アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーなコラム~雷神編~

 アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーにて登場した、ソーに関するあるアイテムについて書いた記事です。それは、絶望に身を投じるようなサノスとの戦いで生じた、新たなる希望。
 話の内容に突っ込んでいるので、ネタバレ注意。まだ観てない人は、ネタバレへの覚悟を決めるか、劇場に行ってから読んだほうがいいよ!

 

 

 

ストームブレイカー


【ムービー・マスターピース】『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』1/6スケールフィギュア ソー

 マイティ・ソー バトルロイヤルにてムジョルニアを失ったソーが、アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーにて入手した新たなハンマー。ドワーフ族のエイトリの技術に超金属ウルに星の炎による鋳造、最後にグルートの身体の一部を柄とすることで完成した。一度完敗したサノスに対抗するために作られただけはあり、地球でのソーとサノスとの再戦では、あと一歩のところまでサノスを追い詰めるほどの力を見せた。

 

 コミックスにもストームブレイカーの名を持ち、ムジョルニアと同等の性能を持つハンマーがある。だが、コミックスにおけるストームブレイカーの持ち主は、ソーではなく“もうひとりの雷神”ベータ・レイ・ビル。Stormbreakerの銘は、ベータ・レイ・ビル主人公のコミックスのタイトルにもなっていると、ビルを象徴するアイテムである。

 異星人でありながら、ムジョルニアを持つだけの資質を持っていたビル。オーディンはソーとビルの対決やビルとの直接の対話により、彼の価値を見定めた結果、新たなハンマーとなるストームブレイカーをビルと共に作成した。ストームブレイカーは資質無き者には持てず、持ち主に強大な力を与え、一度投擲しても手元に戻ってくると、ムジョルニアと同等の力を持っている。

 ストームブレイカーの鋳造にはムジョルニアを作ったドワーフ族のエイトリが協力しており、映画に彼が登場したのも、これが理由の一つだろう。なお、エイトリはソーやロキと同じく北欧神話由来のキャラクターであり、北欧神話でも兄弟であるブロックと共にムジョルニア(ミョルニル)の製作者として登場している。つまりムジョルニアとストームブレイカーは、同じ素材と製作者により生まれた、兄弟ともよべるハンマーである……もっとも、ストームブレイカーは北欧神話には存在しない、マーベルオリジナルのハンマーなのだが。アスガルドで作られたのに、いきなりストームブレイカーというアメリカンな銘になっているのは、そういうことである。

 
 
 コミックスのストームブレイカーと、マーベル・シネマティック・ユニバースに登場したストームブレイカーの違いは、その外見と武器としてのイメージである。片方が平べったい左右非対称なシルエットは似ているものの、あくまで金属製のハンマーといったイメージが強いコミックスのストームブレイカーと、片側が完全に斧になっているマーベル・シネマティック・ユニバースのストームブレイカーには、違いが存在している。

 実は、マーベル・シネマティック・ユニバースにおけるストームブレイカーの外見に関わっていそうな武器は、元祖ストームブレイカー以外に複数ある。その一つは、“ムジョルニア”である。

 

 コミックスの本筋たる正史世界(Earth-616)とは別次元にあるアルティメット・ユニバース(Earth-1610)。この世界にもキャプテン・アメリカやアイアンマンやソーらスーパーヒーローは存在しており、彼らはアルティメッツと呼ばれるチームを結成していた。正史と同じ名前のヒーローやヴィランやチームが多数存在するが、何処かが違う世界。この世界でも、ソーはムジョルニアを振るっていたが、そのムジョルニアは戦斧と戦鎚をそのまま合成したかのようなビジュアルだった。

 アルティメット・ユニバースのムジョルニアの外見は、マーベル・シネマティック・ユニバースのストームブレイカーの外見に酷似している。おそらくこのムジョルニアは、映画のストームブレイカーのイメージに関わっている。アルティメット・ユニバースのムジョルニアと正史におけるムジョルニアの性能はさほど変わらないが、アルティメット・ユニバースのムジョルニアはテレポート能力に長けていたり、サイズが若干大きめだったり、使用制限が緩かったりと、細かな違いはある。このムジョルニアはやがて、次元の壁を超えEarth-616に飛来。当時ムジョルニアと雷神としての立場を失い、ソー・オーディンソンからただのオーディンソンとなっていた男と出会うことになる。

 

 また、ソーと斧の関わりとしては、ソーがムジョルニアを授かる前に使っていた武器であるjarnbjornがある。

 設定自体は近年作られたものだが、ソーはムジョルニアの適合者として認められていなかった時期には、ドワーフ族が作り出したこの斧を使用していた。ソーがただのオーディンソンとなっていた時期にもjarnbjornを使用している。このjarnbjornも強力な武器であり、当時から神に比肩する力を持ちながらも、発展途上にあった最強最古のミュータント、若き日のアポカリプスとの対決にも使用されている。
※jarnbjornの正式な日本語での読み方は現状不明。ただし、ヤンビョルンやヨルンボルンのような読み方の候補はある。

 

 これまで例に上げたコミックスのアイテムを箇条書きにすると、以下のようになる。

◯ベータ・レイ・ビルに授けられたストームブレイカー

◯別世界(アルティメット・ユニバース)のムジョルニア

◯ムジョルニア以外の武器である戦斧jarnbjorn

 ムジョルニアと同等以上の武器。ムジョルニアを失ったソーが出会ったムジョルニア。ムジョルニア以外のソーの武器。これらはすべて、アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーにてソーが求めていた新たな武器の要素や現在のソーを取り巻く状況に関わる、もしくは一致している。

 アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーに登場した、ストームブレイカー。それは強大なサノスに抗うため、コミックスにおけるソー関連の複数の武器を一つにした新時代のムジョルニアだったのだ。