キャプテン・マーベル外伝 すごいよ!! タロスさん~後編~

前編

ふじい(以下F)「というわけで、タロスさん紹介の後編だ。前編を見ていない人は、上記リンクからまず読んでもらいたいが、ひとまず要点だけまとめておく」

すごいよ!! タロスさん前回の三つの出来事。

一つ 映画のタロスとコミックスのタロスはいろいろ違う。

二つ 初登場はハルク誌。ハルクの親友リック・ジョーンズの結婚式で乱闘寸前。

そして三つ タロスには、普通のスクラル人のような変身能力が無かった。

サイレン(以下S)「どこかで観たような要点のまとめ方だな。前回紹介した結婚式回は、タロス初登場回ではあるものの、顔見せレベルだったし。今回が本番?」

F「ああ。自身がハルクと共に表紙にいる、Incredible Hulk #419がタロスにとっての本番でありメインエピソードだな」

S「コレ、本番と書いて死に場所とでも読むんでしょ?」

 

 

F「時系列的には、ハルクの親友であるリック・ジョーンズの結婚式が終わった夜。人生の大仕事を終え、関係者が皆、ホテルでまったりしている夜……そんな中、一人50階建てのホテルの屋上にいたタロスが酒かっくらってアイキャンフライします」

S「ハルクと戦う前に、タロスさんの人生終わってませんかね!?」

F「終わらねえよ!? タロスさん、生きている上にほぼノーダメージなので問題ないから!」

S「それはそれでスゲエな!」

F「クリー人に馬鹿にされ、ふざけるなと立ち上がったものの、シルバーサーファーに一喝されて大人しくなる。結婚式のいざこざこそ、今の飼いならされたタロスの人生そのもの。タロスの落下現場に駆けつけたハルクを見たタロスは、ついに理解する。誰もが知るツワモノと戦った末の死、それならば、この鬱屈とした人生の幕を引きつつ、名誉も挽回できると。タロスはシルバーサーファーも一目置く強者、ハルクに華々しく殺されるための戦いに挑む……!」

S「屈辱を晴らすため、名誉の死を選ぶってのは、なんつーか武士っぽいが……でも、ハルク目線で見たら、自殺の現場に駆けつけたらいきなり自殺者が自分に喧嘩売ってきたという、クソ迷惑な状況だな」

F「迷惑さで言うなら、誤チェストにごわすな薩摩武士レベルかもしれんね……チェストスクラル?」

S「それはそれとして、ハルクに喧嘩売って、見事に散れるものかね。一発でミンチよりヒドいことになるか、映画アベンジャーズでハルクに喧嘩うってビターンビターンされたロキみたいな面白映像ルートじゃないのか?」

F「いやそれが、タロスさん結構強いんだよ。ハルクと真正面から殴り合えるくらいには」

S「それ、普通に強くね!?」

F「タロスには、普通のスクラル人みたいな変身能力は無い。でもその代わり、他のスクラル人に比べ無茶苦茶パワーがあってタフなのよ。それに変身を気にしないでいいぶん、身体に金属のパーツを入れて強化しても問題ないしな」

S「これは、いい意味で予想外だったな。でもならなんでそんなに強いのに、クリー人や回りに馬鹿にされてるんだ?」

F「もともと、タロスはスクラルの英雄だったのよ。変身で強さを補うスクラル人から見れば、変身しなくても強いタロスは、そりゃとんでもなく恐ろしい存在なわけで。当時の異名は、Talos the Untamed。Untamedの意味は、飼いならせない、抑制できない。制御不能のタロス、飼いならせないタロス、荒れ狂うタロス……こんなとこかね」

S「そんな猛々しい異名を持つタロスが、真逆のTalos the Tamed。飼いならされたタロスになったのってなったワケは……?」

F「敵対していたクリー人にある戦場で捕まった時、死ななかったからだな。スクラル人の慣習は、敵の捕虜になった際は自ら死を選ぶべし。結果的にタロスは生き延びてスクラルに帰還したものの、戻ったタロスを待ち構えていたのは、尊敬から蔑みに変わった仲間たちの目と、勇猛さとは真逆のTalos the Tamedという異名だったわけで」

S「一度の選択で、今までの名誉を失った。むしろ、名誉があったぶん、反動でそれが蔑みに変わったわけか」

F「英雄として名が高ければ高いほど、選択の過ちは大きくのしかかる。英雄ほど、大変な立場もそうそうないぜ。そんな堕ちた英雄タロスと戦っているうちに、ハルクもどんどん熱くなっていくわけで。本気を出せば、流石にハルクの方が強い。でも、ハルクを人生最後の相手として選んだタロスにとって想定外だったのは、この時期のハルクは比較的落ち着いていて……他人の気持ちを考えるだけの理性があったってことよ」

F「恋人のベティ、親友のリックとその妻となった旧友のマルロ。タロスにとってハルクは死をもたらしてくれる存在であっても、ハルクの親しい人たちは、ハルクにそんな存在であってほしくない。皆の願いと気持ちを思い出したハルクは、自ら降参。タロスもそんなハルクを見て、アテが外れたと撤退。スクラル人の宇宙船に戻ったタロスを出迎えたのは、ハルクとの激闘を見ていた仲間たちから浴びせられる、久方ぶりの称賛だった」

F「降参したハルクの命を奪わず、戦いを終えたタロス。降参することで、大切な人たちの願いだけでなくタロスの誇りも救ったハルク。二人の男は、それぞれ満足げであった。というわけで、タロス初登場のエピソードはおしまいだ!」

S「最初の家庭板騒然のタロスムーブを見た時はどうなるかと思ったが、思ったより美しく着地したなあ」

F「まあ、ビルの屋上から酒のんで飛び降りるよりは綺麗な着地だよな。ビルから落ちたんじゃない、ちょっと地球の重力を確かめてみたんだ(タロス談」

S「なにその、ヨクサル作品に出てくるダメなおっさんがしそうな言い訳。だが、タロスさん生き延びてよかったな。最後の顔も、まるでハルクのライバルみたいなツラしてやがる。ハルクと互角に殴り合ったという実績があれば、他のヒーローのストーリーにも出れるだろうし、今後のスクラル人絡みのストーリーでも出番があるだろう」

F「無いんだな、それが」

S「無いの……?」

F「いやマジ、ホントに無い。英語で「TALOS」って検索して、石川賢のコミカライズ版ウルトラマンタロウが出てくるぐらいに、出番も情報もない」

S「それ、TALOSじゃなくて、Taroですよね? えーと、アレだ! スクラル人が全勢力をあげて、地球に侵攻してきたシークレット・インベージョン! それなら、流石に出番あるだろ!」

F「侵略作戦には特に呼ばないけど来たいんなら来てもいいよぐらいの扱いで、当然出番もない」

S「取り戻した名誉の残高が、また0に戻ってるじゃないですか! やだー!」

F「そもそも、シークレット・インベージョンにおけるスクラル人の計画って、変身能力を使って地球のヒーローや重要人物と入れ替わった上での一斉蜂起だろ? ……タロスさん、そもそも変身が出来ないんだぞ」

S「あー……。潜入作戦って前提に、向いてなさすぎるのか。でも、ハルクと殴り合えるだけのパワーは十分戦力になるのでは?」

F「俺だったら、変身能力を持った上で、更に様々なヒーローの力を模倣しているスーパースクラルズを投入するけど」

S「そりゃあそうだね! そもそもスーパースクラル量産されてたのかよ」

F「マブカプ3に出たスーパースクラル(クラート)が代表的ではあるものの、そもそもスーパースクラル自体、強化改造したスクラル人兵士の総称だしな。シークレット・インベージョンの時には、シングとハルクとジャガーノートを混ぜた、パワーハウススクラルってのも実戦投入されてるぞ」

S「ノリと勢いで作ったパワーキャラすぎる! ひょっとして、変身無しならともかく、変身もなんでもアリにした場合、タロスさんそこまでずば抜けていない?」

F「いや、なんだかんだで戦闘力は一線級だとは思う。ただ、変身できないというデメリットを補えるか……となると、正直厳しいかもしれん。なんだかんだで、スクラル人が恐れられてるのって、変身能力による撹乱や能力のコピーだからなあ。正直、強いだけなら、宇宙にはハルククラスもそれなりにいるから……」

S「マジかよ。宇宙ヤバいな……で、タロスさんの出番は結局」

F「殆ど無いな。宇宙を舞台にしたアニヒレーションってストーリーでちょっと出てきたけど。その後、本格的な出番となったのはハワード・ザ・ダック:アヒルの探偵物語での登場だな。作中人物の大半も読者も誰?となる、いきなりの登場。そんなタロスの主要エピソードがこうして日本語訳された上で読めるんだから、いい時代になったもんだよ」

S「なんか顔が、肌色と緑のまだらというか……汚れてない?」

F「最初、人間になりすましてたからな。変身能力が使えない以上、ドーラン塗って肌の色を誤魔化すしかなかったんだよ。ちなみに、もう完全に単独行動というか、指揮系統から外れたぼっちだ」

S「シークレット・インベージョンにタロスを呼ばなかったスクラル上層部の判断、めっちゃ正しい気がしてきた」

F「アヒルの探偵物語のタロスは、インクレディブル・ハルク出演時とは違い、策略をもって暗躍。強大な力を持つ宝石と手袋を装備して、アベンジャーズとファンタスティック・フォーと渡り合うという、結構凄いことをやっているからな? せっかく邦訳も出ていることだし、詳しくは自分で読んでくれ」

S「宝石と手袋、まさか……」

F「インフィニティじゃない手袋だぞ!」

S「じゃあなんなんだよ、それ!?」

 

 

S「ここまで、コミックスのタロスの話を聞いてて思ったんだが……コミックスのタロスがMCUのタロスを見たら、あまりの格差に憤死するのでは……?」

F「キャプテン・マーベルに出てきたタロスは、スクラル人のリーダー役で仲間にも慕われ、変身能力を駆使して大活躍だったもんな。かたやコミックスの方は、スクラル人のはみ出し物で仲間にも馬鹿にされ、変身能力も無いし」

S「事実でも、もう少し手心をくわえてやれませんかね!?」

F「ただ少し見方を変えると、タロスさん、映像化に際し、コミックスでのキャラクターやアイデンティティを全部失ったとも言えるんだよな。キャプテン・マーベルのタロスは、誰の名前をつけても支障がない普通のスクラル人だ。あえて真逆のキャラクター設定にしたという伺った見方もできないわけじゃないが、そもそもタロスのキャラクター自体がコミックスの歴史に埋没している時点で、仕掛けとして機能してないだろ。なんでここで、タロスが抜擢されたのか。意外と、深い謎かもしれん……」

S「普通になって個性を失って、不幸になったのか。それとも、普通になってまっとうな幸せを手に入れたのか。どっちなんだろうな」

F「わからん。ただ、こうして注目してしまった以上、コミックスでも映画でもタロスの今後は気にかけたいね。映画はともかく、コミックスのタロスさんに、今後があれば……」

S「やめて!?」

 

~了~