アイアンマン3 感想

 アイアンマン3、アイアンマンの映画として三作目だから3。でもこの辺、本当は4ですよね。映画アベンジャーズは、ヒーロー全員が主人公。アイアンマンの映画でも有り、キャップの映画でも有り、ソーの映画でもあったわけで。そしてアイアンマン3のトニー・スタークは、アベンジャーズの経験を自らの身に刻んでいます。アイアンマン、アイアンマン2、アベンジャーズ、この三作品で生じたトニー・スタークやアイアンマンを構成する素材を丁寧に下拵えして作り上げたのが、アイアンマン3かと。
 トニー・スタークなら、こうする。アイアンマンなら、こう戦う。アベンジャーズ以降、世界はこう変わった。生じた素材を丁寧に煮込んで、硬い骨もさっくり食べられるように。真面目で、真摯な映画でした。こういう映画は、例え好みに合わずとも、嫌いになれない。いやまあ、俺にとってはかなりの直球ストライクな映画でしたけど。
 アイアンマン:エクストリミスを下敷きとしながらも、全て再構成した結果、全く予想の出来ない映画に。まっさらな状態で見た方が面白いので、都合が合うなら、早く見た方がいい映画です。おそらく作中、2~3回は「えー!?」となるんじゃないかしら。

 以下、ネタバレです。

 三作目ともなれば、予告であらすじは読めそうなものですが、アイアンマン3は無理ですね。具体的に誰のせいかといえば、マンダリンのせいなんですけど!w 名優ベン・キングズレーを連れてきて、この展開って! フォーチューンクッキーって、一回食べてみたいんですけど!
 観た後に思い返してみれば、確かにマンダリンはCMの時点で芝居がかりすぎなんですよ。大規模な紛争やテロ、時には密入国を手配するような組織テン・リングスの首領としては。ただその反面、アベンジャーズでハッキリと示された、宇宙人や神様がいる世界ならアリかなとも。おそらく、アイアンマン1や2の時点で出てきていたら、もっと多くの人が彼の正体を見抜いていたと思います。1の時点でファンタジックすぎないか?との理由で出演ボツくらったマンダリンですが、アベンジャーズを経た世界でも、ファンタジックなままでした。ただし前者は魔法使い、後者は現実世界でもありえる、メディアの幻影として。

 もう一人のアイアンマンこと、ウォーマシン。胸のアークリアクターの形状やスマートさを見れば一目瞭然ですが、2終了直後、トニー・スタークの手により、重武装というメリットを殺さないままサイズダウンと、理想的な改造が成されています。この辺り、1のアイアンモンガーや原作版アイアンパトリオットで実証されているトニー・スタークの技術力のオーパーツっぷりを表す話です。アイアンモンガーは、アークリアクターをトニーから奪わないと動かせなかった上に、万全のアイアンマンにはおそらく勝てないスペック。アイアンパトリオットは最新型アーマーでありながらも、トニー・スタークのメンテがないため能力型落ちと。
 実際、邦訳も発売される、アイアンマン3:プレリュードでは、重火器や新兵器を縦横無尽に扱うウォーマシンが拝めます。ウォーマシン最大の謎、アベンジャーズの時、彼は何をしていたのかにも触れられます。爆笑必至のシュールなコマもあるので、ある意味必見です。そりゃそんな顔するしかないよ! みんな!

 アベンジャーズメンバー中、一番豪快に見えて、実は最も繊細な男、トニー・スターク。一人で物事を抱え込んだ結果、やがて重責となり、色々な破綻を起こしてしまっているは周知の事実。アル中とか、シヴィル・ウォーとか。
 今回、トニーを押しつぶそうとしたのは、アーマー依存症。強大な力と対峙した結果、トニー・スタークが欲したのは、負けないくらいに強大な力。それはすなわち、アーマー。最終決戦で集結する30超のアーマーは、一見強さの象徴に見えますが、実は疑心暗鬼の象徴であり、むしろトニー・スタークの弱さが生み出した産物です。
 しかし、アイアンマン3における、何もない状況での戦い、生身での戦いを通すことにより、弱さの象徴は強さへと変換され、純粋な力として振るわれることになります。アイアンマン3は、トニーが一旦全てを失い、やがて自分を取り戻す物語です。取り戻した結果が、最後のアーマ爆散やアークリアクターと言った、力の放棄かと。アベンジャーズ2ではおそらく、新生したアイアンマンとして帰ってきてくれるはずです。
 それ言い過ぎと言われていた、日本でのキャッチコピー“さらば、アイアンマン”この言葉は、言い過ぎどころか、作品を総括しつつ大事な所を隠した、良いキャッチコピーでした。