クビツリタヌキ

 ぶらぶらぶら。風に揺れる、身体。
 或る高層ビルの屋上から、彼が飛び降りたのは早朝の事だった。遺書は無いが、靴が綺麗に揃えられており、周りが清められていた事から自殺と判断された。
 彼の首には縄が巻きつけられていた。荒縄の先端はビルの自殺防止用の手すりに巻きつけられており、縄の長さは当然ビルの高さに劣る。つまりコレは、投身自殺ではなく、豪快な首吊りという事になる。あまりの落下時の衝撃に、首の骨が砕け、首が千切れんばかりに伸びきっている。第一発見者の勤勉なOLは、窓の外で朝日に照らされる彼と目が合ってしまい失神した。

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ザ・サムライ~ラストラウンド~

 聖杯戦争はこの場所に帰結する。
 柳洞寺に隠された洞穴。本来ならばこの洞穴で、従者の誇りがぶつかりあい、姉妹の因縁が清算され、一人の男の執念が滅びる。つまりは最終決戦の場所。
 しかし、今この洞窟で行なわれているのは決戦ではなく、ただの特訓だった。だがこれを特訓と呼んで良いものか。特訓というにはあまりに無慈悲で、あまりに残虐。傍から見れば、これはただの拷問しか見えなかった。

 深い洞窟でネプチューンマンはギターを奏でていた。曲目は『イエスタディ』英国の傑物ビートルズの代表的な名曲だ。亡き母を偲んで作った詩は、なにか物悲しい。
「うっ……」
 呻き声が合いの手で入り、ネプチューンマンは演奏を止めた。
「どうした。まだ八時間しかたってないぞ」
 洞窟の天井に吊るされ呻く、士郎の姿は凄惨だった。上半身裸でぶら下げられられ、ところどころに血が滲んでいる。血の臭いをかぎつけたコウモリたちが、士郎の血をすする為に群がり、新たな傷が生まれる。新たな傷から湧き出た血が再びコウモリを呼び寄せると、終わらない苦痛が続いている。
「こ、こんなことで強くなれるのかよ。もっと、道場で鍛えたり、魔術について勉強するとか、こんなんで聖杯戦争を終わらせることができるのか?」
「勝ち抜くために、こうしてんじゃねえか。この特訓は俺たちの勝利に直結してるんだぜ。聖杯を手に入れるためにな」
「聖杯……? 俺は、戦争を終わらせたいが、聖杯なんかいらないぞ」
「ふん。やはり甘チャンだな。その性根をどうにかせんと、お前は永遠に三流魔術師だ」
 ネプチューンマンはギターを置き、士郎の眼下に歩み寄る。
「ひとつ、面白い話をしてやろう。俺と同じ境遇の正義超人の話だ。ソイツは、魔界のプリンスと呼ばれる冷酷非道な悪魔だったが、正義超人の友情を目の当たりにし、一人仲間を振り切り出奔して、正義超人入りを果たした。そして正義超人対悪魔超人の最後の戦いが終わり。正義超人軍団は解散、男は魔界に戻り結婚し子をなし、息子を自分と同じ正義超人にしようと鍛え始めた。今、男はどうしていると思う?」
「息子を育てている最中か、それかもう育て終わって息子に正義超人の座を譲ったんじゃないか」
 士郎の希望ある答えを聞き、ネプチューンマンは高笑いし、話を続けた。
「ハハハーッ! 残念! 正解は、男は自分が正義超人であったことを後悔し、己の手で殺した息子を思い懺悔の日々さー!!」
「なんでさっ!?」
「耐えられなかったんだよ、悪魔の血に息子が! 息子は正義超人であることに苦痛を覚え、悪魔への道をこっそりと歩み始め、知って咎めた実の母を惨殺したんだ。そこまできて男はようやく気付いたのさ。悪魔は所詮悪魔、正義超人になどなれるはずが無い。息子が悪魔となってようやく、自分が現役バリバリの正義超人であった時に感じていたザラついた違和感の正体を知った、愚かな話だ! 男は母を殺した罪の清算として、息子を殺し。自分が間違っていたせいで妻と息子は死んだと懺悔の日々を送っている。正義なんてもんに憧れなければ、二人とも死なずにすんだとな。ハーッハッハッハー!!」
 絶望的な物語は終わりを告げ。同時に、この狂った特訓も終わろうとしていた。
「ウォォォォォォォ!」
 士郎はロープを己の力のみで引きちぎり、拘束から離れる。徐々に肌が黒くなっていき、髪も茶色気味の毛から白髪へと変色していく。その姿はまさにアーチャーそのもの。急激な変貌を遂げた士郎を見てネプチューンマンは満足げに叫んだ。
「そう、その正義感を一度全てとっぱらった姿が強者たるお前の姿だ! 衛宮士郎では俺のパートナーになりえない。だが、お前が英霊エミヤならば、俺とお前は戦争に勝利し聖杯を手に入れ、完璧超人界復興を成し遂げられる!」
「そうか、俺は、いや私の到着点はこの姿なのだな」
 口調までそのものとなった士郎、もといエミヤはゆっくりと立ち上がった。そこへ再び群がってくるコウモリ達。瞬時に投影された黒と赤の両刀が、獣と鳥の間に位置する中途半端な生き物をはっきりと一刀両断した。コウモリの死骸が周りに積もる。
「話は聞かせてもらったわ!」
 岩陰から飛び出してきたのは凛だった。この洞窟での特訓をいぶかしみこっそり後をつけて来ていたのだが、既に事態は最悪の方向へと進んでしまっていた。
「いままでよくも騙してくれたわね。完璧超人界の再興? そんなものに聖杯は使わせないわ」
「怒鳴られるとは心外な。君の死んだ相棒に再び会わせてやったのだ。少しは感謝して欲しいものだな」
「……どうやら交渉の余地も無い様ね」
「それはこちらも同じ事。オレの企てを知られてしまった以上、お前を帰すわけにはいかねえ。さあエミヤよ! ゴングが待ちきれんだろう!? これが英霊エミヤとしてのお前の初仕事だぁ―っ!」
 ネプチューンマンの合図を受けたエミヤは一瞬も躊躇せず、ゆっくりと将来の主となるべき女性に、切っ先を向けた。
 そして音が後をついて来るほどの速度で駆け――

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仮面ライダーX 第○○話 大決戦!! 再生サーヴァント軍団!?

というわけでコ○ックマーケットでのコピ本出版の際に書き足した、コレの続きです。うん、しかしヒデエ。原作のメインヒロインが「がおー」としかセリフがないSSがかつてあっただろうか。

バーサーカーが倒れ、遂に残るサーヴァントはセイバーとライダーのみとなった。GODの神話怪人軍団も既に壊滅状態となり、冬木市の戦いはXライダーとライダーの活躍により終結しようとしていた。
 平和と言う二文字が近い今、遂にGODの最終作戦が発動する――

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近世百鬼夜行~十一~

――滅びる街
――潰える怪物
そして――消える炎

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仮面ライダーX 第○○話 恐怖! 寺院に忍ぶ魔女の影

 クラスはアサシン、名は佐々木小次郎と意味づけられたサーヴァントの役割は主の本拠の門を守る事。今日も一人、侵入者が石段の下に現れた。侵入者はバイクに乗ってこちらを伺っている。侵入者はやけにゴテゴテと飾りをつけたバイクに乗っていた。フロントの両脇についた二つのスクリューにはどんな意味があるのだろうか。
 石段はバイクでは登れない、そう小次郎も決め付けていた。だが、侵入者は石段をまるで平地を走るがごときスピードで駆け上がってくる。坂としてみても、この柳堂寺の階段は急だと言うのにだ。バイクはすぐに山門の直前にさしかかる、小次郎の愛刀の鞘が地面に落ちた。
 不可視であり、不可避であるという都合の良すぎる魔剣燕返し。三重の刃が疾走するバイクに向け放たれた。一つ目の刃はバイクの前輪、二つ目の刃は運転手の両腕、三つ目の刃は運転手の首。それぞれが受け側にとって致命傷である部位。己が剣技の集大成を放った小次郎が、皮肉げに笑った。
「さて。バイクという乗り物が、飛ぶ物だとは知らなんだ」
 バイクは直前で宙に飛んでいた。高速のバイクと小次郎の狙いのズレが生んだ不可避の歪み、歪みを山門ごと飛び越えたバイクは柳堂寺の境内に着地した。

「なるほど、確かに妙な雰囲気だな」
 己の愛車であるクルーザーから降り、神啓介は境内を一望する。いっけんなんの変哲も無いそこそこ大きな寺院。しかし、人の気配が無さ過ぎる。聞いた話ではこの寺には何人もの修行僧と住職の家族が住んでいるというに。そして山門に居た謎の侍。なんとかまく事ができたが、恐ろしいまでの剣の冴えだった。まともに対峙していたらどうなっていたか。あれほどのつわものが門を守っていたのだ、やはりここには何かが有る。
 カタカタ、カタカタ……
「ん!?」
 物音に啓介が気付いたときには、既に囲まれていた。大きな牙を顔面に備えた白骨の兵士達が周りを取り囲んでいる。手にはそれぞれ大刀を携えていた。
「貴様ら、何者だ!?」
 白骨の兵士は答えようともせず襲い掛かってくる、啓介は逃げずに真正面から彼らを迎え撃った。恐ろしい外見をしているが、実力は所詮人より少し上。啓介は素手でどんどんと彼らを打ち砕いていく。最後の一匹を打ち倒した瞬間、巨大なレーザーが啓介を飲み込んだ。
「まったく、ここまで突破してくるから何者かと思えば、サーヴァントじゃないじゃない。てっきりバイクであんな突破の仕方をするからライダーかと思ったのに」
 焼け焦げた啓介を、フードを目深に被った女性が見下ろす。威厳や風格に言い草からして、この女がここの指揮官に違いない。しかもライダーに対して警戒している、やはりここは奴らの基地だったのだ。
「いや、お前の見立ては間違っていない」
 啓介は一瞬で飛び起き、間合いを取る。女は少し驚いていた。
「俺は間違いなくライダーだからな」
「……なに言ってるの? ウソも大概にしなさい、今回のライダーが女である事は私自身の目で確認してるわよ」
「そちらこそ見え見えの嘘を。俺以外に四人先輩のライダーがいるがみんな男だ。女のライダーなんているものか」
 ワザとらしい嘘でこちらを混乱させようとする。こんな稚拙な策しか立てられない司令官を使うとは、GODもヤキが回ったものだ。
「貴様に本物のライダーを見せてやる。セターップ!」
 セタップの掛け声と同時に、啓介の体を銀色のスーツが包む。ベルトに備え付けられたレッドアイザーとパーフェクターを取り外し、それぞれ両手で掲げる。右手に掲げたレッドアイザーはXマスクの素体に、左手に掲げたパーフェクターを口蓋に取り付けることで変身は完全となる。仮面ライダーXへの。
 仮面ライダーX。暗黒組織GODが作り出した、ギリシャ神話の神々を模した神話怪人軍団と戦う銀色の仮面ライダーだ。
「行くぞGOD神話怪人魔女メディア!」
「なんで私の真名知ってるの!? って、何よこの展開はー!!」
 ベルトから万能スティックライドルを引き抜き、怪人メディアと対峙するXライダー。彼はまだ知らない、彼がつかんだ柳堂寺にGODの影有りと言う情報自体が、GODがしくんだ罠であると言う事を――
「ちょっと! 私はどうなるのよ!?」
 とりあえず頑張れ、怪人メディア。

そして数日後――

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