ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その14~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ第14話!
 同じ兄である、ヒカルとソーのコンビ。まっとうに弟を愛せるヒカルと、弟への親愛の情を抑えるしかないソー。この二人の兄の邂逅が、ついにマイティ・ソー刊行当初からの鉄板ネタを打ち砕く!
 ええ、そりゃ現実世界で数十年間引っかかってた人が来なかったら、誰とて「え!?」となると思うのですよ。ロキも、視聴者も。ロキへのこだわりで失敗するソーは原作や他のアニメ、映画でも使われるような、ある種テンプレ的なネタ。テンプレというのはあって安定する物ですが、逆に言うと飽きを招くものでもあり。ソーとロキの関係に、こうして一応の決着をつけた事。既存の路線を識りつつ新たな物に挑もうとする姿勢、個人的には好ましいものです。
 お前らダメだから俺が本当の策略を見せてやる!からの失敗で、敵陣営におけるロキ様の威厳失墜必至な今後。今日紹介するのは、ビッシビシ!と短時間ながら存在感を示した、映画出演経験アリな鞭使いで!

ウィップラッシュ

ウィップラッシュ

 映画アイアンマン2でミッキー・ロークが演じたヴィラン。電磁鞭を使い、サーキット場でトニー・スタークを追い詰める様はアイアンマン2のイメージとして広く使われ、彼を一気に有名ヴィランへと押し上げた。

ウィップラッシュ 映画版

 ただ、以前クリムゾンダイナモの項で紹介した通り、映画のウィップラッシュはクリムゾンダイナモと合成されたキャラなので、ここはまず原作における最初のウィップラッシュについて紹介したい。
本名マーク・スカロッティ、元々スターク・インダストリーにおける天才電気技術者だった彼は、富と名誉を求めて犯罪組織マギアへと出奔。自作のアーマーと電磁鞭を装備し、犯罪者ウィップラッシュと対決、科学の最先端を走るアイアンマンとの引き分けという、今後に期待が持てる戦績をあげた。

初期ウィップラッシュ

 しかしその後、再戦でアイアンマンに敗北。以後、ウィップラッシュは様々な組織を渡り歩きヒーローと戦い続けることになる。そして企業家ジャスティン・ハマーと組んだ際に装備一式をアップグレード、名前もウィップラッシュから“ブラックラッシュ”に改名する。

ブラックラッシュ

 だがウィップラッシュのアイデンティティも名も捨てたわけではなく、ウィップラッシュとブラックラッシュの名を使い分けつつ、躁鬱病を患ったり、引退して家庭を持ったものの金の都合で復帰したりを繰り返し、最終的にはアイアンマンのアーマーの暴走に巻き込まれ死亡した。スカロッティ死亡後に、それぞれウィップラッシュとブラックラッシュを名乗るヴィランが現れたが、スカロッティ自身とは関係ない。
 武器は二本の変幻自在の鞭。チタニウムで出来たこの鞭は硬化し、棒やヌンチャクとしても使える。更には反重力の投げ縄や電気エネルギー発生装置と、様々な発明品を携帯しているため、意外な万能型。元々アイアンマンのヴィランだけあって、自らの開発力でパワーアップしていく様は、トニー・スタークに近い。
 正直なところ、アボミネーションやグリーン・ゴブリンのような好敵手でもなく、モードックのような組織の頭でもなく、サノスのような強敵でもなく。率直に言って、スカロッティのウィップラッシュどんな時でも使いやすい便利なヴィランだった。最近は映画からフィードバックされた新ウィップラッシュ(アントン・ヴァンコ)の登場で、アイアンマンの好敵手ポジションにつこうとしてはいるが。

新ウィップラッシュ

 なお便利なキャラというのは決してけなし言葉ではなく、連なる世界観を形作る上でこういう動機が容易に作れる雇われかつ適度な強さのヴィランがいないと、ヒーローは毎日が激闘、もしくは世界征服の志と実力を持つヴィランが毎週銀行強盗をするハメになる。むしろこういう便利なキャラこそが、アメコミのウリである広大な世界観を演出する上での要なのだ。