日々雑談~1718~

「大将! 今日のおすすめは!?」
「カレーです」
「カレー?」
「カレーです」
「ここ寿司屋だよね?」
「ええ」
「鰈?」
「いえ。カレーライスです」
 馴染みの寿司屋に行ったら、なんかカレー出てきたけど、食べてみたら真っ当に美味かった。そんなガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。Marvel系列、映画アベンジャーズと世界観(シネマティックユニバース)を同じくする映画でありながら、その風味は一味も二味も違う英雄譚。何かを成したヒーローが集まるのではなく、何も成せずに生きてきたはぐれ者が集まり、銀河を救う事を成す。全員が活き活きと、ひねくれながらもまっすぐに生きていく姿。いやー、結構無茶なスケジュールで観て来たのですが、これは観ておいてよかった! スターロードもガモーラもドラックスもグルートもロケットラクーンも、ホント観ていて愛おしくなります。
 高校生以下割引キャンペーンのおかげか若い人が結構観に来ていたけど、この映画のネタのオールドなディープさについていけるのかしら……と余計な心配を抱きつつ、70年代ミュージックや思わぬネタにヒャッハー。そういう所を差っ引いても、爆走熱闘大笑いな客席が暖かい映画でした。こういう暖かさに触れると、今俺映画見てるんだ!って実感できますね。
 三連休?なんですかそれ状態で明日もあるので、今日はこうして軽く触れるだけにしておきます。とりあえず、毎度毎度のことですが、スタッフロールが始まったからと言って、席は立たないほうがいいです。OPでその旨を伝えるだけあって、扱いに困るクラスのダイナマイト級なシロモノだったぜ……。

日々雑談~1717~

 ローソンでFate/stay nightキャンペーンか……。からあげクンをガッツリ買い込んでる衛宮さんちはいいとして、からあげクンはどちらかと言うと黒セイバー的食い物なんじゃなかろうか。でも、黒セイバーの好む雑さは、店が自らアピールしちゃまずい要素な気がしますしのう。とりあえず肉なんで、セイバーさん的にはオールOKなのでしょう。
 セイバー&士郎、凛&アーチャー。きっとこれはアンリミテッド・ブレイドワークス推しの宣伝、だから、ライダー&桜が居なくてもしょうがないんだ。しょうがないんだ……。ヘブンズフィール推しの際、全国ローソンの店頭を黒セイバー(もっきゅもっきゅ)&黒桜(全裸)が埋めるの、待ってます!

>フィン ファン フー”ム” の方が、正しい読み方なのですね。今まで見てきた和訳の名前だと~フー”ン”ばっかだったので。

 いえ、今回はバチ魂やアニメでの表記がフィン・ファン・フームだったので、それに倣っただけで、フィン・ファン・フーンの方も間違いではありません。ヴィレッジブックスの邦訳だとフーンですし、自分も実際アメコミカタツキ4に出した時はフーンと書いてました。どちらかと言うと、成否ではなく選択、今回はフームを採用といった感じですね。
 実際、アメリカのキャラ名を日本語に訳すときは、結構違いが出たりします。パニッシャーとパニシャー、ドーマムゥとドルマムウ、ベノムとヴェノム等がよく聞く例かと。実際ここにはあまり間違いといったものはなく、訳者の好みや主義、使う側の感覚が入るので、結構まぜこぜになりますね。自分の場合は、基本メジャーな物、通じやすい物を採用していく感じですが。
 そういえば、Marvelの読み方は、公式サイトの名称やプレス等を見るに、ひとまず現状公式的にはマーベルで決着したようです。マーブルとかマーヴェルとか、昔は結構ばらついてましたからね。
 でも、MarvelVSCAPCOMことマブカプはおそらくマベカプにはならないので、マーブルはマブカプ呼びの中でちゃんと生きていきそうです。 

お知らせ

 雷が洒落にならん様子を見せているため、今日はひとまずもう、PCの電源を抜いて寝ます。明日、ちと早い用事もあるものでして……。しかし、あんな重い雷のとどろき、人生で初めて聞いた。正直底冷えする。

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その24~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ第24話。
 地球のヒーローVS宇宙の無法者!

 今週末から公開の、映画ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。映画公開に合わせての、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー回、開始! 映画のタイミングとアニメのタイミングが、こうも上手く合致するのも珍しく。スケジュール調整、大変だったと思います。
 アウトロー人生を満喫中、無頼のスターロード。映画やアニメではスリングショットなコスチュームをちょっと大人しくしたガモーラ。同じ緑のパワーキャラでありながら、ハルクに劣らぬ豪快さを見せたドラックス。無茶苦茶な再生能力のアピールに成功した、私はグルート。ラスカルの創りあげたアライグマカワイイ!な幻想を壊すために現れた、幻想殺しのロケットラクーン。正直、日本では現状マイナーな面々ですが、今週のディスクウォーズで彼らのざっとしたキャラクターはアピールされていたかと。映画が楽しみです、ホント。
 それだけでなく、SHIELDが復活したことによるトニーとフューリーの鞘当て復活。以前、ヘリキャリアーより飛び出した日のことを思い出すヒカル&ホークアイ。ロキ戦が終了したことによる、構図の再生や復活も描かれてましたね。レッドスカルとは違うベクトルの大強敵が現れた結果、箸休め感はホント0なんですが、感覚的には少しホッとするような在り方。アキラのアイアンマンデザイン、僕の考えた最強アイアンマン道を邁進してきたトニーには、結構合ってるんじゃないかな。そういうところは、大人にならなくてもいいのよ?
 今日の紹介は、若干フライング気味ではありますが、次回全貌を現すであろう大巨竜を。ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーの紹介は、映画の影響もあって、ハイクオリティな物が沢山出てますしね……。ウチの本質、それはヴィラン好きにして、変な所をガッツリ狙うスキマ産業。

フィン・ファン・フーム

フィン・ファン・フーム

 中国の秘境、眠れる龍の谷と呼ばれる場所に棲む巨竜。四つの鋭い牙を持つ龍は、何時からかフィン・ファン・フームと呼ばれることとなり、四肢は山を砕き、尾は太陽も薙ぐと、近隣の人々に畏れ敬れ続けた。龍の姿が目撃され、伝説として語られるようになったのは8世紀頃だと、史書や証言では語られている。
 巨体に比類した怪力、スタミナ、耐久力。翼は空どころか宇宙をも駆け、寿命は数千年以上。人と同じサイズへの変身やテレパシーといった神力のような能力も持ち、傷や病は冬眠に入ることで回復。例え死しても精神体として残り、他の生物に憑依することで復活が可能。口からは猛烈な火炎を吹くことが出来、優れた頭脳は古代中国よりの学問や技術に武術を記録習得している。まさしく、伝説や神話に残る、龍の有り様である。
 やがてフームは、眠れる龍の谷から出現、伝説の真実を証明した後、度々世に出る事となり、アイアンマンやハルクと激戦を繰り広げる。やがて、明らかになった真実。フームの正体は、伝説の怪物ではなく、異星Makluansから地球侵略のために来た、宇宙人だったのだ。フームはあくまで異名であり、宇宙人としての本名は不明。人には発音できないとの説も。
 太古の地球を訪れたフームは、同胞のバックアップとして眠りに入るが、同胞はフームが寝ているうちに撤退。フームを残し撤退した理由は不明だが、地球のドラゴンや龍に関する神話の大半は、フームと彼の同胞の姿を描いたものではないかと言われている。彼らとは別に地球在来種の龍も居るようだが……かつてイギリス、アーサー王の国キャメロットにいた在来種のドラゴンは、外来種たるフームの同胞が駆逐、彼らは邪龍としてキャメロットを襲撃した。

フーム&ドラゴン

 余談ではあるが、アイアンマンのライバルである、不可思議な10の指輪を操るヴィラン、マンダリン。彼の使う伝説の指輪は、フームの宇宙船から手に入れた物である。
 ヒーローと戦い敗北し、自身のねぐらへ撤退。映画マイティ・ソー:ダークワールドや映画ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーにも出ている宇宙収集狂コレクターに捕まりコレクションに。他の怪獣キャラと一緒に怪獣島に送られたものの、周りとの知的レベルのあまりの差に辟易して脱走。巨体と強大さを持て余し、仏教への傾倒にも走ってみたフームだが、ある日一大決心。ファンタスティック・フォーの考案したリハビリプログラムにロボットのエレクトロ(電気人間とは別)や巨大ゴリラのゴジーラや異星人のゴーガムと共に参加、サイズダウンと催眠療法による能力の抑制等を経て、人間社会で生きる道を選択。ファンタスティック・フォーの本拠地であるバグスタービルディング内の中華料理店に、コックとして就職した。長年の中国住まいの、面目躍如と言えよう。今でも、時折NYを人間サイズのまま歩く姿が目撃されている。

フィン ファン 4

 だが、フームの就職後も、以前と同じ巨体を持つフームが目撃され、動物アベンジャーズことペット・アベンジャーズと戦ったり、カメラの回ってない所でスクイールガールに瞬殺されていたりする。どうも、どこかの組織がフームのクローンを作り出す方法を見つけてしまったらしい。それに加え、ディスクウォーズのような正史とは違うユニバースや過去の時間軸での話では、巨竜として登場。竜王フィン・ファン・フームの姿を拝める機会は、未だ多い。

フィン・ファン・フーム(シネマティックユニバース)

 そして実は、フームはヴィランとして出るよりも先に単独デビューを果たしており、初登場は1961年10月。ファンタスティック・フォーの誕生は同じ1961年11月、スパイダーマンの登場は1962年、アイアンマンの登場は1963年3月……ライバルである主なヒーローよりも、先んじている。アメリカンコミックスにその名を刻む伝説的ライターと伝説的アーティスト、スタン・リーとジャック・カービーの生み出したキャラの一人でも有り。来歴も、豪快さと意外性に満ちたキャラである。

ストレンジ・テイルズ#89

魔法少女F~C~

魔法少女F~A~
魔法少女F~B~

 白煙立ち込める廃ビルの一室に、一人の魔法少女が居た。目の前には、巨大な感情により変貌した猫、もはや豹や獅子をも凌駕する存在となったキャット・アクシデンタル。脇にいる、偽物の魔法少女であるシズナや背後の虚無人エンプティと幼女は無視し、アクシデンタルめがけ駆ける。
 しかし、そのままアクシデンタルの巨躯とすれ違い、階段へ。最初はぼうっと見ていたアクシデンタルだが、突如毛を逆立て、激怒の様相で上階に逃げた魔法少女を追う。アクシデンタルの黒い表皮に一本の線、長い切り傷が刻まれていた。
 階段を駆け上がる魔法少女を、アクシデンタルは階段を無視した跳躍で追う。階段の終わり、屋上。ヘッドスライディングで飛び込んだ少女は、待ち受けていたアクシデンタルの股下を滑り抜けた。
 アクシデンタルの尻に走る、細かな痛み。振り向くまで、数十度、アクシデンタルの身体には雹を浴びたかのような細かな痛みが襲いかかってきた。ゴワッ!と喉を鳴らすアクシデンタルの鼻先を襲う、新たな痛み。収束された痛みが、アクシデンタルを気圧させる。
 だが、そこまでだった。
 爪をむき出しにした、アクシデンタルの前足が、なにやらアイテムを構える魔法少女を地面に抑えつける。全ての痛みは、怒りを触発させるものでしか無かった。
 アクシデンタルは、捕らえた獲物の仕留め方を考え始める。爪で切り裂くか、牙で噛み千切るか。爪、牙、爪、牙。悩んでいる間も、魔法少女を押さえつける力は強くなっていく。このままでは、圧力で砕け散ってしまうだろう。
 決めた。爪で切り裂いた身体を、牙で咀嚼する。C・アクシデンタルが、押さえつけた獲物めがけ、空いた前足を振るったその時。周囲の廃墟に響き渡るような轟音が、C・アクシデンタルの巨体を消し飛ばした。目の前の獲物に注視していたC・アクシデンタルは、突如の巨弾による猛襲に、何も反応することが出来なかった。
 注意深い猫を、認知する間もなく屠る。とんでもない“魔法”であった。

 自身を押さえつけていたC・アクシデンタルが消えても、倒れたままの魔法少女は動かなかった。ただ、呆然としている。C・アクシデンタルを葬った明後日からの一撃は、C・アクシデンタルだけでなく、下に居た少女にもダメージを与えていた。ふわりとしたゴスロリ調のドレス、前面がアクセントのリボンやアクセサリーごと吹き飛び胸から腹、全ての肌色を晒している。そして、髪。ウェーブのかかったきめ細やかな金髪が、全てごっそりと抜け落ち、辺りに散りまくっている。
 なんとも無残な、少女の姿であった。
「……殺す気か」
 ぼそっとした、呟き。
「殺す気か」
 多少怒気が混ざってくる。
 しばしの静寂の後、少女は自らイヤリングをもぎ取ると、イヤリングめがけ叫んだ。
「殺す気かぁぁぁぁぁ!?」
『わあ!? ちょ、うるさいから』
 イヤリングから聞こえる、太く深みのある声による返答。
「お前が反応しないからだろうが!」
 立ち上がった所で、胸に張り付いていたジェル状の最新胸パッドが落ちる。胸板は、貧乳を通り越し、完全に男の物。吹き飛んだ金髪はカツラで、実の毛は無造作に伸ばしてある茶色の髪。綺麗な女系の顔立ちと細身の身体を持っていても、少女ではない。シズナがライバル視する魔法少女は、彼であり、少年であった。
『しょうがないだろ。さっきまで、耳栓してたんだから。聞こえるわけがない』
「耳栓?」
 少年が振り向いたのは、今いるビルの隣。道一本挟んで、向こう側にあるビルの屋上。そこで筋骨隆々とした男が、ライトを持ったまま手を振っていた。下に、極太かつ長身の、おかしい形をしたライフルを置いている。
「……対戦車銃じゃないか! そんな物で、俺と肉薄していた標的狙ったのか!?」
『危うく耳栓つけ忘れて、鼓膜が吹き飛ぶところだったぜ』
「俺は体ごと吹き飛ぶところだったけどな!」
『そう言われてもなあ、お前の手持ちの火器や武器じゃ、どうにもならなかっただろ?』
「うぐっ!?」
 挑発用のサバイバルナイフ。ふんわりとしたスカートに仕込んでいた、二丁のハンドガン。背中に隠していた、銃身を切り詰めたショットガン。どれも、初対戦となる獣型アクシデンタルには決定的なダメージを与えられなかった。今回あと手持ちの武器としては、もう登場時の演出に使った、スモークグレネードのスペアぐらいしかない。
 ここまで内実を見れば分かるように、シズナが魔法少女と思い込んでいる少年には、魔法の部分すら無かった。彼にあるのは、従来の火器や武器を使うだけの知識と技術、そして己を清楚な少女に見せかけるだけの外面。
「しかしあの音、下にも聞こえたんじゃ」
『まあほら、雷撃系の魔法とか、そんな感じで納得するんじゃねえか? この風なら、ドレスの切れ端やカツラの大半は風に乗って消える。武器だけ回収して、下に行け』
「了解っと。あと、終わったら病院連れてけよ!? 耳もアバラも痛いし!」
 イヤリング型の通信機を切った少年は、武器を回収した後、傾きかけの雨樋から繋がるパイプを滑り降りる。奇跡も魔法もなくても、少年の手際は見事であった。

 総合病院の椅子に座る、少年と厳つい男性。体格的には親子に見えるが、歳の差はせいぜい兄弟ぐらいに見える。
「異常はなかったらしいじゃないか?」
 男は、検査を終えた隣の少年に語りかける。
「そうだよ。アバラにヒビが入っていることを除けば」
 少年は既に、男性としての普段着に着替えている。あの格好じゃあ、緊急外来もまず困っただろう。
「異常は無かったんだな。よかった」
「ああ、若干気だるいし泣き叫びたい痛みに時折襲われるけど、異常はないよ。俺にも、あのインナースーツ、支給してくれないかな? アレ、防御力高いんだろ?」
「残念、アレは女性用の上にワンオフだ。安心しろ。千切れたドレスは、前以上の可愛らしさに仕上げてやる」
 男は丸太のような腕をむき出しにして、パン!と自信ありげに叩く。腕には、針仕事とでは到底出来ない太さの切り傷や銃創がたんと刻み込まれていた。
「着る方としては、使いやすさを追求してほしんだけど……確かにあの服、ふわっとしているおかげで、武器とか沢山仕込めるけどさ……」
「ちょっと待て、電話だ」
 ブブブと、男の胸ポケットが震えていた。
「病院内では電源を」
「ここは、携帯OKな区域よ」
 電話に出た男の顔が、二言三言交わす内に青くなっていく。平謝りのまま電話を切った男は、即座に席から立ち上がった。
「ちょっと現場行ってくる」
「もう警察がきっと来てるんじゃ?」
「……登場の時のスモークグレネード、アレの回収忘れてただろ」
「あ!」
「アレが見つかるとマズいことになる。ちょっと行って、なんとか回収してくるわ」
 警察よりも見つかったらマズい相手が居る以上、なんとか回収してくるしか無い。
「ああそれと、あの猫が幼女をさらった、アクシデンタルに変貌した原因かな?というストーリー聞いたけど、いるか? 家に子供が産まれた瞬間、捨てられた猫の話。抱いていた感情は、子供への嫉妬か、はたまた愛された物同士として、種族を超えての姉妹愛が暴走しての結果か」
「いらないよ。もう倒したヤツのことなんか、知るか」
「若いのに、クールだねえ、もう」
 男は少年を置いて、病院から出て行った。
 残された少年は、退屈そうに身体を伸ばした後、アバラの痛みに一瞬顔をしかめる。
「喉、乾いたな」
 売店は閉まっているが、自動販売機は動いている筈だ。館内掲示板で場所を確認した後、少年は席を立つ。
 しばらく歩いた後、向こうから歩いてきたのは、最も自分が関わってはいけない、女学園の制服を着た少女であった。自動販売機の場所が入院病棟に近いこと、彼女がこの病院に居るかもしれないことを、忘れていた。
 少年はなるべく顔を伏せ、向こうから歩いてきたシズナに会釈する。シズナも、礼儀として会釈し、無事すれ違うことに成功する。あの様子から見て、彼女が自分を、先ほど廃墟で出会った魔法少女だと見抜いた可能性は、0だろう。カツラ、ドレス、そして少女という前提は、少年の正体を隠すのに十分なヴェールであった。
シズナの後ろ姿を目で追う少年。最初与えられた仕事とはだいぶ様変わりしたものの、今の自分の仕事は、偽物の魔法少女である彼女を、魔法少女として護ることだ。
 アクシデンタルやエンプティをあしらいつつ、シズナに決定的な被害が及ばぬように。それが、相棒である男と、少年に与えられた使命。その為に、ついこの間まで戦場に居た二人は、この街に呼ばれた。
「アキラさん。先生がお呼びですよ」
 この国に来た時に与えられた名を、連れに来た看護師に呼ばれる。結局、水分は補給できなかった。
 少年が穏当な手段で入国するには、偽造戸籍と偽造パスポートに手を出すしか無かったのだ。だが何となしに、このアキラという名前は気に入っている。自分に流れる、東洋人の血が馴染むのか、もし魔法少女の姿で名乗る羽目になったら、“ラ”だけを抜いてアキと名乗れという簡単さが良いのか。とにかく、悪くない偽名だ。
 性別も偽、魔法も偽、名前も偽。偽物をかばう、更なる偽物。唯一本物なのは、この街に巣食う、邪悪なる敵のみ。魔法でなくても、撃つ殴る斬る、順当な手段で殺せる怪物だけは、真だ。
 アキラは苦笑を隠しつつ、看護師の後について行った。

 この街に現在居る魔法少女は、みんなFake(偽物)。
 本物に立ち向かう、魔法少女のFakeばかりであった。