2016年12月12日
/ 最終更新日 : 2016年12月13日
fujii
アメコミ
※この記事を区切りに、12月12日~12月18日まで、サイトの更新をお休みさせていただきます。
2016年の12月の2日と3日と4日、三日間に渡り幕張メッセで開催された、東京コミックコンベンションに行ってきました。略して、東京コミコン。コミコンの名を冠したイベントだと、サンディエゴコミコンやニューヨークのコミコンが有名ですね。両イベントと運営的な関係はありませんが、そもそもconvention(コンベンション)とは大会を表す単語なので、そこいらへんは問題ないはずです。アニメのイベントならアニメコンベンション、SFのイベントならSFコンベンション。なのでコミックコンベンションというのは、同人誌即売会くらいに広い意味で使われる言葉です。以上、説明終わり。
東京コミコンは、2日(金曜)のプレビューナイトも合わせての、土日も合わせて計3日間の開催。自分が参加したのは、最終日の4日(日曜)となります。入場料はチケット制で大人2000円。
来年の開催もアナウンスされていますので、その参考になることも願い、実際参加してどうだったのか? 何か注意しておくべきことはあるのか? そんなことをつらつらと書いていきます。
フライングで総括してしまいますが……中々にカーニバル感溢れる、面白いイベントでした。
とりあえず先に、会場を上から見下ろした写真を紹介。
最終日の午後という状況下での写真ですが、中々に入っております。コミケの平常時、コミティアの混んでいる時ぐらい。こういう表現だと、人の感じ方によってだいぶ変わるので……そうですね。多少場に差はあれども、混んでいても歩くのには困らないと言った感じでしょうか。会場の広さと客入りのバランスは、ちょうど良かったのではないかと。
あと特筆すべきは、外国人参加者の多さですね。運営側だけではなく、一般参加者にも海外からのお客さんがちらほらと。ひょっとしたら、日本在住の方かもしれませんが、何にせよ会場の国際色は豊か。ここらへん、イベントとしての色が出ていて、非常にコミコンっぽいですね。
ここからは、各エリアごとに区切っての、見どころなどをつらつらと。
■展示ゾーン
入り口から一直線で最奥のステージまで。中央の展示ゾーンを彩るのは、様々な映画で忘れられないシーンを飾った大道具や小道具の数々。
展示された映画のセットやスーツは、非現実感溢れる豪華さ。ナイト2000が、デロリアンが、バットスーツが目の前に!
こうした洋物の映画ばかりでなく、和の映画に関わるものもしっかり抑えております。
寄生獣やアイアム・ア・ヒーローや怪物くんのモンスターたち。そしてシン・ゴジラ。ハリウッドにSFXあるならば、日本にもSFX、そして特撮あり! 写真には撮ってないものの、ターミネーターのT-800やデスノートのリュークも見事な造形でした。
この展示ゾーンのカテゴリーには、ハリウッド映画ポスターやハリウッド百年史のようなパネル。あと少しだけ離れているものの、生頼範義原画展も入るんじゃないかと。写真撮影禁止なので、こうして文章で語るしかないのですが、マッドマックスにゴジラにスター・ウォーズ……ゲームならばコーエーの歴史ゲー、雑誌ならばムー、様々な分野でこちらが気圧されるような絵を描かれる、氏の原画の雨あられ。今回だけでなく様々なところで展示会をおこなっているそうなので、お時間や機会ある方は是非に。絵の生命力に刺激され、活力が溢れてきますよ。生頼範義健康法。
■出展者エリア
俗に言う、企業ブースです。
規模や展示物は様々なれども、どこの企業もイベントに合わせてしっかりと内容を練っておりました。
では個人的な注目株を幾つか紹介。
アトム:時空の果て
海外発の、手塚治虫キャラクターのカードゲーム。沢山の作家さんが手塚治虫キャラのリメイクに参加しており、上に載せた火の鳥の担当は天野喜孝さん。なんという、御利益がありそうなオーラ。キャラクターは色々あれども、スターシステムの手塚作品内にてほぼワンオフかつ、原典からいじりようのないアラバスターのインパクトは素晴らしい。そもそも、アラバスターがこうして自分の作品外に出てきてるのが珍しいよ!
GRAFFICA NOVELS
こうして邦訳決定としてアナウンスされている書籍の数々、オウム真理教事件をテーマとした“マツモト”に、バトル寿司職人マンガこと“ゲット・ジロー”とインパクトの強い作品ばかりである。ここに並んだ四冊の共通点を挙げるとしたら、現状のアメコミ邦訳という枠をぶっこわす爆発力を秘めているということ。実際、マツモトのことをツイートしたら、様々なジャンルや普段声の届かない人がリツイートしてくれた。デッドプールやヒットマンのように、こういう広がり方をする本は強い。あとどの本も、ジャンル違えども心に残るものを生み出してくれる良作という安心感。
キン肉マン&楽園追放
キン肉マンのオフィシャルグッズショップである、マッスルショップ。このイベントでも広いスペースを取っており、グッズの販売だけでなく、新作フィギュアの展示や純米吟醸酒『魔雲天』の紹介もおこなっていた。『魔雲天』は、秩父山脈でのVSテリーマンにちなんで日本酒『秩父錦』製造の矢尾本店とコラボしているという力の入れようである。そして、土曜日にはなんとゆでたまご先生のサイン会という、知ってりゃ俺も無理して行ってたよ!なビッグイベントが。恐ろしく豪華なブースだった。
楽園追放のアンジェラさんの尻である。ごろ寝のインパクトが凄まじいのか、通る人みんなが注目していた。尻は国境を超える。俺最初、育ちきった双葉杏だと思ってた。
■個人参加(コスプレ&アーティストアレイ)
すまない。実は、これに関しては写真を撮っていないんだ。前者は「一枚お願いします!」が言えない人間だから、後者は人の顔が入りやすいのと、イラストを展示している都合上、中々難しく。本当にすまない……ジークフリートさん並のすまない……。
コスプレですが、非常に見ていて幸せになるコスプレイヤーさんばかりでした。なんというか、楽しんでいるのがひしひしと伝わってきて。あとコミコンということで、やはり海外発のキャラクターが多かったですね。そして客層通り、海外コスプレイヤーの方もちらほらと。実際どういうコスプレがおこなわれていたのかは、「東京コミコン コスプレ」でググってみてください(丸投げ
様々なアーティストさんが参加、イラスト集の販売や有料でのスケッチ販売ことコミッションを請け負っているアーティストアレイ。今回、配置としては奥の奥で、一見ないがしろにされている?という疑念を抱いてしまう位置なのですが……個人的に奥配置はそういうことではないかなと。会場を広く使う上で、奥に配置するブースには「奥に配置しても人が来てくれる」だけの魅力や強い固定層が必要なわけで。例えるならば、コミケの外周部に設置される人気ジャンル。もしくは、子供が絶対来てくれるデパートの奥のおもちゃ売り場。なので、奥配置はある程度実力を見込まれた、アーティストアレイなら大丈夫だと思われた結果じゃないですかね。実際、会場の目立つ中央だと、一見良い場所に思えても、イベントの最初から最後まで平均して力を発揮すること、会場を盛り上げる綺羅びやかさが必要なので、それを個人負担してもらうのはちと厳しいかなと。どっちかというと、多くの人と配布物を用意できる企業向けですね。中央は。
これはあくまで個人的な推測であり大外れの可能性もあるのですが、開幕早々の旬の時間を過ぎてでも人が集まっていたので、それ自体がないがしろにはならないという意志、自分たちはここまで出来るという無言の証明。何か次に繋がるもんじゃないかな。
■ステージイベント
自分が東京コミコンに向かう原動力となったのは、坂本浩一監督が参加する、破裏拳ポリマートークショー。映画破裏拳ポリマーのイベントです。ポリマースーツの造形は実に良かったし、特別映像を見ての結論は行くしかねえ! 坂本監督の破裏拳流アクションも、えらい切れ味でした。あと女優さんを指して「好きな娘がまた増えました」という至言も炸裂。あの笑みと大らかさと欲望は是非見習いたい……!
ステージイベントはだいたい常時様々なものが開かれていたのですが、どれも映画の制作発表だったりトークショーだったりと、自分が破裏拳トークショーに惹かれたように、東京コミコンに行く動機となるだけの力を持つ、イベント揃いだったのではないかと。動機につながる原動力は大事です。これがないと、まず人が集まらねえ。
■写真撮影&サイン会
ある意味、東京コミコンのメインイベントである写真撮影&サイン会。俳優ジェレミー・レナーやマシュー・ルイスとのツーショット写真や直筆サインがもらえるという、ときめき企画。ただしその代金は各15000円。中々に躊躇する金額で、正直俺も全く参加する気は無かったのですが、気がつけば写真撮影のチケットを当日販売口でゲットしていて、あらやだ不思議! 東京コミコン、俺のようにケチな人間の財布の紐すら緩くする魔力がありましたわ……。
購入したのは俳優……というか、出演作品数では並の俳優を凌駕しているカメオ出演の鬼にして伝説のコミックライターことスタン・リーとの撮影チケット! スタン・リーとのツーショット写真。これは記念以上に、お守りなんだ。創作運だけでなく、御年93で日本に来た上、三日間のイベントに参加するだけのタフネス。健康運も見込めるはず。ならば、お値打ちな写真だ。正直、これがスタン・リーと写真を撮る最後の機会というのはピンとこない。小池一夫先生が毎回スタン・リーと会う度に「おそらく最後かもしれない」と言っているけど、両者ともに何度も無事再開してるしね! うむ、是非とも今後共再開し続けてほしいです。
チケットを買って、時間通りに並んでパシャリと。流れ作業とはいえ、その人数は膨大。並ぶ時間もかかるし、写真は専属のカメラマンが撮って、撮影ブースから離れたところで即現像。撮影待ちと現像待ち、合わせて小一時間以上はかかりました。スタン・リーが分身できれば、いいのに……むしろ、ヒーロー能力として出来ないんだろうか……(無茶
スタン・リーに会ったのは、実際数分で撮影は秒単位でしたが、他の人が言っていたように、スタン・リーのオーラ凄いですね。もはや、尊い。当人は椅子に座っているものの、じわじわと伝わってくるエネルギー。これを目の当たりに出来ただけでも、15000円はバカ安だったかもしれん。
「スタン・リーはちょっと体調不良で、今休憩時間に入ってまして……」
(なるほど。三日目だし歳だし、それはしょうがないな)
十数分後、そこにはステージのスパイダーマントークイベントに乱入したスタン・リーの姿が!
「休みなさいよ!?」
ええコレ、実際会場であったことです。どうもスタン・リー、サイン会や写真撮影の合間を縫って、積極的に会場を回ったり、トークショーに参加したり、舞台裏で色々やっていたようです。実際のトコ、93歳だし、体調不良への身体の心配をしたくなる気持ちもわかると言うか、むしろ当然なのですが……基本、好きでフルに動いてるよね。スタン・リー。そうである以上、心配しつつ、見守るしかないですわ。すげえなあ、スタン・リー。
■飲食ブース&生け花
おそらく事前に最もコミコンっぽくないと言われたのは、飲食ブースと生け花。日本の食材&生け花を紹介と、コミックからも海外からもズレてますしね。個人的には、会場のメシが美味いイベントはハズレ無しと思っているので、この試みには賛成でした。
そして実際……いやー、賛成しておいて良かったですわ!
和牛ずし&東京地ビール(肉の匠 将泰庵&コンタツ株式会社)
サバのボロネーゼスパゲッティ(伊豆・いとう地魚王国)
いやね、どれもめっちゃ美味い。他にもちゃんこ鍋や堂島カレーがあったものの、売り切れや腹の都合で食べれず。でもすっげえ美味そうオーラが漂っているので、すげえ悩みました。規模拡大すれば、食のイベントとしてやっていけるんじゃないかと思うぐらいの品揃え。あと、日本の食やプレミアム感のあるメシにこだわらず、ドミノ・ピザがあったのもいいよね。様々な国の人が来る以上、ピザはわりかし平均的な食い物だし。独自性にこだわって、前のめりになっていないのがいい。
所々の生け花も、待ち合わせ場所や目を癒すオブジェクトとして機能していました。
結果的に、飲食ブースや生け花が、東京のコミコン、日本でやるコミコンらしさの演出になっていたと思うんですよね。海外に門戸を開いている以上、日本ならではの要素が求められるわけで。例えば、サンディエゴやニューヨークのコミコンそのものを持ってきても、おそらく日本では爆発的な効果を得られないし、海外目線でもそれは求められていないこと。それだったら、サンディエゴやニューヨークに行けばいいわけですからね。必要なのは、日本に合わせたローカライズと日本ならではの個性です。この記事では、積極的に日本発の出展物や展示物を取り上げるよう務めましたが、東京コミコンの海外のアイテムだけにこだわらない会場づくりは、もっと大きく評価していいことだと思います。この視点がないと、おそらく拡大は途中で途絶えるだろうし、自分もあまりイベントを良く評価していなかったのではないかと。
全体的に振り返って……決して完璧ではなかったものの、最初ならば及第点レベルの運営が成されているイベントだったのではないでしょうか。開幕ダッシュやルールの周知徹底の不備に座り込みのような問題もあったようですが、こういうのは運営と参加者共に回数を重ねることで身につくものです。以前自分も参加した初開催の某イベントで地鳴りがするほどの開幕ダッシュに遭遇したことがありますが、数年経った今では、そのイベントより開幕ダッシュ自体が撲滅されております。こういう問題への対策は、根気です。
一つだけ、即出来る対策としてやってほしいことは「再入場の通知」ですね。東京コミコンはブラックライトに反応するスタンプを使っての再入場措置が取られているのですが、これがあまり周知されていなかったように思えます。外に出れるのならば、その場でのコスプレ禁止対策で封印されているトイレの鏡、たまり場防止策としての飲食ブースの椅子未配置、これらの問題は一挙解決します。外で鏡を使って、外で休めばいいわけですので。幸い、幕張メッセの周りは、巨大ららぽーとを初めとした施設が多数あり、休む場所や遊ぶ場所には事欠きません。ずっと会場にいるよりも、外で休んだり遊んだ方が、緩急が出来て長くイベントを楽しめるでしょうしね。なので「再入場の通知」に関しては、次回アナウンスを強めたほうがいいと思います。
幕張メッセまでは時間と交通費がかかり、入場料も2000円。行くまで入るまでのこの金額、今となっては……非常にリーズナブルでした。東京コミコン、少しでもアンテナにピピっと来たら是非行くべきと言えるイベントでした。実際色々無料で貰ったり、様々なものを買い込んだ結果、帰りの荷物はずっしりと。幸せの重さというやつですよ。
来年も開催する予定だそうですが、来年は計画的にじっくり準備をして参加したいところです。様々な海外メディアを集めての総力戦。集めただけの価値は、十分にありました!