ディスクウォーズ・アベンジャーズ:ドゥームズデイ#2紹介

 アルドリッチ・キリアンが開発した、人の脳の未使用領域に干渉することで人体を超人化させる、テクノウイルス“エクストリミス“。だが、スポンサーの一人であったトニー・スタークが危険性と欠陥を指摘した結果、開発者アルドリッチ・キリアンは全てを失ってしまう。失意の彼を拾い上げたのは、トニー・スタークと同等の天才ながらも、危険性と欠陥を長所と呼ぶ男であった。
 数年後、キリアンはトニー・スタークの前に帰って来る。アベンジャーズの仲間と共にアイアンマンとしてディスクに封印された彼の前に。テクノアイル東京を破壊し、アベンジャーズとパートナーであるアキラ達をおびき寄せる、エクストリミスで強化されたヴィラン達。アベンジャーズは苦戦の後ヴィランを撃破、エクストリミスを摂取し自ら超人となったキリアンも追い詰めるが、これは全て陽動だった。
日本に現れし、科学と魔法を極めた王、ドクター・ドゥーム。彼の魔法により、アベンジャーズを始めとしたヒーローのディスクはほぼ全て奪われてしまう。ドゥームはアキラ達の勇敢さと優秀さを認めつつ、自らがラトヴェリアに帰還することと、これよりアベンジャーズのディスクを使っての研究を始めること、ヒーローという力を失ったまま来ても、何の意味も無い事。ドゥームは言うだけ言うと、キリアンを連れてラトヴェリアに帰還してしまった。
 ヒーローのディスクを失ったアキラ達の前に立ち塞がる、無力という名の現実。一方、トニーの秘書であるペッパー・ポッツは、立ち向かうための力を知っていた。サンダーボルツ計画という、禁断の力を――。

 

 ドゥームの国であるラトヴェリアを訪れたアキラ達。言葉通り、ドゥームが持つ強大な力が牙を剥く。ドゥームの力に対抗すべく、禁忌の力が開放される。

「ドクター・ドゥームが四人も!?」
「いや。貴様らは運が良い。今日は特別でね、もっと居るのだよ!」
「ドゥームが一人二人三人四人……いっぱい!?」
「ドゥームボットだ! ドゥームが自分に似せて造った、戦力兼影武者のロボットだよ!」

「フン。マスター・オブ・イービルの名も地に落ちたものよ」
「おっと訂正してもらおうか。今の我ら、その名をサンダーボルツと言う。行くぞ、サンダーボルツ、アッセンブル!」

「そういえば、そこな少年。お前は重力を研究する気は無いのか?」
「ええっ!?」

「キャプテン・アメリカは、相棒に周囲警戒も教えておらぬのか? だとしたら、一兵士としてはともかく、指揮官としては疑問符が付くな」
「ぬけぬけと……!」
「ああそうだ。ヴィランとはぬけぬけとした物なのだよ」

 ぶつかり合う、力と力。だがしかし、雷鳴すら越えかねない、ドゥームの持つ最悪の力が、花開く。

「やあペッパー。君がスタークジェットから出てくるのを待ちきれなくて、友達と一緒に来てしまったよ。名づけて、エクストリミスソルジャー。新時代の超人兵士さ!」

「アレは、ビルドアッププレート!?」
「これぞ、エクストリミスを代用に使い造り上げた我が力! い出よ、友を信じられぬ男が設計した呪いのアーマ、ハルクバスターよ! ドゥームスマッシュ!」
「殲滅の時間だぁぁぁぁぁ!」

 追い詰められるアキラ達とペッパー。しかし、希望は、未だ残っていた。呪いと希望が、ラトヴェリアにてしのぎを削る。

「馬鹿な、お前がなぜここに!?」
「今の私は単なる一兵士だ。SHIELDの切り札としてのな」

「パーティーの時間ね! ……これでいいのかしら?」
「いやー、そこは真似しなくてもいいんじゃない?」

 希望が轍となり、蘇るアベンジャーズ。絶望を集め、滾るドゥーム。記録に残らぬシークレット・ウォーの勝者は果たして誰なのか。

「なるほど。確かに俺は間違えたが、完全無欠の間違いを犯したわけじゃないんだな」

ディスクウォーズ・アベンジャーズ:ドゥームズデイ#2~秘密の戦争~

5月2日 COMIC1 と-24b 肉雑炊 ¥300にて頒布。

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「我ら、邪悪なる六人シニスター・シックス! 我が犯罪者人生の中で、最高の犯罪だ!」
「そうだね、一人じゃ無理だって悟るのは、人間の成長に必要なことだ。賢くなったね、ドク・オック」

今なら数量限定で、ディスクウォーズ:アベンジャーズ ドゥームズデイ スパイダーマン編ペーパー付!

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~最終回(前)~

 ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ、見事完結!
 最終回より少し日が開いてしまいましたが、改めてもう一度、第一話というか放映前から最終話まで振り返ってみようかと! 最終回記念というのもありますが、次があること、続きへの期待も込めて!

キャラデザインの変更
声優の変更
よく分からないアイテムの追加
オリキャラ投入
主要スタッフに良く分からない謎の人

 改めてこう書いてみると、物凄い前提条件から始まってますよね、DW。原作付きアニメにおいて、三つ揃えば大三元、五つ揃ってゴレンジャーな危うい臭いがプンプンと。事前に不安視していた人の気持ちも、分からないでもなく。最も、自分の場合はここを気にせず、「おいおい、日本産のアメコミアニメが地上波なんて面白すぎるじゃねえか!」とドキワクしておりましたが。
 そして一話というワケですが……上記に上げたもの、全て杞憂でした。キャラのデザインは、従来の路線から逸脱すること無く世界観に適合した物に。声優の変更も実力派の方々が集まった結果、違和感なしかつ別の魅力ある物に。オリキャラであるアキラ達は、ヒーローとパートナーの物語を書く上で欠かせない物に。謎の覆面脚本家ことキング・リュウさんの実力は、謎がどうでも良くなるぐらいの高さ。更に他のスタッフの皆様も、実直に才能を発揮。
 感想コラムを毎週書いていける作品だ!との決断は、第一話より。かなり早い段階での決断でした。義務感より何より、まず自分の感性に合う、面白えなあコレ!という気持ちがないと、継続して感想を書くのは難しい物でして。根性や義務感でフォロー出来ないこともないけど、こういうのは楽しんでナンボですよ。

 ラフト刑務所脱獄事件からディスク封印、パートナーとヒーローによるアベンジャーズ再集結までが1~9話。序盤にやらなければいけない事、各キャラクターの紹介や世界観の確立回です。最終回への伏線となるシルバー・サムライやジェットローラーブレードの登場、エド&ハルクやジェシカ&ワスプと各キャラクターの掘り下げを行ったのが10話から15話も、この流れに加えてもいいかも。
 この時期、多かったのは、展開の遅さへの懐疑や批判ですかね。まあ、今更それぐらい分かっているよ!という感覚は分からんでもないのですが……それはおそらく、マニアの感覚かなと。分かっているから、分かっていることへの描写や説明をかったるく感じてしまったんじゃないかと。
 常人であるキャプテン・アメリカには、その不足を補うだけの正義の意志がある。それはキャプテン・アメリカの映画を始めとした作品を見た人間だから分かっていることであって、世間一般のイメージとしては、盾を武器にしているヒーローと言うふんわりしたものなんじゃないかと思います。そんなキャップの強さは、巨体という一見で分かるハルクとの対決。第七話のハルク対キャプテンにてじっくりと書かれました。
 マニア層が集まる深夜や有料放送ならともかく夕方の地上波ともなれば、知っている人間に甘えるのではなく、アベンジャーズを知らない視聴者へ、この作品を追っているだけでキャラクターを理解できる完結性と丁寧さが必要な物かなと。
 ただゆっくり説明するだけでなく、地上波映画レギュラー枠であり認知度人気共に高いスパイダーマンを誘い役として用意することで誰でも見れて誰でも分かる作品の土台作りを着々と進めていたのが、この1話から19話までの時期かと。更にアベンジャーズだけでなく、パートナーであるアキラ達がどういうキャラなのかも掘り下げられたわけで。ヒーローとパートナーの物語である以上、ここを疎かにしちゃアカンよね。居るだけにしてしまったら、放送前の不安通りないらないオリキャラになってしまうわけで。

 16話から22話がウルヴァリン登場から始まる通称X-MEN編。ここで一度ロキとの決着もついています。一人の少女アシダ・ノリコがミュータントに覚醒、彼女の話を主軸に、ディスクウォーズ世界におけるX-MENとミュータントの物語が描かれました。X-MENも映画や過去のアニメで認知度が高い、アイアンマンやスパイダーマンと並ぶ誘い役になってました。
 只の少女が能力に目覚め戸惑う。ミュータントになることをアリアリと描いた、X-MENの入門編としても優れていたシリーズでした。ディスクウォーズがそれぞれの映画や他作品への入り口となる。こういう見方や効果も、きっとあった筈。互いが支えあって大きくなっていくのが、メディアミックスの花よ!
 ただ悩み陰鬱な展開にするのではなく、マグニートーの参戦やサイクロップスの戦闘、アシダ・ノリコにミュータントXのような初顔に近いX-MENキャラの新鮮や、アメリカンバカルテットレッキングクルーによる笑いと、緩急がしっかりついていたのも印象的です。
 ロキとの決戦も、純粋に熱く愉快に。ここでの、アカツキ博士と再開していながらも救えなかった結末。未だアキラ達に力が足りないこと、まだ先がある事をひしひしと感じさせてくれました。

 23話でレッド・スカル登場、これより先はレッド・スカル編……と言いたいところですが、本人も言っていた通り、この時点ではまだ準備段階。まず焦点となるのは、24話と25話のガーディアンズ・オブ・ギャラクシー回! 映画ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと連動しての回。前述した、互いが支えあうことで大きくなっていくメディアミックスの花が、実に大きく花開いた回じゃないかと。映画ガーディアンズもまた、日本にとって未知すぎるヒーロー達ですからね。なお余談ですが、1000以上のキャラクターが載っているマーベル・キャラクター事典。ディスクウォーズに出演したキャラはほぼ全て載っているのですが、数少ない個別項目未記載のキャラがスターロード、グルート、ロケットラクーンだったりします。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーも載っているのは別編成のチーム。映画ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーの新進気鋭さと、認知度の低いメンツで映画を作る大博打さが見て取れます。
 話を戻すとして、ガーディアンズの個性とロナンの強さ、映画への期待高まる前後編でした。さっきも言った通り、資料描写の財産は少なめなチーム。映画との連動、ディスクウォーズスタッフの皆さんは、かなり大変だったのではないかと。アニメの放映と映画の公開がほぼ同時となると、どう考えても作業につぎ込める時間が少なめでしょうしね……。

 26話総集編の後は、禁断のヒーローことデッドプール回! 日本よ! これがデッドプールだ! キング・リュウさんも「こりゃダメだろうなあ」と思ってチェック出したら通ってしまった伝説回! 子安ボイスのデッドプールの面白さ、そして後にカッコ良さを我々は知ることになる!
 ネットのデッドプールフィーバーがどれだけ凄かったのかは、ニコニコ動画での再生回数(無料放送継続な第一話と並ぶ再生数10万突破)を見れば分かりますが……当サイト目線での話を一つ。ウチのサイトはまあ大体1日1000ヒット前後なんですが、デッドプール回である27話から一ヶ月くらいは二倍の1日2000ヒットになっていました。当日のヒット数も確かに高かったのですが、平均がしばらく上がるって中々無いですね。今現在製作中の映画デッドプールの話題が盛り上がっている状況、その予兆はこの時にあったと言っても過言ではなく。
 しかしデッドプールも、映画X-MENにちょびっと出ていたものの、露出自体は少なめの日本にとってほぼ未知なヒーロー。ディスクウォーズに出ることで、タレントもセレブも野球選手も首相も、そして子供達もデッドプールのファンになったのではないでしょうか。まあ、映画デッドプールは年齢制限かける予定らしいけどな! 子供見れないヨ!?

 全50話の内、半分ぐらいまで来たので、今日はここまで。レッド・スカル編やウルトロン編、ローニン登場に最終回と言った後半部に関しては後日書く後編で。いやしかし、この時点で結構な豪華絢爛よね。
 

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その48~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ、48話。
 押し寄せる闇、防げるかどうかの水際作戦! 

 ハルク&ワスプ&キャプテン・アメリカ、数の不利を物ともしないバイビースト&アイアンモンガー。巨体かつパワフルな戦艦クラスの二人とはいえ、相手に大和型戦艦クラスのハルク+超優秀な軽巡と駆逐艦なキャプテン・アメリカとワスプがいる状態で、よく頑張った! そもそも数的に最初から不利だし! 後述する通り、アイアンモンガーは最近出番が増えておりますが、バイビーストはホントにね! 昔はダンジョンの奥に居るそこらのボスより上の強敵扱いだったのに、最近は何処でもエンカウントする、パーティー構成ではめんどくさい敵レベルに。アニメとか他所のメディアでも、殆ど出番ないし! ディスクウォーズ参戦キャラに賞か何か上げるとしたら、バイビーストは努力賞の有力候補にしてもいいんじゃないかと!
 ここまで褒めておいて努力賞なのかよ!?とお思いでしょうが、結局支援艦隊来て負けましたしね? 優秀賞やとうどうグループとくべつ賞は、流石にもっと別の候補がいますし……。でも、耐え切ってセカンドヒーローを引き出したことは、評価的にプラスだな、うん。

 いやだなあ、ウォーマシンの事を忘れてませんよ! 本来、セカンドヒーロー一番乗りポジションだったじゃないですか! コイツ、モードック撤退させてマイアミの話したこと以外何もしてねえななんて思ってませんよ!
 ウォーマシンはともかく、多分みんな忘れてたのはロキ様。ドルマムゥが来る!の話題性に、持って行かれていた感はあり。そしてロキ様が輝くのは、こういう人の思考の隙間ができた瞬間。ダークゲート発生装置の破壊とドルマムゥ出現の危機に焦っていたアイアンマンやアキラの隙を突く大活躍。一期ボスの時みたいにデカい力を手に入れて調子乗るのもロキっぽいけど、嫌な所に陣取る敵として出てくるのもまたロキらしさ。強敵や大敵よりも、嫌な敵という評価が似合うのがロキ様の個性にして強み。

 掴めなかったその手を、今度は掴んでみせる。ロキ城での決戦、父親に「息子のために手を離す」という選択肢を選ばせてしまったアキラの後悔。その後悔の精算となったのが、今回の話でした。
 直接戦闘に挑むポジションではないため、戦闘力や攻撃力のような分かりやすい成長度合いは無くとも、バイオコードの進化やパートナーの絆の強化と、アキラ達は確実に成長を重ねてきました。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとの邂逅、ビルドアッププレートの開発、強敵レッド・スカルとの死闘、ウルトロンとの大決戦、デッドプールとの……必要ない、消せ(ロキ談)。
 ローニンとの攻防も含め、成長しなければ乗り越えられない困難を越えてきたことは、成長の証と言ってよいかと。その成長の結果が、ローニンの手を手放さなかった事、逆転の一手となった事。こういう前に進むことで得た物が分かる瞬間は、自分の大好物です。これこそ、長期ドラマの華よね!

 今日の紹介は、鋼鉄の門番アイアンモンガーで! 原作や映画における搭乗者オバディア・ステインにも言及! 巨大な体躯と大火力! 軍事兵器色、非常に強し!

アイアンモンガー

アイアンマンVSアイアンモンガー

 映画にも登場した、アイアンマンをベースにした巨大アーマー。着用者に並外れた身体能力を与え、リパルサー・ビームやレーザーブラストを放つことが出来、ブーツからのジェットで飛行も可能。登場してからしばらくは、オリジナルより複製されたスーツを纏う人間が居たが、ブリザードウィップラッシュのような特化型や特殊装備型でもなく、あくまで大きなアイアンマンでしか無いせいか、スーツとしての出番はインパクトの割に少ない。
 アイアンモンガーをスーツとして解説した場合、本当にこれだけで終わってしまう。だがしかし、アイアンモンガーは今後に繋がる予定の映画アイアンマン、その第一作のヴィランに選ばれたキャラクターである。彼の真価は、アイアンモンガーを纏った男、オバディア・ステインと共に在ることで発揮される。
 企業家オバディア・ステイン。経営学を学び、修得の証であるMBA(経営学修士)を取得。心理戦に長け、非常かつ効率的なビジネス戦略を好む一流の企業家。心理戦や戦略は、得意とするチェスで鍛えあげられており、チェス自体の腕前もチャンピオンクラス。完璧なロジックで磨き上げられた人生こそ、オバディアが歩んできた道である。
 だがしかし、その本質にあるのは物事を勝ち負けでしか、むしろ自分が勝って当たり前の物としか考えられないどす黒い本性であった。子供の頃、チェスでオバディアと互角であった少年は、その結果オバディアに愛犬を殺されてしまった。つまりこの常軌を逸した精神は、幼年期より持ち合わせていた物である。

オバディア・ステイン

 非常に、並べてみたら分からないレベルで、他所の出版社で活躍する超有名アメリカンヒーローのライバルに似ているが、ひとまずそこはスルーして欲しい。多国籍軍需企業、ステイン・インターナショナルの社長となった彼にとってのライバル、勝つべき相手はスターク・インダストリーズの社長であり企業家のハワード・スタークであった。だが、ハワードは事故死。会社は父以上の才覚を持つと言われているトニー・スターク(アイアンマン)が引き継ぐこととなる。表向きは友好関係を保っていたオバディアだが、付き合いつつもトニー・スタークの情報を収集。トニー・スタークがアイアンマンとしての重責に耐えかね、アルコール依存症となった事。友人の力にて立ち直った事を知る。オバディアにとって、このトニーが見せた弱さは、チェックメイトに繋がる一手であった。

アイアンマン:デーモン イン ア ボトル

 オバディアは、得意の心理戦と権謀術数を駆使することでトニーを再びアルコール依存症に陥らせてしまう。スターク・インダストリーズはステインに買収されてしまい、地位も名誉も財産もアイアンマンとしての立場も酒で失ったトニー・スタークはホームレスにまで落ちぶれてしまう。先のアルコール依存症以上の没落。オバディアの完全勝利であった。彼にとってはトニーですら、自分の人生を彩る敗北者の一人に過ぎなかったのだ。
 オバディアに負け、浮浪者となり全てを諦めかけていたトニーだが、偶然出会った女性ホームレスが自身の命と引き換えに子供を産んだ瞬間、生命の誕生と死に立ち会ったことにより、人としての現実と希望を取り戻す。周囲を見てみれば、空位となったアイアンマンの座は親友ジム・ローズが必死で守り続け、アベンジャーズの仲間たちも変わらず居る。全てを失ったわけではない、奮起したトニーはアルコールと決別、赤と銀の2色が特徴的な新型アイアンマンスーツ、通称シルバーセンチュリオンと新会社スターク・エンタープライズ社を作り上げオバディアに挑んだ。

アイアンアーマー マークⅧ(シルバーセンチュリオン)

 なお余談ではあるが、浮浪者となった時に女性ホームレスと出会わず、代わりに変な赤タイツと出会った結果、モードックが首領を務める秘密結社AIMに売っぱらわれてしまった平行世界もあったりする。なんてバッドエンドだ。

トニー・スターク売るよ!

 一方、オバディアだが、負かしたと思ったトニー・スタークの再起に動揺。再起した敗北者により追い詰められた結果、遂にトニーが直接アイアンマンとしてステイン・インターナショナルに乗り込んでくる事態となる。だが、オバディアの手元には最終兵器があった。スターク・インダストリーズを乗っ取った際に見つけた、アイアンマンスーツのデーターと実物。彼は部下に命じ、アイアンマン以上のスーツを制作させていた。
 オバディアの元に乗り込んだアイアンマンが目撃したのは、自分のスーツ以上の大きさと性能を持つ鉄の巨人アイアンモンガーだった。アイアンモンガーとなったオバディアと、アイアンマンであるトニー・スターク。二人の企業家の最終決戦は、肉弾戦となった。

アイアンモンガー

 アイアンマンを超えるアーマーの名に恥じぬ性能を見せ、アイアンマンを圧倒するアイアンモンガーだが、やがて最大の弱点が露となる。トニー・スタークとは違い、スーツを着た経験が無いオバディア。その経験を埋めるため、アイアンモンガーは外部PCの遠隔操作による補助を受けていたのだ。遠隔操作の妨害より、活路を見出したアイアンマンは、アイアンモンガーを遂に撃破する。
 自らの敗北を悟ったオバディアは、トニーに自らの父親の死について語り始める。自分の父親はギャンブラーであり、ロシアンルーレットに失敗して死亡した。父の死を目の当たりにした恐怖で、自分の頭の毛は抜け落ち、敗北とは死である事を学んだ。オバディアの勝つことへの病的なまでの執着は、この一件が原因だったのだ。
 そして敗者となってしまった自分に、生きる資格はない。気づいたトニーは制止するものの、オバディアは自らのリパルサーにて頭部を撃ち抜き死亡する。敗北とは死であると身を持って教えてくれた、自らの父と同じように。勝者であるトニーは全てを取り戻し、敗北者であるオバディアは死亡した。再起したヒーローと再起を選ばなかったヴィランの戦いは、こうして終了した。

オバディアの死

 アメコミのキャラクターは死亡や蘇りが激しいが、オバディア・ステインは蘇っていないキャラクターの一人である。あの世に居ることの確認や短期間の復活はあるが、本格的な復活には至っていない。そもそも、初登場が82年で自殺したのが85年と、映画ヴィランに選出された割に、非常に活動期間が短い。他の映画第一作のヴィラン、レッド・スカルやロキの活動期間数十年+継続中と比べれば、その短さは更に際立つ。
 だがしかし、アイアンモンガーとオバディア・ステインは立派に映画ヴィランを務め上げてみせた。

映画版アイアンモンガー&オバディア

 他所のハゲで企業家な有名ヴィランと差別化するために髭を生やしてみよう! 技術の未熟さによる巨大化とリアクターの窃盗。こうすれば、トニー・スタークの天才性が揺らがぬまま強敵になれる! 非常に細かな気遣いにより、アイアンモンガーとオバディア・ステインはアイアンマンの強敵として再生を果たした。以後、オバディアとアイアンモンガーは、アイアンマン・ザ・アドベンチャーズやディスク・ウォーズ:アベンジャーズのような世界観を再構築したアニメ作品にて、ラスボスや強敵として存在感を示す。ディスクウォーズのアイアンモンガーの中身については明言されていないが、ビジネスパートナーや技術の窃盗といった評価からして、オバディアのルートからおそらく外れていないだろう。

アイアンモンガー(アイアンマン アドベンチャーズ)

 原作での、トニー・スタークを浮浪者にまで追い詰めた数年間。この濃い数年の結果、トニー・スタークは未だにアルコールに脅かされ、様々な世界にてアイアンモンガーはアイアンマンの前に立ちはだかっている。だがある意味これは、敗北は死であり終焉と考えていたオバディアにとって、皮肉的な今なのかもしれない。

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その44~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ、44話。
 謎の達人、ローニン登場! 仮衣の下の正体は……!?

 失敗を可能性に塗り替えるのが、アキラの強み。ディメンションスフィア喪失という大事件を引き起こしてしまっても、絆は切れぬまま事態収拾への奔走へ。失敗をしないのではなく、失敗を積み重ねて前に進んでいく姿勢。これはアキラの相棒である、アイアンマン、トニー・スタークにもある部分ですね。そもそも、アイアンマンになった理由こそ、過ちからの再起。何度も致命的な過ちを繰り返しながらも、前に進んで来たのがトニー・スタークという男。勝手な想像ですが、そんな似通った部分をトニーに見出したから、アカツキ博士はアキラの可能性の話をした。そう思ってみたいぐらいに、両者の失敗を糧に出来る姿は、似通っています。

 暗黒世界ダークディメンションよりの使者、ローニン参上。原作にてローニンの名と姿を借りた、数多くの達人に匹敵する剣の冴え、更にはレッドスカル以上にディメンションスフィアを使いこなすという離れ業。ディメンションスフィアとの名称から怪しんでいましたが、かのスフィアの出元はどうもダークディメンションのようですね。レッド・スカルに力を与え、ダークディメンションに堕ちたロキの背後で蠢く、不気味な影。いわばディスクウォーズの黒幕とも言える最大の敵、その朧気な姿は、いよいよ形に。ロキを超える魔力、レッド・スカルの悪意を超える存在、それは……。

 先週垣間見せた声(CV堀秀行)の時点で怪しまれてはいましたが、ローニンの正体、彼の人の友であり同僚であったトニー・スタークが見定めた正体は、アカツキ・ノゾム博士。救うべき存在が敵に回るという皮肉。まるでアカツキ博士を他人のように扱う余所余所しさ、アベンジャーズにも劣らぬ超人的な剣術、人を狂気に陥れるディメンションスフィアを使いこなしてみせる精神性。善良なる科学者がただ持つには、荷が重い物ばかり。まだひと波乱もふた波乱もありそうな匂いがしますが。声をコピーしたロボ超人だったり、アカツキ博士が某男塾一号生筆頭並みに謎武術を習得していたり、謎のゲルマン忍者をベースにしたクローンだったらどうしよう。

 今日の紹介は、疑惑の忍者ローニンで。場所を最大限に活用してハルク相手に健闘したブリザードも紹介してやりたいけど、一週間正体を気にしていたせいか、ローニン熱の方が強かった! 来週、バカ四人しか出なかったら、そんときゃブリザードだ!

 

ローニン

ローニン

 上から下まで、黒装束で固めた謎の戦士ローニン。ヌンチャクや刀といった武器を駆使する正体不明の達人が初めて現れたのは、盲目のクライムファイターデアデビルの紹介により、ニュー・アベンジャーズと呼ばれるチームに参戦した時だった。ローニンはニュー・アベンジャーズの一員として、日本で忍者集団ハンドとの決戦に望む。体格からして男性と思われていたが、その正体はなんと女性。かつて巨漢にして巨悪のギャング、キングピン配下として父の敵であるデアデビルを付け狙った聾唖の暗殺者、エコーであった。

エコー

ローニン(エコー)

 キングピンの配下であったエコーだが、父を殺した本物の仇はキングピンである事、デアデビルはキングピンに濡れ衣を着せられていた事を知り、既に離反していた。彼女の能力は、写真的反射能力。一度目にすればどんな達人の動きでも模倣できる彼女だからこその、ローニンの達人性であった。
 ……一説によると、最初ローニンの中身は彼女でなくデアデビル当人だったとか。それが色々なストーリーとの兼ね合いで、急遽エコーに差し替わったという噂もある。能力的に、デアデビルっぽい動きをしていても何らおかしくはない。おかしくは、ないのだ。

 エコーのローニンとしての活動期間は短く、彼女は早々にコスチュームを脱いだ。中身の居なくなったローニンの姿を次に借りたのは、一度死んだ男ホークアイ(クリント・バートン)だった。とある事件にて死亡し、その後復活を遂げたクリント。蘇った彼が目にしたのは、二代目ホークアイを名乗る少女ケイト・ビショップ。ホークアイが死んで蘇る間に、キャプテン・アメリカやアイアンマンに認められ初代ホークアイの弓を授かった自身の後継者だった。死亡からの蘇生、後継者の登場。クリントはローニンの衣を纏うことを選択し、ローニンのままアベンジャーズに参加。チームリーダーとして活躍した。正体はアベンジャーズの仲間に明かしており、二代目ホークアイのケイトとも接触。彼女の資質を認め、先輩としての助言も与えた。

「俺達がついている。思い切り戦え、そして失敗しろ。世界を救うために。不可能だなんて、諦めるな」

 このローニンとしてのクリントとケイトのエピソードは、邦訳ホークアイ:マイ・ライフ・アズ・ア・ウェポンに収録されている。

ダブルホークアイ

 ローニンとなったクリントは、弓矢を持たず刀やサイを使うことで悪と十分渡り合ってみせた。ホークアイは弓矢だけの男ではない事を、実証したとも言える。クリントが再び弓矢を手にしたのは、擬態宇宙人スクラル人との決戦シークレット・インベージョン。自らを翻弄したスクラル人との最終決戦時、負傷したケイトの弓、自分が譲り渡したホークアイの弓矢を使い、スクラル人を恐怖に陥れた。

ローニン(ホークアイ)

 この後、国家公認の偽ホークアイ(正体は百発百中の投擲手ブルズアイ)の出現などを経て、クリントはローニンのコスチュームを脱ぎ、ホークアイの座に復帰する。二代目ホークアイのケイトもそのまま名乗り続けた結果、現在はダブルホークアイ体勢となっている。
 またも中身が居なくなったローニンだが、次にその名とコスチュームを纏ったのは、アベンジャーズどころかヒーローですら無い、悪人であった。新たなローニンは、アメリカ、ロシア、日本で暗躍し、三カ国を緊張状態に陥れる。ローニンであったホークアイと、ロシアを知るエージェントであるブラック・ウィドウは邪悪な新ローニンを追跡する。やがて明らかになった新ローニンの正体はアレクセイ・ショスタコフ。ソ連のキャプテン・アメリカことレッド・ガーディアンの初代であり、ブラック・ウィドウの夫であった彼は、自らが忠義を捧げたソビエト連邦の復活を画策。北方四島に新ソビエト連邦の建国を目論んでいた。

ローニン(アレクセイ)

 アレクセイが敗れた後、ローニンは三度消えた。しかし近年、再びアベンジャーズとしての、ヒーローとしての、新生ローニンの姿が確認されている。

ローニン(最新版)

 新たなローニンの正体は、前任者達を越えかねないほどの剣や武器の達人であり、吸血鬼並みの超人的な身体能力を持ち、更に言うとその吸血鬼への造詣も非常に深い男である。新ローニン、一体何者なんだ(棒

 ここまで上げた四人のローニン。人種性別善悪、様々に入り混じっており、全員の共通点といえば、達人と呼ばれる技巧者な事だけ。5人目、6人目が出るのかどうかは分からない。しかし、ディスクウォーズのローニンも含め、正体でこれだけ魅せてくれるキャラクターは、情報化社会の近年非常に珍しい。最高峰の仮の姿と言えよう。