日々雑談~6626~

 フューチャー・アベンジャーズがコミックスに出た!との噂を聞きつけ、さっと該当の巻を買ってみたら、ホンマや!と驚くことに。入手に時間がかからず、もやもやせずにすんだので、ありがとう電子書籍! でもこれは、紙でも持っておきたいな!
 ちょっと画面に映るカメオ出演ではなく、東京にいるフューチャー・アベンジャーズとして、しっかり設定を組み込んだ上での登場。これはいろいろと、今後が気になる……。日本は長らくビッグヒーロー6が守っていたものの、今はちょっと忙しすぎて出にくいわけで。具体的に言うと、ディズニー方面で。そんな中でのフューチャー・アベンジャーズの登場は、空いたところにスッポリとハマる感じですね。アジアの若手ヒーローたちが熱い昨今、こいつは面白くなってきたな!

フューチャー・アベンジャーズなコラム~その6~

 フューチャー・アベンジャーズ第6話!
 アディを押しつぶしそうになる後悔。だがアベンジャーズには、同じように後悔を背負い続ける男がいた――

 

 マコトが無邪気にヒーローになりたがりアーマーを欲しがるのは、本人の性格に加えてヴィランとしての活動期間が無いというのも大きいのでしょう。ヴィランとして育てられつつも、ヴィランとしての経験や悪しき心を宿らせる洗脳がなければ、それはヒーローにも成り得る無垢な力。妖刀だって、打たれてから何も切らなければ単なる名刀です。

 そうはいかないのが、ヴィラン“テクノプリースト”としての活動期間があるアディ。特に何をしたのかは語られなかったものの、斡旋がヒドラで、当人の能力が機械を自在に操れるテクニカルアクト。この近代化社会で機械を操るということは、ある意味万能にも等しい力です。

 その力をヒドラの指示通りに振るえば―― きっと、少年が背負うにはあまりに重すぎる荷が、容易く生まれてしまうでしょう。

 

 ヒーローとは正しくあろうとする者であったとしても、誰もが生まれてから今まで清廉潔白とは限らない。
 アイアンマンとなる前の、武器商人トニー・スターク。未だトニーが作った武器が世界中にあり、数々の悲劇を起こしているのは映画でも描かれたこと。それに、戦場で死にかけるという事故が無ければ、トニー・スタークは武器商人として今でも活動していたかもしれない。

 トニー・スタークは、ヒーローとして活動をするには汚れすぎているし、信頼できる過程でヒーローになった人物ではない。これもまた、一つの正しい指摘です。

 

 そんなトニーの過去を知り、それを認めぬと同時に恨みの炎を燃やす男、エゼキエル・ステイン!

 映画アイアンマンでもトニーの殺害を目論見、コミックスでも強大な敵として立ちはだかったオバディア・ステインの息子。死亡した映画や、自殺したコミックスとは違い、フューチャー・アベンジャーズの世界ではオバディアも生きて収監されているようですが、まあ十中八九、ロクでもないことをやらかしたのでしょう。つーか、キレイなオバディアって想像できねえ。

 エゼキエルが使用するのは、オバディアの遺産とも言えるアイアンモンガー。そして自ら強化改造を重ねたアイアンモンガー2。アイアンモンガー2のスーツは、エゼキエルがコミックスで装着したスーツに酷似してますね……ただ、アイアンモンガーとビジュアルが違いすぎる上に、元祖と2を作る間に技術が進歩しすぎてて、これ同型機扱いでいいのかな? とファンの間でも議論を読んでいますが、それはさておき。ガンダムで言うなら、一年戦争と∨ガンダムのMSぐらいの差があると言ってもおかしくないもんな。

 

 アイアンマンの罪を糾弾しつつ、過去のデーターより完璧な対策を打ち立てたエゼキエルの二段構えな作戦。罪をただ黙殺すればヒーローとしての資格が疑われ、単に敗北すればそこでオシマイ。非常に狡猾です。そしてエゼキエルは知らないことですが、トニーが罪との向き合い方を誤れば、アディもおそらく潰れてしまっていたでしょう。

「過去は変えられない。だが、未来を選ぶことはできる」

 トニー・スタークのあり方は、エゼキエルからすれば不条理で、厚顔無恥な答えなのかもしれません。でも、トニーは世界中で少なくない人間が向けている自身への恨みと、武器商人としての罪を自覚している。自覚しつつも、自分ができることをやり続け、ヒーローに相応しい人間として振る舞い続ける。厚顔であったとしても、その内では恥も罪も渦巻いている。それでも、前に歩み続ける。

 トニーの過去のデーターを分析することで満足してしまい、過去の恨みが原動力であるエゼキエル。とどまったまま追いつこうとする人間が、先ゆく人間に勝てるものか。この辺、エゼキエルは、足を引っ張ることに頑張りすぎた、どこかの魔女にも似てますね。せっかくノベライズでヒロイン力上げたんだから、笑顔で幼女の爪とか剥がしてんじゃないよ、もう。

 トニーの生き方は、過去を忘れ去るよりも辛く、一方誠実な生き方。実際アディもトニーのあり方に救われましたし、この生き方はメイン視聴者層である子供にとっても、早く知っておくべきことではないですかね。子供や若者はやってしまったという後悔を背負いがちで、処理の仕方を知らないまま、潰れてしまうこともあるので。忘れるのもいいけど、こうやって重荷と付き合い続ける生き方もあるんだよと。ある意味キツい生き方ですが、知らぬまま潰されるよりかはナンボかマシでしょう。

 ヒーローが、強き背で一つの生き様を見せるのって、古今東西大事なことだと思うよ。

 

 アディという新キャラクターの悩みに、己の生き様で答える既存かつ人気キャラのトニー・スターク。敵は、未来を生きようとする彼らと相反し、過去を力とするエゼキエル・ステイン。

 新キャラ、既存キャラ、そしてヴィランと、ものすごいカッチリとハマってます。後述してますが、後から追う者であるエゼキエルの造形もフューチャー・アベンジャーズ独自ではなく、元々の彼のキャラ造形なんですよ。当然、作品に適した形にはいじってますが、根本的には同じ。つまり在るものを理解した上で新しいものを組み合わせて、見事な造形を成し得たということです。

 実際、今回のエピソードのハマり具合は、原作付きアニメ全般にまで話を広げてもスマッシュヒット級ですね……。いやあ、楽しみつつも勉強になりました。

 

 今回紹介するのは、エゼキエル・ステイン!
 実は、以前マッドハウスにて制作されたアイアンマン ライズ・オブ・テクノヴォアにも出ていたりするのですが、こちらでは美少年キャラ。フューチャー・アベンジャーズのエゼキエルも路線は違うとは言え、中々に精悍な顔立ち。エゼキエル、マッドハウスのアニメだとイケメン化する地形効果でもあるんだろうか。

 

 

エゼキエル・ステイン

 自身の財力と知力でトニー・スタークを心身共に限界寸前まで追い詰めたアイアンマン最大の敵の一人、オバディア・ステイン。
だがトニーは、オバディアの策謀を乗り越え再起。オバディアは部下の科学者に作らせていたアイアンモンガーのスーツを装着し、アイアンマンとの直接対決に望むものの、敗北。敗北者となったオバディアが自殺したことで、オバディア・ステインの野望は幕を閉じた。

 しかし、オバディア・ステインの野望は終われども、彼の計画は終わっていなかった。人の心理を知り尽くすオバディアにより、トニー・スタークへの憎しみを思う存分注ぎ込まれた、復讐の申し子。その名は、エゼキエル・ステイン。オバディアが持つ財産と悪意を受け継いだ、オバディアの息子である。だが、オバディアが死んだ時、エゼキエルはまだ子供だった。エゼキエルはトニーへの恨みを煮えたぎらせながら、自身の成長を待つこととなる。

 オバディア・ステインは優れた知性を持つものの、彼はあくまで“一流の企業家”だった。オバディアが装着したアイアンモンガーの制作は部下が担当しており、オバディア自身も平均的な男性の身体能力以上の力は持っていなかった。自分の知性と企業家としての力でトニーを追い詰めたオバディアだったが、一方で自身が持つことのできなかったトニーの科学者や装着者としての才能も認めていた。

 だからこそ、オバディアはエゼキエルに一流の科学者や装着者になれるような教育を施した。エゼキエルは幼少時から類まれなる才能を発揮し、オバディアの手にあるヴィラン用の装備や超兵器を設計製作したとも噂されている。

 

 オバディアの死からしばらく後、表舞台に立ったエゼキエルは、自身の天才性を証明するがごとく、トニーの技術を模倣かつ一般化し、闇市場に流してしまう。

 エゼキエルは先ゆくトニーに勝つための手段として、アーマーではなく自分自身を改造することに思い至る。手術の結果、エゼキエルはアーマーを装着せずともアイアンマンと戦えるだけの力や治癒能力を手に入れる。エゼキエルもアーマを装着するタイプのヴィランだが、彼のアーマーは優れた身体能力や手術の代償に高熱を発するようになった身体の補助と、若干違うコンセプトである。

 

 エゼキエルは優秀な科学者であり装着者であり、父譲りのビジネスセンスも持っているが、弱点も多い。

 まず一つは、自身の身体にメスを入れてしまったこと。前述したとおり、エゼキエルの身体は常に高熱を発しており、特性のインナースーツを脱ぐことができない。身体の新陳代謝もおかしくなっており、エゼキエルは常人の10倍以上のカロリーを欲する。これは全て、手術の代償である。

 第二に、エゼキエルはオバディアから知性と恨みだけではなく、彼の傲慢な性格まで引き継いでしまったことだ。エゼキエルは、人々とは自分にかしずく存在だと思っており、その傲慢さにより多くの敵を作ってしまっている。

 そして第三に、オバディアの天才性に革新的要素が無いことである。アイアンマンスーツを1から作り上げたトニーや、広く宇宙や次元を旅し数多の理論を打ち立てたリード・リチャーズ(Mrファンタスティック)とは違い、オバディアの製作物や理論には斬新さがない。トニーにも優れた知性は認められているが、エゼキエルのあり方は分析や応用に特化した模倣に近い。先行く思考を持たない限り、エゼキエルはトニーの後塵を拝するしかないだろう。

 エゼキエルは、様々な手段を講じてトニーを追い詰めるが、とどめを刺すには至らず、敗北を積み重ねてきた。オバディアのように企業家としてアイアンマンに立ち向かったジャスティン・ハマーの後継者であるサシャ・ハマー。似た境遇にある彼女と手を組み、自身の技術を販路に乗せることで、スーパーヴィランの持つ装備は、アイアンマンに近い域まで進歩してしまった。科学で先行くアイアンマンが、同じ分野に属する敵に苦戦するのは、模倣者エゼキエルの成果の一つである。

 

 エゼキエルはある時、爆発事故に巻き込まれ、頭部の毛を全て失ってしまう。スキンヘッドとなった彼の姿は、同じスキンヘッドであった父オバディアに不気味なほど似ていた。


※オバディア


※エゼキエル

 オバディアに似た顔と精神性、他人の技術を模倣することに長けた知性。トニー・スタークが未来を生きようとする男ならば、エゼキエルは過去で生きる男なのだ。