ウルトロンについて本気出して考えてみた

 アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロンのキーワードとなれば、まず出てくるのは“ウルトロン“。アベンジャーズ最大の敵の一人であり、ヒーローが生み出してしまった災厄。だいたいこんな感じですが、果たしてウルトロンという敵は、それだけしか無い存在なのか。答えはNO。
 ウルトロンとは何か。映画を観て改めて考えてみたので、ここに書いてみます。ウルトロンのざっとしたスペックやキャラ付けに関しては、まずコチラを参照に。
 映画におけるウルトロンとトニー・スタークの話にも触れているので、此処から先は映画のネタバレが若干入っております。

 

 

 

 

 ウルトロンとは一体何なのか。原作ではハンク・ピムが創りあげ、映画ではトニー・スタークが考案した、マーベルユニバースにおいて最も強大な敵の一人。アップグレードという進化を繰り返し続け、アベンジャーズを苦しめ続ける災厄。
 ここでするっと抜け落ちがちなのですが、何故ピムやトニーはウルトロンを作ろうとしたのか。それは未来の為以外の何者でもなく。どの世界も開発者が持ちえる手段の全てを使い、輝かしい未来の一助にしようとした。マーベルユニバースは色々複雑な世界ですが、大抵の世界において開発者の動機に悪意が無かったというのは断言できます。マガジン掲載の、エイジ・オブ・ウルトロン前日譚エピソード0における、トニーがウルトロン制作を続けることを決断するシーンにあるのは、純粋たる希望でした。絶望が共にあることを知るのは、映画本編での話です。
 しかしウルトロンは、人類の敵となってしまった。それはウルトロンが優れた頭脳で導き出した答えが、矛盾でしか無かったからです。

アベンジャーズの敵は人類であり、人類の平和のために人類と戦っている。

人類はアベンジャーズに守られつつ、彼らが戦いの原因であるとも思っている。

 矛盾の計算式の末、ウルトロンは暴走し、矛盾の源である人類やアベンジャーズの排除を決断した。これもだいたい、何処の世界でも同じ流れですね。この計算式は答えが破滅的なので隠れがちですが、ウルトロンもまた、製作者と同じ立ち位置、製作者が目指したものと同じ立ち位置より、計算を始めていることです。
 映画のウルトロンは「アベンジャーズを消滅させる」との思惑で動いていますが、実はこれ、中盤キャプテン・アメリカにトニーが語るように、アベンジャーズが無くなることはトニー・スタークの夢でもあるんですよね。トニーはアベンジャーズが必要と無くなる平和を目指し、ウルトロンは強大な力と自身による統治を持ってアベンジャーズがいらない世界に仕立てあげる。ウルトロンの結論は、手段と目的が破綻していてアレですが、実行に至りビジョンもできているという意味では、トニーの計算より先に進んでます。
 つまりウルトロンとは、物事の実行と実現を計画的に考える開発者の闇。彼らから論理感や正義を全て排除して、目的に至る手段を効率的に実行に移すプログラム。天才が全てをかなぐり捨てた場合のコピー。単なる機械優位、自分優位と考える存在ではないというわけです。
 ウルトロンは、人になったピノキオであり、未だに操り人形としての糸という繋がりも残っているピノキオ。

「だが。ピノキオは人間になって本当に幸せになれたのだろうか……?」

 原作人造人間キカイダーのラスト、主人公であるジローの呟きですが、この答えの一つがウルトロンなのだと思います。
 台詞の引用ついでに、最後にウルトロンという存在の答えを端的に示した、一つの台詞を載せておきます。今年春まで放映されていたディスク・ウォーズ:アベンジャーズ。この作品でも数週に渡り、ウルトロンはアベンジャーズと激突。最後は開発者であるハンク・ピムの作り上げたプログラムにより活動を停止。停止しようとするウルトロンを前に、ピムは一つの言葉を捧げました。

“さようなら、私の中の怪物“