謎が減って増えた夜
フィリップ「死者が蘇るはずがない!」
翔太郎「まあ、そりゃそうだけどさ」
フィリップ「改造人間はパーツを取り替えれば蘇れるけど」
翔太郎「再生すると弱いんだけどな」
フィリップ「平成ライダーは改造人間じゃあないよ」
翔太郎「死んだらパラレルワールドってな」
フィリップ「……死者も蘇れるかもしれないね」
亜樹子「ありゃ、検索結果が変わっちゃったよ」
思い出があればいくらでも蘇る第一部と、思い出があろうとなかろうと死者蘇生は絶対にありえない第二部。同じ映画の筈なのに、死に対しての感覚がこうも違うとは。ただ、この感覚の違いが三部の有り得ない奇跡を生むわけで。
死人は甦らない。この前提条件は誰もが理解しているのに、誰もが理解を拒む。死を理解するには過去と向き合わねばならない、それがあの忘れられない夜、ビギンズナイト。
堅実すぎて映画らしい派手さはなかったものの、本編補完という電王以来の仕事を成し遂げた映画でした。というわけで、仮面ライダー×仮面ライダーW&ディケイド MOVIE大戦2010 第二部「仮面ライダーW ビギンズナイト」感想。これでいて推理する楽しみもあったり。
この映画の重要なポイント、そりゃおやっさんしかねえだろ。
おやっさんこと鳴海壮吉初登場。完璧としか言いようのないハードボイルドさ。行動も台詞も全部かっけえ。仮面ライダースカルに変身しても、なおさらかっけえ。
Wの物語の根幹はおやっさんなので、もしおやっさんのキャラ付けに失敗したらヒデえことになっていたでしょうが、これならば根幹として十分すぎる。このまま、吉川晃司のファンになっちまいそうだぜ。
暴走の罪と傍観の罪、二人で一人、仮面ライダーWの罪は合わせて二つ。ビギンズナイトは、本当の始まりだった。
正直、あの夜の事件はもっと簡単なものだと思っていました。スカルが死んで、Wが生まれて、新フォームのファングで切り抜ける。事前の情報を聞いて、これだけの夜かと。でも実際は、もっと遥かに外連味と情報量がある夜だった。
始まったのはWだけではなく、フィリップという人間もこの夜に始まった。おやっさんが名も言えない男にフィリップと名づけて。スイマセン、普通に翔太郎がカッコ付けて名づけたモンだと思ってました。翔太郎の場合はええかっこしいで、おやっさんの場合は実に粋な名付け方だという印象。無意識下の差別ってやつかね。
今回、ぶっちゃけ犯人探しもクソもなかったのですが、真相に早く気づくためのキーワードはそこかしこにありました。
まず一つ目は、デス・ドーパント登場直前の睦月恵理香が出てきたシーン。数カットだけ、恵理香の羽織っているコートが神父ことロベルト志嶋のケープに変わっています。
そして二つ目は、過去のビギンズナイト。フィリップと翔太郎の出会いのシーンで、D字のダミーメモリーがモニター上に。
他にもまだ探せばあるかもしれません。気づけば、とりあえずニヤリとできます。
もしあげつらった事が見間違いや記憶違いだったらどうしよう……。
そして新たな謎がまた二つ。フィリップ救出の依頼をした人間=ロストメモリーを壮吉に託した人間と、壮吉の生死。前者は分からん。現状ではガイアメモリの関係者ぐらいしか想像が出来ない。一方、壮吉は死んだと明言されているものの、死体は行方不明の上に、映画パンフ記載の事件フロートチャートには死亡?と書かれている。同じ境遇の恵理香はハッキリ死亡と書かれているのに。
前者は今後物語に絶対かかわる物。後者は今後が読めぬ隠し球か。年明けのファングの正式デビューといい、Wの今後が楽しみだぜ。まず次の感想は映画のシメこと第三部だけどな!
おまけ ネタバレすぎるので後ろに引っ込めた小ネタ
亜樹子「今回の黒幕、ショボかったねえ」
フィリップ「所詮人に成りきるだけだからね。能力もコピー出来るみたいだけど」
翔太郎「へっ、でもアイツはおやっさんには成りきれなかった。だいたい、人の姿形を借りて戦おうって根性が気にいらねえ」
フィリップ「まあしょうがないよ、ダミーのメモリにはそれしかないんだから。高い能力があるならば、そもそも化ける必要がない」
亜樹子「実力があってあんな事してたら、もっとサイテーだよ!」
士「……」
夏海「えーとほら、士くんはああいう変身の使い方してないじゃないですか、だから違いますよ。たぶん」
ユウスケ「そうそう、俺も真似されても気にしてないぜ。一応」
士「本気で励ましてるんなら、たぶんとか一応とかやめろ!」
真面目な話、Dの文字はダミーだけではなく、同じ変身能力持ちのディケイドにもかけてあるんじゃね?