フューチャー・アベンジャーズなコラム~その9~

 フューチャー・アベンジャーズ第9話!
 アベンジャーズがピンチとなれば、仲間たちが駆けつける……助っ人ホークアイ登場!

 俺が悪いんじゃない、コイツらの集中線とグラサンが被っているから並べたくなったんだ。

 

デッドプール「ふっ。ついにパープルアローが真の力を取り戻したようだな……それでこそ、俺ちゃんたちと並ぶに相応しい男よ」
ガンビット「ちょっと待て。なんで俺がここに呼ばれてるんだ?」

 ホークアイ、デッドプール、ガンビットでろくでなし親しみやすいヒーロー大三元でいいと思うんスよね。

 今回のホークアイは、仕事人ではなくホークアイ:マイ・ライフ・アズ・ア・ウェポンタイプな、近所の親しみやすい兄ちゃんみたいなキャラで参戦。マコトたちと同じヴィラン候補として育てられ、アベンジャーズでははみ出し者からリーダーまでなんでもこなし、数多くの恋愛やズッコケや悲劇や喜劇や死を経験……これら、酸いも甘いも噛み分けた生き様が、近年におけるホークアイの「隣りにいてくれるヒーロー」というスタイルを作ることに。世界を揺るがす大悪党と戦うこともあれば、街のチンピラに睨みをきかせてもくれる。一流なヒーローたちに比べ、かっちりとスタイルが固まらなかったことが、この親しみやすさの土壌にもなったのでしょう。この点似通っているデッドプールやガンビットも含め、彼らのことは超一流の二流と呼びたい。

 マーベル・シネマティック・ユニバースのホークアイも、家庭人たる顔が見えて、コミックスやアニメより歳上をイメージした親しみやすさはあるものの……演:ジェレミー・レナーな時点で、どうしても仕事人キャラが濃くなってるよネ!

 

 ヒーローは割に合わない仕事である。誰に頼まれたわけでもないのに、絶対感謝されるわけでもないのに、報われないかもしれないのに、ただ命をかける。むしろ、この点ではヴィランの方がわかりやすいのでしょう。ヴィランの原動力は、主に欲望。ならば、ヒーローはなんのために動くのか――これは、おそらく永遠の課題であり、絶対的な答えが出ることはないのでしょう。絶対と言い切ってしまった瞬間、輝かしいはずの答えは、欲望以下のおぞましい答えへと堕します。

 絶対的な答えが出ないのならば、求める続けるしかない。たとえ、アベンジャーズを全滅させた相手でも、戦うしかない。

 ストレートな熱血ではないものの、マスターズ・オブ・イーブル相手に挑むホークアイの姿は、まさしく答えを求め続け、他人にヒーローのあり方という疑問へのヒントを教えるヒーローの姿。キャプテン・マーベルやブラック・ウィドウは策略を練って動いていたものの、大筋危機的状況下にあったことは、ホークアイと変わりなく。今回はマコトたちがほぼお休みだった分、アベンジャーズはこちら(視聴者)に背中で語ってきましたね。言葉にならないならない何かを伝えようとする背中ってのは、いいもんです。

 

 キャプテン・マーベルとアイアンマンの作戦、そしてキャプテン・マーベルの能力により、アベンジャーズもマコトも無事かつ、リーダーからエメラルドレイン計画の情報も引き出せるという、最良の結果に。ヴィブラニウムが鍵で、次回の舞台はアフリカのワカンダ……このままリレーしていけば、そのうち宇宙に出ていきそうだな。

 さて、これにて大団円! といきたいものの、今回のタイトルは「W・ソルジャーの正体」。大事なのは、二人の神様の撃退でもリーダーの頭のいいバカっぷりでもなく、謎の傭兵ウィンター・ソルジャーの正体。そして、ウィンター・ソルジャーとキャプテン・アメリカの対峙――

 わかっていても、刷り込まれた記憶が和解を許さない。第二次世界大戦から現代にそのまま蘇ったのがキャプテン・アメリカなら、歪んで蘇ってしまったのがウィンター・ソルジャー。歪みを正す手段があるとすれば、必要なのは正義ではなく誠意。キャプテン・アメリカではなく、メットを取ったスティーブ・ロジャースとしてウィンター・ソルジャーと向き合う姿は、やけに新鮮。キャプテン・アメリカが、アニメでメットを取ること自体が珍しいからかね……?

 キャプテン・アメリカとウィンター・ソルジャーの和解は成されなかったものの、楔を打ち込んだ気配はあった。たとえ殺し合ったとしても、それは二度と言葉もかわせない死という状況に比べれば遥かにマシ、まだ何かが叶えられるかもしれない状況。だからこそ、キャプテン・アメリカは晴れ晴れとした顔で、友情を信じることが出来る。この救いこそ、同じ境遇であるマコトとブルーノに見せた、先行くキャプテン・アメリカの大きな背中なのでしょう。

 

 今日の紹介は、キャプテン・マーベル! とは言いつつも、サブレギュラーのキャプテン・マーベル(キャロル・ダンバース)ではなく、そもそも“キャプテン・マーベル”とはなんなのかというところを紹介。「キャプテン・マーベルって男じゃなかったっけ?」「キャロルってミズ・マーベルだったよな……?」という記憶のミッシングリンクを埋める感じで。

 おそらくフューチャー・アベンジャーズでは、キャプテン・マーベル=キャロルでミズ・マーベル=カマラとなりそうなので、男のキャプテン・マーベルに言及することは、アニメ連動のコラムとして微妙に的はずれな気がするものの……まあ、せっかくだしね!

 

 

キャプテン・マーベル(マー=ベル)

 列強の宇宙帝国クリー。クリーを支配する集合知性体スプリーム・インテリジェンスは、強大な科学力を持ちつつも進化の手を止めない地球人類を警戒するようになる。スプリーム・インテリジェンスは地球人の宇宙進出を妨害するため、幾多の戦争で多大な戦果を上げた英雄マー=ベルを地球に派遣する。地球における白人とよく似た肌と地球人同様の生理機能を持つ種族“ホワイト・クリー”であるマー=ベルは、潜入工作員としてもうってつけだった。

 地球に降り立ったマー=ベルは、身分を偽り地球人と接触。マー=ベルもスプリーム・インテリジェンス同様、地球人に秘められた多大な可能性を知る。だが実際に地球人と接触したマー=ベルはその可能性を肯定し、やがてその力で地球人を助け始める。彼の名はマー=ベル。その名を耳にした地球人は、彼はマーベル(MARVEL)と自称する新ヒーローだと、勘違いしてしまう。MARVELの単語が本来保つ意味は、驚異、そして驚くべき人。幸い、驚異の存在であるマー=ベルと意味はズレていなかった。

 なので、正確にはキャプテン・マーベルではなくキャプテン・マー=ベルであり、一部資料では書き分けの都合もあちキャプテン・マー=ベルとなっている。彼について英語でもいいので調べたい!という時はCaptain MAR-VELで検索すると、他のキャプテン・マーベルが引っかかりにくくなり、多少楽である。

 こうして地球に、キャプテン・マーベルと呼ばれる存在が誕生した。最初は下記のような緑のコスチュームだったが、後に赤を基調としたスーツに変更となる。

 マー=ベルが能力として持っているのは、まずクリー人としての能力。腕力、耐久性、俊敏性、反応共に地球人より優れているクリー人だが、マー=ベルはクリー人の中でも特級クラス。この時点で地球における超人レベルのスペックを持っており、素の状態でも1トン程度なら持ち上げることが可能で、銃弾程度なら軽くさばける。更にマー=ベルはネガバンドという自身の力を倍増させる装備も持っており、優れた身体能力は更に倍増。例えばネガバンドを装備した状態ならば、倍増した腕力で10トン以上の物体を持ち上げることが出来る。

 そしてヒーローとしてキャリアを重ね、様々なアクシデントに見舞われた結果、マー=ベルのスキルと能力はより一層の成長を見せる。腕力は数十トンクラス、飛行速度は光速。手から太陽光エネルギーを集積したファイヤー・ボルトを放つことが可能に。更に、相手の攻撃を広範囲で察知するだけでなく状況と弱点の分析までしてしまうコズミック・アウェアネス(宇宙意識)と呼ばれるレーダー能力も追加。優れた身体能力に、遠距離攻撃やレーダーが追加され、更に死角は無くなった。

 なおマー=ベルを地球に派遣した大本であり、クリー人の統治者と信仰の対象を務めている、クリー人の天才たちの脳と知識を融合した知性の怪物ことスプリーム・インテリジェンス。クリー人の天才たちの脳と知識を融合した知性の怪物である彼はキャプテン・マーベル誕生後も地球人を警戒し続け、ついには地球人の進化の可能性を自身に取り込んだ上での滅亡計画を画策する。

 だが、キャプテン・マーベルをも巻き込むスプリーム・インテリジェンスの計画はことごとく阻止され、やがて地球最強のヒーローチームであるアベンジャーズとも対立。幾度もの戦いの結果、クリー帝国は多大なダメージを負い、スプリーム・インテリジェンス自身も敗北を喫することになった。原因はクリー側にあるものの、ある意味、スプリーム・インテリジェンスの地球人への警戒は間違っていなかったのかもしれない。

 

 晴れてキャプテン・マーベルとなったマー=ベルは、地球を護るため、やがて宇宙全体を護るための戦いに挑む。クリー帝国の障害と反逆者を裁く告発人、ロナン・ジ・アキューザー。クリー帝国所属時からの敵でもある、地球を狙う変身種族、スクラル人。そして全宇宙の生命撲滅を企む巨悪、サノス。数々の強敵相手に勝利を重ねてきたキャプテン・マーベルは、地球の枠を飛び越え、宇宙の守護者と呼ばれるようになる。

 だが、マー=ベルの戦いは、思わぬ形で潰えることとなる。宇宙人による犯罪組織ルナティック・リージョンとの戦いで、マー=ベルは神経性のガスを浴びてしまう。ガスにより、クリー人でブラックエンドと呼ばれる病に冒されたマー=ベル。最初は体力で病を押さえつけていたものの、やがて身体も心も限界を迎える。ブラックエンドと呼ばれる病、それは地球における大病“ガン”であった。

 病による苦しみはマー=ベルを精神錯乱状態に追い込んだが、マー=ベルの精神は病の苦しみに耐え抜き、彼は最後までヒーローのまま、死んだ。クリーから見れば裏切り者であるマー=ベルだが、死を迎えようとする彼の周りには、地球での生活やキャプテン・マーベルとして得た友人や仲間たちが集い、更に死の女神デスと共に彼を死の世界へと導いたのは、宿敵であるはずのサノスだった。
 マー=ベルの生き様は、きっと間違っていなかったのだ。

 

 マー=ベル死後、マー=ベルの遺伝子を受け継ぐ息子、ジェニス=ベル。後にクェーサーという別のヒーローになるウェンデル・ボーン。ダークアベンジャーズ政権下にてキャプテン・マーベルを名乗ったクリー人、マーベルボーイことノー=バー。キャプテン・マーベルの名を名乗る人間は複数現れたものの、全員長期的な定着には至っていない。
 

 変わり種としては、スクラル人のクン・ナーが変身したキャプテン・マーベルがいる。クン・ナーはマー=ベルに変身し、実は生きていたキャプテン・マーベルとして登場する。やがて、スクラル人による地球侵略作戦シークレット・インベージョンが始まり、クン・ナーもまたスクラル側の戦力となる予定だった。だが、マー=ベルの記憶と精神もコピーしていた彼は、キャプテン・マーベルそのものとしてスクラル人と戦うことになる。多数の戦艦を道連れにクン・ナーは死亡するものの、彼の奮闘により、地球側は反撃の一手を打つことができた。

 自勢力を裏切り、地球のために戦うクン・ナーの姿は、奇しくもマー=ベルそのものだった。カテゴリー的には、偽キャプテン・マーベルと呼ぶのが正しいのだろうが、個人的に彼のことはキャプテン・マーベルの一人と数えたい。

 現在キャプテン・マーベルの名を名乗っているのは、フューチャー・アベンジャーズにおけるキャプテン・マーベルこと、キャロル・ダンバースである。生前のマー=ベルと接触し、偶然その力の影響により超人ミズ・マーベルとなり、宇宙人のマー=ベルに地球人の善き可能性を教えた者の一人である。黒いハイレグコスチュームがトレードマークな彼女だが、キャプテン・マーベルの女性版と言える、繋がりがわかりやすいデザインのコスチュームを着ていた。

 キャロルは長年、ミズ・マーベルとして活動してきたが、近年ついにキャプテン・マーベルの名を名乗ることとなり、フューチャー・アベンジャーズと同デザインのスーツに着替えた。

 複数人がキャプテン・マーベルの後継者になろうとしたが、今までのところ、初代の英雄精神に比肩した者はいない。ここまで言わしめる、キャプテン・マーベルの名を継いだキャロル。ここ数年の安定や扱いを見る限り、キャプテン・マーベルの名はキャロルに定着しようとしている。その座が、永く続くことを祈りたい。

 

 これは余談だが、DCコミックスのキャプテン・マーベル(現:シャザム!)とマーベル・コミックのキャプテン・マーベルの間に直接の関係はない。前述した通り、MARVEL自体が驚異的という意味を持っている単語かつ、そもそも現在シャザム!なキャプテン・マーベルの方が誕生自体は早い。

 最もこの辺りの事情は、元々シャザム!が所属していたのは別の出版社のフォーセット・コミックスだとか、フォーセット・コミックスとDCコミックスの間で色々あった末にDCコミックスがシャザム!の版権を得たとか、非常にややこしい。物語の枠を超え、アメコミ史全体に関わる学術的な話にまで及ぶので、また別の機会にでも。これは、本気で腰を据えて挑むべきテーマの一つである。

 それぞれ別の出版社に所属する、二人のキャプテン・マーベル。特別なクロスオーバー企画であるJLA/Avengers内、しかも一コマだけの光景であるものの、互いのライバルを入れ替え共闘する姿には、ややこしいからこそ生じた爽快感と面白さがあったことは伝えておきたい。