メイド求めて三千里
「違うんだ。ここはメイド喫茶ではなく、偶然制服がメイドっぽいだけの喫茶なんだ」
「……なら、制服がメイドっぽくなくても行くのか」
「行かねえよ」
「だよなあ」
始まりは管理者との正月明けのメッセ
「帰省したはいいものの、正月休みが暇でしゃあない。ここは一発、久々にお前さん(管理人)の地元で遊ぼうぜ」
「それは構わんが、実は面白いものがある情報を得たんだ」
「……?」
「俺の地元にメイド喫茶があったんだよ!! 」
「な、なんだってー!!」
普通の人間なら地元に有ったからって行こうと思わないのですが、そこは管理者クオリティで突っ込む気ぃ満々です。さすがクリスマスに男友達と遊んでいたのに誤解されて妹に彼女持ち疑惑を投げかけられる独り身は違います。ごめん妹さん、遊んでたの俺。
「と、言うわけで。クーポン券を印刷して用意してきた」
「アンタもやる気満々じゃないか」
それにノリノリで付き合う俺もいい意味同レベル。
いやー僕はメイドさんとか興味ないんですよ? ただその店のHPを見た限りでは普通にコーヒーが美味そうだったのでそれに惹かれただけッスよ(知り合いに見られたときの言い分け用)
そもそも、コーヒー好き云々ならば管理者には勝てませんが。彼は積極的に喫茶店とかでコーヒー飲んでいますしね。俺のコーヒー論なんか朝に目を覚ますにはワンダモーニングショットが良いくらいの持論しかないですよ。
正月の松の内から何をやっているんだい? 目をさませよ(天使)
目をさましても、コイツ等は普通に行くと思うぞ(悪魔)
それもそうだな(天使)
非常に意味のない善悪の葛藤をやっている内に目的の喫茶店到達。ふむ……HPで確認した通りで確かにレトロで良い雰囲気の喫茶店。噂では店の雰囲気に合わせた大正風味のメイドがいるらしいですが、これは偶然に店の制服がそれっぽいだけなんじゃないかなと思います。
他の風俗的要素も含んだメイド喫茶と呼ばれる亜流の喫茶店とは違い、いわばこの店のメイドという存在は副次的要素であり……
えーと、自分でも論の展開がめんどくさくなってきたので簡潔に。
たぶんこの店のメイドは客の事をご主人様とか呼ばない。
すまない謝る。確かに俺はここのメイドさんは店員さん、つまりバイトとしての要素が強いといった。バイトというのは忙しいときに店を手伝うものだ。つまり正月の松の内は基本的に暇かつバイトを呼びにくい時期で……
メイドいねえよ!!
おまえ何のために俺を呼んだんだ!? 確かにコーヒーとケーキは物凄く旨いよ! でも意味ねえじゃん!!
と管理者を罵倒しようかとも思ったんですが、目の前の死にそうなほどに絶望感に覆われた男を責めることは俺にはできなかった。このあと練炭と七輪を買いに行くんじゃないかと思えるほどの絶望感。付き合いは長いがここまで絶望感に打ちのめされたこの男を見るのは初めてでだ。受験後に浪人が決まったときでさえまだマシだったんじゃねえか? あんまりオーラを見ていると俺まで飲み込まれそうだったので目の前のチーズケーキに意識を集中する事に、うまうま。
……? なんだろう、この周りの客からの信じられねー的な視線は。アレか、スキンヘッドのサングラスがケーキをちまちま食うのは罪か?
「ハハハ……あんたメイドがいなくてヘコんでたなあ」
「オメエに言われたくねえよ!! 死にそうなツラしてたぞ!!」
自殺者に「自殺するなよ?」と言われるくらいの屈辱を受けながら喫茶店近場の寺院に初詣。とりあえず、今年もいい年でありますように。
PS・帰り道に買った発狂煎餅なる唐辛子まみれの煎餅を某オフ会に持参。胃が痛くなる極辛との高評価。よかったよかった……俺は食わなくて。
PSのPS・帰り際のカラオケで巫女巫女ナースが収録されていないと管理者絶叫。きっとコイツ今年大凶だ。なおさくらんぼキッスも入ってねえぞ!!と絶叫した俺も凶。