2016年6月1日
/ 最終更新日 : 2016年6月6日
fujii
アメコミ
本日6月1日。ついに日本で映画デッドプールがいよいよ公開……だが、日本では一部でめっちゃ燃え上がっているものの、未だにバットマンやスパイダーマンの知名度には及ばない。そもそも、なんなんだろうこのニンジャスパイダーマン!?
ということで、一度基本に立ち返り、基本的なことからデッドプールを見直すQ&Aを作成してみました。デッドプールとはなんなのか、いつ生まれたのか、X-MEN ZEROとはなんだったのか。そんなことをまとめた、Q&A。正直映画は映画、コミックスはコミックスなので、映画を見る前に役に立つかと言ったらクソの役にも立たない可能性がありますが、とりあえず話の種にでもしていただければと。めげないこりないあきらめない。それでは、スタート!
デッドプールとは、なんなんですか?
本名は、ウェイド・ウィルソン。マーベルコミックスに属する、(一応)ヒーローです。最初はX-MENのキャラクターの一人であったものの、やがて独立。様々な武器を使う不死身の傭兵、鬱陶しいまでの華麗なトーク、そして自身がコミックスのキャラクターであるメタ的な目線、それらがウケにウケた結果、独自のファン層を掴み、映画化に至りました。
デッドプールはいつ生まれたんですか?
作中では「実は1980年台にもいたし、戦時中も活動してたし、アメリカンコミックス創世記にもいたんだよ! これがさっき作った証拠だ!」とフいてますが、現実においては、1991年2月に発行された「ニューミュータンツ」の98号にて初登場しました。
この号では、右でデッドプールと共に並んでいる二人、高い能力と権力を持つ巨悪ギデオンやデビューシーンでデッドプールを叩きのめした女傭兵ドミノも初登場しており、デッドプールは新キャラの三番手ともいえるあまり期待されてないポジションでした。仮面ライダーシリーズならデッドライオン、キン肉マンならビッグボディチーム、聖闘士星矢ならヒドラの市ぐらいのとこです。新キャラがこうも一気に出てくるというのは、チームの群像劇であるX-MEN系列の作品はキャラクターの数も新キャラの登場頻度も、比較的高い傾向にあるという事情もあります。
デッドプール初登場回となったニューミュータンツを担当したライターはファビアン・ニシーザ、アーティストはロブ・ライフェルド。つまり、この二人がデッドプールの生みの親となります。実は映画デッドプールにて、この二人を筆頭に他のデッドプール関係者やキャラクター、全然関係ないアーティストや某蜘蛛男っぽい名前が隠れミッキーの如く仕込まれているので、余裕があったら探してみるのも面白いかもしれません。さらにロブ・ライフェルドは、カメオ出演も果たしています。なお、マーベル映画の名物ともいえる、あの偉大なるご老人も出ているので、ご心配なく。
デッドプール(ウェイド・ウィルソン)とはどんな人物なのでしょうか?
・若き日に家出。特殊部隊にて訓練を受けたものの、脱走もしくはクビに。フリーの傭兵、暗殺者としての活動を始める。
・自身がガンに侵されてることが発覚。余命いくばくもない状況で、一縷の望みをかけ超人兵士計画に志願。ウルヴァリンが持つ超再生能力ヒーリングファクターの移植に成功し命は永らえるものの、がん細胞が全身に定着してしまい、顔面も肌も醜く歪んでしまう。
・実験動物として扱われたウェイドは、研究施設から脱走。醜くなった身体をマスクと全身タイツで隠し、不死身の傭兵デッドプールとして再び傭兵兼暗殺稼業に身をやつす。
基本的なラインとしては、以上の通りになっております。両親はろくでなしだった。いや、厳格な軍人の父だった。最初は真面目な人間だった。いや、生まれた時からイカれていた。ウェイド・ウィルソンからデッドプールに至るまでの人生には諸説あり、当人の記憶もあやふやなため、これだ!という決定的な設定がありません。第三者の証言も相反しあっており、真相は不明です。映画デッドプールでは、様々な設定を組み合わせての、映画独自のデッドプール誕生譚が語られることとなります。
デッドプールの性格は、まず適当、無責任、フリーダムの大三元。金や女に弱く、思いつきのアイディアでとんでもないことをしでかし、毎日を面白おかしく生きるがモットー。近くにいると迷惑だが、遠くにいてもいきなり近寄ってくるという、どうあがいても絶望な危険人物。大抵のヒーローだけでなくヴィランも、接し方に困る核弾頭です。
一方、女に弱くとも、最後の一線を超えれば容赦しない。その一方、女にフラれたあとに本気で落ち込む。その内面にあるのは、リアリストとしての顔と、少年少女もビックリな純粋さと無垢さ。自由に見えて、過去の過ちや罪を抱え続けており、信頼には信頼で応えたいとは思っている。その性格を理解、もしくは内面に接した結果、それなりの人望もあったりする。
頭のネジが全部外れているように見えて、肝心要なところは意外と閉まっている。愛すべき部分もちゃんと持っている人物と言えましょう。
デッドプールの能力について教えてください。
まず能力としては、一流の傭兵としてのスキル。各種銃火器や刃物に爆発物と、武器を選ばずに使うことが出来、二振りの日本刀(忍者刀)を使っての二刀流やスナイパーライフルでの長距離狙撃と、数々の特殊な技能も持ちあわせております。更には、その場にある日用品を容易く武器にしてしまうだけの知恵と応用力もあり、徒手格闘も収めています。
普段はアッパラパーなので目立っていないものの、戦略や戦術の基本も抑えており、本人の性格と相まっての奇抜な戦術は敵を出し抜くのに最適。数カ国語を話すことも可能と、頭脳面でも意外と高いスキルを持っています。
ミュータントの能力としては、超再生能力であるヒーリング・ファクター。オリジナルであるウルヴァリンより移植されたこの能力により、デッドプールはほぼ不死となっており、軽い傷であればすぐに回復。四肢の欠損のような重症、頭部の破壊のような即死級の攻撃であっても、時間をかければ回復も可能。一度、爆発四散し死亡、墓に収められたのは手首のみという悲惨な状況にもなりましたが、この時も“決して死亡できない呪い”をかけられ、手首から再生。更にその不死性は向上しました。不老かどうかは作品の描写によってかわるものの、百年程度でしたらまず生き延びられるようです。
若干能力からは離れるものの、デッドプールの特性としてあるのは“第四の壁の破壊”。第四の壁とは劇におけるステージ上の役者と観客席の観客の間に存在する境界であり、コミックスで言うならば作中人物であるキャラクターと現実に存在する我々読者との境目となります。デッドプールは既にこの境界の存在を知っており、容易に乗り越えてこちらに話しかけたり、退屈なストーリー展開だとボヤいたりします。それでいて、この特性はルール違反であるというのも弁えており、ストーリーに直接関与したりするような使い方はあまりせず、自分が主人公でない作品やシリアスな作品では後ろに引っ込むぐらいの理性はあります。MARVEL VS. CAPCOM 3出演時に見せた、体力ゲージでの殴打のような使い方は、むしろ珍しい例と言えます。
デッドプールってそもそもX-MENなんですか?
映画デッドプールが20世紀フォックスにより製作されたことを見ればわかるように、映像権利的にはX-MEN枠です。マーベル・スタジオズが制作する、アベンジャーズが属するマーベル・シネマティック・ユニバースと映画デッドプールは、一応別の世界の話となります。一応。
原作におけるデッドプールですが、初期は作品としてのX-MENとその関連作の枠内に収まっていたものの、やがてマーベルユニバースを自由に渡り歩くようになりました。今ではアベンジャーズのバリエーションチームの一つである、アンキャニーアベンジャーズの主要メンバー兼スポンサーという、チームに欠かせない存在となっております。
X-MENの映画に出ているのに、それでコミックスを読んでみたらアベンジャーズ。本当に、ややこしいです。
そしてX-MENがミュータントで結成されたチームであるとした場合、デッドプールの立場は、更にややこしくなります。ミュータントとは、体内の遺伝子がなんらかの変化を起こし超人化した種族ですが、デッドプールの場合は前述したとおりウルヴァリンのヒーリングファクターを移植して超人化した存在。つまり、超人血清を摂取したキャプテン・アメリカ、放射能持ちの蜘蛛に噛まれたスパイダーマン、ガンマ線を浴びて覚醒したハルクのような、後天的能力者であるミューテイトとなります。
ただし先天的能力であるミュータント能力は、本人のミュータント能力によるコピーや強制的な能力の覚醒やクローンによる能力ごとの複製が可能でも、能力をそのまま他者に移植することは不可能と言われており、他人の能力が定着し続けているデッドプールは、ほぼ世界でも稀な珍種と言えます。言葉としては矛盾するのですが、後天的ミュータントと呼ぶしか無い存在です。
他に類がない結果、この辺りはあまり問題視されること無く、デッドプールも時折X-MENの周りをうろついております。正式なチーム入りは、ミュータントとかそういう問題ではなく、人格的に断られることが多めです。
映画デッドプールを見る前に、読んでおくべきもの、観ておくべき本や作品はありますか?
特に無いと思います。映画X-MENと同じ作品と言えども、内容は独立しているというか好き勝手やっているので、気軽に劇場に足を運んでください。必要なことは、だいたいスクリーンのデッドプール本人がどうでもいいことと合わせて、べらべら喋ってくれます。
他の映画からガンガンネタを持ってきている作品ではあるのですが、あまり根幹には関わってこない上に、そもそも「この作品を観とくと良いよ!」というのもネタバレなので、まあいいかなと。あえて、何も知らないまま映画デッドプールを観てからの逆引きというのも、十分アリだと思います。
ウルヴァリン: X-MEN ZEROにデッドプールが出ていたと思いますが、アレとは関係ないんですか?
ウルヴァリンの生誕を描く、ウルヴァリン: X-MEN ZERO。あの作品にてデッドプールは傭兵ウェイド・ウィルソンとして登場、そしてラストにて、サイクロップスのオプティックブラストやジョン・ライスのテレポート能力やウルヴァリンのヒーリング・ファクター諸々を移植された複合型ミュータントのウェポン11“デッドプール”としてウルヴァリンの前に立ちはだかりました。コスチュームもないし、口も縫い合わされて喋れないコレジャナイプール呼ばわりされたアレですが、デッドプールのもう一つの特性である“他人のミュータント能力の定着化”はちゃんと受け継いでおります。
そしてこのX-MEN ZERO版デッドプールですが、映画デッドプールのデッドプールとは、違う存在となっております。何故なら、映画X-MENの世界は、絶望の未来とそのきっかけとなる過去を股にかけたX-MEN: フューチャー&パストでのウルヴァリンの活躍により、1973年以降の歴史が様変わりしております。つまり、X-MEN ZERO版デッドプールは作品ごと“ありえたはずの過去”になっております。歴史が改変された1973年を起点に世界が枝分かれし、二つのX-MENユニバースが平行して存在しているわけです。映画デッドプールと今夏公開のX-MEN:アポカリプスは、我々の記憶や知識が時に足かせになる、未知のX-MENユニバースです。
ただ、この本当はそうだったはずの過去のことを覚えてあげるのは非常に大事なことなので、皆さん決して忘れないようにしておいてください。