日々雑談~5907~

 2週間で読めるのか!? と思ったけど、意外といけそうで怖い。1日で15冊ずつ読めば……は無茶なものの、幸い手元に1~53巻までは置いてあったので、そこをショートカットすれば、だいぶペースが落とせるわけですよ。それでも1日10冊ぐらい読まないと間に合わないけどな! ただ、実際やってみると、ほぼ一話完結かつ、テーマは難しくともするする読ませる構成と、ゴルゴ自体が非常に読みやすいこともあり、意外といけるというのはそこまで大ボラではないのですよ。そして、この読みやすさは、気になるエピソードを読むつまみ食いにも向いていたり。伊達に刹那の面白さが求められる、ラーメン屋の本棚や床屋の待合室のテッパンじゃあねえよ。

 それにしたって1968年開始で現代を舞台にした作品だけあって、もはや当時の世界情勢を記した歴史的資料というか。アメリカは覇権国家として傲慢に振る舞い、ソ連は謎のベールに包まれた巨大国家として底しれぬ存在感を放ち、ヨーロッパでは各国で諜報機関やナチス残党が暗躍し、中国は共産大国としてとしての道を歩み、日本人は戦後復興からバブルでエコノミックアニマルと化す。それがもう、アメリカは細かなヒビが目立つようになり、ソ連はがらがらと崩れ落ちての遺産の安売りセール、ヨーロッパはEUでナチス残党も高齢化、中国は民主化により様変わりし、日本はバブルが弾けて慎ましく細々と……ですよ。こういう世相を反映したリアリティによる寂寥感は、長期連載作品ならではの特権ですね。たとえ天才作家でも、その場にいない状況でその場にいた名作と同程度のリアリティを出すのは、相当に骨が折れる作業でしょうしねえ。しかもゴルゴの場合、今も続いているので、未来においてはこの今も過去となり歴史的資料の一部になるわけですよ。カーッ! たまんねえなあ!

 ゴルゴと言えば、さいとう・プロダクションによる分業体制。制作体制を考慮した上でざーっと読むと、分業体制で生じる毛色の違いがなんとなくわかるのが面白い。そしておそらく、思想やイデオロギーに関しては、よっぽど偏らない限り、たぶん各担当者の裁量に許されてるんじゃないかなと。様々な思想やイデオロギーを混ぜて出力した結果、結果的に全部足して平均化してのノンポリ寄りなゴルゴにしてゴルゴ13になるというか。何をやってもゴルゴにできる、さいとう・プロダクションのノウハウあってこそのノンポリですけどね。

 いやもう、まず楽しいし、そして深く考えると制作面でも興味深いポイントが多々あると、やっぱゴルゴ13ってのはすげえ作品だわ。