映画デッドプール感想~バーリ・トゥードver #4~

映画デッドプール感想~試写会ver~
映画公開記念 デッドプールを知るためのQ&A
映画デッドプール感想~上映後ver~

 映画デッドプール感想バーリ・トゥードver#1#2#3の続きとなる#4です。前回に引き続き、ネタバレに小ネタ解説と、なんでもありなバージョンになっております。なので読むのは、鑑賞後推奨です。

 

 

 

 

 ああそうだ。ウェイド・ウィルソンってのは、ああいう切ないところがある男だ。

 アッパラパーでどんな状況でも自分の好き勝手に生きるイメージのあるデッドプールことウェイド・ウィルソンですが、その性根はわりとまっとうで純情です。頭のネジが全部外れているように見えて、肝心なネジに関しては、きっちり締まっています。コミックスにおける相方のケーブルは、逆に全部ネジが締まっているように見えて、肝心なところが抜けているフシがある。

 この映画は、実はバレンタインに合わせた(注:本国での公開は2月)純愛映画なんだよ! という世迷い事が意外とそれと感じられないのは、自身の醜い顔を気にしてヴァネッサの手を取れなかったウェイド・ウィルソンの純情があったからでしょう。

 

 

「キャプテン・デッドプール! ……キャプテンはいらないな」

 そう言いつつ、BGMでキャプテン・デッドプール~♪流している時点で、この映画ホントなめくさってますね! 褒め言葉だよ、チクショウ! しかしこの映画、タイヤのホイールを使ってのシールドスローに後述のあの空母にと、スパイダーマンネタよりもキャプテン・アメリカネタの方が若干多く目立つところにある気がしますな。いや待て、スパイダーマンだろうがキャプテン・アメリカだろうが、なんか危ないとこに足突っ込んでることには変わりないぞ?(ヒント:マーベル・シネマティック・ユニバース)

 そんな軽快なBGMと共に描かれる、ウェイド・ウィルソンがお馴染みのデッドプールのコスチュームを手に入れるまでの物語。あとエイジャックス一派の粛清。最初白いコスチュームが、赤になる過程。だんだんとコスチュームが本格化していく流れは、デッドプールはじめて物語ですな。しかし、スーパーヒーロー、特に手弁当でコスチュームを用意する必要があるストリート系ヒーローは、裁縫スキル高いよな……まあ、裁縫スキルが無くても、コスチュームを用意してくれる専門店なんかも、結構あるのですが。

 エイジャックス一派は、炎上した施設からの脱出は余儀なくされたものの、超人兵士の生産施設は他所に移設。ミスター・スミスを始めとした部下たちや関連設備は無事と、ウェイド・ウィルソンの反乱における組織的なダメージは少なかったわけですな。デッドプールの殺戮シーンでの、多岐な場所での戦いから見て、思ったより手広く大きな組織であったことも伺えます。

 そんな組織も、エイジャックスを求めるデッドプールの大活躍で、大ダメージを負うわけですが。映画導入部でエイジャックスが顧客相手に「供給経路に問題がある」と言って、実際に超人兵士の供給が遅れている辺り、デッドプールの草の根活動によるダメージはかなりあったのではないでしょうか。

 ……作中語られませんでしたが、エイジャックスをミュータントに覚醒させたのは、誰なんでしょうな。自分でやったにしても、まずその技術の大本が必要なわけで。この辺り、まだまだ膨らませられる設定だなあ。

 

 

 ウィーゼルの淡々とひどいことを言うスタイルは、映画変態仮面の登場人物、特にムロツヨシ演じる大金玉男に通じるところがある――

 変態仮面を愛しデッドプールを愛す、心に獣を飼う男こと当サイトの管理者によるウィーゼル評ですが、中々に見事な分析だと思います。さすが、やるぅ。なお、字幕版と吹き替え版の両方を観るとわかるのですが、ウィーゼルを演じるT・J・ミラーの淡々としたテンションを、吹き替え担当の佐藤せつじさんは見事に再現しております。
 
コミックス版ウィーゼル&映画版ウィーゼル

 コミックスにて、デッドプールのサポート役として登場するウィーゼル。主にハッキングや武器の調達といったバックアップを担当と、いわゆるバットマンのアルフレッド、パニッシャーにおけるマイクロチップのポジションです。

 そして映画化に際し、コミックスのウィーゼルから映画のウィーゼルに引き継がれなかったもの。それは、天才的頭脳。コミックスのウィーゼルは掛け値無しの頭脳を持ってまして、科学者として超科学により造られた多数のアイテムを理解できる上に、独力でアイアンマンばりの巨大スーツを制作。ハッカーとしては、世界有数の天才であるファンタスティック・フォーのリード・リチャーズが製作したシステムすら操れると、並々ならぬ頭脳を持っています。トニー・スタークやミスター・ファンタスティックやハンク・ピムやビーストのように天才キャラとしては前に出てこないものの、優れた頭脳を持っている。マーベルユニバースにゴロゴロ居る、野にいる天才にカウントしてしまっていいかと。

アーマード・ウィーゼル

 なお、そんな天才が道を踏み外した理由は、前途洋々な大学生時代に薬物使用疑惑をかけられたというか、疑惑の原因はタイムスリップしてきたデッドプールなので、つまりは全部デッドプールのせい。たとえ頭が良くてもというかむしろそのせいなのか、デッドプールのウィーゼルに関する扱いはコミックスの方が数段ヒドいです。コミックスのウィーゼルが映画のように淡々とディスったら、ホラー映画の辺りで多分デッドプールさんキレてるんじゃね? いや、アボカドかな……。

 余談ですが、ウィーゼル(WEASEL)とはイタチの意味であり、これはコードネームのようなもの。ではウィーゼルの本名はというと、ジャック・ハンマーです。よりによって、超肉体派のあの人と同姓同名とは……あっちは正式にはハンマだけど。

 

 

 デッドプールの楽しい我が家。第16の壁の破壊やブラインド・アル登場の勢いに隠れがちですが、デッドプール邸にもあちこちに秘密……というかフィギュアが隠れております。きちんとしたフィギュアもあれば、人体模型やぬいぐるみに犬のドッグプール。自宅シーンでは絶対画面に何かしらのフィギュアが写ってるんじゃないの? と言うぐらいにたくさんありますので。

 そして個人的に注目したいのは、部屋にある真っ赤なスクーターの残骸。仮面ライダー1号にはサイクロン号、スパイダーマンにはレオパルドンスパイダー・ジェット、デッドプールにはスクーター。いや実は、コミックスにおけるデッドプールの乗り物としてスクーターは有名でして、作中や表紙で乗っているだけでなく、レゴシリーズでも“デッドプールのスクーター”として玩具化&ゲームに登場したりしているのですよ。

デッドプール号

タスキーと二人乗り

羨ましいだろ、小動物

 ハーレーを乗りこなすウルヴァリンやキャプテン・アメリカと比べると、どうしても小ぢんまりとしたイメージが有るのですが、小回りの良さや意外な素早さ、スクーターに乗って街を駆け回る姿は、いかにもデッドプールらしいなあと感じさせるトコがありますね。

 

 

 盲目の老婆、ブラインド・アル。映画ではデッドプールが求めた“目の見えない同居人”という条件に合ったルームメイトでしたが、コミックスでは元エージェント。コミックスだと、ガンが発覚する前のウェイド・ウィルソン時代からの付き合いなので、ちょっとだけ映画では付き合いが縮まっています。

コミックス版ブラインド・アル&映画版ブラインド・アル

 で。コミックスでのブラインド・アルって、どんなエージェントだったの? という話なのですが……正直、わかりません! そもそもウェイド・ウィルソンと始めて会った理由も、年をとって厄介者になったブラインド・アルを暗殺してくれとの依頼から。当然その時点で老いてますし、若い時の彼女に関しての描写は、ほぼ皆無です。

 じゃあそもそも、エージェントかどうかすら怪しくね?という話になってしまうのですが、ウェイド・ウィルソンに暗殺されかけていた時点でイギリス所属の工作員であり、目が見えない今でもマシンガンぐらいは撃てるので、流石にここはホラでないと思います。ブラインド・アルがマシンガンを振り回した時、おもいっきり誤射されたタスクマスターが「待って! ご婦人、落ち着いて!」と、必死で止めてましたが。

 大体の年齢から逆算すると、彼女の全盛期はおそらく1940年代、第二次世界大戦の頃となります。同じく当時現役バリバリで、今でも現役バリバリなキャプテン・アメリカと共に活動していたとの話もありますが、これも真相は不明です。ただ、ブラインド・アルがデッドプールに渡したメダルを見たキャプテン・アメリカが「これは私の持っていたメダルだ」と驚いていたので、最低限面識以上のものはあったのでは? と推測は出来ます。

メダル授与

謎は深まるばかり

 仮説として、当時のアルはエージェントではなくスーパーヒロインだった。第二次世界大戦当時の“ブラック・ウィドウ”だったのでは。こんな説もありましたが、今のところ多分違うかなーという感じに落ち着いております。彼女が何者なのか、それは今後彼女を題材にする気が起きた、ライターのみぞ知る……。

 しかしブラインド・アルはキャプテン・アメリカと繋がりがあって、ウィーゼルもピーター・パーカーやグウェン・ステイシーの同級生だったと、ホントこの人ら、X-MENというかマーベル・シネマティック・ユニバース寄りの人間関係持ちだなあ。この映画のベースとなった最初期デッドプールも、顔治すためにハルクの血を取ってこようぜ! みたいなG級クエストをやっているので、アベンジャーズ寄りと言えなくもない。
デッドプールのキャラクターは連載を進める毎に固まっていくわけですが、X-MENをベースにしながらもアベンジャーズに密接に関わってく構図、既にこの構図ができていた最初期の時点で、そのフリーダムさはもはや運命として定まっていたのかもしれませぬ。

 

 

 さてこの勢いで最後まで……! と思ったものの、文字数的にこれヤバいことになりますよね? と正気を取り戻したので、今回はここまでで。全四回のつもりが、延長戦に突入。これもみんな、デッドプールって奴の仕業なんだ

 

 

映画デッドプール感想~バーリ・トゥードver #5~