シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ感想(ネタバレ無し版)
友情が友情を引き裂く――
原作コミックスにおいても、その影響から逃れるのには数年かかった、ヒーロー同士の大戦“シビル・ウォー”。そんな、大作でもあり問題作でもあるシビル・ウォーの名を冠した、映画キャプテン・アメリカの第三作目。マーベル・シネマティック・ユニバースにおけるシビル・ウォーはどうなるのか? わくわくしつつ観て来ました。
ヒーロー同士の対決というのは、正義対正義という刺激的かつ難しいテーマです。禁断の対決とは、まさしく酒のようなもの。観客を酔わせつつも、結果いかんによっては、シリーズを停滞や終焉に追い込んでしまう毒ともなりかねない。酒の響きはまず人を惹きつけますが、どう味あわせるのかが本当の勝負ということです。
そして今回出たキャプテン・アメリカ:シビル・ウォーという酒は、実に美酒でした。作中人物の理屈や感情を揺さぶり続け、なんでこうなってしまったんだ! という不条理とこうするしかないんだな……という納得を同時に押し通しています。誰も正しいし、誰も悪く無い。ただ、それでも悲劇は巻き起こってしまうからこそ、悲劇と呼ぶんだなと。
今回の映画は、登場人物の心理描写にも気を使っており、一歩間違えれば退屈な映画になってしまう可能性も孕んでいたのですが、ヒーロー映画らしい刺激的なアクションを定期的に挿入することにより、飽きが来ない作りになっております。CMで流れている空港での対決、薄暗い場所で繰り広げられるキャプテン・アメリカ&バッキー・バーンズVSアイアンマン。CMの時点で、そそられる要素が沢山注ぎ込まれておりますが、これですら前菜という恐ろしさ。おそらく、大多数の人の想像を超えたアクションが見られます。かなり期待値高め+ちょっとしたネタバレを知ってしまった自分でも、なにこれすげえとなるバトルシーン。ヒーロー同士、超人同士の戦いをギミックのパズルと考えると、なるほどこういう見せ場が作れるんだと、客席で一人納得しておりました。
多数のゲストヒーローの登場、その中でも群を抜いた注目度を持つヒーローといえば、今回映画初登場のブラックパンサーと、マーベル・シネマティック・ユニバース初参戦のスパイダーマン。二人とも、顔見世のゲストなのでは? との予想もありましたが、マーベル・シネマティック・ユニバースの一員として、シビル・ウォーの中心人物や鍵として、話にしっかり絡んできます。
おそらくシビル・ウォーにてこの新ヒーロー二人に託された役割は、希望と未来。今作にて生誕した二人のヒーローは今後どうなるのか。アクション面に人物造形、共に期待感のあるものが提示されており、新作映画へのワクワクが留まりを知りませぬ。
もちろん、既存キャラであるホークアイやアントマンやファルコンやウォーマシンや……彼らもまた、彼らにしか出来ない、そして今までのイメージを更に膨らませる活躍を見せてくれます。キャプテン・アメリカとアイアンマン含め、結末は明暗混ぜこぜ。要は、全員次回作以降の今後が、むっちゃ気になってしょうがないのですよ。
シビル・ウォー:キャプテン・アメリカは、マーベル・シネマティック・ユニバースの根本を揺らがしつつ、今後生誕するヒーローに可能性を、そして誰も先が読めない混沌さを。マーベル・シネマティック・ユニバースを延命させるための劇薬として、単体で見てもエキサイティングできる良作として。おそらく“シビル・ウォー”という単語に求められている要素を満たした作品なのではないでしょうか。