アメコミカタツキ2 ボーナストラックA面

>あれ先着順だったんですか!?東より西を優先してよかったー!

 正確には「これぐらい刷っておけば大丈夫だろう」という量を、あっさり突破してしまった結果、先着順になってしまいました。一応、過去のデーターと照らしあわせて数を出してはいたんですが……。
 という訳で、お待たせしました。アメコミカタツキ2 ボーナストラックA面、イベントで配った資料をテキストで公開します。前回のB面と同じく、アメコミカタツキ2を既に手にした人向けの物となっておりますので、ご注意を。

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アメコミカタツキ2 ボーナストラックB面

 イベントで配った資料とは別に、もう一つ新たに資料を作成しました。イベントで配った物(A面)は、後日別口で公開します。
 なのでこの記事は、アメコミカタツキ2を手にした人向けの物となっておりますので、ご注意を。

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THE TASKM@STER2

「「ストーカー!?」」
765プロの事務所に呼び出された、デッドプールとタスクマスターの声は、見事にハモった。
「ええ。最近、ウチのアイドル達がストーキングされているみたいでして。それで、お二人の力が借りられればと」
対面に座っている律子は、悩みぬいた表情で二人に依頼する。どうやら、この二人を呼ぶにおいて、律子の中で相当な葛藤があったらしい。
「なるほど。理解したぜ、リッチャン! つまり、あと数時間以内にそのストーカーを全員取っ捕まえて、この机の上に生首を晒せと」
「この国は法治国家なので、出来ればもう少し大人しいやり方でお願いします」
「このデッドプールさんを呼んでおいて、血の一滴も出ない展開。それで視聴者が納得するとでも……?」
タスクマスターは、ナイフを取り出すとデッドプールの両手首の頸動脈をいきなり掻っ切った。
「ギャー! 血が、血がピューピューと!? なにこれ、水芸!? 年末に向けて、かくし芸のバリエーション、一つ増えちゃった!?」
「これで貴様の気もすんだだろう。だが、コイツの言う事にも一理ある。我輩たちを呼ぶというのは、金銭的にもオススメできない。税金を払っているのだから、ここは官憲に相談すべきである」
「警察には相談したんですけど、ストーカーの尻尾もつかめなくて。もし本当にストーカーがいるとしたら、証拠の隠し方がプロのやり方だと警察は言ってました」
「証拠集めには定評がある、日本の警察がプロと断言する相手。それならば、我輩たちを呼び出したことも、過剰対応ではないな。で、結局誰がストーキングされているのだ? 複数人だな?」
「ああ。それは」
「オレのあずささん以外の誰かだな? 誰だ? 少子化問題推進委員長のマコトか? お姫ちんなら、おそらくNASAの連中だから、ストーカーじゃないぜ?」
血がようやく止まったデッドプールは、いきなり断言した。そしてついでに、ひどい事を言った。
「なんで、あずささんじゃないって断言するんですか?」
「うん。最近、チームアップの更新がなくてヒマだから、アイドルに何かあってはいけないと、オレ、あずささんのおはようからおやすみまで見張ってたんだよ! 見た感じ、ストーカーなんて怪しいヤツは居なかったぜ? 居たのは、愛するジュリエットの寝姿を見守る、ロミオだけだよ!」
スパーンと、カッ飛んで行くデッドプールの生首。タスクマスターは、刀をしまいながら生首をキャッチ。律子と自分達の間にある机に、ドンと置いた。
「これで、問題解決である」
「ですから、この国は法治国家と言ったじゃないですか……」
だんだん律子も、デッドプールの扱いに慣れ始めていた。

 

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肝を試す

 古くから、度胸試しという物は存在する。蔦を足に結んでのバンジージャンプ、壁を目指してのチキンレース、崖に向かってのムーンウォーク。どれも、死というリスクを肴にすることにより、自身の性根の強さをアピールしているのだ。
 だが、死というリスクを背負うということは、実際に死ぬ可能性もあるということだ。こんなやらなくても良いことをわざわざして死んでしまったら、見送る人間も悲しみよりも馬鹿らしさが先に来る。賞賛を受けようとして、嘲笑される、全く馬鹿らしい話だ。
 ならば、自身の心の強さをアピールでき、なおかつ命を失う危険性が殆ど無い度胸試し。そんな都合の良いものがあるのかと聞かれれば、1つだけある。それは、肝試しだ。幽霊といういるかいないか分からない物を相手に、自分をさらけ出し度胸と肝を試す。幽霊なんてものがその場にいなければ、平穏無事なまま皆の賞賛を惜しみなく浴びられる。命を必ずベットしなければいけない度胸試しと違い、なんとローリスクでハイリターン。賞賛なんて無形の自己満足と言われれば、元も子もないが。
「だから、いい場所見つけたんだって! みんな誘って、肝試し行こうぜ!」
 そんなにローリスクだからこそ、ローリスクでハイリターンなものを手に入れて、さらに上の報酬を狙おうとする欲深い輩もいるわけで。
 彼はいないと考えているから、こういうことが言えるのだろう。だがもしも、幽霊なんてものがその場にいた時、おそらく肝試しは崖の下や硬い壁よりもおぞましい物に、全てを支払うことになるのに。
 それが、分かっていない。

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海を覗くか 陸で暮らすか

「幽霊が見えるかって? 見えない。っていうか、見たくないよ」
 ある日僕に「姉さんは霊って見えるの?」と聞かれた姉さんは、そう言って、ぷいっと横を向いた。その話は、ここで終わった。

 何故その番組を見ていたのかは、覚えていない。たぶん、テレビを付けたら、そのチャンネルに偶然合わさっていたからだろう。つまり、暇を潰すため、なんでもない。
 テレビでは、夏恒例の怖い話特集みたいなものをやっていた。背筋が冷えるほど怖いなら、もっと暑い時期にやってくれればいいのに、どうしてこう毎年、夏の終わり、秋の涼しさが見える時期に放映するのだろうか。
『いますよ。そこに。じーっと、女の子が冷たい目で見ています』
 霊が見えるという霊能者が思わせぶりなことを言って、スタジオが悲鳴や感嘆に包まれる。音量を消して見れば、思わせぶりなオッサンが何も無いところを指さして、何故かスタジオに多数の驚き顔という、シュールすぎる番組になる。ひょっとしてそちらの方が、面白いのかもしれない。僕は、リモコンにある、消音のボタンを押そうとした。
「ん? 面白いところなのに、チャンネル変えるの?」
 いつの間にか、居間に来ていた姉さんが、やけにニコニコ、上機嫌で腰掛ける。片手にビール、口にはさきイカ。ああ、この人は、見事に酔っている。
「女の子の霊がいるって言ってもねえ。この人にしか見えてない、一人が見えていると言い張っているだけじゃない。質の悪い、パントマイムみたいだ。笑えるねえ」
 ケラケラと笑う姉さん。この人、どんだけ飲んだんだと、ゴミ箱を確認する。ゴミ箱は、軽く潰された空き缶で詰まっていた。貰い物だと言って、ビール缶満載のダンボールを抱えて帰ってきた時点で、この展開を予測しておくべきだった。僕の迂闊だ。
「だいたい、本当にまるっと全てみえるんなら、霊能者なんかやるわけない」
 どの宗教のやり方にも見えない除霊を霊能者が始めたのを見て、姉さんは怖気を吐き出すように、呟いた。

「見えるから、霊能者をやるんじゃないのかよ」
「んふふ。アンタは、わかってない。わかってないよ。じゃあ、霊が見えるということを説明してあげましょうか」
 うわあ、すごく酔ってる。姉さんはニコニコしたまま、手を伸ばすと横に大きく広げた。
「想像しなさい。広い海を、アンタは今、海岸で海を望んでいる。青く深く、どこまでも続く海を」
 ああ、さっきの手を広げる仕草は、水平線をアピールしたかったのか。
「目を凝らすと、魚群が見える。時折、トビウオがぱちゃぱちゃ飛んでたり。実際目にすると、キレイよね、トビウオって」
「あの。それは霊じゃなくて、魚の見方じゃないかなあ……」
 霊能者の話が、漁師の話にスライドしようとしている。
「だから、アンタは駄目なのよ」
 酔っぱらいに駄目だしされるという、屈辱。
「あくまで喩えよ、たーとーえ。霊が見えるっていうのは、コレね。魚群を水上から望むみたいな。ああ、なんかあっちの方に魚がいるっぽいなー。霊感が鋭いって人は、だいたいこんな感じじゃないかなあ」
 視覚で見ているというより、感覚で存在を察しているといったところか。でも、それだと。
「そんなに抽象的で、見えてるって言っていいの?」
 それは見ているのではなく、感じているということじゃあないのか。
「いやあ。これでいいのよ。これで、十分なのよ。どっちにいるか分かるのなら、双眼鏡で魚群の方を見ればいいだけじゃない。なんなら、船で近づいてみればいい。感覚的に察する事ができるならば、あとは見える努力をすればいいだけなんだから」
「双眼鏡や船で近づくっていうのは、どういう意味?」
「しかるべき道具を使い、注視しろ。虎穴に入らずんば虎子を得ず、自らヤバいと思った場所に足を踏み入れろ。こんな感じね。この喩えのまま行くなら、霊能者は漁師? 一応ほら、除霊なんてやってるし」
 まあ、そんなところだろう。しかしまだ、疑問は残る。
「もし霊能者が漁師だったとしたら、魚群を察知できるって、凄い才能じゃない? 才能を活かそうとするのは、当然だと思うよ」
 世の中には魚群レーダという物がある。レーダーなんて無い時代、漁師は勘と経験で魚のあたりをつけ、漁を行っていた。その勘と経験に似たような物を持っているとしたら、霊が見えることを生業に結びつけても、何ら不思議はない。
「あー……ゴメン、ゴメン。ちょっと例えが悪い。いや、これでいいのか、とりあえず、目を閉じて。海の情景を想像して。船の上で一人、たゆたう波に身を任せている。そんな光景を」
「なんか、不安になる光景だなあ」
「あー!もう! 豪華客船でもイージス艦でも、なんでもいいから想像しなさい!」
 キケン、ヨッパライサワルベカラズ。豪華客船やイージス艦と言われても、乗ったことのないものを想像できるはずもなく。第一に思いついて想像したのが、スワンボートというのが悲しい。足こぎ式で、池に浮いているような。こんなので海に出るなんて、狂気の沙汰だと言われるような船、というかボートだ。
「思い浮かべたわね。じゃあ、このまま私の話を聞きなさい。想像力だけを高めて、耳だけに意識を集中するのよ」
 先程からうっすらと思っていはいたが。今日の姉さんは、口調が少し違った。

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