Mask&Moon~紅き戦士達~
旋風の仮面戦士VS不朽の守護者。
両親と妹の為に身体を捨てた男と正義の為に我欲を捨てた男。
だが既に互いの道は入れ替わり、戦士は正義に、守護者は悔恨の復讐へ進む。
同じ“シロウ”の名を持ちながらも道が同じくなることはなく――
旋風の仮面戦士VS不朽の守護者。
両親と妹の為に身体を捨てた男と正義の為に我欲を捨てた男。
だが既に互いの道は入れ替わり、戦士は正義に、守護者は悔恨の復讐へ進む。
同じ“シロウ”の名を持ちながらも道が同じくなることはなく――
最近、町を所狭しと駆け回っている。
別にマラソンの趣味とかが有る訳ではなく、仕事柄駈けずりまわざるを得ないのだ。つい先日まで休職していたが繁忙期につき臨時で復帰。職種は数々の個人宅に荷物を届けるお仕事、いわゆる宅配業に就いている。駈けずり周る必然性はないのだが、走らなければ間に合わぬほど荷物がある。一度正式に辞めただけあって厳しい職種だ。
さて、その毎日駆け回っている街だが、至極荷物を配りにくい街としても知られている。不在率の高さと住宅の密集度に山地と評しても良いくらいの坂の多い地形とあいまって、配属された人間のうちで残るのは4割と言われる厳しい街。だが、そんな物は所詮努力で補えるものだ。だが、この町には努力でもどうしようもないものも間違いなくある。
端的に言うと“でる“のだ。
「ねえ。このロザリオ、受け取ってくれるかな?」
この台詞を言うまでにどれほどの困難があっただろうと祐巳は思い返していた。
確かに彼女とは色々な事があった。楽しいことに嬉しかったこと、そしてつらかった事――
でも、それがあるからいまここで彼女の前で姉ぶってロザリオを掲げることができる。どんな事でもそれは二人の間であったかけがえのない事。このことに限っては親しい人も他人となり口出しすることはできない。二人の思い出は当事者の二人にしか進入できない、聖域のようなものなのだ。
目の前の彼女がどのような台詞を言うのかはわからない。素直に受け取ってくれるかもしれないし、もしかしたら拒むかもしれない。でも、きっと、彼女の口からどんな返答が出ても後悔する結末にはならない筈だ。姉妹という確かな絆はなかったけれども、見えない暖かい赤い糸は確かに存在していたのだから。