ザ・サムライ~悪魔VS猛犬~

 柳洞寺へ向う石段を強引に避け、山を踏み入った中ほどにある小洞窟。ここに全ての悪意は集結し、聖杯現出の場としての体裁を着々と整えている。 
 現在この入り口には、当面のターゲットを見失ったオメガマンが陣取っていた。ようは、ていの良い見張りだ。彼にしては珍しく気が抜けた状態だ。
 しかしカサリと枯れ枝を踏む音が聞こえた途端、すぐに彼は気を取り戻し侵入者へと構える。この闇夜でオメガマンの異形の外見を見ても、侵入者は不敵な笑みを絶やさなかった。
「誰だ!」
「私は神父です、中に控えている方に差し入れを持ってきました」
 おかもちから漂ってくる、鋭い唐辛子の香り。
 侵入者は聖杯戦争監視役の言峰神父だった。寺と言う信仰の真逆の建物があるそばに居ても、彼は意にも介していない様子だ。
「差し入れだと? 怪しいが、神に仕える神父の言う事だ、信頼してもいいだろう」
 この男に見張りの意味があるのだろうか。罪なのはオメガマンではなく、神父や牧師は信用できるといった超人界の常識なのだろうが。
 だが、オメガマンはなんとか見張りとしての職務をギリギリで思い出した。
「ちょっと待ってもらおうか。まだやはり、完全に信頼は出来ない」
 さっさと言峰の体をチェックするオメガマン。とりあえず武器の類は持っていないようだが、触っているうちに違和感を感じ始めていた。
「フフ、神父さま。えらく筋肉が発達していらっしゃる。どこで、鍛えられたんですかい?」
 服の上から触ってもハッキリわかるほどに、言峰の体は鍛え抜かれていた。質は違えど、密度や錬度は超人の筋肉にまさるとも劣らない。明らかに、並みの聖職者が持ち合わせるものではない。
「テメエ! ちょう……」
『手を出すな』
 ライフルを持ち出そうとしたオメガマンを止めたのは、洞窟から響いてきた声であった。尊大な物言いだが、オメガマンは文句一つ言わず慌てて声に従う。
「どうやら、許可が出たようだな」
 このやり取りの中でも平穏を崩さなかった言峰を、オメガマンは舌打ちをしてから通す。そんな不満げな彼に、言峰はおかもちを差し出した。
「なんのマネだ」
「この食べ物は君に持ってきたものだ、この中に居る悪魔は、食べ物を必要としないからな」
 オメガマンの返答も待たず、言峰はおかもちを置いて洞窟の中に入っていった。
「あの男……何者なんだ」
 オメガマンは、自分や強豪悪行超人にも勝る負のオーラを持った神父に、僅かな恐怖を感じていた。アレに勝るのは、不死鳥か完璧の長かこの中に居る悪魔ぐらいしか思い当たらない。
 とりあえずおかもちの中身を確認する。おかもちの中に入っていたのは、真っ赤な麻婆豆腐、おかもちを空けた瞬間に漂うツーンとした匂いがオメガマンの目を潰した。
「うお!?」
 思わず目を押さえるオメガマンの背後を、青い影が駆け抜けた。

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百鬼夜行的な大放談~1~

「五木と」
「春秋の」
「「放談コーナー!!」」
「さあ始まりました、新コーナー。最初は配布アイコンを使用しての版権キャラによるアイコン漫画の予定でしたが、それ用のCGI配布サイトが閉鎖していたり、システム構築が上手くいかなかったりという理由で、ホームページ内オリキャラによる文章対談形式に変更となりました。まあ、これはこれで版権キャラよりオリキャラの方が好き勝手させられるし、キャラ付けにもなるしねと、『なかの人』こと代表者が笑顔で語っていました」
「その後、暗い顔で『管理者の企画立案実行能力はアレすぎる』って……」
「シャラッープ。と言うわけで、放談第一の刺客こと五木です。普段はこのホームページの百鬼夜行シリーズで主役やってます」
「相方の春秋でーす。同人誌版と『きんだいひゃっきやこう』に出てまーす。同人誌版はともかくとして、きんだいひゃっきやこうの続きはいつ出るんだろーね?」
「近い将来だと思うよ」(目を逸らしながら)
「それはそれとして、なんでオレなんだろーね。百鬼夜行シリーズの主役って五木と那々ちゃんでしょ? そのコンビでいいじゃん」
「那々はこういうのに向いていない。あいつはKOOL(by前原)なので、使いにくいと言うかなんというか。必要があれば出張ってもらうが、とりあえず今日はお休みだ。本人も『最近出番がないので技術交流に行ってくる』といって不在だしな」
「技術交流って何処に?」
「テキサスにチェンソー持って出かけたけど」
「……お目付け役に付けた冬夏、大丈夫かなあ」
「うははー最終的に通りすがりのトラックに助けてもらうんだぜ」
「うわーん! 冬夏ー!!」
「はっはっは、というわけで前説はここまでにして、本題に入るぜ。今日のお題は『キョン子可愛いよ、キョン子~TSもいいもんだ~』だ!」

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貴方は今何処で何をしていますか?

少女が天国の母親に送った手紙、料金未納で返送 罰金通知付き…フランス

>この出来事について郵便局は、「実際に『天国(フランス語では「Ciel」)』という町はあるが、「パラダイス」という名前の通りは知らない」と答えた。

アルクェイド(アルク)「シエル……アンタ、空気読みなさいよ」
シエル「なんで私責められてるんですか!?」
志貴「先輩を責めてもしょうがないだろ。そもそも先輩の名前の語源は『空』じゃなくて『弓』だから、関係ないだろ」
シエル「遠野くん、それフォローになってないですよ。もう界隈の人が殆ど忘れている『ラルク・アン・シエル』事件を掘り返してどーするんですか?」
アルク「ああ。キノコの偉い人が勘違いして、フランス語で弓って意味で『シエル』って名前を付けた事件ね。本来のフランス語での弓は『ラルク』で『シエル』は空って意味だったのよね。間違いが発覚したのが開発終盤で、もうどうしょうもないからシエルでいいやーこれはこれでいい名前だしー的な、将来の扱いを暗示するような投げ捨てっぷりで正式にシエルに決定しちゃったのよねー。しえるーふびんー」
シエル「なに詳細に解説しているんですか!?」
琥珀「まあまあ、お二人ともその変にしておきましょうよ。イジメカッコ悪いですよ」
シエル「琥珀さん……」
琥珀「シエルさんだって悪気があったわけじゃないんですし」
シエル「悪気もクソも私の意思の入る余地が無かったんですが」
琥珀「だいいち考えてみてください。子供が天国のお母さんに手紙を送った。そしたらお母さんから帰ってきた手紙が、やけにスパイス臭くて本題そっちのけでカレーのレシピが詳細に書かれていたりしたら、子供グレますよ?」
シエル「やっぱりこういうオチですか!?」

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近世百鬼夜行~十二~

 わきあいあいと騒ぐ子供達を乗せ、幼稚園バスは一路牧場へと向かっていた。
 みんなで楽しいお歌を歌い、レクリエーションでおおはしゃぎと、遠足らしくいい感じで盛り上がっている。途中、席を立つ子供をいさめたりしながら、何事も無く無事にたどりつけそうだと、新人保母の、岬は一人安堵した。
「そう不安がらなくても大丈夫さ。今日は、かなり良い感じだ。バスに酔う子もいないしね」
「ははは、子供達より先に、私が酔っちゃったらどうしようとか、考えていたんですよ」
 一緒に引率している、ベテランの保父の安田と、笑いあうぐらいの余裕も生まれた。
 バスはいよいよ危険な崖道へと入る。くねくね曲がっている上に、道も細く、車の通りも多いと危険際まり無い道だが、通らなければ目的地へは着かない。
 安田が改めて子供達に席を立つなと、注意しようとした時、ガクンとつんのめるくらいの勢いで、急にバスが加速し始めた。安田がもんどりうって倒れ、子供達の何人かが席に頭でもぶつけたのか泣き始めた。たちまちバスは泣き声に包まれた。
「運転手さん! 運転手さんー!!」
 岬は運転手の名を連呼するが、反応が無い。仕方なしに、捕まりながら、それで迅速に、彼女は運転手の元へと向かった。早くどうにかしなければ、崖から落ちてしまう。
 運転手は、寝ていた。一見それほど穏やかに見えたのだ。しかし、幾ら呼びかけても、返事が無い。あまりの平穏さに騙されていたが、白くなっていく肌を見て、もしやと思い脈を取ってみると、脈は無かった。
「し、死んでる?」
 ならば身体をどかしてアクセルから足を離さなければと、動いた岬の体が注に舞う。身体はそのまま、フロントガラスを突き破り道路の外に投げ出された。
 血まみれで地面に這い蹲る、岬の目に映ったのは、トラックのフロントを半壊させ、崖下に落ちようとしている幼稚園バスの姿だった。バックガラスに、子供達が集まっている。個性豊かな子供達が、全員一丸となって訴えかけるのは、ただ助けての一言。岬は、手を伸ばす。どうにもならないのはわかっているのに、彼女はどうにかしてあげようとするが。
 バスは崖下に転落した。
 バスと衝突したトラックを避けようとした車が、壁面に衝突する。壁面で爆発した車を避けようとしたバイクが、崖下に転落する。負の連鎖が起こり、崖道は瞬く間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
 絶望と無力感と痛みに引き摺られ、岬の意識が薄弱とした物になる。
 ふと、目に入ったのは、二人の黒衣の人間の姿。幽鬼のごとき姿で、事故現場を見下ろす姿は死神か。ならば何故こんなことをしたのかと、子供達を何故殺したと、死神を呪いながら岬は意識を失った。

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きんだいひゃっきやこう

 久々の百鬼夜行ネタ。時系列的には、
近世百鬼夜行→近代百鬼夜行(同人誌版)→きんだいひゃっきやこう
となっています。作中で出てくる、新キャラ二人は近代百鬼夜行が初出です。彼女らが山を降りた事件こそが、近代百鬼夜行の本編の話です。まーこうやって書かないと二人のキャラ付けとか忘れますしねー。
 きんだいひゃっきやこうはポジション的にスレイヤーズの短編とかに代表される、富士見作品の短編シリーズの位置に居ます。正月の早いうちに公開したかったんだけどなあ。正月ネタだし。
 なお、気になるヒキをしてしまったので、続きも早めに出したいと思います。一月中にはなんとか……なんとか……。

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