マリみて新刊展開予想
「ねえ。このロザリオ、受け取ってくれるかな?」
この台詞を言うまでにどれほどの困難があっただろうと祐巳は思い返していた。
確かに彼女とは色々な事があった。楽しいことに嬉しかったこと、そしてつらかった事――
でも、それがあるからいまここで彼女の前で姉ぶってロザリオを掲げることができる。どんな事でもそれは二人の間であったかけがえのない事。このことに限っては親しい人も他人となり口出しすることはできない。二人の思い出は当事者の二人にしか進入できない、聖域のようなものなのだ。
目の前の彼女がどのような台詞を言うのかはわからない。素直に受け取ってくれるかもしれないし、もしかしたら拒むかもしれない。でも、きっと、彼女の口からどんな返答が出ても後悔する結末にはならない筈だ。姉妹という確かな絆はなかったけれども、見えない暖かい赤い糸は確かに存在していたのだから。