オーバー・ペネトレーションズ#1-1
巨大な人型ロボットが、街で暴れていた。
「ガハハ! いくら最速でも、俺様のレーダーはアップグレード中だ! 見ろ、段々追えるようになって来たぞ!」
機械らしからぬ我に満ちた声を出し、右腕に装備されたガトリングガンを乱射するロボット。射線は、ロボットを囲むように動く光の軌道を追っていた。光は、輪を描くようにロボットの周りを回っている。輪の先端に、銃弾は徐々に追いつこうとしていた。
ロボットは自身のセンサーの確かさを信じきり、光を撃ち殺そうとしている。だが実のところ、センサーが優秀だから、光を追い詰めているのではない。包囲の輪が、一周ごとに少しずつ狭まっていて、狙いやすくなっているだけだったのだ。
「ウオオオオオオ!? 目が! 目がぁ!」
ロボットが気づいたのは、輪が肉薄し、自身に手をかけた時だった。輪と共に、光速で回転させられるロボットの身体。数分後、ドクロに似た機械の頭がショートを起こした所で、ロボットはようやく回転から解き放たれた。ランプ状の目を点滅させている部分以外、全てが機能停止状態だ。
「センサーをアップグレードするより、バランサーをアップグレードすべきだったんじゃない?」
最新の身体と最低の性根を持つ機械の犯罪者を制したバレットは、自身を撮るTV局のカメラに、サムズアップと笑顔を向けた。