって重荷と付き合い続ける生き方もあるんだよと。ある意味キツい生き方ですが、知らぬまま潰されるよりかはナンボかマシでしょう。

 ヒーローが、強き背で一つの生き様を見せるのって、古今東西大事なことだと思うよ。

 

 アディという新キャラクターの悩みに、己の生き様で答える既存かつ人気キャラのトニー・スターク。敵は、未来を生きようとする彼らと相反し、過去を力とするエゼキエル・ステイン。

 新キャラ、既存キャラ、そしてヴィランと、ものすごいカッチリとハマってます。後述してますが、後から追う者であるエゼキエルの造形もフューチャー・アベンジャーズ独自ではなく、元々の彼のキャラ造形なんですよ。当然、作品に適した形にはいじってますが、根本的には同じ。つまり在るものを理解した上で新しいものを組み合わせて、見事な造形を成し得たということです。

 実際、今回のエピソードのハマり具合は、原作付きアニメ全般にまで話を広げてもスマッシュヒット級ですね……。いやあ、楽しみつつも勉強になりました。

 

 今回紹介するのは、エゼキエル・ステイン!
 実は、以前マッドハウスにて制作されたアイアンマン ライズ・オブ・テクノヴォアにも出ていたりするのですが、こちらでは美少年キャラ。フューチャー・アベンジャーズのエゼキエルも路線は違うとは言え、中々に精悍な顔立ち。エゼキエル、マッドハウスのアニメだとイケメン化する地形効果でもあるんだろうか。

 

 

エゼキエル・ステイン

 自身の財力と知力でトニー・スタークを心身共に限界寸前まで追い詰めたアイアンマン最大の敵の一人、オバディア・ステイン。
だがトニーは、オバディアの策謀を乗り越え再起。オバディアは部下の科学者に作らせていたアイアンモンガーのスーツを装着し、アイアンマンとの直接対決に望むものの、敗北。敗北者となったオバディアが自殺したことで、オバディア・ステインの野望は幕を閉じた。

 しかし、オバディア・ステインの野望は終われども、彼の計画は終わっていなかった。人の心理を知り尽くすオバディアにより、トニー・スタークへの憎しみを思う存分注ぎ込まれた、復讐の申し子。その名は、エゼキエル・ステイン。オバディアが持つ財産と悪意を受け継いだ、オバディアの息子である。だが、オバディアが死んだ時、エゼキエルはまだ子供だった。エゼキエルはトニーへの恨みを煮えたぎらせながら、自身の成長を待つこととなる。

 オバディア・ステインは優れた知性を持つものの、彼はあくまで“一流の企業家”だった。オバディアが装着したアイアンモンガーの制作は部下が担当しており、オバディア自身も平均的な男性の身体能力以上の力は持っていなかった。自分の知性と企業家としての力でトニーを追い詰めたオバディアだったが、一方で自身が持つことのできなかったトニーの科学者や装着者としての才能も認めていた。

 だからこそ、オバディアはエゼキエルに一流の科学者や装着者になれるような教育を施した。エゼキエルは幼少時から類まれなる才能を発揮し、オバディアの手にあるヴィラン用の装備や超兵器を設計製作したとも噂されている。

 

 オバディアの死からしばらく後、表舞台に立ったエゼキエルは、自身の天才性を証明するがごとく、トニーの技術を模倣かつ一般化し、闇市場に流してしまう。

 エゼキエルは先ゆくトニーに勝つための手段として、アーマーではなく自分自身を改造することに思い至る。手術の結果、エゼキエルはアーマーを装着せずともアイアンマンと戦えるだけの力や治癒能力を手に入れる。エゼキエルもアーマを装着するタイプのヴィランだが、彼のアーマーは優れた身体能力や手術の代償に高熱を発するようになった身体の補助と、若干違うコンセプトである。

 

 エゼキエルは優秀な科学者であり装着者であり、父譲りのビジネスセンスも持っているが、弱点も多い。

 まず一つは、自身の身体にメスを入れてしまったこと。前述したとおり、エゼキエルの身体は常に高熱を発しており、特性のインナースーツを脱ぐことができない。身体の新陳代謝もおかしくなっており、エゼキエルは常人の10倍以上のカロリーを欲する。これは全て、手術の代償である。

 第二に、エゼキエルはオバディアから知性と恨みだけではなく、彼の傲慢な性格まで引き継いでしまったことだ。エゼキエルは、人々とは自分にかしずく存在だと思っており、その傲慢さにより多くの敵を作ってしまっている。

 そして第三に、オバディアの天才性に革新的要素が無いことである。アイアンマンスーツを1から作り上げたトニーや、広く宇宙や次元を旅し数多の理論を打ち立てたリード・リチャーズ(Mrファンタスティック)とは違い、オバディアの製作物や理論には斬新さがない。トニーにも優れた知性は認められているが、エゼキエルのあり方は分析や応用に特化した模倣に近い。先行く思考を持たない限り、エゼキエルはトニーの後塵を拝するしかないだろう。

 エゼキエルは、様々な手段を講じてトニーを追い詰めるが、とどめを刺すには至らず、敗北を積み重ねてきた。オバディアのように企業家としてアイアンマンに立ち向かったジャスティン・ハマーの後継者であるサシャ・ハマー。似た境遇にある彼女と手を組み、自身の技術を販路に乗せることで、スーパーヴィランの持つ装備は、アイアンマンに近い域まで進歩してしまった。科学で先行くアイアンマンが、同じ分野に属する敵に苦戦するのは、模倣者エゼキエルの成果の一つである。

 

 エゼキエルはある時、爆発事故に巻き込まれ、頭部の毛を全て失ってしまう。スキンヘッドとなった彼の姿は、同じスキンヘッドであった父オバディアに不気味なほど似ていた。


※オバディア


※エゼキエル

 オバディアに似た顔と精神性、他人の技術を模倣することに長けた知性。トニー・スタークが未来を生きようとする男ならば、エゼキエルは過去で生きる男なのだ。