映画デッドプール感想~バーリ・トゥードver #3~

映画デッドプール感想~試写会ver~
映画公開記念 デッドプールを知るためのQ&A
映画デッドプール感想~上映後ver~

 映画デッドプール感想バーリ・トゥードver#1#2の続きとなる#3です。前回に引き続き、ネタバレに小ネタ解説と、なんでもありなバージョンになっております。なので読むのは、鑑賞後推奨です。

 

 

 

 

 ガンを治し、ヴァネッサと共に生きるため、ミスター・スミスの誘いに乗ったウェイド・ウィルソン。だが行く先は、地獄そのもの――

 施設名“工場”の運営者として登場したエイジャックス。コミックスだとホスピスと呼ばれた、この施設。ホスピスではキルブルー博士という人物が所長に就いており、エイジャックスはアシスタントだったので、ワンランク昇格したことになります。おめでとう、フランシス!

 

 

 グリーンのコスチュームはやだ。口を縫い合わせて、喋れなくしてやろうか。この施設でのシーンは、わりと原作ネタが多めなのですが、その一方、グリーン・ランタンやX-MEN:ZEROのネタもぶち込んできます。でも、思いのままになり高い能力を持つ超人兵士の販売って意味では、口を縫い合わせて喋れなくなったデッドプールもといウェポンⅪは、商品としての完成形じゃあるめえか。

 

 

 ベッドに縛られ移動するウェイド・ウィルソンが目撃した、何やら身体中から骨のような突起物を生やした患者の女性。この女性は、ニューヨークの下水道に潜んでいたミュータントの一派“モーロックス”の一員であり、体内の骨を変形増殖させる能力を持つマロウでは無いかと言われてますね。

 マロウを知らない? ほら、あの人ですよ、あの人。マブカプ2でケーブルと一緒に新規参戦した彼女!

マロウ(X-MEN)

 おそらく、モニターの前で「あー……!」となっている人、多数。マブカプ2やりこんでても、なかなか気づかないカメオっぷり。いやむしろ、カメオで消費してしまって、よかったんだろうか。デッドプールの次回作とか別のX-MEN作品に、出たりしないかなー。

 

 

 責任者であるエイジャックスの助手として登場した、女スタローン、エンジェル・ダスト。コミックスでは前述のマロウと同じモーロックスの一員なのですが、その辺りの事情は特に関係なく登場。ビジュアルも比較的コミックス寄りなのですが、総合格闘家でもあるジーナ・カラーノが演じた結果、若干ゴツくなっております。若干というか、かなりかな……。

エンジェル・ダスト

 キャラクター性や外見は変わっておりますが、能力は“アドレナリンの操作による腕力や体力の強化”と、コミックスと映画、共に同じ。感情に直結するアドレナリンがパワーの源なため、状況により出せるパワーの上下が激しいものの、コミックスにおける設定だと、能力を最大限に発揮した場合、25トンの物体を持ち上げられるようです。スパイダーマンの腕力が10トンと言われているので、エンジェル・ダストも結構な超人パワーですね。デッドプールの不得手なパワー系そのものだったので、もしコロッサスやネガソニック・ティ(以下略の協力がなければ、危なかったかもしれません。

 なおあくまでコミックス設定ですが、コロッサスは70トン近い物体を持ち上げられる腕力を持っているとか。地道に成長し続け、100トンの壁に徐々に近づいている辺り、X-MENのパワー担当としての面目躍如です。OK、ここでハルクやジャガーノートの名を出すのは禁句だ。アイツらは、最低値からして100トン以上と、基本おかしいからな? 本気だすと、殴るだけで物理無効バリアや次元の壁を破壊と、物理攻撃の枠を超える二人だからな!?

 

 

 エイジャックスの能力である「反射神経の強化。痛覚を始めとする感覚の喪失」って、前者はともかく、後者はその場しのぎでしかない上に、場合によっては弱点だよなあ。エイジャックス、回復力には、プラスかかってませんし、そもそも痛みがないと傷が自覚できません。

 痛みは、人に傷の存在を察知させるためのアラーム。つまり痛みがないと、目で見えないとこの傷は分からず、後ろからナイフで刺されても気づくことが出来ないわけで。定期的に自身の身体をチェックしないと、下手すりゃ傷が膿んだり、血がとめどなく流れていたりして、日常生活で死にます。なんかデッドプールのブサイクな顔以上に、エイジャックスが抱えるハンデの方がきっつい気がしてきた……。

 そういえば、刀で銃弾を弾き返すぐらいの反射神経を持つミュータントが、嘗て映画X-MENシリーズに出てましたね! もしかしてエイジャックスって、彼のコンパチ?

ウェイド・ウィルソン(旧)

 

 

 施設に監禁され、非人道的な実験を受けるウェイド・ウィルソン。この苛烈な実験を受ける流れは、コミックスにおける施設相当の“ホスピス”にてウェイド・ウィルソンが傷めつけられる描写によく似ています。

 コミックスではウルヴァリンのヒーリングファクターを移植と明言されているものの、映画では己の中のミュータント能力を薬物により刺激され覚醒。映画では施設に直送されたものの、コミックスではウェポンXプロジェクトの参加者として特殊部隊に一度配属された後、ホスピスに移送と、違うところというか映画化に際しスリムアップされた部分も多いです。なお“デッドプール”の語源となる死の賭けは、コミックスだとこのホスピスにて開催されておりました。

 被験者であるウェイド・ウィルソンがエイジャックスに延々と傷めつけられるものの、フランシスという名前をいじりからかい倒すという流れも、結構まんまですしね。

フランシス(コミックス)

フランシスと呼ぶな!

 おいおい、画像にデッドプールらしいのはいるけど、他にはAのマークをつけた、変な全身タイツのオッサンしかいないじゃないか。誰だよ、コレ?

 えー、このオッサンが、コミックスにおけるエイジャックスでフランシスです。いや、マジ、ホント。前述の通り、フランシスは責任者であるキルブルー博士のアシスタントとしてウェイド・ウィルソンを始めとする患者たちを傷めつけておりました。人を痛めつけている際の笑顔や、名前をいじられた時の激昂ぶりを見ればなんとなくわかると思いますが、感覚と共に感情も失ったサディストの映画のエイジャックスとは違い、コミックスのエイジャックスは人体強化は施されているものの、サディスティックな激情家です。

 そしてこの激情が、フランシスが映画とは違う末路に向かう原動力となってしまいます。

 

 

 エイジャックス? 洗剤の名前から取ったのか? 本名をディスりつつ、せっかくのコードネームすらダメ出しする、ウェイド・ウィルソンのマシンガントーク。
 その流れ弾が、全世界のデッドプールファンの手により、思いもよらぬ形で多数流出!

エイジェックスは

フランシス!

 ファンも、デッドプール並に容赦無いなコレ……。

 

 

 地獄のような施設においても、めげずにメレディス・バクスターへのにぎりっぺトークで盛り上がる、ウェイド・ウィルソン。そして、カニンガムと呼ばれる男性。コミックスでも彼は、ホスピスにおけるウェイドの友人、通称“ワーム”として登場。ウェイドと共に生き抜こうとしていました。

 映画では顔面の右側に手術痕らしきものを残すだけでしたが、コミックスでは機械そのものが移植されております。

ウェイド&カニンガム

 しかし、エイジャックスがウェイドに業を煮やしていたことが、ワームの運命を歪めてしまいます。いくらウェイド本人を傷めつけても蛙の面に小便なことに気づいたエイジャックスは、対象を友人であるワームに変更。友人を傷つけることでウェイドを苦しめ、更には凶悪な実験に望むワームに「こうなったのはウェイドのせいだ」と言い続けることで友情の破綻を目論んだものの、ワームはウェイドを信じ続けました。

 ウェイドは、限界を迎えても揺るがぬワームの友情に応えるため、死を望むワームの首をひねり、殺害しました。

ワーム(カニンガム)

 施設を燃やした映画ではその眼差しで、首をひねられたコミックスではヒーローと呼ぶことで。自分が死ぬ原因となるウェイドを、カニンガムは恨むことはありませんでした。ワームと呼ばれた男、カニンガムの死と友情は、ウェイド・ウィルソンがデッドプールになるために、欠かせぬものだったのでしょう。

 

 

 実験により限界を迎えた結果、体内のミュータント能力が活性化し、不死身となったウェイド・ウィルソン。窮地における逆転の一手により、拘束は解けたものの、エイジェックスの能力と「顔を治せる」との甘言により敗北。エイジェックスを逃がしてしまいました。

 おそらく、コミックスと映画の最も大きな違い、分岐点を上げるとしたらここになります。

 コミックスでは、ウェイドがワームを殺した後、エイジャックスは自身が勝手に決めた「囚人同士の殺し合いの禁止」というルールに抵触し、死の賭け“デッドプール”の順番もひっくり返し、更に練りに練った嫌がらせを真正面から跳ね返したウェイドに激怒。実験という外面すら放棄し、心臓をえぐり取ってウェイドを殺害しました。
しかし、殺害に至る傷を負ったことで、ついにウェイドのヒーリングファクターが活性化。復活したウェイドは、エイジャックスを殺害し、ホスピスを破壊。炎上するホスピスから、他の患者とともに脱出しました。

 つまり、映画は“エイジャックスが勝利し、施設は崩壊したものの逃亡。ウェイド一人を残し、患者も死亡”したルートで、コミックスは“ウェイドが勝利し、エイジャックスが死亡しホスピスも崩壊。複数人の患者が生存”したルートとなります。つまりウェイド勝利ルートとウェイド敗北ルートですね。

 あくまで別の世界の話ですが、ここで分岐したのかーと考えてみても、面白いかと思います。はばたけ、想像力!

 

 

 コミックスにおけるエイジャックスは、ホスピスにてデッドプールに殺害されました。本来ならば、彼がウェイド・ウィルソンの前に二度と立ちはだかることはありえない話です。しかし死んだはずのエイジャックスは、サイボーグ化し蘇生、ホスピスからの脱出後、コスチュームをまといデッドプールとなったウェイド・ウィルソンの前に再び現れました。

復讐鬼エイジャックス

 生前既に強化改造手術を受けていた肉体はサイボーグ化により一層強化され、肉体にサイバネティクスアーマーを装備することで、更に能力は倍増。死体が火事で焼けたことにより、デッドプール同様の醜い顔となったエイジャックスの頭にあるのは、天井知らずの狂気とウェイド・ウィルソンへの復讐心のみ。

 痛み知らずの身体や、対象を強烈な熱で攻撃するソニックマイクロブームで襲い来るエイジャックスにデッドプールは苦戦するものの、自身の能力と知略の全てをかけることでエイジャックスを撃破。ホスピスで生み出された技術により復活したホスピス悪意の結晶とも言えるエイジャックスの首をへし折ることで、ワームらホスピスの犠牲となった患者の無念を晴らし、自身の過去も精算しました。

 

 

 名前以外フルスクラッチとなったネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドほどではないですが、エイジャックスも映画化に際し大きな変更が施されました。特に、外見。改造前と改造後のどちらにも、エド・スクラインあんま似てないですからね。オプティックブラストとか色々加えて過積載なX-MEN:ZEROのデッドプールとは逆に、映画デッドプールのエイジャックスは能力ビジュアル共に簡素です。

エイジャックス(コミックス)&エイジャックス(映画)

 だからと言って、映画のエイジャックスが決して良くないというわけではありません。原作同様、ウェイド・ウィルソンがデッドプールになる一因を担いつつ、原作通りなら負けるはずの戦いで勝利し作品を未知の展開に持っていく。映画デッドプールにおけるエイジャックスは、コミックスのキャラクターを引き継いだ上で、映画に合わせたカスタマイズが成されております。

 つまるところコミックスの実写化で大事なのは、コミックスのキャラクターをどう再現するかよりも、どう上手く使うかなのでしょう。

 

 

映画デッドプール感想~バーリ・トゥードver #4~