フューチャー・アベンジャーズなコラム~その3~
フューチャー・アベンジャーズ第3話!
レッド・スカル争奪戦という、一瞬「特にいらんかなあ……」と思い浮かんでしまうタイトル。アイツ、手元にいると祟りそうだし……。
マコトの相棒であったブルーノが退場。これが一時なのか、永遠なのかは未だわからぬものの、謎のエメラルドの翼&エメラルド・レイン計画同様、今後のターニングポイントとなる一件でしょう。しかしレッド・スカルは、人の心を弄び、真相をはぐらかす姿がよく似合う。誠意の無い弁舌とそれを補っても余るほどのカリスマ性は、レッド・スカルの武器よのう。
しかしブルーノはどういう扱いになるんだろうねえ。例えば、死んだと思われていたものの、記憶と友情を全部失って、敵として出てくるとか。あれ……? そんな人、どこかでというか、今話で登場したような……?
ああ、そうか。今回はディスクに入ってないから、普通にトニーが着替えてもおかしくないんだ。つまり、キャプテン・アメリカもマスクを外せるし、ソーはアスガルドに行けるし、ワスプもどこまででも飛んでいけるし、ハルクは……ハルクは……アニメだとスルーされる傾向にあるけど、ハルクは今回、ブルース・バナーに戻る機会があるのかしらね。
レッド・スカルを狙う、謎の暗殺者ウィンター・ソルジャー登場。トニーが他のヴィランと照会する際、レッキングクルーやバイビーストと、ディスク・ウォーズに出てきた面々の顔が出てきているのが、心憎い演出ですね。
テック属性の頂点にして、科学関係に関しては極みとも言えるアイアンマン相手に戦略や戦術で立ち向かったウィンター・ソルジャーの選択は正しかったものの……その極みですら対処できない技術をウィンター・ソルジャーに与えたのは誰かって話ですよ。レッド・スカルですら計画の一部として扱い、トニー・スタークを出し抜く技術を持っている存在。こいつぁ、とんでもない大物のニオイがするぜ。
ステルス技術はステルス技術として、ステルスしている時のウィンター・ソルジャーの声の反響、どっから出てるの?って感じで凄かったですね。音関係は貧弱なPCで聞いても違いが分かるんだから、大変なことだよ。
アベンジャーズに弟子入りしたマコトたち。ここでやはり気になるのは、ウィンター・ソルジャーの存在。ヒーローの弟子となりヴィランからヒーローになろうとしているのがマコトなら、ヒーローの相棒(サイドキック)でありながらもヴィランになってしまったのが、バッキーことウィンター・ソルジャー。何気にマーベルって、ヒーローと年若きサイドキックの構図が意外と無いからなあ。そういうのは、バットマン&ロビンや、フラッシュ&キッドフラッシュのような組み合わせを有しているDCコミックスの出番。
なんでマーベルがヒーローとサイドキックの構図が少なめかというと、元々アメコミにおける若手キャラはサイドキックで育てるべし!が鉄則としてあった中、マーベルでサイドキックではない独り立ちした若者のヒーローの成功例であるスパイダーマンが誕生したからというのがあります。
サイドキック以外に若者を立たせる手段が確立された結果、マーベルは若手ヒーローチームのX-MENのような、サイドキックに拘らない作風になっていきます。この手法をスパイダーマンで確立したのは、今後マーベルをひっぱっていくスタン・リーなんだから、そりゃそうなるよね。そしてスパイダーマンより早く活動していたキャプテン・アメリカ&バッキーは、スパイダーマン以前の鉄則に則ったコンビであり、結果的にマーベルでは珍しい一例となってしまったわけです。
実際のところ、サイドキックで若手を育てることにも利点はあるので、どちらの方針が優れているというのは特に無いです。厳密にマーベルはこうで、DCはこう! というのではなく、ふんわりとした両社の傾向として、頭の隅にでも置いておいてもらえれば。
しかし、決意の回に、真逆の存在が出てきているのは、これどう考えても、キャプテン・アメリカとウィンター・ソルジャーで何か起こる予兆よねえ……。というわけで、今日の紹介はウィンター・ソルジャー(バッキー・バーンズ)! 何かが起こる前に、色々と補完しておこう! しかし今回、やけに紹介が長くなったなあと思ってたけど、実質ウィンター・ソルジャーとバッキー・バーンズの2キャラを纏めて紹介しているようなもんだから、そりゃ長くなるよね!?
ウィンター・ソルジャー(バッキー・バーンズ)
第二次世界大戦を駆け抜けた、アメリカの英雄キャプテン・アメリカ。シールド一つで戦場を駆け回る彼の隣には、何時でも相棒と呼べる少年がいた。その名はバッキー・バーンズ。キャプテン・アメリカの相棒、年若き英雄として名を残す、もう一人の伝説の英雄である。父親が軍人であった縁から、軍人キャンプで生活していた少年バッキーは、ある日偶然キャプテン・アメリカのコスチュームに着替えているスティーブ・ロジャースと遭遇してしまう。その縁から、バッキーはキャプテン・アメリカの相棒に抜擢される。
バッキーはキャプテン・アメリカと共にヒーローチーム『インベーダーズ』に参加する一方、若者で構成されたチーム『ヤング・アリーズ』にも参加。キャプテン・アメリカの相棒にふさわしい才覚を持った少年は、バロン・ジモの無人爆撃機計画を阻止しようとした際、キャプテン・アメリカと共に行方不明になった。無人爆撃機に取り付くものの、極寒の海に墜落。凍結状態となっていたキャプテン・アメリカは数十年後、彼を発見したアベンジャーズにより蘇生される。蘇ったキャプテン・アメリカの脳裏に焼き付くのは、無人爆撃機に飛びつき、無人爆撃機と共に爆散したバッキーの姿だった。英雄として戦い散った一人の少年の死は、キャプテン・アメリカ並びに多くのヒーローに影響と教訓を与え、若手ヒーローに対する慎重な態度の一因となっている。
だが、バッキーの第二次世界大戦中の活動や、その死にはきな臭い点がある。いくら才能あふれる少年とは言え、超人であるキャプテン・アメリカや他のヒーローと常人のまま肩を並べて戦えるものなのか? キャプテン・アメリカはバッキーが爆死したと言っているが、当人も窮地であった状況で、本当に死亡を確認できたのか? アメリカ軍の主導によるプロパガンダ計画や、行方不明となったキャプテン・アメリカやバッキーの代役となった男たちの存在と、キャプテン・アメリカとバッキーに関する様々な情報が氾濫。正確な情報は時の中に埋もれていくままだった。
死して遺る、バッキーの謎。だがその謎は、誰もが予想すらしていなかった、最悪の形で解き明かされることとなる。
アメリカとソ連の対立が深まる冷戦時代、一つの伝説があった。ソ連の諜報機関KGBには、秘密兵器と呼ばれる暗殺者がいる。どのような敵陣にもするりと入り込み、証拠を残さず標的を抹殺する。その暗殺者は銃火器やナイフの達人であり、たとえ武器を奪ったとしても、その格闘術はさらなる達人の極みにある。暗殺者は普段KGBにより凍結保存されており、大きな仕事の際にのみ解き放たれる。不可思議な暗殺者の伝説は真偽が明らかにされぬまま、ソ連の崩壊と共に消え去った。
しかし、眠り姫は実在した。KGBが集めた超兵器が眠る倉庫のカプセルにて、眠り続ける男。そんな彼が大いなる悪意に晒され、目覚めた瞬間、伝説は現代に蘇った。数年眠り、冬の半年間だけ活動する兵士。伝説に刻まれたその名は、ウィンター・ソルジャー。ウィンター・ソルジャーは伝説の衣を脱ぎ捨て実在する暗殺者として、多くの破壊活動や暗殺を実行。
だが、表立って活動したことにより、今まで虚ろであったウィンター・ソルジャーの姿形が明らかになってしまう。左腕が金属製の義手となり、多少容貌は成長しているものの、ウィンター・ソルジャーは死んだはずのバッキー・バーンズに酷似していた。ウィンター・ソルジャーを目撃したキャプテン・アメリカは、必死に疑惑をはらおうとするが、やがて決定的な資料が発見されてしまう。ソ連の極秘計画であるウィンター・ソルジャー計画。被験体とされたのは、無人爆撃機での爆発後、密かに回収されたバッキー・バーンズ当人だった――
バッキーはそもそも、ただの孤児ではなかった。軍人キャンプを生活の場としたバッキーは、米軍だけでなく他国の特殊部隊にも出向、16歳の若さで既に一流の兵士として完成しようとしていた。米軍は年若きエリートであるバッキーに注目、「10代の少年が英雄キャプテン・アメリカと共に戦う」という戦意高揚の物語を作ることを画策する。こうしてキャプテン・アメリカのパートナーとなったバッキーは、最終的に無人爆撃機と共に爆散するまで、米軍の“マスコット”としての役割を存分に果たした。
海に落ちたバッキーの死体を回収したのは、密かに網を張っていたソ連だった。アメリカやナチス・ドイツ(ヒドラ)が所持する超人を欲していたソ連は、超人と目していたバッキーの肉体から情報を得ようとし、バッキーの蘇生に成功するものの、バッキーは片腕と記憶を失ってしまっていた。更に、彼は超人ではなく常人だった。当初の目的からまったく外れてしまったものの、優れた被験体であるバッキーは、最強の暗殺者を作るウィンター・ソルジャー計画の実験材料に転用されてしまう。
失った左腕は最新型のバイオニック・アームとなり、無くした記憶の代わりに忠誠心を植え付けられたバッキーは、ウィンター・ソルジャーとして数々の暗殺を実行する。殺すためだけに起き、殺しが終われば眠る。ウィンター・ソルジャーの血塗られた日々は、ウィンター・ソルジャー計画の廃棄と当人の封印まで延々と続いた。冬眠を繰り返した結果、ウィンター・ソルジャーの老化速度は非常に緩やかなものとなった。
キャプテン・アメリカも遂にはウィンター・ソルジャーをバッキーと認めざるを得なくなり、かつてのヒーローとサイドキックは激しく激突する。戦いの末、ウィンター・ソルジャーはバッキーとしての記憶と精神を取り戻すが、二つの記憶に困惑した彼は、そのまま姿を消してしまう。
自由の身となったウィンター・ソルジャーは、窮地に陥ったキャプテン・アメリカを救った後、フリーのエージェントとしての活動を開始。日の当たらない裏社会で生きることを誓った彼は、自身の蘇生直後に起こったヒーロー同士の大乱シビル・ウォーとは距離を置いていた。
だが、シビル・ウォーの終戦直後、キャプテン・アメリカは死亡。アメリカは象徴となるヒーローを、ウィンター・ソルジャーは親友を失ってしまう。キャプテン・アメリカは、誰かが継がねばならない。死したキャプテン・アメリカのシールドとコスチュームを持つトニー・スタークが後継者として選んだのは、保管されていたシールドを盗み出したウィンター・ソルジャー……キャプテン・アメリカの友であるバッキー・バーンズだった。バッキーは政府やトニーに従うのではなく、自らの信念に従うことを条件とし、キャプテン・アメリカのコスチュームとシールドを受領。死亡したキャプテン・アメリカ(スティーブ・ロジャース)が帰還し、再びキャプテン・アメリカになるまでの数年間、バッキーは新生キャプテン・アメリカとして活動していた。
スティーブとの違いは、コスチュームがウロコ状ではなくなめらかなこと。また、ウィンター・ソルジャーとしての経験もあってか、銃器の使用も戦術に組み込んでいた。スティーブの本格復帰後のバッキーは、再びウィンター・ソルジャーに復帰することとなる。
ウィンター・ソルジャーの暗殺者やスパイとしての能力は、十分ヒーロー活動に流用できるものであった。武器でも素手でも強い彼であるが、裏技とも言えるのが左のバイオニック・アーム。この義手に関しては、ソ連時代から定期的なアップグレードがされており、左腕のパワーは超人級、その硬度は防御にも使用できる。更に裏技として、取り外されたバイオニック・アームの遠隔操作という荒業もある。バイオニック・アームは単体でもそれなりの戦闘能力を有しており、正に奥の手である。
ソ連の暗殺者であったウィンター・ソルジャーは、同じソ連の諜報員であったブラック・ウィドウを指導していたこともあり、一時期は恋人同士、現在でも付かず離れずの関係となっている。
また、現代の若手ヒーローも、若手ヒーローの先駆けとも言えるウィンター・ソルジャーには敬意を払っており、第二次世界大戦中を知るヒーローであるキャプテン・アメリカやアトランティスの王ネイモアとは戦友の絆がある。だが、同じ第二次世界大戦を知る男、ウルヴァリンとの関係は非常に複雑である。以前に蘇生された際、ウェポンX計画から逃亡を図るウルヴァリンを密かに手助けしていたのだが、その一方でウルヴァリンの日本人妻イツを事故で殺害してしまった。
身ごもっていたイツからは、ウルヴァリンの息子であるダケンが密かに産まれており、後に邂逅した父ウルヴァリンと息子ダケンはまともな親子関係とはいい難い殺し合いを繰り広げることになる。つまり、ウルヴァリンの妻を殺し、親子で殺し合う運命の一端を、ウィンター・ソルジャーは担ってしまったのだ。ウルヴァリンも昔のこととしてある程度割り切ってはいるものの、そこには間違いなくふつふつと煮えたぎる感情がある。そしてこの一件のせいで、時折ウィンター・ソルジャーはウルヴァリンのヴィランにカウントされてしまうことも……。
マーベル・シネマティック・ユニバースでは、まずキャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャーで、キャプテン・アメリカと同年代の幼馴染バッキー・バーンズが登場。
バッキーはファースト・アベンジャー作中で行方不明になるものの、第二作キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャーにてウィンター・ソルジャーとして復活。そして第三作のシビル・ウォー/キャプテン・アメリカでは、キャプテン・アメリカとアイアンマンの争いに関わるキーキャラクターとして登場している。映画の設定上、年齢や出自に変更があるものの、キャプテン・アメリカと題された映画には、必ず重要人物として出演しているのがバッキー・バーンズ、そしてウィンター・ソルジャーだ。
最後に、映画キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャーの下地となった「死んだはずのバッキー・バーンズがウィンター・ソルジャーとして蘇生する物語」である、キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー (ShoPro Books)について紹介したい。
実はバッキー・バーンズは、この本が出るまで死亡扱いであり、スパイダーマンのベンおじさんと並ぶ※「蘇らない人物」扱いだった。しかし、バッキーの死体は見つかっていないことを突破口に、バッキーはウィンター・ソルジャーとしての物語を付与され、数十年ぶりの復活を果たす。今回のテキストで言うなら、バッキーの謎以降の記述は、基本ウィンター・ソルジャーにて新たに設定されたものである。
正直、王大人の死亡確認レベルの力技ではあるものの、それを押し通すだけの魅力と、バッキー・バーンズの復活を出迎えるに相応しいのが本作だ。邦訳されたアメリカン・コミックスの中では、トップクラスに推したい作品なので、未読ならば是非とも手にとって欲しい。
※正式な復活自体はしていなかったものの、回想エピソードや、タイムスリップエピソードには登場。例外として数多の死んだキャラクターと共にクローンとして復活したが、相手がデッドプールなのでお察しな目にあった。