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エンターブレインより発売中のヒットマン1ヒットマン2ヒットマン3ヒットマン4ヒットマン5掲載の奇天烈!!アメコミキャラ名鑑を担当させていただきました。

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一日一アメコミ~8~

バットマン:ノーマンズ・ランド 2

 自分は変わり果てたゴッサムに適応したと――思い込んでいた。
 国家より切り離されたゴッサム・シティでは、数多くの支配者と敗北者が生まれていた。ローボーイズやストリートデーモンズのようなギャング、ブラックマスクやスケアクロウやマッドハッターのようなヴィラン。彼らは既に領土も勢力も失い、残党狩りもしくは囚われの身となっている。そして、敗北者の中にはバットマンも含まれていた。
 新たなゴッサムのルールに則り自分の勢力圏を広げていたバットマンだったが、トゥーフェイスの策謀をきっかけに縄張りと人命を失ってしまう。巨大すぎるノーマンズ・ランドの暗闇には、自分ひとりでは立ち向かえない。ナイトウィング、ロビン、オラクル、アズラエルといった信頼できる仲間たち、そして新たなバットガールがバットマンのもとに集結する。ゴッサムに光を取り戻すため、ヒーローたちの戦いが始まった。

 1巻に引き続いてのノーマンズランド2巻の紹介。立ち上がったバットマンを押しつぶそうとする、再度の絶望。しかしこの絶望をきっかけに、集結と再起となるのがこの2巻。ずっとバットマンをサポートしていたオラクルの元に、ゴッサム立ち入り禁止と言われていたナイトウィングやロビン(ティム・ドレイク)が帰還。ノーマンズランドを招いた元凶の一人でもある煽動家ニコラス・スクラッチを追っていたアズラエルが合流。バットマンの師匠の一人である暗殺者ケインの娘、名無しの少女がバットガールを襲名。新生バットファミリーによる、新たな模索と戦いはここよりスタート。

 ノーマンズランド開始前からの因縁、アズラエルとスクラッチの決着。ナイトウィングによる、悪徳看守ロックアップにより運営されていたブラックゲート刑務所奪還作戦。参加するヒーローと掲載誌が増えたことにより広がっていく物語。上記二つのストーリーもいいんだけど、本当に意味のないこととしか思えないことを続けてきた男の意思が、思いもよらぬ助けにより花開く『オンエアされた真実』のような、ヒーローが主人公でない短編もいいんだよな。そして隣に並ぶのは、バットマンがブルース・ウェインであることを偶然知ってしまった市民によりバットマンが危機を迎える『暴かれた素顔』。善意もあれば悪意もある。だからこその、現代社会でありノーマンズランドなんでしょう。

 バットマンですらハメられたように、このゴッサムは複雑怪奇。いまだバットマンが許せず、警察内の混乱に頭を悩ませるゴードン。統治と暴力をうまく使い分け、一大勢力を築いたトゥーフェイス。バットマンにシメられたものの反旗を翻そうとするペンギン。未だ派手な動きを見せないジョーカー。バットマンに協力しつつ、バットガールを勝手に名乗っていたものの、失敗により縁切りとなったハントレス。公園を無言で占拠し続けるポイズン・アイビー。バットマンに何事かを頼まれ、ゴッサム外での活動を始めたキャット・ウーマン。まだまだ、先の読めない暗闇とストーリーは続いていきます。

一日一アメコミ~7~

アイアンマン:エンター・ザ・マンダリン

 これはまだ、アイアンマンがマーク3であった頃、後のトレードマークと赤と金の配色を初めて採用した頃、トニー・スタークとアイアンマンは別人であると発表していた頃、アベンジャーズやシールドが組織として動き始めた頃、アイアンマンというヒーローがいよいよ世界に認知され始めた頃。トニー・スタークはアイアンマンとして中国奥地へと降り立つ。目的は、中国にて強大な影響力を誇り、世界各地の動乱に関わっているとも噂される、謎の怪人マンダリンの調査。アイアンマンの前の前に現れたマンダリンの手に光るのは、10の指輪と10の能力。鋼鉄の騎士とアジアの怪人の初対決。この戦いこそ、長きに渡る因縁の始まりであった。今再び語られる、アイアンマンの物語、そしてマンダリンの驚異。

 1963年にアイアンマンがデビュー。そしてその一年後の1964年にマンダリンが初登場。そんな60年代のストーリーを、2007~2008年にかけてリメイクしたのが本作。マンダリンとの初対決から始まり、新ヴィランであるスケアクロウの登場や、ソ連製アーマーのクリムゾン・ダイナモを巡る戦い、マンダリンとの再対決を現代風にリメイク。ただ忠実に再現するのではなく、アイアンマンのスーツの技術にハイテクさを加えつつ60年代当時はいなかったマンダリンの息子テムジン(2002年初登場)を登場させると、後の展開をふまえて話に厚みをもたせているのもポイントの一つですね。

 この作品の特徴としては、初期のアイアンマンの設定やストーリーを使ったものであることでしょう。アイアンマンの正体がトニー・スタークであることは、秘書であるペッパー・ポッツや運転手兼ボディガードのハッピー・ホーガンすら知らない極秘事項。アイアンマンの偽りの身分は、トニー・スタークのボディガードを務める一社員。スターク・インダストリーズは兵器の開発を続行中で、トニーは武器商人として経済誌に登場。アベンジャーズもシールドもチームや組織としては雛同然で、ニック・フューリーがシールド長官になるのも先の話。中国のマンダリンにソ連のクリムゾン・ダイナモと、赤狩りの時代におけるリアリティは東側の驚異。60年代ならではと、連載立ち上げ期ならではの試行錯誤のオンパレードですね。アイアンマンのシルエットもテクノロジーも、ガンスミスの色がまだ濃かったトニーのイメージや時代性もあってか、全体的に無骨なんだよな。

 この作品が刊行されたのは、上述のとおり2007年から2008年にかけて。映画アイアンマンが公開されたのは、2008年。映画という別の道が出来る直前に、改めてコミックスにおけるアイアンマンの初期設定をまとめたマイルストーン。映画アイアンマンがMCUの礎となり、アイアンマンのイメージがロバートダウニーJrに染まっている今。こういう作品があったんだよ、こういう時代があったんだよという存在はあるべきものでしょう。

 しかしまあ、アイアンマンのヴィランといえば、オバディア・ステインにマンダリン。そしてそれぞれの息子として、エゼキエル・ステインとテムジンがいるわけですが……なんでエゼキエルもテムジンの若手二人を、そろってハゲにしちまったのかなあ。アイアンマンの敵として出てくると、パット見でわっかんねえからね!?

 

一日一アメコミ~6~

バットマン:ノーマンズ・ランド 1

 致死性ウイルス、クレンチの蔓延。マグニチュード7.6の直下型地震。感染と自然災害により大きなダメージを負ったゴッサム・シティを、アメリカは見捨てた。そして、街の守護者であったはずのバットマンも姿を消した。もはやこのゴッサムであった場所はアメリカ合衆国の領土ではなく、ゴッサムにいる人間はアメリカ国民ではない。寄る辺無き土地、ノーマンズ・ランド。ゴッサムはギャングやマフィア、アーカム・アサイラムより開放されたヴィランたちにより支配された。この土地に残った警察の有志が対抗するものの、この土地に公権力も権威も存在しない。警察もまた、力による統治を求められることになる。隔離より三ヶ月、姿を消していたバットマンの帰還から物語は始まる。敵を倒すことでは終わらない、人を救うにもキリがない。延々と続く圧倒的な絶望に、バットマンはその身一つで立ち向かう。

 バットマン史における最大級の事件の一つ、ノーマンズ・ランド。全4巻の一冊目となるのがこの作品。ウイルスに地震と、複数の事件や災害を前段階とし、ほぼ一年を費やして連載。尻を拭く紙にもなりゃしない紙幣を尻目におこなわれる物々交換。力による支配が形作る擬似的な封建制度。ゴッサムが隔離されたらこうなるだろう、人々が文明を失ったらこうなる。とにかく考え抜いた痕跡があちこちにあり、力の入れようがひしひしと伝わってきます。他の終末物と大きく違うのは、封鎖されたゴッサムの外には文明が健在であること。封鎖を越えれば物資のやり取りも出来るし、この地獄からの脱出も出来る。また、何らかの目的を持ってわざわざ地獄に飛び込んでくるヤツもいる。この文明とのコンタクトが完全に切れてない状況が、物語に厚みを加えるわけです。

 さて、この本は一冊目。状況を簡単に言うなら、絶望と挫折。様々な短編や中編や長編により浮き出る、変わり果てたゴッサムの姿。ブルース・ウェインとして隔離政策に立ち向かったものの、力及ばず帰ってきたバットマン。バットマンへの不信を深め、人を率い正義を貫くことに苦慮するジム・ゴードン。いつものやり方で街を救おうとしたものの、絶望を味わうことになったスーパーマン。長年この街で活動してきたバットマンですら、街からの拒絶を感じるほどに変わり果ててしまったゴッサム。ジョーカーやトゥーフェイスやスケアクロウやペンギン、彼らですら、時には挫折と絶望を味わうほどに、今のゴッサムは恐ろしい。ある意味、ノーマンズランドにおける最大最強のヴィランは、ゴッサム・シティなのかもしれない。

 だが、バットマンは帰ってきた。そしてジム・ゴードンも諦めず、スーパーマンも一度の絶望で挫けるほどやわではない。挫折の先には模索も復活もある。ノーマンズランドにおける最も救わなければならない存在、それもまたゴッサム・シティなのだ。

  なお、ノーマンズ・ランドの2~4巻に関しても、後ほど取り上げていきます。流石に全4巻を一つの記事で纏めきるのは無理だし、もっと語らせてくれよ! 俺、このシリーズ、大好きなんだよ!

一日一アメコミ~5~

Deadpool Team-Up Vol 2 888

 団体名Unlimited Class Wrestling Federation。数多くのヒーローやヴィランが戦う超人プロレス団体、それがUCWFである。宇宙人、ミュータント、エターナルズと様々な種族がリングに上がる中、絶対王者としてその名を残したヒーローがいた。その名は、ザ・シング。ファンタスティック・フォーのメンバーであり、数多くのガチンコを経験した、ガチガチの岩石パワーファイターである。
 久々にコメンテーターとしてUCWFに登場したシングであったが、しばらくリングを離れている内に、UCWFは台本有りのエンターテイメントと化していた。だが、宇宙プロレスの強豪ザ・マックス・インテンシティが突如リングに乱入。レスラーたちを次々となぎ倒してしまう。勝ち誇るインテンシティを見て、ついに我慢の限界を迎えたシングは久方ぶりにリングに立つ。シングの一歩も引かぬ肉弾ファイト、必殺ダイビングクロスボディ(ダイビングボディアタック)によりふらふらとなるインテンシティ。だがなんと、インテンシティは二人に分裂。二対一の戦いに持ち込もうとする。ザ・マックス・インテンシティ改めザ・マックス・インテンシティ・ツインズVSザ・シング&そこらへんをうろついてたデッドプール。がんばれシング、負けるなシング! 宇宙規模のタッグマッチで鉄拳制裁タイムだ!

 というわけで、五回目にして当サイトにおける伝家の宝刀、デッドプールが解禁です。伝家の宝刀なので抜かずにおこうと思ったものの、そもそもウチの蔵書から適当に紹介するこの企画で、デッドプールをあまり取っておくとバランスを欠くというのにも気づいたわけで。なにせ、ウチの蔵書におけるデッドプールが占める割合はダントツ一位。触れないでいるとラインナップが自然に減り、かと言って頼りすぎると一日一デッドプールになってしまう。ここらへん、上手くバランスを取っていかないと。

 デッドプールとゲストヒーローが組んでの一話完結シリーズ、Deadpool Team-Up。号数が888号とえらいことになってますが、899号(第1話)からのカウントダウン方式でやってるので、実質12話目です。当時もめんどくさいと思ってたが、今になってもめんどくさいと言うかどうしてこうなった。なお900号として扱われているのはこの本です。

 軟弱なプロレスラーたちに嘆く古豪の王者! 宇宙プロレスの猛者によるリング制圧は間近! 立ち上がれ、シング! プロレスラーは本当は強いんです! どこの梶原一騎かゆでたまごかといった感じだけど、本当にこうなんだから仕方ないよね! マーベルにもプロレスをたしなむキン肉マン的超人は意外と多く、その中でも頭一つ抜けているのがシング。プロレスラーとして互角以上にやりあえるのは、ヘラクレスぐらいのもの。ハルクやジャガーノートはレスリングが出来ねえと言うか、ちょっと別ジャンルだし。

 上記あらすじだとデッドプール出番ねえの?って感じですが、ちゃんと本編だとシングのコネで無理やりUCWFに参戦し、人の顔に催涙ガスを吹きかけたり、レフェリーの注意を引きつけたりする悪役マネージャーとして大活躍しているので問題なし。あまりのデッドプールの悪役ファイトにキレるシング! あれは台本あるから!となだめるスタッフ! 「台本!?」と驚くシングとデッドプール! なんでオメエも驚いてんだよ!?

 シングやホーガンの方のハルクの真似をしてリング状でコスチュームを引きちぎったらブーイングと嗚咽、そんなデッドプールの明日はどっちだ。なにげにこの話、オチ自体は結構日本のプロレス漫画ではやりにくいとこに着地していると思うのよね。

一日一アメコミ~4~

ウォンテッド

 彼は生後すぐ、父に捨てられた。ここが彼にとって、人生の分岐点だったのだろう。将来性のない仕事、体を蝕む疾患、親友に寝取られている恋人、ウェズリー・ギブソンにとって人生はどん底であり、クソ同然だった。だが、ある日、ウェズリーに会いに来たフォックスと名乗る女により、彼の人生は一変する。ただなんとなく、大量虐殺をしてみせるフォックス。彼女にはそれが許されていた。何故ならこの世界は、フォックスのようなスーパーヴィランに支配された世界であり、ウェズリーの父はそんなスーパーヴィランの中でも一目置かれる最凶の殺し屋キラーだったのだ。先日、何者かに暗殺されたキラーは、ウェズリーに五千万ドル以上の遺産を全て譲ること、更にウェズリーを一人前の男、スーパーヴィランにするよう仲間たちに言い残していた。
 ウェズリーは正義の意志に目覚め、父親の遺産と受け継いだ能力にて、スーパーヴィランの支配を打ち破る――もし、この話がヒーローコミックなら、そうなっていただろう。だが既に、ヒーローたちの存在は戦いの記憶や痕跡ごと無かったことにされていた。この作品にヒーローなんて野暮な連中はいない。
 人生を一変させるため、支配階級たるスーパーヴィランへの道を歩むウェズリー。彼が一人前の悪党となった時、確かに人生は一変した。だが、世界もまた変わろうとしていた。狂い咲く悪の華。それは果たして、数多のヴィランなのか。それとも、二代目キラーとなったウェズリー・ギブソンなのか。

 かつて映画化されたためタイトルの知名度は高いものの、いざ原作を読むと随分違うぞとなる作品。それがウォンテッド。スーパーヒーロー成分を抜いて、そこのアンジェリーナ・ジョリーを注ぎ込んだ結果、ジャンルがスパイアクション映画になったからしょうがない。ただ、原作そのままの映像化は、制作された2008年でも、スーパーヒーロー映画に慣れた今の時代でも、おそらく難しいはず。多少別物にはなったものの、原作ネタを配置しつつのスタイリッシュなアクションで全年齢が観れる作品にして、企画をポシャらせず世に出したのは、プロの仕事と言っていいはず。主演を務めた、ジェームズ・マカヴォイの出世作と呼ばれるのは伊達じゃない。

 鬱屈とした人生を送っていた青年。だがなんと父親は、伝説の暗殺者だった! 父親から譲られた人脈に財産、そしてなんと青年には親にも負けぬ才能が眠っていたのだ! こう書くとチート物かな? という感じなのですが、そもそも親も悪党なので、修行シーンもまあヒドい。死体を撃ち屠殺場で働くことで死や命を奪うことに慣れるところから始まり、最終的には通行人を適当に殺してこいとか、なんというかGTAでとりあえず街でショットガンぶっぱなすプレイヤーのごとき修行シーン。悪党である以上、利己的であり、自己中心的であり、人の人生を奪うことこそ本望。ああ、実に教育に悪い。悪いと分かっていて、楽しめるかどうか。たぶん、もしウォンテッドがなろうやカクヨムに掲載されてバズったとしても、書籍化に手を上げる出版社は無いと思うんですよね。なにしろ、リスクも高いし、好き嫌いがハッキリ分かれる作風である以上、売上も読めない。そりゃ映像化の際、大幅な変更も入るわ。

 なお、この作品におけるスーパーヴィランは、皆何処かで見たことある設定を持っており、敗北し自分がもはや英雄であることを忘れたスーパーヒーローたちも、赤いマントにオールバック、世界最高の探偵と言われたダイナミック・ペアと、いろいろ察することができる感じで。赤いマントの超人がライバルだったプロフェッサー・ソロモンの配下のモデルはスーパーマン系ヴィラン、世界最高の探偵のライバルだったミスター・リクタスの配下のモデルはバットマン系ヴィランと、わかるとね、思わず正体を言っちゃいそうになるんですよ。分かる人には分かるってのが、ザ・ボーイズと同じウォンテッド流の気遣いなんでしょうけど。

 でも、変幻自在の泥の怪物クレイフェイスに似た、悪党のウ◯コの集合体シットヘッド。凶悪な人形に操られる腹話術師ベントリロクエストに似た、自分の悪いチ◯コに操られるジョニー・トゥーディック。若干馬鹿らしいというか、下ネタ系ヴィラン多くね? っていうのはまあね。ヒーローもヴィランも馬鹿らしいものである以上、そりゃ馬鹿らしいキャラクターがいてもいい。ウォンテッドのライター、マーク・ミラーなりの皮肉というか。これからマーク・ミラーの作品もいくつか紹介する気でいるけど……なかなかいい癖、持ってますぜ。