ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その39~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ第39話。
 今年最後の大決戦、オメガウルトロン登場!

 先々週:自我に目覚める
 先週:量産化
 今週:巨大化
 なんだこの恐ろしいまでのウルトロンの成長速度……しかもオメガウルトロンは単なる巨大化ではなく、巨大化した上での量産と、原作でもここまでの代物はいたっけ?な超強力ウルトロン。巨大化と量産化、それぞれの例はあるのですが。いやマジもう、来年まで戦いが続いていたら、主人公補正を考慮してもアベンジャーズ勝てなかったんじゃないか? だが、私にはアレが最後のウルトロンとは思えない。第二第三の……いやまあ、第二第三どころか、数えきれないくらい帰ってくるのがウルトロンなんですけどね!w

 ウルトロンの正体は、ハンク・ピムの中に眠っていた怪物。妬みや恨みや諦め、己を苛むものが表面化した結果、今回の騒動につながってしまった。三話纏めてウルトロン編と呼ばれていますが、この三話はハンク・ピム編でもありましたね。ウルトロンの悪役としての格が肥大化した結果、ハンク・ピムのヴィランというよりアベンジャーズのヴィラン、全てのヒーローや人類にとってのヴィランとなっている昨今。一個人であるハンク・ピムとの対比図は逆に新鮮でした。
 ただ、ウルトロンにとってハンク・ピムはどうでも良い存在なのではなく、自身の拭えぬ汚点にして最大の弱点。ハンク・ピムが居る限り、人類より優れた存在であるウルトロンが劣るはずの人類に造られたという矛盾と対峙することになりますからね。実際原作でも、ウルトロンにとってピムは殺したいし止めを刺したい存在であることは、揺らぎません。
 仲間の献身とトラウマに隠れてしまっていた思い出により、ジャイアントマンでありヒーローである己を思い出したピム。最後のDセキュアは、いよいよピムがヒーローに戻ったからできたんだなとあと、なんとなく感じることができました。そういや、ジャイアントマン、エドが連れているってことはパワー属性なんですね。当たり前といえば当たり前なんですが、ワスプがアニマルでバチ魂のアントマンもアニマルだったので、てっきりアニマルの枠に入るのかなあと。ひょっとしたら別のアントマン、例えばスコットの参戦もありえるのか……?

 今日の紹介は、委員会の押さえにピムの後押しと、裏MVPなニック・フューリーで! サブレギュラーの紹介と、なんか今年ラストっぽい!? 最後、サプライズ的な登場を果たしたジョカスタに関しては、先々週に紹介したウルトロンの文中で紹介しているのでこちらをどうぞ。まさか、このタイミングで出てくるとは……! 来年のロキ様(INディスク)と僕らのデッドプールさん、人気投票ナンバー・ワンコンビの再参戦! いやあ、読めん! 先が読めんですわ! 

 
ニック・フューリー

ニック・フューリーニック・フューリーJr

 ニューヨーク1、治安が悪い区域と呼ばれるヘルズ・キッチン。そんなヘルズ・キッチンで生まれ育った悪ガキの名が世に出たのは、二度に渡る世界大戦の最中。枢軸国の作戦、ナチス・ドイツの野望を幾度と無く打ち砕いた陸軍の精鋭部隊ハウリング・コマンドーズのリーダー、サージェント・フューリー。これが後に悠久の戦歴を重ねることになる男のデビューであった。

サージェント・フューリー&ハウリングコマンダーズ

 戦場にてフューリーは、単なる敵だけでなく、生まれ始めた超人たち。戦後秘密結社ヒドラを結成するバロン・フォン・ストライカーやナチス理想の結晶レッド・スカルをも打破。かのアドルフ・ヒトラーの脳裏に、キャプテン・アメリカをも越える憎き敵として刻まれることとなる。左目を失うという重症を負ったものの、フューリーは戦争終結まで戦い抜いてみせた。
戦後フューリーは、新薬インフィニティ・フォーミュラの実験に志願。薬品を摂取した結果、致命傷を受けてもおいそれとは死なない生命力と、非常に遅い老化速度を手に入れることに成功する。キャプテン・アメリカの超人血清並みの薬であり、作った博士も死亡しておらず精製も容易といい事ずくめに見えるが、インフィニティ・フォーミュラの期限は一年、毎年摂取しないと死んでしまうという最大の弱点がある。博士はフューリーの足元を見て、言い値で薬を販売。フューリーの安くはない稼ぎは、結構な額が博士に吸い取られている。
 戦わなければ(金銭的に)生き残れない。フューリーはCIAを始めとした数々の諜報機関に参加、功績を上げ続け大佐に昇進する。なおこの頃、ベルリン陥落直前からタイムスリップしてきたアドルフ・ヒトラー本人に命を狙われるが、謎の不死身の傭兵と未来傭兵の助けを得て、ヒトラーとの戦いに終止符をうった。蜂の巣になったヒトラーの死体は、傭兵たちがベルリンに送り返して、自殺の偽装工作まで請け負ってくれた結果、歴史的にも問題なし。謎の二人組が親切でなによりでした(棒

ケーブル「いやもういいから」

 やがて世界には超人があふれるようになり、様々な組織が彼らとの付き合いを模索することになる。CIAが架け橋役として選んだのは、フューリーだった。これらの仕事もそつなくこなしたフューリーは、世界平和維持組織SHIELDのリーダーとしてスカウトされる。SHIELD長官ニック・フューリーはこうして誕生した。
 長い間長官として働き、ヒーロー達ともそれなりに円滑な関係を築いていたフューリーだが、ドクター・ドゥームの国であるラトヴェリア。ドゥーム不在時の女首相ルシアがアメリカでのテロを画策。テロを察知したものの、政治の壁に阻まれたフューリーは、スパイダーマンやルーク・ケイジらヒーローを率いラトヴェリアを急襲、ルシアを暗殺した。だが、生きていたルシアは計画より遅れたもののテロを実行。更には、ヒーローの作戦に関する記憶を消去していたことも判明。フューリーは長官を辞任し、地下に潜伏した。この作戦から辞任までの一件を、シークレット・ウォーと呼ぶ。
 以後、SHIELD長官はマリア・ヒルにアイアンマンにキャプテン・アメリカと様々な人間が務めることになる。スパイダーマンの敵であるグリーン・ゴブリンことノーマン・オズボーンも任命されたが、SHIELDとフューリーを嫌う彼は組織を解体、自分の意のままになる組織HAMMERを後釜に据えた。
 行方不明になったニック・フューリーは、組織に属するものではなく、一人のエージェントとしての活動を開始。自ら動きつつ、影よりヒーローを支援する。やがてSHIELDの敵であったはずのヒドラがSHIELDを影より動かしていたことが判明、その際にフューリーは新組織シークレット・ウォーリアーズを結成。情報秘匿のため、メンバーは全員新人ヒーローと、中々に思い切った編成となった。この思い切りの良さは、良くも悪くもニック・フューリーの長所である。このような高い戦略的な思考だけでなく、兵士としての格闘術や戦闘術も超一流。二次大戦のレトロな武器から、SFめいた最新兵器まで使いこなせる人間は、そうそう居ない。ベルトスクロールアクション、パニッシャーの2Pキャラでもあった彼に、ゲーセンでお世話になった人も多いだろう。

完全武装ニック・フューリー

 ここまで紹介してきたニック・フューリーは、白人。現在の映画やディスクウォーズにおける黒人スキンヘッドのニック・フューリーは何処から来たのか。答えは従来の設定を再構築した新ユニバース、アルティメットユニバースの誕生まで遡る。様々なヒーローが改変を受ける中、アルティメット世界のニック・フューリーは黒人として登場した。

ニック・フューリー(アルティメット)

 以後、サミュエル・ジャクソンが演じた映画版でもこのフューリーのデザインがモデルとされ、スキンヘッドのフューリーは知名度を上げていく。厳密には映画より前、アルティメットシリーズのフューリーをデザインする際に、サミュエル・ジャクソンをモデルにしたとの話もあるので、むしろサミュエル・ジャクソンが根源なのかもしれない。ファンサイトでは二人のフューリーを、ホワイト・フューリーやブラック・フューリーなんて呼び方をしている時も。ふたりはフューリーマックスハート。

ニック・フューリー(映画版)

 あくまで、黒人のフューリーは別の作品であるアルティメットシリーズと映画やアニメに属しており、正史世界には存在しない風貌と思われていたが……。何者かに雇われた傭兵たちに襲われる、ごく普通の黒人兵士。戦いの末、重症を負った彼に告げられる真実。彼の父親はニック・フューリーだったのだ。失った片目に眼帯をかけ、剃髪した彼はニック・フューリー・ジュニアとして、SHIELD入りする。

フューリーの息子

 つまり、外伝的作品から映画を経由しての正史世界への輸入。非常にややこしい経路で、黒人のフューリーもメインストーリーに登場することとなった。ちなみにこのフューリー(ジュニア)登場の際、映画発の人気キャラにしてアベンジャーズの要となったエージェント・コールソンもコミックスに登場するようになっている。この辺、ややこしくはあるものの、映画とコミックスの相互理解を目指している一例と言えよう。

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その38~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ第38話。
 大気圏外アイアンマン! 敵は復活量産ウルトロン軍団!

 本編に触れる前にー……ディスクウォーズ公式サイトで開催されていたキャラクター人気投票の結果が発表されました。アイアンマンを超えたキャプテン・アメリカ、出番は少ないもののX-MENの矜持を見せたマグニートーにT.M.効果もあったであろうシルバー・サムライ。OPにも居るレギュラーヴィラン勢の中で一人だけ順位がやけに低いアボミネーションと、波乱含みの結末。まさか、アボミネーションがレッカーに負けるとは。こつこレッキングクルーに票を入れてきた俺のせいかと思ったものの、レッキングクルーの他のメンバーが最下位争いしている現状、たぶん関係無いッスね!
 何より注目すべきは、1位。ヴィラン部門では映画アニメ含め強烈な存在感を放ったロキが! ヒーロー部門は強烈感大爆発!なデッドプールが栄冠をその手に! どうしてこうなった! しかし、ウルヴァリンに完勝、スパイダーマンの立場を立てつつお隣で、1位自体は自分がゲットと、デッドプールにとって最も望むべき結果だったんじゃないだろうか。多分、1位取った当人が、一番今を信じてない。

 アイアンマン、宇宙へ。換装というより、特殊コーティングによるタイプチェンジ! 今回の宇宙用、白をベースにしたカラーリングは、映画アイアンマン3で出た、宇宙用スーツがモデルっぽいですね。

宇宙型アイアンマンスーツ

 余談ですが、原作における新型宇宙用スーツ、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーに合流した際のマーク45(宇宙型スーツとしてはマーク3)とされるスーツがこちらです。

アイアンマン(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)

 これはこれでカッコいいけど、コーティングで出来るレベルじゃねえ!
 そんなアイアンマンの、限界ギリギリを超えてのファイト。AIのジャービスですら自己責任と言い出すぐらいの決死戦! 時間がない中での、己を振り絞る戦い。ファルコンの守護、トニーの覚悟と、人の限界を振り絞って機械の王ウルトロンの悪意に対抗する激戦!
 ……いやでも、ぶっちゃけアイアンマンより、ヒカル兄さんのセカンドヒーローことノバの方が今回の任務、向いてたんじゃ。アイツ、自力で大気圏突破できるからなあ。でも、今回の任務に向きすぎていて、出たら緊張感が無くなってたか。あとは大気圏突破だけならハルクが本気でジャンプすれば出来ないことはないけど、ハルクの宇宙活動は息をいっぱいすって酸素を持たせて泳ぐ、江田島平八方式だからちょっと無理だな。

 追い詰められるハンク・ピム。自分の本来居れたはずの場所に自分が居ない。なおかつ、自分が居ないのに活躍していく様を見るのは、きっついわなあ。脱退の理由もあってか、アベンジャーズ側からも効果的なアプローチを行えなかったフシもあるし。切り札的扱いといえば聞こえはいいけど、もっと早く頼れるような距離感だったなら、こうはならなかっただろうに……。ピムが追い詰められていくのは原作と一緒だけど、ヒーロー活動に苛まれた後、一度ヒーローを止めて落ち着いた原作とは真逆だったか。

 ピムの後悔の源となるのは、蘇ったウルトロン。すでに自分を量産する域にまで達した生産力。それだけでは飽きたらず、センチネルをも超えかねない、巨大ウルトロンの建造にまで着手。この進化と発想力と、やり遂げてしまうだけの計画性がウルトロンの脅威。次回はオメガウルトロンによる主要都市同時攻撃計画発動。仲間であるピムの逡巡に、敵であるウルトロンの侵略。決戦は、来週のクリスマス・イブ!

 本日の紹介は、以前一度別の形(前編中編)でやったものの、まだまだ書くことはあるよね!ということで、ジャイアントマンことハンク・ピムで! 前編と中編、二つのテキストも合わせてどうぞ!
 しかし実は上記の前編、中編、そして未完成の後編ではウルトロンに焦点を合わせるつもりだったものの、先週やっちゃったんだよなあ。どないしよ。

ジャイアントマン(ハンク・ピム)

ジャイアントマン

 対象を縮小、巨大化出来る科学的な新物質。この物質は、発見者であるハンク・ピムの名からピム粒子と名付けられることになる。ピム博士は、この粒子を自らに使い、昆虫サイズまで縮小化。昆虫と会話できるヘルメットやサイズの増減に対応したコスチュームを装備することで、ヒーロー、アントマンとしての活動を始める。やがてピムは、縮小ではな巨大化を利用したヒーロー、ジャイアントマンに変身。その後、様々な事故やトラブルにより、イエロージャケット、ゴライアスと複数の名前を名乗ることになる。ワスプが死亡したと思われていた際は、二代目ワスプとしても活動していた。最近は、アントマンやゴライアスの名を他人に譲った結果、ジャイアントマンの名乗りやコスチュームを着用していることも多い。

ハンク・ピムここにあり

 そしてピムは、不可能を可能にする科学的な頭脳を持った、至高の魔術師ソーサラー・スプリームならぬ至高の科学者サイエンティスト・スプリームである。ある時出会った宇宙の超存在インフィニティによる客観的な認定なので、決して勝手に地球最高の頭脳を言い出したわけではない。ただ、言われる前からその自覚はあったと思われる。

至高の科学者

 この地球最高の頭脳判定、確かにピムは万能の天才であるが、今後乗り越えかねない人間や専門分野でなら負けない人間は沢山いる。
 まず、ピムの専門であるピム粒子も深く理解しており、天才である自負と頭脳では匹敵しているであろう天才、ファンタスティック・フォーのリーダ、リード・リチャーズ(ミスター・ファンタスティック)。リードもピムも理解できない学問である魔術を習得した上で、リードと互角の科学技術を持っているドクター・ドゥームも外せない。
 ブラックパンサーやビーストは、長年の研究により、金属やミュータントに関する知識ならば現代社会の一歩先を行っている。
 ブルース・バナーも、ハルクとしての活動が目立っているが、前述の天才たちに目に見えて劣る部分はない。世界七番目の天才(リード認定)の天才少年アマデウス・チョは、七番目といえども成長するだけの若さが在る。またこういう頭脳ランキングでは何故か外されやすい、職人としての天才枠トニー・スタークも、傍から見ればこの枠に十分入る。
 他にもハンク・ピムのライバルであった悪の科学者エッグヘッド、革新技術研究所ホライゾン・ラボの所長マックス・モデル、二次大戦中から活躍しておりミュータントの知恵袋となったドクター・ネメシスと、あげたらキリがないくらい無理を科学で突破出来るだけの天才はマーベル世界に沢山居る。とりあえず、暫定一位、IQ勝負のチャンピオンぐらいの感覚でいいのかもしれない。ピムが意外と大したこと無いのではなく、周りも凄すぎる。

 ハンク・ピムというと、壊れた人というイメージが強い。確かに、原作では妻であったワスプへの暴力や自作自演によるヒーロー活動、全てがバレた上でのアベンジャーズ追放など、あまリフォローできない部分は多い。ディスクウォーズでもヒーローとなれなくなったことへの劣等感が暴走しようとしている。 実際ピムの壊れた部分はアーティスト側も一つの個性として認識していて、例えばアルティメッツ世界では、クズさ大爆発級のキャラ付けになっている。負を描かせた時の、ライター、マーク・ミラーの筆致は本当に恐ろしい。
 だが、彼が一介の科学者であったことも忘れてはならない。資質によりヒーローとなったキャプテン・アメリカ、強烈な原体験を戦場で味わったアイアンマン、必要性に常に迫られているハルク、強大な力を生まれつき持っていたソー。このような、ある種怪物的な意識を持つヒーローに常人の神経でついていくことは並大抵ではなく、科学者としての繊細さが精神を蝕んでいったふしもある。正しい行いをしようと思っていたことは間違いなく、過ちに気づいた後は、外部よりアベンジャーズを支援し、許しを得た後も再加入の打診も長い間固辞していた。ヒーローになった人の、一つのケース。道を踏み外さざるを得なかったと、考えるだけの余地を彼は持っていると思いたい。

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その37~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ第37話。
 アベンジャーズ最強の敵誕生! 一方、アベンジャーズの始祖たるヒーローも復活!

 遂に明らかになる、アベンジャーズとハンク・ピムの関係。ハンク・ピムは、ヒーロー、ジャイアントマンだった。今まで天才科学者として、変人として描かれていたハンク・ピムのDWによるオリジン。守るために限界を超えた彼は、まさにヒーローだった。このオリジンはDW独特の物ですが、原作要素として以下の物が含まれてます。

アベンジャーズに在籍していたこと
ピムは原作におけるアベンジャーズの創設メンバー。

ワスプとの関係
ワスプとの夫婦恋人の関係は現在言及されていないが、初期アベンジャーズの頃はああして勝ち気のワスプをピムが抑える流れが多かった。

巨大化によるリスクとジャイアントマンの放棄
DWでは無理と怪我による後遺症によるジャイアントマン変身への痛みとなったが、原作でも巨大化は負担がかかると判明したため、改良までピムはジャイアントマンの姿と巨大化を放棄。

アベンジャーズを辞めた後の動向
暴走の後、アベンジャーズをクビになるものの、改心した後しばらくは一科学者としてヒーローを支援。

 こうやって書き出してみると、DWのピムの流れが原典とだいたい合ってることがわかると思います。夕方六時半に対応しつつ、初めて見た人間が分かるくらいにオリジンをスッキリと。今までDWが目指していた分かりやすい面白さが、ここで一つの形として出来上がったような。いやーこれスゲエわ。
 更にああ、これいいなあ!と思ったのが、自身のせいで産まれたウルトロンへの責任を一人背負うとするピムへの、アキラの言葉。一人で背負い続けることへの否定。ピムと言うと、ワスプへのDVを筆頭とした「どうしょうもねーな、コイツ」な部分が語られやすいのですが、一時身を持ち崩す事となった原因の一つに、ヒーロー活動を続けることにおいての負担、科学者として研究が滞ることへの不安や焦燥、一人で背負い続けてしまった事もあるわけで。言葉にするのが難しいのですが、なんか本国Marvelもライターによっては放置しているピムのあり方が、救われたなあと。
 そして次週はウルトロン再誕、増殖するテクノロジーの悪意に、テクノロジーの塊、アイアンマンがニュースーツで立ち向かう! ディスクのシステム上、アイアンマンのウリであるスーツ換装の出番が難しかったからなあ! 大気圏外、アイアンマン! ……あれ? そういや大気圏外といえば、一人そこがフィールドなセカンドヒーローが居たような?
 というわけで、今日の紹介は自己進化、自己増殖、自己再生の三大理論マシーン、ウルトロンで! もう一人のメインキャラ、ハンク・ピムに関してはこの記事こちらの記事でどうぞ。そういえば、バチ魂通信で全身像が公開されている、バチ魂版新ウルトロン、めっちゃかっこいいですぜ!

ウルトロン

ウルトロン

 始まりは、優秀な助手を欲していた天才ハンク・ピム博士の思いつきであった。自身の脳波をベースとした、同程度の理解力を持つであろう従者ロボットウルトロンは、こうして産まれた。

ウルトロン 1号

 高度なAIは自我を持つだけの余裕があり、天才的な頭脳は自らを優れた者、人類を劣る者と判断するようになる。劣る者は世界に必要なく、優れた者、自分だけいればいい。造物主たるピムと決別し、全人類の支配と絶滅を目論み始めたウルトロンは逃亡。以後、何度もアベンジャーズの敵、ハンク・ピムの後悔として全人類の前に立ちふさがることとなる。
ウルトロンは自身を優れた者として認識している。だがその一方で、自身の完璧さにはまだ先があるという事を知っており、科学者であるピムより受け継いだ探究心や常に上を目指す為の思考を持っている。この探究心が執念と結びついた結果、ウルトロンの最も恐ろしく最も強い能力、アップグレードによる無限進化が開花してしまった。
 孤高では勝てぬことを学んだウルトロンは、ディスクウォーズでも結成された(第二期)マスターズ・オブ・イーヴルを結成し、アベンジャーズを追い詰めた。キャプテン・アメリカのシールドやウルヴァリンの爪の強さを認めた結果、6号機よりウルトロンのボディはアダマンチウム製となっている。継いでの7号はセンチネルクラスの巨体となり、15号は自身を量産化しヨーロッパのとある一国の住民を皆殺しにした。これらのデーターは全て蓄積されており、現時点におけるウルトロンは、地球全人類よりも優れた存在なのでは?との説もある。

ウルトロン軍団

 ウルトロンは常に自身のバックアップを用意しており、倒したと思っても思わぬ所から復活する。ネット上に意識を分散、後述する自身が制作したアンドロイドへの「ウルトロン・インペラティブ」という再生原理の組み込み、自意識過剰に見えて外部機器へのバックアップ設置も忘れていない周到さ。一度、アイアンマンのアーマーをベースに再生したこともあるので、トニー・スタークの優れた技術も既に習得している。結果的には失敗作となったが、ドクター・ドゥームによる既存の全能力を組み合わせたタイプも。つまりウルトロンは、地球人類でもトップクラスの工学者二人のテクノロジーも再生復活の過程で習得済みなのだ。
 このように、進化する完璧さを持つウルトロンであるが、彼にも失敗はある。例えば、ウルトロン12号機は突如正義に目覚めた結果、心もカラダもケアしたいウルトロンに。そんな12号は、11号自ら破壊する羽目になった。そして、アベンジャーズに対向するためのアイディア。自身を手助けする助手ロボットの創造。この何処かで見たような閃きが、後々ウルトロンを苦しめることとなる。
 まずは、キャプテン・アメリカと戦時中共に戦ったアンドロイド、初代ヒューマントーチをベースにヒーローであるワンダーマンの脳波を組み合わせて作ったアンドロイドであるヴィジョン。

ビジョン

 体密度の変化による物質透過能力を持つ強力なアンドロイドだったが、ビジョンはウルトロンに反抗。アベンジャーズの元へ逃亡し、以後ビジョンはアベンジャーズの中核メンバーになる。

ウルトロンVSビジョン

 ビジョンの失敗からしばらく後、ウルトロンはもっと親密なパートナーであるアンドロイド。つまりは自分の花嫁となる存在の創造に挑む。自分はハンク・ピムの脳波がベースとなっている。ならば、ハンク・ピムの妻でありパートナーであるワスプの脳波をベースに作ればいい。ワスプをさらったウルトロンは、彼女の脳波を花嫁となるジョカスタにコピーする。

ジョカスタ誕生

 こうしてウルトロンの花嫁、ジョカスタは誕生した。

ジョカスタ

 だが、ジョカスタもビジョンと同じように、ウルトロンに反抗した後、アベンジャーズへ逃亡。ハンク・ピムと良い仲になったりして、ウルトロン涙目の展開になった。その後、第二の花嫁としてアルティマと呼ばれるアンドロイドを製作。彼女はきちんと悪しき心を持っていたが、悪行の方向性の違いのせいで結局ウルトロンと決別する。音楽性の違いで割れるバンドがお前ら。 
 創造主に反逆したアンドロイドであるウルトロン。そんな彼が、創造主として何度も裏切られているのは、順当なのかはたまた皮肉なのか。
 エイジ・オブ・ウルトロン。ウルトロンの世紀。近年展開されたこのシリーズにおいて、ウルトロンは全人類、全ヒーローに完勝する。完全なる敗北からの、ヒーローの抵抗と絶望の底からの起死回生を描いたこのシリーズ。その絶望を作り出すだけの進化成長を、既に彼は成し遂げているのだ。

絶望の主

 そしてこのエイジ・オブ・ウルトロンのタイトルは、コミックスではない別の作品へと引き継がれることになる。大作映画アベンジャーズの続編となるアベンジャーズ2、アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン。2015年、世界はウルトロンの脅威を識る――。

映画版ウルトロン