ブラックパンサー 暁の黒豹 レビュー

 よき相談役、頼れる仲間、超国家の王。優れた頭脳と肉体、更には王としての資質まで持ちあわせたヒーロー、ブラックパンサー。一体彼はどんな男なのか。アフリカにある彼の王国、ワカンダとはどんな国なのか――?

 その答えは、ブラックパンサー:暁の黒豹の中に有り!

 

ブラックパンサー 暁の黒豹

 

 ワールド・ウォー・ハルクではファンタスティック・フォーを助力。AVX:アベンジャーズ VS X-MENではアベンジャーズの一員として参戦。ディスク・ウォーズ:アベンジャーズではアニマル属性のセカンドヒーローに就任。フューチャー・アベンジャーズでは、厳格なワカンダの王として君臨。アルティメット・アベンジャーズ2:ブラック・パンサー ライジングでは若きヒーローとして登場。

 そして、映画シビル・ウォー:キャプテン・アメリカにて、キーキャラクターとして鮮烈デビュー。自身が主役となる映画ブラックパンサーは映画史に残る大ヒットを記録しております。

 ブラックパンサーは上に挙げた様々な日本進出のメディアにてその活躍を楽しめるヒーローなのですが、実のところサポート役やチームの一員としての登場が多く、今までの日本におけるブラックパンサーの扱いは短編の主人公や群像劇のメインキャラが限界とも言えました。もっとも、高い資質を持ちつつも存在が隠れ気味だった結果、映画にて世間に鮮烈デビュー!を果たせたという痛し痒しなところもあるのですが。

 そんな中、遂にブラックパンサーが主人公であり、正体であるワカンダ王ティチャラやワカンダ王国に焦点を合わせた邦訳コミックスが登場。それが、ブラックパンサー:暁の黒豹です。

 

 ブラックパンサー:暁の黒豹は、ブラックパンサーの設定周り全てが詰まった作品と言っても過言ではありません。ブラックパンサーと因縁浅からぬ暗殺者クロウが、ヴィラン連合を率いワカンダを襲撃。クロウの背後にはベルギーが、そして豊かな資源と高い科学力を持つ独立国家ワカンダへの干渉を企んでいたアメリカもクロウの襲撃をきっかけに動き出す。ブラックパンサーは、自分自身と国を守り切ることが出来るのか。

 大筋のストーリーはこんな感じなのですが、侵略者対ヒーローというダイナミックな構図を描きつつも、その内にブラックパンサーやワカンダ王国の歴史を織り交ぜた、非常に見応えのある作品となっております。

 歴代の王族が力を示すことで受け継いできた衣装と称号である“ブラックパンサー”。歴代のブラックパンサーは、どのように侵略者と対峙してきたのか? 現行のブラックパンサー、ティチャラが王位を継いだ経緯とは? 

 ワカンダ王国の宗教や日常、超金属ヴィブラニウムを筆頭とした資源の豊富さに、世界の最先端を更に超えた科学力。宿敵であるクロウとの、世代を越えた数奇な宿命。ティチャラの妹や叔父といった親族たち。これらの情報や回想が、物語のテンポを崩すこと無く組み込まれております。

 そしてええ、ブラックパンサーやワカンダ王国のハイスペックさは知っているつもりでしたが、本作で提示された可能性は、ハイスペックどころかチートの次元に到達してました。

「ワカンダには相当量の石油が眠っていると聞くが」
「ええ。ですが、手付かずです。太陽光や水素のような、環境に影響を与えない代替エネルギーを使っているのでエネルギー源としても財政源としても必要ないのです」
  
「そんな小国、捻り潰してしまえ! 工作兵の部隊でも一つあれば……」
「第二次世界大戦の最中、アメリカ最強の兵士であるキャプテン・アメリカがナチスを追ってワカンダに赴いた際、当時のブラックパンサーに負けてますが。ナチス兵も処刑されてました。あと、あのファンタスティック・フォーも今のブラックパンサーに負けてます」

 こんな感じのやり取りが作中繰り広げられるのですが、これもう一周回ってギャグなんじゃないかと。なお、ワカンダ王国の守護神って黒豹じゃなくて青いタヌキじゃねえの? と疑うぐらいに、数世紀は科学力がすっ飛んでおります。というか、実際作中でも「ワカンダの科学は世界最先端」と明言されております。DCコミックスのゴリラシティといい、アメコミにおけるアフリカの野生と科学の融合っぷりはとんでもないですね。

 

 更にボーナスエピソードとして収録されているのが、ファンタスティック・フォーの#52と#53、ブラックパンサーの初登場エピソードです。上でも触れたファンタスティック・フォーがブラックパンサーに負けたという話の元ネタと思われるエピソードです。

 マーベル・コミックスの土台を築き上げた、ライターのスタン・リーとアーティストのジャック・カービーによるファンタスティック・フォー。この直近の作品としては、シルバーサーファーやギャラクタスの初登場回などこれまた歴史的なエピソードが多数あり、ファンタスティック・フォー黄金期とも呼べる時期です。

 このエピソードのもう一つの記念碑的な部分としては、超金属ヴィブラニウムの設定がきちんと作られた回でもあります。ヴィブラニウムの初登場自体はこの話より以前に刊行されたデアデビル #13なのですが、この時は創作物によくある凄い金属としての登場であり、どんな振動でも吸収する性質や原産国がきちんと設定されたのはこのファンタスティック・フォーの#53となっております。キャプテン・アメリカのシールドやウルトロンのボディにも使われるヴィブラニウム。始まりの一つがこのエピソードと思って読むと、何やら感慨深いものがあります。

 本編である暁の黒豹とファンタスティック・フォー、互いにブラックパンサーの生誕秘話やクロウとの因縁が書かれているのですが、内容はまるっきり違います。ファンタスティック・フォーが原初で、それを改変したのが暁の黒豹となっております。時代に合わせて変わっていくアメコミの設定が如実に現れている組み合わせ。この変化を楽しむのも、これ通な楽しみ方かと。初登場回のブラックパンサーはワカンダの凄さが全部ティチャラ一人に集約されてて、コイツ一人でいいんじゃないかな? レベル。

 

 暁の黒豹におけるブラックパンサーは、強者です。ヒーローとして、指導者として、王として、揺らぐことなく決断を下し、侵略者に真っ向から立ち向かう。ただの人でしかなくても、意志の力を持って最強となることは出来る。その意志の強さは、数多のヒーローと並べても、群を抜いていると言ってしまってもよいでしょう。

 この作品は、アフリカの強き英雄を、心ゆくまで堪能できる作品でもあるのです。

日々雑談~2136~

 暇を見て、ファークライ プライマルをちまちまと進行中。PS4のスタンバイモードは、まとまった時間が取りにくい時には本当に便利です。
 相棒として、歴戦の巨大熊ことグレートスカーベアを手懐けることに成功。元々強いケイブベアを、更に強化した傷だらけの個体。腕試しとばかりに、敵部族の拠点に殴り込ませてみたところ……う、うん。大惨事としか言いようが無い状態に。わー、敵のボスが、頭丸呑みされてるー。
 作中最強候補のグレートスカーベアーなのですが、大きすぎて洞窟で上手く動けなかったり、なんでか普通に歩いていてバグで即死(おそらく、地形に引っかかっての異常)したりと、小回りが効かなすぎるタイプ。状況をよく見てから使う、決戦兵器だなこりゃ。
 

 昨日、シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ感想(ネタバレ無し版)をアップしました。ネタバレ無しと銘打った以上、次はネタバレ込みの感想をアップします。ネタバレ無しは未見の人相手、読んで観に行ってくれるような文章を。ネタバレ版は、既に映画を観た人向けの面白い文章を。テーマを決めて、沿って書いてみる。これ中々の訓練になります。
 現状シビル・ウォー、興行的にも調子が良いようで何よりです。Amazonをちらりと覗いた感じ、シビル・ウォー普及版を筆頭に、シビル・ウォー関連誌の売上順位ががっつり上がってますねー……そんな中、映画までまだ一ヶ月ちょっとあるのに、邦訳界隈でシビル・ウォーと渡り合っているデッドプールシリーズ。いやそのまだ、早くない!?

シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ感想(ネタバレ無し版)

 友情が友情を引き裂く――
 原作コミックスにおいても、その影響から逃れるのには数年かかった、ヒーロー同士の大戦“シビル・ウォー”。そんな、大作でもあり問題作でもあるシビル・ウォーの名を冠した、映画キャプテン・アメリカの第三作目。マーベル・シネマティック・ユニバースにおけるシビル・ウォーはどうなるのか? わくわくしつつ観て来ました。

 ヒーロー同士の対決というのは、正義対正義という刺激的かつ難しいテーマです。禁断の対決とは、まさしく酒のようなもの。観客を酔わせつつも、結果いかんによっては、シリーズを停滞や終焉に追い込んでしまう毒ともなりかねない。酒の響きはまず人を惹きつけますが、どう味あわせるのかが本当の勝負ということです。
 そして今回出たキャプテン・アメリカ:シビル・ウォーという酒は、実に美酒でした。作中人物の理屈や感情を揺さぶり続け、なんでこうなってしまったんだ! という不条理とこうするしかないんだな……という納得を同時に押し通しています。誰も正しいし、誰も悪く無い。ただ、それでも悲劇は巻き起こってしまうからこそ、悲劇と呼ぶんだなと。

 今回の映画は、登場人物の心理描写にも気を使っており、一歩間違えれば退屈な映画になってしまう可能性も孕んでいたのですが、ヒーロー映画らしい刺激的なアクションを定期的に挿入することにより、飽きが来ない作りになっております。CMで流れている空港での対決、薄暗い場所で繰り広げられるキャプテン・アメリカ&バッキー・バーンズVSアイアンマン。CMの時点で、そそられる要素が沢山注ぎ込まれておりますが、これですら前菜という恐ろしさ。おそらく、大多数の人の想像を超えたアクションが見られます。かなり期待値高め+ちょっとしたネタバレを知ってしまった自分でも、なにこれすげえとなるバトルシーン。ヒーロー同士、超人同士の戦いをギミックのパズルと考えると、なるほどこういう見せ場が作れるんだと、客席で一人納得しておりました。

 多数のゲストヒーローの登場、その中でも群を抜いた注目度を持つヒーローといえば、今回映画初登場のブラックパンサーと、マーベル・シネマティック・ユニバース初参戦のスパイダーマン。二人とも、顔見世のゲストなのでは? との予想もありましたが、マーベル・シネマティック・ユニバースの一員として、シビル・ウォーの中心人物や鍵として、話にしっかり絡んできます。
 おそらくシビル・ウォーにてこの新ヒーロー二人に託された役割は、希望と未来。今作にて生誕した二人のヒーローは今後どうなるのか。アクション面に人物造形、共に期待感のあるものが提示されており、新作映画へのワクワクが留まりを知りませぬ。
 もちろん、既存キャラであるホークアイやアントマンやファルコンやウォーマシンや……彼らもまた、彼らにしか出来ない、そして今までのイメージを更に膨らませる活躍を見せてくれます。キャプテン・アメリカとアイアンマン含め、結末は明暗混ぜこぜ。要は、全員次回作以降の今後が、むっちゃ気になってしょうがないのですよ。

 シビル・ウォー:キャプテン・アメリカは、マーベル・シネマティック・ユニバースの根本を揺らがしつつ、今後生誕するヒーローに可能性を、そして誰も先が読めない混沌さを。マーベル・シネマティック・ユニバースを延命させるための劇薬として、単体で見てもエキサイティングできる良作として。おそらく“シビル・ウォー”という単語に求められている要素を満たした作品なのではないでしょうか。

日々雑談~2135~

 明日深夜から、ついに日テレ系で地上波初となるザ・フラッシュの放送開始。毎週録画をセットしておこう。特撮としてもドラマとしても、近年トップクラスに速いし面白いぞ!

 ゴールデンウィークの休みの谷間となる、本日。道路事情が、本当にヤバかった。平日の混み具合+休日の混み具合+休日ドライバー出勤! と、マイナス要素を足すだけ足して、ちょっとだけ割ってみた感じで。ああもう、いくら広いワゴン車に乗ってるからって、幼児を車内に野放しにするのはアカンよ。ワゴン車そのまま高速道路のインター方面に行ったけど、流石にチャイルドシートに座らせたよな……?

 あと、昨日まで三連休+明日から三連休の合わせ技で、基本的に平日しか空いてない施設、病院やゴミ集積場なんかが、えらいことになってましたね。例え風邪気味ぐらいでも今日行っとかないと、明日からしばらく取り返しがつかないからなあ。逆に、取り返しがつかなくなって、今日を迎えてしまった方も居るわけで。
 金曜日も条件的には似ていますが、普段と同じ土日前の金曜日でもあるので、今日に比べれば、ちっとはマシになるでしょう。三連休後の平日という条件は、残ってしまいますが。
 GWは公共交通機関推奨ですよ。ホント。

日々雑談~2134~

 本日開催のCOMIC1より帰宅しました。暑い中、会場にご来場いただいた皆様、ありがとうございます。

 冬コミ以来の大型イベント、一日に全サークルが収まる総合イベントとしてなら、去年のCOMIC1以来一年ぶりくらいの参加となったのですが、若干サークルの傾向が変わっている印象が。
 去年までは、毎年出る新アニメがメインとなりぐるぐる回っていく形だったのですが、今年は艦これやガルパンやグラブルやアイマスが大きな柱としてドンとあり、その周りに新アニメがある感じで。
 ガルパンはTV版終了後劇場版で人気再爆発、艦これやグラブルやアイマスが性質上終わり無しと、1クールで終わらない、もしくは明確に先のある作品が、人を惹きつけ続けてるんでしょうね。公式が動き続けていれば、二次創作者の興味や発想が付き難いのもこれ真理。枝の若さより、枝の太さの時代になっていくのか……。
 それにしても、イベントに行くと、今でも刺激がありますね。俺も頑張って、今ある物を掘り下げたり新しい物を生み出していかないと。次の同人活動は、受かれば夏かな。イベント以外にも色々やって、集中力を途切れさせないようにしたいところです。

 そしてうん、思った以上に「スパイダーマンと変態仮面、似てますよねー」と言ってくれる人、多かったね! いや良かった、そのコンセプトで本を作った俺的には良かったけど、スパイダーマンは不幸だなコレ……。