2015年11月22日
/ 最終更新日 : 2015年11月22日
fujii
アメコミ
気づいたのは、開催より数時間前のこと。仕事中一休みしてTwitterを眺めていたら、何処かから気になるツイートが。
本日ららぽーと富士見にて、ラウラ・ズッケリ&トニー・ヴァレアントのサイン会開催!
お二方とも、イタリアやフランスで活躍する漫画家。バンド・デシネと呼ばれるジャンルであり、EU圏のマンガ“ユーロマンガ”の作家さん。ヨーロッパ方面のコミックスには興味があったけど、キチンと手を出していなかったなあ……よく調べてみれば、サイン会だけでなく、その場でイラストを書くライブペインティングも開催。ららぽーと富士見なら、仕事を片付けつつああしてこうすれば開催時間に間に合うか?
ギリギリとなると腹をくくる行動力をフル活用し、サイン会開催寸前になんとかららぽーと富士見に到着しました。
まずはサイン会だ!ということで、会場となるリブロでラディアンの1巻を購入。サインを貰うには、トニー・ヴァレント作のラディアンかラウラ・ズッケリ作のガラスの剣のリブロでの購入が必須だったのです。
ラディアン自体の評価を軽くさせていただきますと、帯に書いてある“圧倒的少年マンガ made inフランス!”というので、だいたい合っているかと。正確には、少年マンガというよりジャンプ漫画だと思いますけど。快活な魔法使い見習いセトが、自らの意思を貫き、世界を覆う脅威ネメシスや魔法使いを目の敵にする異端審問所に立ち向かっていく。サンデーでもマガジンでもチャンピオンでもなく、観た瞬間ジャンプだコレ!と思うくらいにはジャンプ漫画してます。
ただ、決して単なる模倣ではなく、読んでいる内に感じてくる個性。食事に例えると、ソバをすすっている内に「このツユの出汁、今までにないものだなあ」と感じてくるような。食材がフランス産だったり、ツユの作り方がフランス料理の技法寄りだったり。日本風に漂う未知の風味が、中々に魅力的だと感じました。多少カスタマイズして週刊ジャンプで連載したら、贔屓目抜きで定着できる気がします。
購入時に整理券を受け取って、直後開始されたサイン会に参加。トニー・ヴァレントさんは日本語が話せないものの、編集さんがずっとついて通訳してくれるスタイル。漫画の感想や世間話をしつつ、単行本にサインとリクエストキャラ一人を描いてくれました。
このキャラは、第一話から登場した賑やかしの悪党集団ブレイブ・カルテットのボスです。ちなみに、トニーさん曰く「このキャラをサイン会でリクエストされるのは初めてだ」とのこと。みんなもっと、笑いと悪辣を同時にこなせる、味のあるヴィランのこと好きになってもいいのよ!?
サイン会の後に、ライブペインティングがあることを確認し、小一時間ほど時間つぶし。ライブペインティングが開催されたのは、リブロではなく、ららぽーと内もう一つの本屋&カフェのBOWLのカフェスペースでした。元々、今回の企画自体、BOWLの店長さんがラウラさんとトニーさんを招聘したことから始まっており、それに合わせてリブロでサイン会も開かれることになったとか。
ライブペインティングを観ることは初めてなものの、知ってるぜ! デケえ紙やホワイトボードにアーティストが絵を描くんだよな!と知ったかぶっていたらビックリ。今回描くのは、紙やホワイトボードではなく“ガラス”。その名を、グラスドローイング。
マジックで、直接店のガラスに書き込むお二方。
ラウラさんはガラスの剣の主人公ヤマを。
トニーさんはラディアンの主人公セトを。
三枚に仕切られたガラスに、二人の共作漫画が描かれていき……
だいたい一時間ほどで、ガラスの剣&ラディアンの共作三コマ漫画が完成。脚立に乗ったりしゃがんだりの不自由な体勢でガラスに漫画を描いていく光景は、まさしく感嘆。プロの仕事を目の当たりにしているんだ!と、見ていて興奮しました。
こちらのグラスドローイングはBOWLで観ることが出来ますので、もしららぽーと富士見に行く機会がありましたら、是非に。ガラスに描いたという性質上、上手く写真が撮れなかったので、ぜひとも生で見てほしいものです。思わず笑顔になるオチが用意されてる3コマ漫画です。
ぶっちゃけてしまいますが、イベントの第一報を知った時、このイベント厳しいなあと思ってしまいました。なにせ、開催されるのがららぽーと富士見。埼玉県内どころか、関東でも屈指の巨大ショッピングモールですが、交通の便は決して良くなく。最寄り駅は急行が止まらず、かといって急行が止まる駅からだと車で30分以上かかる立地。路線も結構不安定な東武東上線一本のみ。高速道路も近くを走っておらず、殆ど陸の孤島状態。東京のような都市でのイベントとは違い、仕事終わりに行くというのも、中々にハードルが高く。つまり、従来のファンが集まりにくい立地なのです。
実際、自分も含め、このイベントがあると知った上でサイン会に集まっていた人間は数人でした。関係者の方も「この様子だと、ライブペインティングの開始が早くなるかもしれません」と言ってしまうぐらいに、閑散としてました。
でもそれは、杞憂に終わりました。ふとサイン会を目にした夫婦がガラスの剣をその場で買い、サイン会の列へ。別の本を手にしようとしていた女子中学生が、ラディアンを手にトニーさんと歓談。つまり、従来のファンではなく、ららぽーと富士見に客として来た人。おそらくこの二人もユーロマンガも海外マンガも、何も事前に知識を持ってない、マニアでない人達がサイン会に並んでいく状況。結果的に、ライブペインティングの開催は時間どおりどころか、ちょっと押しておこなわれることになりました。
ライブペインティングはライブペインティングで、ガラスに下書き無しで描かれる絵を、女子高生が撮って行ったり、見回りの警備員さんが笑顔で見ていたり……サイン会にならんだ人や通りすがりの人が、一気に海外マンガの熱心なファンになるのは難しいかもしれませんが、今まで認識していなかったジャンルに、こうして一端だけでも興味を持ってもらえたことは、素晴らしいことです。
ハッキリ言ってしまえば、集まった人数を始めとして、東京や専門店での開催より、実入りは少なかったかもしれません。それでも、未開拓地同然の場所で、こうしてイベントをおこなったこと。この試みは、思いもよらぬ未来に繋がる可能性があり、非常に意味の有ることだった。そう思えてならないのです。