日々雑談~2016~

 ※一年前にアップした、コレの続きです。

 筋骨隆々な緑色のオーク。身体中の筋肉が熱で盛り上がり、一層大きく見える。だが、彼の目の前に立ちふさがる、単眼の巨人。このダンジョンの主であるサイクロプスは、パンプアップしたオークよりも、まだ一回り大きかった。
 大股で歩み寄る両者、それぞれの足元に、砕けたハンマーと折れた棍棒が転がっている。傷だらけの雄二匹による、種としての比べ合いが始まろうとしていた。
「うおおおおお!」
「グアアアアア!」
 気合とともに、組み合う両者。ロックアップによる、単純な力比べ。足元の石畳にヒビが入り、二匹の身体は徐々に沈んでいく。二人の間で交わされる力は、強大であった。
「グオオオオオ!」
 サイクロプスが頭を振りかぶり、頭突きを仕掛ける。ゴンゴンと反響する鈍い音。オークの額が裂け、血が溢れだす。オークは抵抗することなく、頭突きを浴び続けていた。
 ゴキィ!と、大樹がへし折れたような音が、頭突きの音をかき消した。サイクロプスの両腕が、見るも無残に折れてしまっていた。叫ぶサイクロプスの顔に、オークの額が突き刺さる。オークの頭突きは、サイクロプスの顔面を一撃で破壊した。
 呻くサイクロプスの顔面を小脇に抱えたオークは、ギリギリと腕力で締め上げる。腕に力を込めながら、上下に激しく揺らして。強烈なヘッドロックにより締め上げられたサイクロプスは、やがて動かなくなり――
 数分後、サイクロプスの頭は頭蓋骨ごと砕け散った。オークはサイクロプスの身体を投げ飛ばすと、途中こぼれ落ちたサイクロプスの瞳を回収する。サイクロプスの瞳は高値で流通しており、冒険者であるオークがこのダンジョンに潜った目的も、この瞳の回収だった。
 ぱちぱちぱち。勝ったオークを称えるような拍手が、無音となったダンジョンに鳴り響いた。
「流石ですね。あれだけのサイクロプスを、正々堂々と倒すとは。貴方様の武勇に、並ぶ者はおりませんわ」
 金色の鎧を着た、金髪の女騎士。豪華でありつつもえげつなさもある金色を、見事上品に着こなす美女が、オークを褒め称えていた。
「ああそうかい」
 だがオークは、憮然としていた。
「……? どうかしましたか?」
「並ぶ者は居ないが、上に立つ者は居るってことだろ?」
 女騎士の周りには、数十匹のゴブリンの死体が、幾つもの小山になっていた。
 サイクロプスに比べればゴブリンは脆弱な魔物だが、一匹対数十匹なら、おそらく討伐難易度はゴブリンの方が上だ。しかも、一撃も攻撃を喰らわずにとなると、達人級の技が必要となってくる。
「私は、貴方様の下ですわ」
 傷どころか、鎧に汚れすら無い女騎士が、傷だらけのオークに微笑みかける。
「私は生き残る術に長けているだけ。貴方様は、強い人です」
 突如ゴブリンの山がはじけ飛び、新たなサイクロプスが姿を表す。その体躯は、先ほどオークが倒した個体よりも大きく、歴戦の勇士であることを主張するように、古傷にまみれていた。サイクロプスは、自身に背を向けたままの女騎士に、背後から襲いかかる。
「だって私は」
 女騎士は振り向かぬまま、サーベルを後ろに突き出す。サーベルの切っ先は、サイクロプスの目と肉の境目に突き刺さっていた。
「貴方様のように」
 女騎士の手首と振り向く動きに合わせ、サーベルがくるりと周り。サイクロプスの丸い目の縁を沿っていく。
「真正面からあの巨体に立ち向かえるだけの、力はありませんもの」
 刃を抜き、改めて目の中心を一突き。サイクロプスの瞳はあっさりとサーベルで引きぬかれ、哀れサイクロプスは叫び声も上げぬまま、瞳を失い絶命した。
 女騎士は、サーベルに串刺しとなった瞳を優雅に手で抜くと、そのまま瞳をオークに手渡した。
「奇遇だな。俺にも真正面からあの巨体に立ち向かえるだけの、技はないんだ」
「あら。お揃いですね。なら、私達の子供は、力も技も備えた天才間違いなしです」
「いや、子供作らねえし。なんでこう、アンタは性的にアグレッシブなんだよ」
「普通、殿方やオークの方がガンガン行こうぜなんですけどね。ふふふ」
「ははは……ダメだこりゃ」
 女騎士は楽しそうに微笑み、オークは根負けしたように、力なく笑っていた。

 11月9日、11.09はいいオークの日らしいので、去年アップしたものの続きを。この続きは、来年のいいオークの日に。もう既に時刻としては11月10日だけど気にするな!(二回目)