猪木と馬場と戦ったセイバートゥース~タイラー・メイン伝~

 セイバートゥースは隠し玉として取っておけるキャラだと思ってたので、ここでCMに出してきたのは普通にビックリ。むしろ、ここでセイバートゥースを出しても大丈夫なくらいの魔球が控えていると考えたほうが自然かもしれない。それにしたって24年かあ……紅白のポケビ&ブラビしかり、ブンブンジャーのゴーオンレッドしかり、当時の人が無事出てくれるだけで尊いよ。無理があったり、病気を隠してだとしても、それでも出てくれたというのもまた尊い。それにしたって、相変わらずデカい。なにせ、タイラー・メインは身長2メートル越えだもんなあ。

 結果的にタイラー・メインのセイバートゥースは映画第一作のみの出演(X-MEN:ZEROでは演リーヴ・シュレイバー)となったわけですが、実のところタイラー・メインって、結構日本での知名度も高い人なんですよね。ただ問題は、毎回名前が違ったり顔を隠している上に、そのままジャンルをまたいでいるせいで、「アレってタイラー・メインだったの!?」というのが多発しているところにありまして。
 ひとまずタイラー・メインの代表的なキャラクターや当時の名前や今現在についてをつらつらと書いてみます。
 ……なんで気づいたのかって? そりゃ、タイラー・メインが元プロレスラーだからだよ!

 

海賊男 ガリー・ガスパー
 80年代後半、猪木を狙い新日本プロレスを襲撃した謎の海賊男ビリー・ガスパー。手錠を持って、大阪城ホール大会の猪木VSマサ斎藤に乱入するものの、何故か猪木ではなくマサ斎藤に手錠をかけてしまう、わけのわからん事態が発生。え? お前、猪木を助けに来たの? なんなの?とグダグダを極めた挙げ句、最終的に観客による暴動発生というシャレにならんことに。それでもめげずに、海賊男は散発的に新日本のリングに乱入。そんなこんなで一年後、ビリー・ガスパーは巨人の海賊男ガリー・ガスパーを引き連れ、海賊男ガスパーズとして本格参戦するものの、そりゃ暴動の戦犯なんて人気出ねえだろとなり、ガスパーズは短期間でスッと消滅。プロレスではよくあることよ。
 というわけで、この海賊男2号ことガリー・ガスパーの正体がタイラー・メインである。海賊男自体、新日本プロレスどころかプロレス史に残る失敗かつネタギミックなので、大抵の人が一度見たら忘れられない。マニアに聞けば、だいたい「あー……」という顔が見れるキーワードと言ってもいいくらいにアレである。面白い人が扱えば無限に面白くなるネタなので、解説動画を貼っておく。

 結局、海賊男自体は時代の徒花として散ったものの、後年のプロレスイベントの数々(非新日系イベント含む)でちょびちょびあらわれたり、それこそビリー・ガスパーの中の人を務めていたボブ・オートン・ジュニアが海賊男として、65歳の猪木の誕生日を祝うみたいな光景もあったりと、大阪城ホールでやらかしてから即消えなかったことも含め、忘れたいけど捨てられないみたいな複雑さを感じる存在でもある。むしろもう、一周回って、平成前夜のアイコンと言っても過言でもない。過言かな。

 

ザ・ランド・オブ・ジャイアンツ スカイウォーカー・ナイトロン
 海賊男ガスパーズ消滅後、ボブ・オートン・ジュニアは素顔で新日に残ったものの、タイラー・メインは海賊男のまま消えた。そもそも、早い段階でガリー・ガスパーは姿を消し、第三の海賊男バリー・ガスパー(正体はカール・モファット)に入れ替わっている。ガスパーズ消滅から数年後、90年代の全日本プロレスに、とんでもないタッグチームが登場した。プロレス史に残る超大型タッグ ザ・ランド・オブ・ジャイアンツである。なんと、スカイウォーカー・ナイトロンが身長215cm、ブレード・ブッチ・マスターズは213cmと、紛れもなく超大型な二人、超大物なカール・ゴッチとルー・テーズのレジェンドタッグともインパクトだけなら勝負できる。この、スカイウォーカー・ナイトロンの正体が、数年ぶりに来日を果たしたタイラー・メインである。なお、タイラー・メインの身長は公称206cmとの説もあるが、プロレスではよくあることよ(二回目
 全日本は元から大型のレスラーが多いが、この時代には全日本史上すべてにおいて、なんならプロレス史における最強最大のタッグが居た。その名は、大巨人コンビ。全日本プロレスの総帥ジャイアント馬場と人間山脈アンドレ・ザ・ジャイアントの超大型にして超大物タッグである。身長209cmの馬場と身長223cmのアンドレのタッグはとにかくデカく、キャリア末期のアンドレが絶不調であることを差っ引いても、二人並んでいるだけでコイツらには勝てねえという圧があった。
 そしてついに、大巨人コンビとザ・ランド・オブ・ジャイアンツは相まみえることになる。なにせ、全員が身長2メートルを越えていて、リング上で一番小さいのが東洋の巨人ジャイアント馬場という、無茶苦茶な状況である。実際、映像を見たことがあるが、プロレスのリングってこんなに小さかったっけ?となるぐらいに、リング上の四人はデカかった。試合はアンドレがエルボー・ドロップフォールで勝利したが、もうこの試合は規格外にデカい男が四人揃った時点で勝ちとしか言いようがない。

 

 他にも、天をつく大巨人レスラースカイ・ハイ・リーの2代目を名乗ったり、かつてあったアメリカンプロレスの巨大組織WCWではビッグ・スカイのリングネームで参戦と、経歴は多彩なものの、あまり居着かない&毎回名前が変わるので記憶と名前が一致しないのがタイラー・メインである。なお、ビッグ・スカイ時代にタッグを組んでたのはこれまた巨人レスラーのビニー・ベガスであり、後にスタープレーヤーとなるケビン・ナッシュである。どうも、本来セイバートゥース役はケビン・ナッシュにオファーしたものの、スケジュールの都合で叶わなかったという話がある。どうもその繋がりで、タイラー・メインがセイバートゥース役を演じることになった※らしい。ケビン・ナッシュの荒々しさとデカさも、セイバートゥースにカッチリとハマるので納得ではある。ケビン・ナッシュは後に映画パニッシャーにて、巨漢ザ・ラシアンを熱演。結果的に巨人レスラー二人のタッグは、マーベルヴィランコンビとなった。
(※参考記事:Actors Who Were Almost Cast As X-Men

 あまり日本には役者としてのタイラー・メインの情報は伝わっていないが、リメイク版ハロウィンで殺人鬼ブギーマン(マイケル・マイヤーズ)を演じたり、映画やドラマに毎年出続けていたりと、その仕事は今現在まで途切れていない。なんなら、DCのドゥーム・パトロールにも出ている。当時の役者が24年経ってセイバートゥース役に復帰する。これができることは、やはり尊い。

日々雑談~5867~

タイガー・ジェット・シンが受章 「プロレスファンへの栄誉」

 ザ・デストロイヤー、ミル・マスカラスに続いて、三人目の叙勲となった外国人レスラーはまさかのタイガー・ジェット・シン。インドの狂虎や狂えるインド人のイメージ的にはアレですが、東日本大震災の際には多額かつ定期的な寄付をした上で、地元のカナダでは福祉団体や学校も作っている篤志家でもあるので、この受賞は当然かなと。むしろまず世間はカナダ在住!?ってとこにビックリしてますが。そりゃまあ、イメージとしてはそうよな……。

 シンはリング上では荒れ狂っていたものの、ファンの目が届かないところでは紳士的に振る舞い、多額のギャラを貰っても日本では質素倹約を心がけ、溜めたギャラを元手にしての企業にも成功と、ヒール勢や外国人レスラーの枠を乗り越えて、プロレスラーの中でも異質レベルでしっかりとした人だったりします。豪放磊落や親分気質が愛されるプロレス業界では、倹約家かつ人に奢ることもないシンは「ケチ!」と随分言われていたそうですが、ここまで実業家や篤志家として成功していると、単にケチで済ませられる人ではないでしょうね。というか、山師気質の猪木より遥かにマシじゃなかろうか。
 
 なんにせよ、シンの受賞はめでたい話。いやーもう、授賞式で荒れ狂っても、紳士として振る舞っても、流石はシン!となる以上、勝確みたいなもんでしょ。

日々雑談~5867~

 数日前、タイムラインにこの本の話が流れてきたので、ちょうどいいなと購入。そういえば、昔Kindleでアンドレ・ザ・ジャイアントのアメコミを買った時にオススメとして出てきたけど、そん時はなんか買わなかったんだよなー……と思った昔の俺に闘魂ビンタしたい。いや、コレはスゲえ。アメコミだからアメコミのプロレス史が中心だと思っていたら、まずそのアメリカのプロレス史が厚い。カーニバルレスリングからフランク・ゴッチを通って、そのままゴールドダストトリオやゴージャスジョージの時代へ。ゴールドダストトリオの一人であるエド・ルイスがかのルー・テーズの師匠と聞けば、どんだけ昔なのかわかると思います。そもそもフランク・ゴッチが、第一次世界大戦前のレスラーだからね?

 そしてまた、アメリカだけでなくメキシコやイギリス、そして日本のプロレス史もしっかりピックアップ。日本のプロレス史も力道山から猪木みたいな生易しいレベルではなく、日本最古のプロレスラーのソラキチ・マツダから、現在の新日本プロレスの王者オカダ・カズチカまで。1ページに、内藤哲也とグレートカブキとグレート・ムタとウルティモ・ドラゴンが収まってると聞けば、どんだけ広く取り扱っているのかがわかると思います。四天王プロレスや闘魂三銃士やスーパーJカップ関係の熱を見るに、ライターさん、まず間違いなく90年代の日本のプロレスにハマってただろ!

 アメコミファン的にもプロレスファン的にもなにこれスゲえ。そして双方の知識を持つ者の端くれとして紹介せねば! となり、情熱のままにツイート。最初はブログでまとめようとしていたものの、そういやTogetterってあったなあ!と思い出し、久々に使ってみました。まあ、情熱で動く時は、冷静なブログより勢いのツイッターの方が元より向いてますしね。結果オーライということで。

 とりあえず、上記纏めを見ていただければ、これ幸いです。いやしかし、自分のツイートをきっかけにした購入報告がいくつか来てるけど、やっぱそういうのは嬉しいねえ。紹介したかいがあるってもんよ!

日々雑談~5836~

 先日おこなわれた、プロレス四団体合同興行サイバーファイトフェスティバル。DDTやノアの選手たちが話題を提供する中、頭一つ抜けた話題性を作ってみせたのが、武藤敬司。膝を人工関節に入れ替えてから出来なくなったはずのムーンサルトプレスをついに解禁。当人は負けてベルトを落としたものの、話題性や一面ではまず勝者。今、ネットやSNS慣れしたレスラーも増えてきているけど、この武藤の自分を輝かせる才能はネット社会でも十分通じるスキルだな……。プロレスラーと言えば、他人を光らせてナンボなイメージがあるけど、武藤の場合は自分の光を相手に反射させてリングを照らすって感じだからなあ。あくまで光るのは自分。

 そして、こうして大試合でムーンサルトプレスを披露したことで、武藤のムーンサルトプレスのフリは「出せないのに出そうとする」から「いざという時は出す」に変わったわけで。ここ最近は出そうとして出せないムーブが続いてたけど、これも数をこなせば鮮度が落ちて、やがて歓声もブーイングに変わるわけで。もう出来ないのに、やるふりをずっとするってのもアレなわけで。
 でも実際こうしてムーンサルトプレスを出したことで、やるのか!? マジでやるんじゃないか!?という緊張感の付与に成功。もうこれで、一生ムーンサルトプレスを出さなくても、フリだけで客席がずっと盛り上がるって感じじゃないかな。やるのなら、ここしかない!ってタイミングでカードを切ってみせた報酬はデカいよ。

 もっとも、今の武藤の膝の状態でムーンサルトプレスをやるってのは、純粋たる無茶なんですけどね。本来ならばやってはいけないことを、やるべきタイミングでやってみせた。だからこそ、効果も意味もあったものの、リスクもまず間違いなくあった。武藤敬司は、やはりプロレスラー。そうとしか言いようのない、大会場での輝きでした。

日々雑談~5781~

 西暦2000年、プロレスリング・ノアが出来て、DDTでは蛇界転生が幅を利かせていた時代。この時代の俺が「ノアに武藤が入る」って聞いたら「マジか!?」って喜んで、「DDTに秋山が入る」と聞いたら「なんで?」ってなるだろうな。まあね、ノアに何が起こるか知らんので、無邪気に三沢と武藤の邂逅に期待するだろうしね。DDTと秋山は、どう考えてもそこに行き着かねえだろうな。頭から煙が出るくらい考えても、たぶんわからんでしょう。

 漫画界に例えたら、鳥山明がサンデーやマガジンで新連載を始めるくらいに凄いことなんだけど、プロレス界の地殻変動がいかんせん派手なせいか、驚いているけど、腰を抜かすほどにはいってない感じ。本当だったらひえええ……と椅子から崩れ落ちてもおかしくないほどの話なんだけどね。

 実際今、業界トップの新日本プロレスが自分のとこの選手とフリーや外国人のレギュラー選手で十分回せる状況なので、そりゃあ今の新日本の枠外にいるレスラーはどうするかって話よね。元新日本の武藤ですら、おそらく今の新日本の流れに無理やり入れるかと言ったら難しいでしょうしね。新日本に追いつき抜かそうとしているノア&DDTが、こうして枠外の優秀なレスラーを集めていくのは、至るための手段の一つ。追い抜こうとすることへの本気さが、今日改めて理解できたわ。