一日一アメコミ~15~

Suicide Squad#20(1988)

《あらすじ》
 スーサイド・スクワッド。それは、囚われたヴィランにより結成された特殊部隊である。彼らは恩赦のような報酬と引き替えに、ヒーローでは解決できない過酷な任務に挑む。挑む任務の難易度は極大。失敗すれば当然死亡、たとえ成功しても、上の都合で殺されることもある。すがるには細すぎる、蜘蛛の糸。それが、冷酷非情の極悪部隊のあり方なのだ。

 それはそれとして、在住地は刑務所の近所の家と、ほぼ自由の身でありつつ、スーサイド・スクワッドに参加している男がいた。その名はキャプテン・ブーメラン。多種多様なブーメランを操るブーメランの達人であり、光速ヒーローフラッシュに対抗するためのヴィランのチーム、ローグスの一員として名を馳せたヴィランである。根っからのワルである彼はやはり犯罪行為でズルして楽して儲けたいものの、スーサイド・スクワッドに参加している以上は常に上役のアマンダ・ウォラーの目が光っている。キャプテン・ブーメランは考えた。そうだ、最近ローグスの同僚だったミラーマスターが死んだんだった。アイツのコスチュームと装備を使って、ミラーマスターのフリをして悪いことすればいいんじゃないか?

 こうして新たなるミラーマスターとなったキャプテン・ブーメランは、ヴィランとしての犯罪行為とスーサイド・スクワッドの活動を両立させた二重生活に成功する。うっかり、ミラーマスターのまま、アマンダ・ウォーラーに捕まってしまうまでは。恩赦と引き換えに、スーサイド・スクワッドへの協力を強要された中身キャプテン・ブーメランのミラーマスター。腕に爆弾付きのブレスレットをつけられたものの、アマンダがミラーマスターの正体に気づいている様子はない。ひょっとして、今回の任務を乗り切れば、誤魔化せるのでは!? そんな淡い期待は、次の出撃メンバーにキャプテン・ブーメランが入っていることで、吹っ飛んでしまった。

 犯罪シンジゲートによるゾンビ騒動に駆り出されることになった、一人で二人のキャプテン・ブーメランとミラーマスター。前門のゾンビに、後門の「あれ? ミラーマスターはどこ行った?」と気軽に言ってくれるスーサイド・スクワッドの同僚たち。呼ばれるたびに、見せねばならない早着替え。今度は「そう言えばキャプテン・ブーメランは?」なんて言ってやがる! そんな中、仲間は次々と倒れゾンビ化していく。これひょっとして、誤魔化すどころか死ぬんじゃね? むしろもう、俺しか残ってないよ? 一人で二人とか言ってる場合じゃねえよ?

 空前絶後の自殺同然のミッションに(勝手に)挑むことになったキャプテン・ブーメラン。ドツボの底での四苦八苦。世の中、小狡いことをするとバチが当たるってのはこういうこった!
 
 

 映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』面白かったよ!記念で、今日取り上げるのはスーサイド・スクワッドの一冊。本当なんです、こんな「こちらルイジアナ州ベル・リーヴ刑務所内自殺部隊」みたいな話があるんですって。こち亀ならぬこちベル。

 まあもう、あらすじ書くだけでいいんじゃないって感じですが、ちょっと細かく言うと、キャプテン・ブーメランが当時死んでたミラーマスターの衣装を着て悪いことを始めたのはSuicide Squad#8なので、思いついてやって即バレってわけではないですね。いやそもそも思いつくなって話ですが。

 もうね爆弾付きのブレスレットを誤魔化すために、腕に包帯巻いて「すいません、怪我しちゃったんで出れません」って言い出したキャプテン・ブーメランに「休めないから。出て」って言い放つアマンダ・ウォーラーだけでダメ。両津ブーメラン勘吉と大原アマンダ部長って感じ。腕に包帯巻いた結果着替えにくっそ邪魔になってる。後半てんやわんやすぎて、上着はキャプテン・ブーメランでズボンはミラーマスターになってる。もうね、一人二役コメディのお約束を制覇する勢い。おかげで、今回あらすじのテンションが途中でちょっとおかしくなってますからね。

 この犯罪者を使い捨てにするタイプのスーサイド・スクワッドの連載開始※は1986年。つまり、1988年のこの時期におけるスーサイド・スクワッドはいわゆる黎明期。そんな中、創設メンバーの一員であり、長く顔出ししつつ、反逆とはいかないまでも一々ひねくれたことをするキャプテン・ブーメランは、性質上メンバーの入れ替わりが多いブランドとストーリーを支えてきた一人。ミスター・スーサイド・スクワッドを決めるなら、創設から今日まで活躍してきたキャプテン・ブーメランかデッドショットの二択でしょう。貰ってもまったく嬉しくねえ称号だな!

 この時期、ローグス筆頭ことキャプテン・コールドもスーサイド・スクワッドに付き合ってるんだけど、ブリーフィングの最中にキャプテン・ブーメランと二人並んで世間話をしつつ適当にツッコミいれてる姿は、飲み屋の昔なじみのオッサンというか久々に会ってテンション高くなった男子高校生というか。お前ら、自殺部隊をフラッシュのノリに染めるんじゃないよ。

※1959年のブレイブ&ボールド誌にて、スーサイド・スクワッドと呼ばれるチームが初登場。こちらは諜報活動を主とするエリート集団。

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