ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その30~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ第30話。
 ブラック・ウィドウ回だと思ったら、全力全開のデッドプール回だった。そんなファイト属性編。贔屓目かもしれませんが、デッドプール回、前回も含めて作画凄いよね!

 ネジが全部外れているように見えて、実は一本だけしっかりと締まっている。デッドプールを紹介する時に時折使う表現ですが、今回はこの締まっている部分がしっかりと描写されたデッドプールフェスティバルでした。いやねえ、ただのイカレポンチだったら、そもそも人気あるわけねえですからね。人気キャラの座につくイカレポンチは、大抵悪ふざけや狂気の裏に、何か確固たる物を持ってます。前回はネジフルパージ、今回はネジが締まった姿。この二話で、デッドプールの魅力は存分に演出でき、今後は「デッドプールを知りたい? 邦訳かディスクウォーズのデッドプール回観ようぜ!」も十分に通じる状況。良いデッドプールを、堪能させていただきました!
ありがとう! ディスクウォーズ! ありがとう、日本のみんな! ディスクウォーズ~完~
 デッドプールだけでなく、例えば電話先のタスクマスターやサーペントソサエティのダイヤモンドバックのような、所謂傭兵たち。忠誠や正義よりも金をメインにする彼らは、報酬さえ貰えば誰にでも味方するドブネズミ野郎たち。でもドブネズミだからこそ、本性はドライでシニカル。金さえ払えばこいつらはどうにかなると思っている人間と付き合ってきた以上、見捨てられたことも多々有り、見捨てざるを得なかった状況も多々有り。
「こんなもん、ただの慣れさ」
 この言葉が、全てかと。答えを出し続けなければ行きていけないドブネズミ、その中でも最も汚く思われているドブネズミが出した結論であります。自分の命にすら適用される、乾いた結論です。
やあ僕、ミッキー! ハハッ!
 結論を出せる人間がいるからこそ、悩みは若くなり苦しくなり、それに磨かれることで決断の価値は更に上がると。
 今回の主役はクリスであり、求められたのは決断。キャップを慕うSHIELD隊員のひたむきな善、本当にどうしょうもない人間だと思っていたデッドプールの達観、過去の忌まわしさの象徴的存在バロン・ジモ。そして全てを受け止めて、見守るキャプテン・アメリカ。まだおそらく完全な答えではなく、結論とはならないでしょうが、少なくともクリスが今回出した答えは、バロン・ジモの猛攻と策略を掻い潜り大団円を作れるだけの価値はあったかなと。これでガイアライン計画回も、残るは二人。エドやヒカルを待ち受けている物は、果たして……。

 今日の紹介は、黒後家蜘蛛ブラック・ウィドウで! ウィドウさん出番少なかったけど、一番出番多かったデッドプールは、以前やりましたしねえ。ここは映画アベンジャーズでも大活躍なナターシャさんで。
馬鹿な! 俺ちゃんは最後まで生き残って……ぐわー!

 
ブラック・ウィドウ

ブラック・ウィドウ

第二次世界大戦中、最大の激戦の一つに数えられる、ドイツ対ソビエト連邦のスターリングラード攻防戦。燃え盛る街の一角にて、ソ連の兵士イワン・ペトロビッチは、崩れ落ちるビルに飲み込まれた女性より、一人の赤ん坊を投げ渡された。イワンは、名前も知らぬ赤ん坊、女の子にナターシャと名づけた。ブラックウィドウ、ナターシャ・ロマノワはこうして生まれた。
ナターシャは健やかに成長、体育も含めた全ての教科にて優秀な成績を残し、更には美しさを磨きあげた彼女は、バレリーナとなった。彼女の才能は内外に知られ、ナチスドイツ残党であり秘密結社ヒドラの重鎮バロン・フォン・ストライカーに誘拐され、スパイに仕立てあげられそうになったこともある。この時は、イワンそしてウルヴァリンとキャプテン・アメリカの手により救助された。
やがて、テストパイロットであるアレクセイ・ショスタコフと結婚。だが、アレクセイは事故死。独り身となり、悲しみにくれたナターシャにKGBが言葉巧みに接触。優れた素養を持つナターシャを、対米スパイに仕立て上げることに成功する。ナターシャに与えられたコードネームは、黒後家蜘蛛ことブラック・ウィドウであった。
ウィドウはアメリカに渡り、自身の美貌を持ってして、世界バランスに影響を及ぼすであろうヒーロー、アイアンマンを擁すると言われていた※スターク・インダストリーズの社長トニー・スタークに急接近する。

※この頃、トニー・スタークは「私がアイアンマンだ」をしておらず、トニーとアイアンマンは別人扱いだった。

KGBと連携して、アイアンマンを丸裸にしようとしたウィドウだったが、当時ヒーローであるかヴィランであるか、未だ迷いの中に居たホークアイとの出会いが、彼女を揺らがす。ホークアイの説得により心動かし始めた彼女を襲う、更なる真実。赤いキャプテン・アメリカ。ソ連が有するスーパーエージェントであるレッド・ガーディアン、彼の正体は、死んだ筈の夫、アレクセイだったのだ。

レッド・ガーディアン

元々、アレクセイの死は彼をレッド・ガーディアンにするためのKGBの偽装であり、つまりウィドウの悲しみも無念も、国家の手の平の上でしかなかった。ウィドウはソ連と決別し、アメリカへ亡命。アベンジャーズに加入し、ヒーローの一員となる。なお、アレクセイはそのままソ連に忠を尽くし、共産主義への反逆者となったウィドウとも敵対。ソ連崩壊後もその幻影を追い求め、数年前には北方四島でのネオソビエト連邦建国を企んだ。

アベンジャーズの一員として、別のヒーローチームであるチャンピオンズの一員として、デアデビルの恋人として。

ブラック・ウィドウ&デアデビル

国家の一員ではなく、一人の人間として生きるウィドウの前に、もう一人のブラック・ウィドウ、後の好敵手となるイリーナ・ベロパが現れる。

ブラック・ウィドウ(ベロニカ)

彼女だけではない、ソ連による女性エージェント育成計画「ブラック・ウィドウ・オプス」計画。素養在る少女を集め、黒後家蜘蛛の名を冠するに相応しいスパイに育て上げる。育ての親であるイワンは、この計画のエージェントであり、バレリーナや優秀な学生という経歴も、ニセの記憶として用意された物だったのだ。学校で学んでいたと思い込んでいた時期、彼女は「赤の部屋」と呼ばれる場所におり、ソ連の伝説的暗殺者ウィンター・ソルジャーより技術を学んでいた。この結果、ブラック・ウィドウのオリジンは虚実入り混じるものとなってしまった。彼女の過去を完全に解き明かすのは、峰不二子の出生レベルで難しい。映画アベンジャーズシリーズにおける彼女の来歴の不確かさは、ある意味忠実な原作再現である。

映画 ブラック・ウィドウ

オリンピック選手並みの運動能力、手首に装備された移動用攻撃用のケーブル発射装置ウィドウズ・ラインや電撃発射装置ウィドウズ・ボルト、戦略や戦術に関してはキャプテン・アメリカに匹敵すると言われ、どんな国の言葉も使え男を魅惑する才女。生身のヒーロー、ファイトタイプの典型例+スパイとしての技能が、彼女の能力である。それ以外には何もない……と見せかけて、ウィドウにはもう一つ、人とは違う物がある。前述の経歴を見れば分かる通り、彼女の出生や経験は、どうみてもそれなりの歳の人間のものである。偽の記憶ではあったが戦時中生まれとして設定されていたし、そもそもソ連崩壊を子供の頃目の当たりにした世代ですら、そろそろ30代が見えてきている。
ウィドウは、改良型超人血清の摂取者である。ニック・フューリーも使っている、摂取者の加齢速度を遅くする超人血清の効力により、彼女は瑞々しい若さと全盛時の能力をを保ち続けている。アイアンマンとなる切っ掛けの戦争が時代とともに変わっているトニー・スタークと違い、彼女の原典であるソ連の代わりは無かった。
ただし、血清の代償として、ウィドウは妊娠することが出来ず、子供が作れない。祖国を裏切り、悲哀を背負い。そんな彼女を信頼する多くのヒーロー、そしてニック・フューリーとSHIELDの信用。様々な物を捨てざるを得なかったウィドウではあるが、確かに残っている物もある。だからこそ、確かな物を他人より預けられるのだ。

ブラック・ウィドウ&ウィンター・ソルジャー

 まあ、時折変なのも寄ってきますが、それはそれとしてですね。

デッドプール&ブラックウィドウ