アルティメット・スパイダーマン ウェブ・ウォーリアーズなコラム~その1~

 アルティメット・スパイダーマン ウェブ・ウォーリアーズ第一話!
 実のところ、一話ではないけど第一話!

 何をいきなりややこしいこと言っていやがるんだコイツという声が聞こえてきそうなので説明しますと、今回の「アベンジャーズ・スパイダーマン パート1」は本国における第三シーズンの第一話でして、シリーズ通算だと53話になります。ディスクウォーズが全51話だったので、一年放映したアニメ以上の話数を既に稼いでいることになりますね。なお1&2シーズンは、ディズニーXD等の有料チャンネルにて放送されてました。ウェブウォーリアーズと同じ第3シーズンも先行で放映しております。
(※無料BSチャンネルであるDlifeでも、放映されているようです。情報ご指摘ありがとうございます)

かのアベンジャーズのようなヒーロー、究極のスパイダーマンにお前はなれる!と始まった物語なのに、地上波版だといきなりアベンジャーズ入らない?と言われている最初からクライマックスだぜ!感。アイアンマンやキャプテン・アメリカにハルクにソーにホークアイと、彼らともそれぞれ物語があった上での今です。
 最初に組んでいたヒーロー達、アイアン・フィストやパワーマンにホワイトタイガーにノバ、彼らとも様々なドラマがあったわけで。彼らのパワーアップ回もちょっと先にあったり。ウェブウォーリアーズ単体だと「いきなり!?」だけど、シリーズ通してみると50話越えてのパワーアップというむしろ遅めなアレだったりね!w
ヴェノムやカーネイジのように、かなり思い切った改変が行われている部分もあるので、そのへんはさらりと紹介してみたいですね。僕らのジェイ・ジョナ・ジェイムソンも、新聞の編集長でなくマスクミグループのCEOと現代的解釈な大出世を果たしていますし。
 かのガーディアンズ・オブ・ギャラクシーも、ノバとの繋がりがかなりかっちりと描かれて……ウェブウォーリアーズだと、いきなり再開回になるような。「帰ってきたガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」言われても見送ってないよ!? アレか、ディスクウォーズ以来のお帰りってことにするか!?

 海外アニメ原液そのものとも言える本作、まず特筆すべきはテンポの速さとそれによる濃密さですかね。間となる部分も、ジョークを挟んで休ませない。まあぶっちゃけ、向こうの批評家も困るぐらいに、アルティメット・スパイダーマンはハイテンポなのですが。
 この間の無いというのは、良くも悪くもな話でして。例えばアメコミキャラの特徴として使われる「頭のいい脳筋」。頭の良い設定の筈なのに、腕力や火力に結構すぐ訴えかけるな君ら!? 頭脳=火力か!?というのを評した言葉なのですが、これ正直、間の無さが原因な気もするんですよね。間は、躊躇や逡巡を描くのに必要な部分ですから。詰め切って間が無くなってしまうと、敵が出た→即座にぶん殴る!という直結になってしまうわけで。そりゃあ、脳筋に見えるよなあと。
 今回のソーのように手早く真実に気づいたり、また終わった後に怪しんで手加減していた事を口にする、所謂後付的なフォロー手段はありますが、やはりその場での即断即決デストロイが単純な力押しに見えるのは致し方無しかと。別の頭の良い脳筋の例として「よく罠に引っかかる」もありますが、これも演出や物語における都合の面が大きいわけで。豪華絢爛な設定や、ハイテンポなストーリーの都合上、そうならざるを得ない面、あるかと思います。この作品だけに限らず。
 ちと話がズレましたが、このテンポの良さは海外らしい新鮮な物として武器になる可能性も大きいわけで。トントントン!と矢継ぎ早に繰り出されるネタの数々は、視聴者を楽しませてくれる物。幸い、入れ替わりとなったディスクウォーズで設定や認知度の畑は耕されてますしね。今後、どうなるか期待です。
 しかしディスクウォーズ最終回もロキでウェブウォーリアーズ第一話もロキって、コレもうロキの引き継ぎじゃねえか。

 見切り発車だけど、とりあえずキャラ紹介もやってみるか!ということで、今日の紹介はチラリと出た飛び跳ねカエル野郎なアイツです。アルティメット・スパイダーマンのノリに合わせて、自由に適当に、なるべく出たキャラ、未紹介キャラをメインにこうして紹介していければなーと。

 

自称世界最高の蹴撃士

バトロック・ザ・リーパー

バトロック・ザ・リーパー

 フランスパリの裏路地にて使われていた不良の喧嘩技術を体系化し磨き上げ、格闘技へを進化させた、フランス式キックボクシングことサバット。マルセイユ生まれの傭兵ジョルジュ・バトロックは自称サバットの達人であり、近接戦闘の達人と伝えられている。特殊能力は持たないものの、その腕力はオリンピックの重量挙げの選手に匹敵し、跳躍力は常人の数倍と自己申告している。戦略的な知識や兵法にも精通していると、誰かが言っていた。これほどまでに優れた彼が、コスチュームヴィランであるバトロック・ザ・リーパーになったのは、必然的な運命と言えよう。
 ……見事に伝聞や自称で構築されたスペックである。ちゃんと公式資料であるマーベル・アベンジャーズ大事典にも自称や自己申告と記されているので、決して個人の悪乗りではない。公式で、こんな扱いである。他にこんな扱いされているキャラは本当に存在しない、ある意味ずば抜けたレアキャラである。
 大丈夫なのかコイツと心配になってくるが、1966年デビューから今日まで、傭兵としてキャプテン・アメリカやパニッシャーにウルヴァリンといった一流どころと戦い続け、生き延びてきた。

バトロックVSキャップ

 戦果はイマイチとは言え、数多くのヴィランと組み、時にはかのレッド・スカルに対キャプテン・アメリカの襲撃役として雇われた事もある。傭兵としての評価は、そこまで低くない。勝利を殆ど手にしたことも無いのに、なんで失業しないのかは分からない。同じ多国籍系かつ達人かつ傭兵である、どんな武器でも使いこなす英国の達人ザランや、山刀の達人でもある南米の革命家マチェーテには勝ったことがあるが、勝負の後に意気投合。頻繁に三人で組むこととなる。この三人、本人たちが意図しない内に、宇宙滅亡に係る悪事に加担していた事もある。かの最高のB級ことグレイト・レイクス・アベンジャーズが気づいていなければ、彼らごと宇宙が終わっていたかもしれない。

バトロック&ザラン&マチェット

 傭兵であるため、その出現は頻繁かつ乱雑。近年では傭兵軍団としてタスクマスターと共にデッドプールの前に立ち塞がったが、この時は飛び蹴りを掴まえられた上に関節をへし折られるという、格闘家として完全敗北を喫してしまった。

バトロックVSデッドプール

 この数カ月後、骨折を完治させた後にデッドプールへの復讐戦に望むが、今度はモーションの大きさと急所の防御の薄さを突かれ、無慈悲な金的をくらい嘔吐後悶絶。相性の悪さを悟ったのか、デッドプールへの復讐はあきらめたものの、夢魔の女王シクラーと結婚したデッドプールと偶然地下鉄でバッタリ。同じ過程で前歯をデッドプールにへし折られた傭兵トラップスターと共に怯えていたが、デッドプールは急用で走行中の地下鉄から脱出。これで助かったと思ったら、最近つれない夫に激おこなシクラーが八つ当たりで怪物化。傭兵二人の絶叫とともに地下鉄は闇に消えた。
 一時マジで死亡説が流れたものの、本来のライバルであるキャプテン・アメリカの個人誌において活動が確認されているので、バトロックは無事生きていたようだ。トラップスターも、後に別件でデッドプールに仕事を持ちかけている。傭兵の割りきり具合は、凄まじい。

地下鉄でドッキリ!

 バトロックの綴りはBATROC。ある世界線が薄くなったタイミングにて、同じ“BAT“の名を持つヒーローに一騎打ちを挑んだが、あっさり普通に敗けた。フォローするなら、バトロック撃破後に出てきた傭兵たち、ザランもタスクマスターもクロスボーンズ等なども、ブラックパンサーやブラック・ウィドウらの増援があったとはいえ全員敗けたので、バトロックだけが貧乏くじを引いたわけではない。流石に相手が悪すぎた。

バトロックVSバットマン

 映画キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャーに、まさかの参戦。序盤のシージャック事件の主犯である傭兵軍団の長として、超人であるキャプテン・アメリカと渡り合ってみせた。格闘家であるジョルジュ・サンピエールが演じただけあって、この肉弾戦での決闘シーンの評価は高い。マスクやピエールなヒゲは無いが、コスチュームの色合いやデザインは結構似ている。なお原作でもバトロックは、自身が長を務める傭兵軍団バトロック・ブリゲイドを率いていた。

ジョルジュ・バトロック(映画版)

 ここまでさんざん懐疑的に書いてきたが、実力がそこまで低いわけではない。独特の跳躍力を活かした蹴り技は、スパイダーマンの危機察知能力であるスパイダーセンスをも潜り抜ける冴えを見せるし、完璧な戦略でなくとも独特な癖のある戦略は相手を惑わすことに長けている。そして何より、パニッシャーやウルヴァリンのような殺害もいとわないヒーローと戦って(現実世界で)数十年間生き延びている。それでいて勝率が振るわないこと、つまりバトロックが弱いのではなく、ヒーローがバトロック以上に強いのだろう。若干不遇でありつつも、頑張って欲しいキャラである。