デッドプールで2013年を振り返りつつ
ふじい(以下F)「マーク・ウィズ・ア・マウス、X-MENユニバース:シビル・ウォー掲載のケーブル&デッドプール。そして先日発売されたデッドプール/パニシャー・キルズ・マーベルユニバース。マブカプ3で鮮烈な日本デビューを果たしてから、幾年月。こうして、デッドプールの邦訳本が三冊も。更には、海の向こうで、単独主演ゲームDeadpoolも発売し、日本発売されずともそれなりに好評。風のウワサでは、かなりの著名人も複数楽しんでいるとか……アメコミにおける現行シリーズも上向きで、好調さがそのまま日本に連動しているかのよう。もはや2013年は、日本におけるデッドプール元年と呼んでも過言ではないな!」
サイレン(以下S)「時は正に世紀末……汚れた街角すぎる……!」
F「だってほら、一昔前は、超メジャークラスなヒーローでも、一年に邦訳が三冊出れば御の字だったじゃないですか……」
S「あ。うん」
F「出版頻度の増加から見ても、ジャンル自体は上向きだと思うんだけどねえ。発売前に重版決定みたいな、ブーム期90年代でも中々無かった事態も起きているようだし。それはそれとして。幾つか、デッドプールのマンガやゲームに連動した企画も行っているけど、なんにしても良い感じ。受注販売のシビルウォーはもう中々手に入らないので除外するとしても、オーソドックスなマーク・ウィズ・ア・マウスと、読む人を選ぶキルズ・マーベルユニバース。通常営業と特別営業の極地が揃っているのもいい。ある程度、予想はしていたけど、キルズの方、アマゾンのレビューでも結構評価割れてるしな……」
S「パニッシャーもそうだけど、ヒーロー皆殺しってテーマは、どうしても嫌なものがあるしねえ。おのれ、ディケイド!」
F「俺のハルクがこんなに弱い筈が無い! まあほら、両キルズの共通点として、デッドプールとパニッシャーには強烈な主人公補正がかかっている反面、他のヒーローは主人公補正と一緒に最大最強の盾“会社の都合”も吹き飛んでいるわけで」
S「身も蓋もないな!?」
F「もし他の邦訳本が無かったら、デッドプールのルール無視っぷりが際立って、デッドプール自体の評価が悪くなっていたかもね。確かにルール無視のきらいはあるものの、普段は枠内になるべく収まろうとし、自らの世界を創作上の物と分かっていても、その人生を全力で楽しもうとする。キルズみたいなフィールドじゃなきゃ、もうちょっと慎ましやかな人ですよ? ケーブル&デッドプールでは、一個人としての苦悩や逡巡が垣間見えてたね」
S「キャラだけでなく実際の人間もそうだけど、多種多様な面があってこそ、その人格に深みが出るわけだ」
F「ああ。そうなることで、こちらのインスピレーションも刺激され、読む楽しみや、二次創作をする際の発想の幅も広がると」
S「最近、イラストやSS、やる夫スレなんかでもデッドプールの姿を見るようになったし、確かに元年というか創成期ではあるのかもな……」
F「何故認めたと言いつつ、そんなに微妙そうな顔をする?」
S「ところで、来年以降どうなるんだろうね」
F「時折やっているデッドプールタイムスリップシリーズが、デーモン・イン・ア・ボトル(79年発売だが80年代扱い)→ヒーローズ・フォー・ハイアーとのコンビ(70年代)→ジャック・カービーのタッチを真似た、光文社版マイティ・ソーにドンピシャな60年代と、段々過去に戻っているからな……なんでも、更に昔、スーパーマン誕生前まで遡るんじゃないかという話も。本編から独立しているバケーション(デッドプール談)のわりには、過去の敵が現代に乗り込んできたりしているし」
S「それも気になるけど、海の向こうじゃなくてコッチの話。来年以降、邦訳はどうなるんだろうなって」
F「今のところ、何も情報は無いな」
S「でも、それなりに売上も好調みたいだし、何らかの次はあるんじゃないか? そうだなあ、適当に次、邦訳されたらいいなーって願っているシリーズ言ってみ? お前の私見で」
F「現行のデッドプールレギュラーシリーズ(第四期)、もしくはチームアップかな。あと、近況に合わせて前期レギュラーシリーズ(第三期)」
S「理由は?」
F「まず共通しているのは、第四期とチームアップは、世界観が隔離気味だからな。つまり単体でで楽しみやすい。2000~3000円する以上、複数冊の購入はハードル高いからね。なるべく、これだけでいい、事前情報とかもあんまいらないから! そういう本を薦めたいなーと個人的に。ハードルは、低ければ低いほどいい。特に、新規参入者へのヒキが強い、デッドプールは!」
S「マーク・ウィズ・ア・マウスへの高評価は、その辺りのお前の好みもあったな」
F「一応、続刊があるけど、無くてもどうにかなる創りだしね。第三期は、連動しているシークレット・インベージョンやダークアベンジャーズが邦訳される流れになっているから。情報の集めさすさ、関連することによる話の深みの増加。多様性のアピールも、これまた大事」
S「なるほど。第四期を選んだ理由は?」
F「クソ面白いからね、第四期。最初のエピソードのあらすじだって“アメリカ歴代大統領がゾンビとして復活! 歴代大統領の(物理的な)罷免権は、デッドプールに託された!”って、そりゃあもう、とりあえず何!?と気にはなるでしょ。総合格闘技のリングで、元プロレスラーなリンカーン大統領(ゾンビ)と戦うシーンは、想像力の大爆発だぜ」
S「チームアップも似たような感じか?」
F「若干違う。チームアップも面白い。だがチームアップには強みがある。一話ごとに、その話でデッドプールと組むキャラにスポットを当て、彼らの魅力も最大限に引き出そうとしている。シングやソーやゴーストライダーのようなメジャーキャラだけでなく、運び屋U・S・エースや吸血牛ヘルカウといった“お前ら、何処に行ってたん!?”なマイナーキャラも。マイナーキャラなんかホント、1から説明しなきゃいけないから、新規読者にも優しい仕様。有名キャラのセレクションなんか、需要バリバリじゃないかな。ただ、マイナーキャラの話も面白いので、普通に邦訳してほしいなと!」
S「ね、熱が入ってきたな。第三期は……X-MEN熱烈加入希望!なエピソードや、日本猿な殺し屋とスパイダーマンとの三つ巴戦なんかが有名だな。有名というか、もうイメージそのもの?」
F「多分なんだが、デッドプールの購読層が一番期待しているの、メイド服のデッドプールだと思うよ? ニーズはある筈。きっと。あと、あの時期のテーマは“ヒーローとは何か、不死身の男はどう生きるべきなのか”という、自分探し的な物もあるので、所々重みや深みがあるというか。探し当てようとした幸せを、全てボブに譲る姿。愛するデスにすら見捨てられるのでは!?と悩む姿。孤独への恐怖からX-MENにすがる姿。尊敬するスパイダーマンの金言から何かを見出す姿。この時期のデッドプールに触れて、俺は彼に惚れ込みました。もう、言い切っとくわ」
S「ところでさ、なんでもアリな極地の、デッドプールMAXはどうだろう?」
F「俺大好きだけど、ちょっと難しいというか、アメコミへの偏見や固定概念を壊したついでに、色々な物を破壊しかねないというか。MAXの世界観と比較した場合、アーカム・アサイラムが普通の病院で、ゴッサム・シティは清潔感とモラルに満ち足りた街に見えかねないからね。大好きなんだけど、出版コード引っかかるんじゃねえかなあ。R-18になっても、驚かんよ?」
S「しかしなんだ、段々、邦訳云々じゃなくて、単にお勧めなデッドプールの話になっているなあ」
F「かまわねえよ。オススメだから、もっと多くの人に見て欲しい、日本語で出版されないかなと願っているんだ。洋書で読むのは、ハードル高いからね。いかんせん、英語できない分、今でもその難しさは、身にしみている」
S「学生時代、学内トップクラスで英語できない男だったもんな。他の教科で補えなかったら、マジ大惨事だったろ」
F「そんな人間が、こうして海の向こうのキャラを紹介するようになるんだから、世の中わかんねーよなー。そんな人間が、必死で読もうとする魅力があると、理解していただければ幸いです。あと、学生の皆さん、今後って誰にも分からんので、勉強できる時は、しといた方がいいですよ? 大人になると、勉強の時間を捻出することから、難しくなるのです」
S「正論だけど、なんだこのオチ」