アメリカ人ってなんでゴリラ好きなん?
先日、超厚クロスオーバークライシス・オン・インフィニット・アース発売イベント『中島かずき、石川裕人、アメコミを語る』に行った所、中島かずきさんが「アメリカ人はなんであんなにゴリラが好きなのか?」と石川裕人さんに聞く流れに。そりゃあ確かに、クライシス・オン・インフィニット・アースに参戦しているゴリラも多いし、もっと根本的な所で言えば、アメリカ人にとっての百獣の王はライオンでなくゴリラなわけで。
結果、石川さんの口から出てきた、「何故アメリカ人はゴリラが好きなのか?」との問への答えは、かなり真に迫っている答えでした。実際、海外の方に尋ねたこともあるそうです。要点を簡単に纏めると、以下の通りになります。
・ゴリラは筋肉(強さ)と知性を両立している。かたやライオンは強さで殺すことしか出来ない。
・あくまで生物の頂点は人類であり、人類に近いゴリラは頂点に近い生物(人類>>>百獣の王)。
この答えならば、チンパンジーのディクティブ・チンプやヒヒ&オランウータン&ゴリラで一つのチームなスーパーエイプスと、ゴリラに限らず霊長類のキャラクターが多いという事情にも頷けます。
そして、幾つか自分なりにゴリラ人気について考えていたことがあるので、これを機に記してみようかと。与太話に近い物もありますが、自分が他人の知識により刺激を得たように、何かの切っ掛けにでもなってくれれば、これ幸いです。
アメリカの首都といえばワシントンDC。ならば、アメリカの中心は?と聞かれたら、多分ニューヨークが来るのではないかと。全米最大の都市にして、経済の中心、文化の発信源。西と東、アメリカは地方によって様々な色を持つ国ですが、USA!なイメージはまずニューヨークにあるんじゃないかと。
人種のるつぼであり、様々な人が住んでいる都市であるニューヨーク。人種が多ければ、嗜好も多い。これがニューヨーカーの好みだ!と一概に言える物は少ないのですが……ニューヨーカーって、筋肉好きなんですよ。デカくて、強い! こういうシンプルな物が受ける土壌があり。好みが多彩な分、支持を得やすいシンプルさは、相対的に強くなり。
このでっかい筋肉の代表格なスターといえば、ハルクですかね。緑色の巨人ではなく、ネプチューンマンハルク・ホーガン。プロレスラー、テリー・ボールダーが、テレビドラマ『超人ハルク』でハルクを演じたルー・フェリグノと並んでみたら、テリーの方がデカい! こいつこそハルクなんじゃ?という事で、テリー・ボールダーのニックネームにザ・ハルクが追加。やがてハルク・ホーガンに改名するのは、一部で有名な話。
マジソン・スクエア・ガーデンの頂点に君臨し、ハルクアップと必殺ギロチンドロップでニューヨーカーを熱狂させた、プロレス界のスーパースター、ハルク・ホーガン! ホーガンに限らず、ニューヨークのボクサーやレスラーは、でっかいのが好まれる傾向にあります。時代ごとの好き好きの度合いや、下地となる人種推しのストーリーもあるのですが、一先ずそれはさて置き。解説のみで、文章の量が数倍になりかねんので。
そしてやがて時代は電波やネットへ。様々な作品が広く大きく広がることになるのですが、やはり文化の中心となるのは、でっかいニューヨーク。TV局に出版社にエンタメと、発信源が沢山ありますからね。ニューヨークの好みが、ハルクアップが、アメリカ全土に配信! 今まで地域ごとにあった差が、大きな物に飲み込まれていく! そして徐々に、マッスルがニューヨークだけでなく、国全体を侵食。となれば、逞しい肉体と見て分かる筋肉を持つ、でっかくて強いゴリラの人気もガン上がりというわけですよ。話が戻った。筋肉抜きでも、例えばニューヨークを舞台とした名作キングコングの存在によるゴリラ人気→ニューヨークの好みが全国に拡散!の流れは同じで。全ては、ニューヨークから始まる。
いやあ、それにしても、危うくプロレス史になるとこでした。ああそう、ハルク・ホーガンとネプチューンマンの間には、古舘伊知郎の「現代に蘇ったネプチューン」の実況があるんじゃないかなと!(書き逃げ
あとコミックスのゴリラ史と言えば、DCコミックスの伝説的編集長ジュリアス・シュワルツは外せない人でしょう。アメリカンコミックスの繁栄期であるゴールデン・エイジの頃、編集の道に。今の日本で言うなら、ラノベの萌えキャラとか長めのタイトルとか、そんなポジションにゴリラを持ってきた男。
この情報だけだと、ゴリラ好きの変なオッサンでしかないですが、経歴を並べると、SF同人誌の元祖とも言われるタイムトラベラーの刊行に携わり、かのラブクラフトの担当編集も務め、旧来のヒーローにSF的要素を加えてのリメイクを提案、その結果生まれたザ・フラッシュやグリーン・ランタンを大ヒットさせ、アメコミ第二期繁栄期シルバー・エイジが始まるきっかけに。フラッシュやグリーン・ランタンの台頭でヒーローコミックスの商業的価値が見出され、マーベルでもファンタスティック・フォーやアベンジャーズが生まれたと考えると、アメコミのヒーロー物なら、何処の支流を辿ってもジュリアス・シュワルツに辿り着くよ!なお人。日本での知名度は微妙な所ですが、ポジション的にはマーベルのスタン・リー、DCコミックスのジュリアス・シュワルツと並べられる感じで。
この人に、商材としてゴリラが見出されたのは大きいでしょう。今でも本国のコミックススレにてゴリラ関係の話題となると、「ジュリアス・シュワルツが今でも編集長ならなー」「ジュリアス・シュワルツが見たら泣くぜ」みたいな話が普通に出てますからね。コミックス業界で見ても伝説なのですが、コミックスにおけるゴリラに見方を変えた場合、もはや創世神的な扱い。既に故人(2004年没)なのですが、彼の築いた方針は、世界一のゴリラキャラの充実度として、DCコミックスに遺っております。フラッシュ誌で初登場し、数多くのゴリラキャラの原産地となったゴリラシティの創設は、大きいよね!
個人的な考えとしてはまずこんな感じですかね。こういう好みのようなふわっとした物に対しては、1か0かという答えの出し方は出来ないので、これからも考えて続けていくつもりです。本文は、中間発表みたいな物で。
最後に、海洋冒険物シーデビルスにゴリラが出た時の表紙を貼ってみます。大地に生きるゴリラが、海に出現。この矛盾を貫くための手段とは?
小細工抜きの真っ向勝負。日本よ、これがゴリラだ!と言わんばかりの大迫力。長い歴史とそれに付随する蓄積があるだけあって、ゴリラとはなんとも奥深く。