重大発表

▼『Dies irae ~Song to the Witch~』
■著者:藤井三打
■原作/監修:正田 崇(Greenwood)
■カバーイラスト:Gユウスケ(Greenwood)
■発行:KADOKAWA
■発売日:2017年6月26日
■定価:本体1200円+税

 というわけで、秋よりアニメの放映も始まる、学園伝奇バトルオペラADV『Dies irae』の公式ノベライズ第二弾を担当させていただきました。既にAmazonでの予約も始まっております。実のところ、予約開始のタイミング自体は結構早かったものの、その時はちと機を逸してしまったので、正式告知なこのタイミングで告知させていただきました。

 詳細は、また後日。Dies iraeは情熱たぎる作品でして、そのノベライズを担当させていただいたことは、本当に幸せで光栄な話。負けじと、自分なりの情熱を燃やしてキーボードを叩きました。その結果が、マリリン・モンローってアンタ……。

Fate/Gorilla Order 予告

※予告に際し、本文序盤をそのまま掲載しております。

 

 開こうとするまぶたが、やけに重い。
 まぶただけではない、感覚や手足、身体の全てが重い。
 なんとか身を捩るが、その動きにはのそりと言う緩慢さが良く似合った。
 ようやく開けた瞳に差し込む、太陽の鋭い光。柔らかな土の地面と、辺りの緑から漂う森の空気。どれも、ありえない。何故なら自分は、人工の灯りの元、清潔なシーツの上に寝ていたはずなのだから。
 だが、まあそういうこともあるだろう。この程度の異常には慣れている。
 慣れた様子で気を落ち着かせようと、顔を撫でる。その手は、黒かった。それだけではない、全身が黒い獣毛に覆われている。更には、腕周りも足回りも胸周りも、全ての筋肉が一回りどころか十重でも追いつかないくらいに、膨れ上がっている。
 そんなカルデア唯一の存在として、数々の特異点をめぐり、人理定礎を修復してきたマスター。そんな人類希望の星は、唐突にゴリラとなっていた――
 とりあえず、今のマスターに出来ること。それは、胸を叩き、ドラミングすることだけだった。

             ◇

 とある日の人理継続保障機関フィニス・カルデア。医療部門のトップであり、現在最高責任者でもあるロマニ・アーキマン。そんな彼の、唐突な第一声だった。
「大変だ! マシュ! また凄い英霊がカルデアにいるんだ!」
「そうですか」
 自室に駆け込んできたロマニを一瞥したマシュ・キリエライトは、再び視線を手元の本に戻す。
「フォウ」
 ふわっとした小動物、カルデアのマスコットキャラポジションのフォウくんなどはロマニを一切気にせず、マシュの膝の上で気持ちよさそうにしている。
「マシュラ面、冷血? いくらなんでも、こんなに焦っている僕に対して、そのリアクションは冷たすぎやしないかい!?」
「もういいですよ……サンタだの、ビキニアーマーだの。申し訳ありませんがドクター、このカルデアには色々な英霊が出てくるので、もう何を見ても驚きません」
 そう言って、本を読み続けるマシュ。冷血というより、慣れだった。人間、一年を通してサンタだのハロウィンだの水着だのに接し続けていれば、流石に慣れてくる。異常も定期的に続けば日常だ。
「だいたいドクターは、何度も変な英霊や変な世界をサーチして来ますけど、ひょっとして自分で用意しているんじゃないですか? 本当は黒幕なんですか? ドクター?」
「違うよ! いくら僕でも、カルデアを混沌に陥れるために一手間かけたりしないよ! いいから、来てくれ!」
 悪いのはロマニではなく、きのこの人である。
 いつも以上に必死に見えなくもないロマニに気圧され、マシュは本を閉じ、席を立つ。フォウくんは眠くなったのか、ベッドの上に移り丸くなっていた。
「それで、今度はどんな英霊なんですか? 先輩に何らかの危害をくわえそうならば……」
 人の魂と英霊が入り交じったデミサーヴァントであるマシュは、自身のマスターにして、英霊の座からカルデアに来たサーヴァント全員のマスターである“先輩”の身をまず案じていた。
「わからない。正直、全くわからないんだ。だから、まずはマシュ、君に判断して欲しい。話は、それからだ」
ロマニに先導されたマシュは、ある一室の前にたどり着く。ドアは未だ開いていなかった。
「なるほど。その英霊は、この部屋に居るんですか。もう私は、何が出てきても驚かない。そう言えるだけの、経験を得てきました」
「大半がモニタリングを通してのものとはいえ、それは僕も同じだよ。だからマシュ。君も絶対驚くはずだ」
 ロマニはパネルを捜査し、ドアを開ける。
 部屋にある机と椅子、その椅子に座っていたのは――
「どうだい?」
「資料でみたことはありますが、現物を見るのは始めてです」
 黒い獣毛に極厚の胸板と四肢、瞳に宿るは原子の炎。椅子に座っているのは、学名ゴリラ・ゴリラ。間違いなく森の賢者こと、ゴリラであった。
「……ドクター。世の中にはまだ、魔術で解明できないこともあるんですね」
「あ。認める方向に行くんだね?」
「確かにカルデアには人類史の英雄が集まってきます。それにしても、まさかあれほどのサーヴァントがいただなんて。クラス、ビーストですよね?」
 実際、サーヴァントにはルーラーやアベンジャーのようなエクストラクラスの枠に、ビーストのクラスがある。人類の災厄となる、黙示録の獣だ。
「ああ。紛れもないビーストだとは思うよ? 出自が人ではない英霊もいるよ? でもさ、違うよね! アレ! 単なる、ゴリラだよね!?」
 ロマニは、頑張って目の前の現実と戦っていた。すごく、頑張って
「いくら英霊の座が結構おおらかだとしても、動物をそのまま英霊の座に入れるとは思えません。となれば、ドクター。彼をまず人の魂から生まれた存在だと考えたほうが建設的ではないでしょうか? 毛深い人って、結構いますし」
「そうだね。バーサーカーにああいうタイプ、結構いたような気がするね。ああもう、それで納得しちゃいたいなあ!」
 現実さん、そろそろ陥落寸前である。
 戦わなきゃ、現実と。なんとか踏みとどまろうとするロマニの心を折るように、別のゴリラがのしのしと二人の背後を横切っていった。
「マシュ」
「なんでしょう、ドクター?」
「ひょっとしてさ、ゴリラってアレだけじゃなくて、複数匹いるんじゃないかな?」
「そうですね。認めざるを得ないようです」
 カルデアにゴリラが居るのではない。きっとたぶんおそらく、カルデアに、ゴリラの群れが居るのだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 特に警報や機器に異常は無かったよ!? ゴリラ出る予兆は無かったよ!? そりゃ、ゴリラレーダーなんて、流石のカルデアにも無いけど!」
 どうやら、自分の意見を否定してほしかったらしく、慌てるロマニ。でもいったいどんな事態を想定すれば、ゴリラレーダーなんてシロモノの開発に踏み切るのだろうか。きっとそれは、今現在のカルデアが直面している事態だろう。
「外から来たにしても、人理焼却中の今では、ゴリラが生存できているとは思えません」
「元々、ゴリラは数を減らしていたしね。カルタゴの航海者ハンノが、野人とされたゴリラに出会ってから現代まで。住処である森林の破壊や、狩猟、また人間から感染した病気で、ゴリラの個体数は減少傾向にあった。彼らにとって、人類との出会いは不幸だったのかもしれないね」
 ドクターと名乗り呼ばれる以上、どんなことにも詳しくてナンボである。ロマニはゴリラにも詳しかった。
「ゴリラ豆知識はともかくとして、いったいどうすればいいんでしょう」
「う~ん。そもそも、元と言うか、発生源を断たないとダメだね。一体ドコから入ってきているんだろう」
『おおっと、甘いよロマニ! 黄金率(体)持ち以外は食べたらプロポーションが大惨事と言われている、エミヤ特製砂糖てんこ盛りスイーツより甘い! 最も、私はスキル持ちだし、頭脳が常に糖分を欲しているので食べるけどね! なにせ、天才だから!』
 いきなり通信で割り込んでくる、女性の声とビジョン。黄金率(体)を持ち、自ら天才と名乗る才能と自負も持つ人物。数多の英霊集まるカルデアと言えども、そんな英霊は一人しかいない。
「ダ・ヴィンチちゃんですね?」
『イエス・アイ・アム! チッチッ!』
 マシュにその名を呼ばれ、景気良く応えるダ・ヴィンチちゃん。
 カルデア技術部トップにして、万能の天才たる英霊。美しき美女の体と、男性的な思考を持つ、ホントややこしいレオナルド・ダ・ヴィンチその人である。
『森の賢者がカルデアをうろついている。その状況に思考停止するのは分かる。だが待ってほしい。彼らは、人間よりも大きい。そんな生物が、誰にも気づかれぬまま複数匹、いつの間にかカルデアにいる。この状況、なんかおかしくないかい?』
「そうだね。ゴリラってことで、思わずゴリラレーダーなんて言ってしまったけど、よく考えればおかしいことだ。普通に大きな生き物、黒い怪物として、カルデアの防衛機構が一切反応しないとは思えないし、職員も見逃すはずがない」
『ゴリラレーダーが所望なら、工房にあるけどね。でもこんなにゴリラまみれな今、対象が多すぎて役に立たないだろうけど』
 ゴリラレーダー、既にあんのかい。そもそも、なんで作ろうと思ったのか。きっと聞いても「天才だからね」で済まされるから、ロマニは聞かなかった。
 マシュはそんなことに構わず、ダ・ヴィンチとロマニの発言を咀嚼していた。
「ゴリラの侵入を見逃したと言うわけではないとしたら……もしかして、カルデアに元々居た英霊や職員がゴリラに変わった……?」
 異次元めいた、とんでもない見解。
『流石マシュは賢い。そのとおりだ!』
 でもその見解を、天才が認めてしまった。
「ありえない! と言うか、あってはならないだろそれー!」
 ロマニは抵抗するが、微妙に筋が通っているのでタチが悪い。あってはならないことという意見には、誰もが同意間違い無しだが。
『いやいや。もうスキャン済みだからね。今現在、カルデアに居る英霊の大半がゴリラになっているから。職員はみな無事だけど、職場がいきなりゴリラ塗れって、全く無事じゃないよね』
「わーお! それドコ情報!? って、ダ・ヴィンチちゃん情報か! コードか!」
「でも、私は今のところ無事です」
 マシュは己の身体をしげしげと眺める。今のところ、黒い剛毛も生えていないし、パンプアップもしていない。
『マシュはデミサーヴァントで、私はまあ色々身体を弄っているから。でもこのままだと、カルデアの機能がストップしちゃうね。なにせ、みんなゴリラだ。人類を救っている場合じゃない。だってゴリラだしね! 早急にゴリラ化現象の原因が探らないと、そのうちみんなゴリラになってしまウッホ』
「なりかけているから! 身体を弄っている人も、なりかけているから!」
 冗談なのか本気なのかわからないものの、危なすぎるダ・ヴィンチの語尾だった。
『それにだ。もっと重要なことがある。二人共まだ、今日はマスター君の所に行っていないだろ?』
 そしてその発言は、更なる危険を煽るものだった。

 サーヴァント化したマシュは片手に持つ巨大な盾の存在を一切気にせず、部屋のベッドを容易く持ち上げていた。ベッドの下は、非常に清潔でホコリ一つ溜まっていない。定期的に、忍び込む英霊が居るせいだが。主に、清姫とか清姫とか静謐とか清姫とか。なお、何処かの源氏の大将は、上からガバッといく派である。
「そんな……」
 顔が青くなるマシュ。部屋の探索はマシュに任せ、ロマニは部屋の入口で現状を確認していた。
「この現象に気づいた時には、既に部屋から消えていたってことかな?」
『おおむね、その通りだ。幸い君たちより先に、異変の深刻さに気づけたからね。その時点で、この自室から、マスター君は消えていたんだ』
 現状、カルデア唯一にして、何度も人理崩壊の危機を救ってきたマスター。このカルデアにいる数多の英霊の主となる存在が、いつの間にか寝ていたはずの自室から消えていた。
「考えられるのは……」
『まずよくあるパターンとしては、既に異変を解決するため、独自に動いているパターンだね。本人の意志が無かったにせよ、巻き込まれて居なくなるパターンは、そうそう珍しくない』
 ダ・ヴィンチが通信を介し、見解を述べる。
 トナカイになったり、監獄塔に意識だけ飛んでいったり、高僧のお供として天竺を目指したり。今まで本来のカルデアの業務とは関係なく、マスター単独で何処かにレイシフトしてしまい、変な騒動に巻き込まれた例は多々ある。だいたい、数カ月に一度のイベントペース。パターンと称されても、仕方ない。
「そして、もう一つあるとしたら」
『ああ。マスター自身もゴリラになっているということだ』
 このマスターの自室に来るまで、何度もゴリラとすれ違った。ひょっとしたら、あの中に当人がいたのかもしれない。
「せ、先輩がゴリラに……!?」
 マシュは思わずショックでクラリと倒れそうになるものの、自身の盾を支えに踏みとどまった。デミサーヴァントとなった当初ならともかく、今のマシュには英霊ガラハッドより託された力と願いがある。先輩と共に人理を救ってきた経験が、倒れることを許してくれない。
 でもできれば、こういう強さの発露は、ゴリラと関係ないシリアスな局面でしたかった。
 現状を把握したロマニは、改めてカルデアの責任者として、今後の指針を述べる。
「方針を絞れない以上、二つのミッションを並行して進めていくしかないね。まず、不可思議なレイシフトがあったのかどうかを確認する。そしてもう一つは、現在カルデアの中にいるゴリラを調べる。まずはマスターの安全を確保しないと、カルデアは終わりだ。根本的な解決策を探すのは、それからだよ」
「ゴリラを調べると言われても、いったいどうすればいいんでしょうか……」
「少なくとも見分けはつくようにしないとね! さっきすれ違った、大きなゴリラとその肩に乗った小さなゴリラ。今のままじゃ、アレがアン&ボニーなのか、エウリュアレ&アステリオスなのかもわっかんないし! ひょっとしたら、ステンノ&メデューサかな!?」
『はっはっは、こんな状況でなかったら、ミンチになるどころか……うん。ミンチだね。細切れはドコまで言っても細切れで、ミンチもミンチだ』
「怖いこと言わないでくれよ!? 僕もヤケなんだから! いつもは人類史を救うグランド・オーダーだけど、今日この日だけは、ゴリラ・オーダーだ! さあ、ゴリラ・オーダー開始だ……!」
GRANDではなく、GORILLA。Gの頭文字が合っているからって、世の中やっていいことと、やってはいけないことがあるのでは。だが、実行しなければ、カルデアも終わり、人類も終わる。
マスター不在のまま、前代未聞のゴリラ・オーダーが発令されてしまった――

 

カルデアをうろつく、無数のゴリラたち!

「似た四匹ということは、似た四人。カルデアに同時に四人存在する英霊は、そんなにいない。該当する英霊は、クー・フーリンだ。おそらく、長い棒を取り合っていたのが、ベテランのクー・フーリンと若いクー・フーリン、つまりランサーのクー・フーリン二人。何やら呪文らしきものを唱えていたのは、キャスターのクー・フーリン。最後遅れてやって来た凶暴な個体は、きっとバーサーカーの」
「あの! ドクター!? 熱弁はいいのですが、こんなことをしている場合ではないんじゃないでしょうか!?」

 

 だが、ゴリラまみれの世界に、順応する者も居た!

「いいねぇ……足柄山ン時のことを思い出すぜ。ベアーがお馬の稽古なら、ゴリラは相撲の稽古だ!」
「トータのおにぎりも美味しいけど、たまにはバナナもいいわよね。甘露、甘露」
「やはり食事は質より量、在庫がありましたので、こうしてポテトを用意しました。やはりゴリラとなれども、王は王。生前、文句の一つも言わず食していたものの方が良いかと思いまして」

 

 ゴリラのコミュニティにて求められる、新たなボス!

「御仏の加護、見せてあげる!」
「主よ……しばし目をお瞑りください。ハレルヤ!」
「ラ・ミスティコさん! ルチャのお力、お借りシマス! ラ・ミスティカ~!」

「……女子プロレス!?」

 

 やがて事態は、カルデアの外まで及ぶ。始まる、大冒険!

『やあやあ、今回のサポート役はこのダ・ヴィンチちゃんが勤めよう。まず目的は……』
「先ほど、目的を果たして黒幕を確保しました」
『早いね今回!? バトル抜きのクエストオンリーなのかい!?』

 

 全ては、森の賢者の名の下に――

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Fate/Gorilla Order 価格300円
コミックマーケット91
31日(三日目・土曜日)東ホール へ-45b サークル“肉雑炊”にて頒布。

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アメコミカタツキ RUN! RUN! RUN!! 予告

 これは、Marvelの核弾頭ヒーローことデッドプールと、数多の英霊が集うFate/Grand Orderがクロスする物語――

 

 ある“仕事”により、ケルト戦士と機甲兵士が戦うアメリカ独立戦争に現れたデッドプール。重症を負い、傷病兵として救護テントに運ばれたことから、全ては始まった。

 

「患者ナンバー58、重症。手足の損傷が激しく、切断が望ましい。ですが、カルテよりも状態はよく思えますね。どちらにしろ切断ですが。スタッフにカルテと診療の正確さを、もう一度しっかり言い聞かせないと」
「ここも……駄目でしょうね。頭部欠損、まともな意識が残っているかどうかも怪しいところです。生きることは出来ますが、それだけですね。更にこの一見焼け爛れたように見える肌、これは化膿とは少し違う……何らかの病気、伝染病の可能性があります。急ぎ隔離すべきでしょう」
「ですが、私は貴方を生かすために尽力します。それが、私の使命なのですから」
「問題がある部分を、全て除去します。手足に肌の大半に……麻酔が足りないため、苦痛を伴う治療となりますが、私は貴方の生き抜こうとする意思を信じます。誰か、彼の口に噛ませるための布を!」
「では、切断のお時間です」

「もう、独立戦争はこりごりだよ~~!」
「私はあの患者を追います。この看護の手から、逃す気はありません」

 

 英霊ナイチンゲールに患者と認定されたデッドプール。追う看護婦と、逃げる患者。二人の追いかけっこは、幾つもの世界線を越え、繰り広げられる。

 

「ブルース・バナーぁぁぁぁ!」
 何やらズタボロで血まみれなデッドプール。彼の手には、ホイップクリームがてんこ盛りになったパイがあった。
「元祖マーベルのバーサーカー! ここは頼んだぁぁぁ!」
 すれ違いざま、デッドプールはバナーの顔面に直接パイを叩きつけた。パイ投げなんて生易しいと思うほどの勢い。衝撃でバナーの眼鏡が、歪んだまま宙を舞っていた。

「おや?」
――声が、した。鉄の鐘が鳴くような。
「その身体、治療の必要があるようですね」
――運命が、其処には立っていた。
「その格好、アサシンの一人ですか」
――強き淑女の姿をして。
「なるほど」
――すなわち、狂戦士が如き看護婦。看護婦が如き狂戦士。
「あなた」
――月夜でも一切顔色を変えぬ、それは、たった一人の軍隊(少陸軍省)のようにも見えて。
「身体中が毒、その身体は毒の化生ということですか。それならば」
ナイチンゲールの背後に巨大な白衣の天使が浮き上がる。ナイチンゲール一人だけではなく『傷病者を治す白衣の天使』という看護師の概念全てが結びついた結果生まれた、ナイチンゲールの宝具。その名は――
「我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)。我々の治療への意志と、貴女の毒性。どちらが強いのか試す、なんてことは言いません。必ず治して、除去してみせますとも」

 

 放っておけば、人類史を歪めかねないデッドプールを落ち着かせるため、デッドプールに“仕事”を依頼した英霊と、カルデアもついに動き出す。

 

「かの聖女や聖少女の露出の激しい服を見た瞬間、かの電気を発見した瞬間の如き衝撃が、脳髄を貫いた。人類は発展とともに、あけすけな心を失ってしまった。本来の進化の道を辿っていたのならば、人は皆衣服を脱ぎ捨て、全裸になっていたのでは――」
「そんな。僕たちは一体何処で道を誤ったと言うんだ!」

「まずは、アメリカ建国の父の一人として、合衆国を救ってくれた君たちに礼を述べたい。私の名はベンジャミン・フランクリン。アメリカ独立宣言に携わった男にして、電気の発見者さ」
 これだけふわふわと不確かな存在なのに、そんなフランクリンのウィンクは、やけに活力のあるものだった。
「ベンジャミン・フランクリンって、百ドル札の人だよね?」
「はい。政治家、外交官、実業家、物理学者、作家、思想家、気象学者、発明家。どの分野でも卓越した功績を残す、世界でも指折りの、多彩な才能を持つ偉人です」

「なお、私はマーベルユニバース準拠のフランクリンであって、FGOのフランクリンではない。もし後に別のフランクリンが出てきたとしても、別人と思ってくれよ?」
「何処に話しているんです?」
「なに。我が友にならって、壁の向こう側にね」

 

 容易く収束されると思われていた事態。その裏で蠢く、強烈なる悪意。謎のままの悪意は、同じくらいの悪意への接触を図る。

 

「この肉はデッドプールと呼ばれる男の一部だ。世界と次元を逃げ惑うヤツが腕や足を落とすたびに、私が回収してきた」
「デッドプール? 死の賭けか。ふざけた名前だな。だが、同じ腕が二本あることからみて、その男、高度な再生能力を持っているようだな。羨ましい」
「今は笑っていても、将来的には忘れられない名前になる。この男により、お前は今ある全てを奪われるのだからな」
 財産も目的も、そして生命も。来訪者が語ることは、必然であった。
「笑えない冗談だ」
「この施設で、実験動物として扱われている、ウェイド・ウィルソン。その男はやがて、この施設を破壊し脱走し、デッドプールとなりお前を破滅に追い込む」
 この世界は、ガンに侵された傭兵ウェイド・ウィルソンが、デッドプールになる前の時間軸――
 このホスピスにて、史上最強のおもしろ愉快なスーパーヒーロー、デッドプールは生まれた。
「……なるほど。この施設で一番反抗的で、一番おもしろい男の名前を出されると、本当に聞こえるな」
 ホスピスの運営者、その名をエイジャックス。人間を人為的にミュータントに変貌させ、超人兵士として売り払う組織の元締めであり、個人的な愉しみでウェイド・ウィルソンをデッドプールへと変貌させ、やがてデッドプールに殺される男であった。

 

 加速する悪意。その悪意が起こす事象に気がついたのは、人造人間フランケンシュタイン。フランもまた、独自に動き、デッドプールとの接触を図る。

 

「ア……」
「サプラーイズッ!?」
 ぽつんと所在なさ気に立っているフランに気づき、デッドプールは跳びはねる。その様まさしく、アメリカのカートゥーンアニメの如く。
「あー、いよいよ心臓が口からぶっ飛ぶかと思った。えーなにーこんな所に花嫁さんが居るよ。なになに、相手の男がロクでもなかったの? ラスベガスの教会で勢い任せで結婚しようとした寸前、正気に戻ったの?」
「アゥ……ゥ……」
「まあ、シャイね。オープンな俺ちゃんと1+1で割るとちょうどいいから、いっそ結婚しちゃう?」
 デッドプールはベルトのポケットから一輪のカンナを取り出す。ちなみにカンナの花言葉は、妄想だ。
「ゥゥ!」
 フランは慌ててかぶりを振った。

 

 やがて追いかけっこは終わる。そしてその終わりは、更なる混迷の合図だった。

 

「剣もある! 銃もある! 股間の槍はロンドミニアド! 暗殺技術もある! 俺ちゃん愛用のスクーターはキャラクターグッズでも発売中! なんてマルチプルな英雄よ! きっとFGOに本格登場したら、チート級間違いなしっしょ!」

「どうしたんだ、その格好。スーパーヒーローに転職したのか?」
「そうだな、スーパーヒーローじゃあないかもしれないが、人気者にはなったよ。そういやさ、スーパーヒーローのクリーニング割引。あれさあ、ヒーローチームに入ると、チームの方でコスチュームを洗ってくれるから、更にお安いんだぜ」
「なんだ、団体割引があるのか」

「デッドプール。私は身も心も歪みきった貴方を治療するために、ここまで追ってきました。しかし、先に根絶すべき病原菌を発見しました。一分一秒でも生かしておけば、それだけ被害の広まる病原菌です」
「トリアージだな。ヤツを殺るのは俺だ! なーんてこだわりはねえよ。一回、大スクリーンで大勢の観客の前で殺ってるしな。俺ちゃん現実主義よ?」

「なあ、今日、ブラックバードが発進する用事、あったのか?」
 台所でシリアルを食べているコロッサスに誰かが尋ねる。X―MENの一員であり、鋼鉄の肌とクローム製のチ◯コを持つコロッサスが、今日の留守番役だった。
「ああ。なんでもウルヴァリンが使うらしい。X―MENの一員でありながら、単独行動を好む。まあ、いつものことだ」
「ほー、この学園に、俺以外のウルヴァリンがいたのか」
「ブフォ! なんだと!?」

「気づいていないことは、不幸なのでしょうね。私は貴方を病原菌だと思っていましたが、過剰評価でした。貴方は、愚かな患者です」
 エイジャックスの身体が跳ね、一息にナイチンゲールの元へたどり着く。既に斧は、振りかぶられていた。
 手斧が、空気を切り裂く。僅かに飛び退くナイチンゲールと、更に踏み込もうとするエイジャックス。
「本格治療を開始します」
「お前、ウェイドに負けず劣らずだな」

「醜い怪物は、そこにいる!」
「何処に!」
「お前の隣りにいる!」
「おいおい、冗談だろ。フランケンシュタインの怪物って言ったらさあ、俺ちゃんみたいなハンサムフェイスなメンズよ? この娘、目隠れタイプだけど、可愛いじゃん。角、生えてるけど」
「お前は、お前は根本的なことがわかっていない!」
「何が。そりゃあそんなに長く付き合ってはいないけど、いい娘だよー。ブラックボルトよりは聴きやすく喋るし、ジャガーノートよりは荒っぽくない。だいいち、花嫁っぽいじゃん。怪物は、花嫁を探してここまで来るもんだろ? 花嫁が追ってきたら、ハッピーすぎる。せめて、ホラ吹く前に小説読んどけよ」

「おい、気をつけろよ。今から出てくるヤツは、最低最悪のデッドプールだ!」
 フランに注意を促すデッドプール。
 自身の残骸を使って作るデッドプール。それには、前例があった。とある科学者が拾い集めていたデッドプールの残骸を、デッドプール本人がゴミとして処分したものの、ゴミ収集車でミックスされ合体した結果生まれた、悪魔の如きデッドプール。
「その名を、エビル・デッドプール! ってちっげーえし!」
 吹雪が晴れた瞬間現れたのは、デッドプールの予想とは違う、別の方向性でちょっと触れにくいデッドプールのような、そうでないような存在だった。

 

 遠い北の地での決戦。デッドプール史上最悪の敵が、フランの前に立ちふさがる宿命が、ナイチンゲールとは決して相容れない男が、三人のバーサーカーと対峙する。その決着、そして反則的な英雄の登場とは。

 

 アメコミカタツキ RUN! RUN! RUN!!
 コミックマーケット90 東ホール“オ”42―b「肉雑炊」にて予定価格500円にて頒布。

アメコミカタツキ RUN! RUN! RUN!!

 

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冬コミ(コミックマーケット89) 告知

今年年末開催のコミックマーケット89。木曜日(三日目) 西地区 ”む” 41b 肉雑炊にてサークル参加します。
 新刊はプリズマ☆イリヤ本にFate/Grand Order要素をちょっと足した「プリズマ☆イリヤ~英霊増殖中!!~」。既刊も含めたお品書きは、以下の通りとなっております。

プリズマ☆イリヤ~英霊増殖中!~コミケ89 お品書き

 今回の英霊増殖中は、従来のアメコミカタツキシリーズとは違う路線の本となっております。あくまでTYPE-MOON本ですので、他ジャンルとのクロス要素もアメコミ要素も皆無です。最も、某赤タイツな人は、ちらりと……とにかく、基本的にプリズマ☆イリヤ本です。
 ある事件を境目に、冬木市にて増殖するシャドウサーヴァント。サーヴァント退治に奔走するイリヤ達の前に現れたのは、自分たちとは別の理にて生まれた“魔法少女”。腐ってたりストーキングしたりローマ!な、見知った人間としか思えない魔法少女に翻弄されるイリヤと美遊が手にする、新たなる力とは――
 あらすじも、プリズマ☆イリヤそのもの。久々の純粋TYPE-MOON本で緊張しておりますが、もしよろしければ当日お手にとって貰えれば。
 あと特記事項としましては、まず今回、現状動きのないハルヒ本や東方本を持ちこまない予定です。こちらもし、当日コミケに行かれる方でご希望ありましたら、WEB拍手でもメールでもご一報いただければ若干数持っていきます。
 そして、今回も。というか、現状リアルタイムにておまけペーパーを作成しております。こちらはミニSSが詰まった、おもちゃ箱仕様。蝙蝠男や戦車や赤タイツにアメコミカタツキに妄想科学と、ジャンルも雑多です。状況によっては、幾つか削るかもしれませんが、なんとか完成にこぎつけられたらなと。状況はまた、このサイトにてアナウンスしますので。
 とりあえず、情報としては以上になります。ギリギリ前日ないつもの告知と比べて、少し早めの告知となりましたが、是非ともコミケに行かれる方は、記憶の隅にとどめておいて貰えれば幸いです。それでは、また!
 ……すげえ今年の更新終わりオーラ出てますが、まだ年末ギリギリまで更新しますので。サイトの方も、よろしくお願いします。

重大発表!

 今日まず触りとしての事実を発表、そして明日に核心を公開!と考えていたら、情報が出てきたのでもう一挙公開でいいやと!
 えーと、私、ふじいこと、藤井三打。来月商業デビューを果たします。手伝いではなく、丸々自分が一冊書き下ろす形です。自分の路線的にアメコミ系の本かと思うでしょうが、ライトノベルです。つまり今までの「よくわからない経歴の人」路線に、ライトノベル作家というしっかとした経歴が刻み込まれる瞬間……書き終えて発売を待つ今でも、正直まだ信じられない!というふわふわとした喜びに包まれております。
 書籍名は「妄想科学ADV CHAOS;CHILD とある情弱の記録」 発売日は12月10日です。

とある情弱の記録 表紙

 こちら、5pb.Gamesとニトロプラスのコラボ企画である科学アドベンチャーシリーズ。CHAOS;HEAD(カオヘ)、STEINS;GATE(シュタゲ)、ROBOTICS;NOTES(ロボノ)に続く四作目の“妄想科学アドベンチャー”CHAOS;CHILD(カオチャ)のノベライズとなっています。表紙にいる彼女は、主人公宮代拓留の義姉であり、カオチャヒロインの一人である“来栖乃々”ですね。
 2009年の渋谷で起きた連続猟奇殺人事件“ニュージェネレーションの狂気”、そして渋谷を壊滅に追い込んだ“渋谷地震”。それより6年後、2015年の渋谷を舞台としたカオチャ。ゲームの主人公、自称情強でありリア充の宮代拓留は、新聞部の仲間たちと共に、“ニュージェネレーションの狂気の再来”と呼ばれる再度の連続猟奇殺人事件を追う。しかし興味本位で追っていた筈の事件は、やがて逆に拓留達を追うようになっていく――
 妄想を具現化させるギガロマニアックスの物語。ニュージェネレーションの狂気と渋谷地震に至る過程は、シリーズ第一作であるカオヘで書かれており、カオチャはそれより後、シュタゲやロボノ以上にカオヘの続きとしての色合いを持っています。ただ、カオチャは決してカオスヘッド2ではなく、単独で十分理解でき、楽しめる作品です。知らなくてもおっけい、知っていると時折ニヤリと出来る……と言った感じです。
 物語は刺激的かつ心を揺さぶってくる内容。ありえない! なんで!? そんな! 様々な感情を沸騰させつつ、ポジティブとネガティブの境界を楽しみ、最後は途方も無い気持ちに支配される。そんな作品です。圧倒的な声優さんによる演技力や、優れた演出や快適なシステムが、それを加速させてくれます。
 なお心を揺さぶる具体例としては、素知らぬ顔で「このゲーム、面白いからやってみるといいよー」とウチの管理者に勧めた結果……寝る直前にゲームをプレイしてある山場に達した管理者、そのショックですぐ寝るはずだったのに布団の中で30分以上目をギラギラさせていたとか。後日、きっとそこでショック受けると思っていたよ!と笑顔で親指立てたら睨まれました。
 ゲームは主人公である宮代拓留目線の物語でしたが、ノベライズでは拓留ではなく別の人物の視点による物語になっております。ゲーム本編を追いつつ、本編では言及されなかったキャラのエピソードも複数あり。ゲームで一言も喋らなかった彼や、謎のままな彼女や……ゲーム未プレイの方も楽しめ、科学アドベンチャーシリーズをずっと追っている方やゲームプレイ済みの方でも「おっ」となる新事実やエピソードも。誰もが楽しめるノベライズを目指しました。ゲームとノベライズ、両方を読めば、互いに補完できるものがあると思います。コミカライズもありますし、カオチャの世界は、まだまだ深く続いていきます。詳細は、また後程語らせていただければ。
 彼女がたどり着く結末、最後に見る空は果たして――