中間報告

「えー皆様、小須田です。ダム工事により生まれる、会社と地元住人との軋轢を和らげたり、反対派と賛成派の仲裁役となるのが仕事のはずでしたが、気が付いたら、惨劇に挑むハメになっていました。それどころか、今現在、惨劇どころか、自衛隊の特殊部隊と戦うハメに……山狗ゥ!」

「失礼しました。現在、少々取り込んでおります。雛見沢の人は良い人が多く、わたしもいい気持ちで仕事ができました。ナタをもって出歩く女子高生やカレー菜園という目的不明の施設がありますが、本当に良い村なんです。お願いです、納得させてください。不肖小須田、単なる1サラリーマンですが、この村の危機的状況を前に、出来る限りのことをしようと思っております。以上、中間報告でした」

「よし、これで現状の業務は全て終わったな。行くぞ、小此木ぃ! 武器なんか捨てて、素手でかかってこい! おめぇら皆殺しだ!」

小須田部長の憂鬱

※肉雑炊の二人は、笑う犬の生活を応援しています。

「よいしょっと。あー……腰にくるなぁ」

「小須田さーん!」

「ああ、原田くん。毎回、見送りすまないね」

「いえいえ。好きでやってることですから」

「それにしても、久々の転勤だね。ほら、ちゃんと“いるモノ”と“いらないモノ”のダンボールも用意しておいたよ」

「小須田さん、覚悟しているところに水をさすようですが、今回はそこまで厳しいところじゃないですよ。なにせ日本国内ですからね、国内」

「ああ、そうだね。上は宇宙、下は深海まで制覇した身としてはねぇ。ナンボのもんじゃい!なんてね」

「じゃあ、パパっと片付けちゃいましょうか」

「そうだね、パパっと、パパっと。じゃあまずこの名刺なんだけど、これはいるかなぁ?」

「いらないです。これからは部長ではなく、支社長になられるわけですから」

「そうだよね、支社長、支社長か。じゃあ携帯電話、これはいるかなぁ?」

「いらないです。山奥なんで、電波が入らないんですよ」

「ええっ? 孤島でもアンテナが三本立つ時代だよ? なのに電波入らないの?」

「かなりの田舎なので……そうですね、具体的には、土地の皆さん、昭和58年ぐらいの生活様式ですね」

「随分とまた、具体的な年代だね。そうか、山奥かぁ。じゃあコレだ、かゆみ止めスプレー。虫も居るだろうし、山は蒸すから、汗もが出来たりするしね」

「それはいりません」

「ああ、そうなの? なんで」

「かゆくなったら、アウトですから」

「アウトって。だってさ、汗が溜まって、例えばー……首筋なんかよくかゆくなるじゃない」

「それは完全にアウトです。首が痒いなと思ったら、引継ぎの準備と遺産分配の手続きをお願いします。早くしないと、間に合いませんよ!?」

「病気や症状をかっ飛ばして、命の心配!? なんか、危ない匂いがしてきたぞぉ? じゃあコレ持ってっていいかな、一眼レフカメラ。最近、写真に凝っててさ。なんでも、夏祭りをやるらしいとか。山奥のお祭りなんて被写体としては最高」

「わー!」

「あー! な、何をするんだい、原田くん。カメラが壊れちゃったじゃないか!」

「いいですか、小須田さん。貴方は支社長になるんですよ、時報になってどうするんですか!」

「時報、時報って役職なのかい!?」

「小須田さん、貴方は我社に必要な人です。ただ何かを知らせる為だけに、散っていい命じゃないんです!」

「死ぬの!? 時報死ぬの!? なんかさっきから、身の危険をヒシヒシと感じているんだけど。わしゃあ、いったい現地でどんな目にあわされるのかね!?」

「小須田さんの仕事は、雛見沢に作るダム工事に関しての地元住人との交渉です。まあ、よくある話ですが……村も、賛成派と反対派に別れてましてね。両者と会社の仲介をしてほしいな、と」

「ああ、なんだ。仕事自体はそれほど危険じゃなさそうだね」

「ええ。既に関係者が、ダース単位で原因不明の死亡や謎の失踪を遂げてますけど」

「がんばれー! まけんなー! 力のかぎり生きてやれー……」

「貴方が、秋葉原進出用の新事業として、道行く人に絵を売る仕事はどうですか?なんて会議で言うからだ!」

「だって、あんだけ派手にやってて捕まんないから、まともな商売なのかぁって……」

デッドプール チームアップ! 涼宮ハルヒの憂鬱 後編

いままでのあらすじ
「いやそれ、根本的に間違ってるだろ!?」
「じゃあ、こっちで。いやーオレちゃんホント、目立ちたくないんだけど、キョンがそう言うんじゃしょうがないな」
「軌道修正すると見せかけて、もっと酷い方に行くな! あと責任を俺に押し付けるな!」
「しょうがねえなあ。じゃあ、コレ新しい方でいいよ。このワガママハイティーンめ!」
「もうあらすじ一切関係ねー!」

「オレが朝比奈みくるに成り代わってから、五年の月日が流れたワケだが(CV後藤邑子)」
 いきなりこの男は、何を言い出すのか。朝比奈さんの皮を被った赤タイツは、大仰に椅子に座って、ワケのわからんことをのたまっている。イメージナンチャラとかいう装置は認める、スイッチひとつで誰にでも化けられる万能さも認める。だから、せめて動きを合わせてくれ。大股開きでいるな。
「いえ。五年も経ってませんよ」
 妙に疲れ果てた古泉が真正面からツッコミをいれた。
「あーそうか! 二ヶ月弱か! 書いた本人も、まさかここまで間が開くとは……って悩んでたよ。アイツが風邪ひくのが悪いんだよ。オレたち、何も悪くねー」
 誰だその、風邪をひいたアイツっていうのは。
 溜息を吐く古泉。このデッドプールは何をどう言おうが、どうせ別のワケのわからんことを言うのみなのだ。つまり、どうせツッコンでも無駄だ。五年も二ヶ月も付き合っていないが、オレはそのことを学んだぞ。
「あなたが来てから、今現在までの時間は24時間」
「長門の有希ちゃんは遊び心が無いなあ。オマエが“実は半年経ってました、イェーイ!”とでも言えば、ここのキョンくんがひょっとして!?なんて悩み始めて、大長編が始まるのに。具体的に言えば、前後編2冊ぐらいの」
 大長編ってなんだ、前後編ってなんだ。それに正直、長門にそんなことを言われたら、半年より何より、イエーイ!がひっかかるぞ。長門直々にピースサインでも付けられた日には、寝こむぞ、俺。
「ところで、そろそろ本題に入りたいのですが。SOS団に潜伏しているスクラル人を見つけるとの話でしたが、そちらの判別に目処はついたのでしょうか?」
 この部室に居る、古泉、長門、そして俺。この三人のうち誰かが、スクラル人という宇宙人が変身したニセモノで、ハルヒを狙っている。現に朝比奈さんは入れ替わられて、現在これまた、奇妙な装置で変身したデッドプールが成りすましている。真実を見極める役とスクラル人の生殺与奪の権はデッドプールに握られている。現状は、こんな感じだ。
 冷静に検証してみると、これ凄くヤバい状況だな。特に、生殺与奪の権を、このイカレポンチが握っている辺り。
「モチロンさ! だからこうして、わざわざ関係者をハルヒちゃんが部室に来るより先に呼び出したワケだね」
 なんか今こいつ、こっそり「ヤベ、忘れてた」と呟いた気がするのだが、きっと気のせいだろう。気のせいにしておいたほうが平和だ。主に俺の心持ちが。

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デッドプール チームアップ! 涼宮ハルヒの憂鬱 前編

 小春日和で頭が寝ぼけていたと言わせてもらおう。授業が終わって、“所要のため少し遅れるわ、ちゃんとあたしを出迎える準備をしておくように”と今の俺以上に寝ぼけたことをハルヒが言い出して、SOS団の部室に着いて、定位置に陣取っていた長門に挨拶して、席に着いた所で、メイド服の朝比奈さんがスススっと出してきたお茶を飲んで。ここでようやく、何かがおかしいと気付けた。
「おい、長門。これはどういうことなんだ?」
「……ユニーク」
 そりゃ確かにユニークだよ。ただコレは、笑えるユニークではなくて、困るユニークだろ。
「ふぇ? どうしたんですか、キョンくん?」
 まずは、俺が反省しなきゃいけないな。部室でメイド服を着て、かいがいしく作業をしてくれる人=朝比奈さんと、思い込みすぎていた。
 よし。俺は反省した。だから正々堂々と、目の前の赤い物体にツッコむぞ。
「誰だ、お前!?」
「え? 朝比奈みくるですけど……」
「俺の知ってる朝比奈さんは、俺より背は低いし、変な赤いマスクは被ってないし、赤いタイツの上にメイド服を着たりなんかしないし、筋骨隆々でも無いからな」
 俺より背が高くて、変なマスクを被っていて、筋骨隆々な男は、なんでばれたのか!という顔をしていた。いやいやお前、まさかメイド服を着ていれば朝比奈さんに化けられると思っていやがったのか? 口調まで真似やがって。
「どうせ小説だから、口調さえ真似てれば、バレねーなーと思ってました。キミはこのトリックを見破れたかな!?」
「何を言いたいのか知らんし、誰に向かって指さしているのかも分からんが、とりあえずお前は、日本全国の推理作家に土下座してくれ」
「すいませんでしたー!」
「ホントに土下座したー!?」
 謎の赤タイツはメイド服をキチンと折り畳むと、三つ指をついての見事な土下座を披露した。なんでコイツ、正体が外国人っぽいのに、ここまで綺麗な土下座が出来るんだ。
「それは、どげせんを読んだからと、言わせてもらおうか! 長門有希ちゃんにも、こうやって漫画を読んで欲しいところだね。まあ、この話は原作準拠だから、徹夜でゲームなんてしたりしないだろうけどねー」
 長門のほっぺたを突っつこうとする赤タイツ。長門は片手で本を押さえたまま、ぺちっと叩く。それでも諦めない赤タイツと、触らせまいとする長門。つんつんつん、ぺちぺちぺち。最初はゆっくりだったものの、やがてやりとりは光速へと。元より超人的な長門はともかく、同じぐらいの速さで付いて行っている、この赤タイツは何者なんだ。
「誰と聞かれたら答えなければなるまいよ! 俺ちゃんの名前はデッドプール。アメリカで大人気、日本で話題沸騰中、スカンジナビア半島ではどうだか知らない、正真正銘のカナディアンスーパーヒーローだぜ!」
 スパイダーマンのパチもんっぽい男は、いかにもそれっぽい派手なポーズを取って大仰に名乗りを上げた。長門の頬を突く作業は止めないまま。
 長門よ、なんならそのまま、その赤いのの指を折ってもいいぞ。俺が許す。

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ヘビィガンナーの帰還

 幸運。それはこういう巡り合わせを言うのだろう。まさか先日倒した、ハプルボッカの素材こそ、自身の求めている物に繋がるとは。必要な武器防具のリストと素材を提出し、ただ完成の時を待つ。途中、鍛冶場から使いが来た。本当に、このリストの通りでいいのかと。
「それでいいんだ。いや、それじゃなければいけないんだ」
 半ば強制的に納得させられた使いは、了の返事をそのまま伝えることとなった。それからまた一両日、ようやく望みの物が完成した。真新しい装備をチェックし、装着する。真新しくも、懐かしい装備。ポッケ村に置いてきた防具を纏い、ユクモ村でしか売っていないヘビィボウガンを装備する。新旧混合、それが今のヘイヘの姿だった。

 なめらかな皮を持ち、寒さを好み、電撃を吐く。これだけの情報を聞けば、誰とて怪物とはフルフルだと判断する。じめじめとした沼地や極寒の雪山を好む、雌雄同体の不気味な飛竜。あの制限知らずの怪物発電所に、一体どれだけのハンターが泣かされてきたものか。
 そんなフルフルらしき生き物が、初めてユクモ近くの凍土に現れた。ビリビリするという特徴だけ聞いて、簡単に物事を判断してしまったのが第一の失策。フルフルならば、見間違いでもギギネブラなら火炎弾で十分だと判断してしまったのが第二の失策。連れているアイルー達を落ち着かせることが出来ない程、自身が驚いてしまったのが第三の失策。
 失策が重なった結果、相手の姿形を見極めぬまま、撤退するハメになってしまった。予測はできている。しかし、相手を狩猟しなければ決定的な証拠にならない。証拠があってこそ、言質は真実となり、正しい記録となるのだ。
 久方振りの失策が、弛緩した身体と頭に活を入れ、ギラギラと上を目指していた頃の気持ちを取り戻させる。強大な敵相手に、装備も選ばずがむしゃらに立ち向かっていた頃。あの頃小脇に抱えていたのは、ずっとヘビィボウガンだった。
 失った物を取り戻す。準備完了から出立までの間、幾度も無謀だと言われた格好で、ヘイヘは一人、復讐の凍土へと向かった。

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