近世百鬼夜行~八~
普通神社や寺といったものは人が通えるところに作られるものだ。人が踏み込む事もできないような位置では、参拝もクソも無い。参拝客が居ない神社仏閣に意味があるのだろうか。
だが、何かを封ずるのなら話は別だ。人界に近くてはB級ホラー映画のOPのように悪ガキが封印を解いて大変だーなんて話になりかねないし、なにより封印するような凶悪な物が近所に有る状況で日々の生活を営みたくないだろう。つまり、このお堂には何かが封じられていた。
「しかしなあ」
変身したままのGは首を捻る。
街一つ壊滅させるようなモノを封印するには、あまりにチンケすぎるしあまりに山奥すぎる。危険なシロモノを封印する場所としては、定期的に監視するため微妙に山奥で、しっかりと防護できる丈夫さを持った建物がベストなのだが。これでは、只たいした事のないシロモノを厄介払いしただけみたいで、危険度と矛盾しているように見える。
しかし、状況的にどう見ても原因の一端はこのお堂にある。鬼が出るか蛇が出るか、意を決してGは扉を開けた。
「うぉぉぉぉぉ!! 読めぬっ!」
「せっかくそれらしき古文書を見つけたのに、難しくて読めぬとは。無学が恥ずかしいわぁぁぁッ!」
お堂の中には鬼も蛇も居なかったが、自転車の身でありながら器用にのたうち回り号泣するバカ兄弟が居た。輪入道が自分らを温かい目で見るGの存在に気付くのは数分後の話である。