かくして不全の鐘は鳴る 予告

 平和なハロルド王国のドーゼン村。事件は、突然起こった。
「噛み傷の大きさと形から判断するなら、こりゃオークの仕業だな。しかも一匹じゃない、ヤツら群れてやがる」
 北に棲むはずのオークの大移動。性欲と肉欲にまみれたオークに蹂躙されそうになるドーゼン村。元冒険者でありドーゼン村の保安官であるネロは事態収拾のために奔走。やがてネロは、宿で眠る一人の美女と出会う。

「どうも。ドーゼン村保安官のネロです。ちょっとスイマセン、聞きたいことがあるのと、今現在、村はオークに襲われていて危険なので、避難して貰いたいんですが」
「邪魔だ」

「邪魔と言われても、アンタみたいな美人をオークの餌食にするのは、もったいない」
「わたしは大丈夫だ。だから、出て行け。部屋を借りた以上、明日までここは私のプライベートな空間。違いを持ち出すまでもない、常識の筈だが」

「そりゃ失礼。良いって言うなら放っておくけどさ。でもなんか一筆書いておいてくれよ。色々塗れて傷つき、正気を失ったアンタがオークのとこから救出されて、後で責任問題にでもなったら、困るからな。旅人を放っておく保安官、こいつはイメージ悪すぎる」
「その心配は無用だ。私がこの村に来たのは、奴らを殺すためだからな」

 謎の女性ホンゴウ・ハツネ。異世界から来た謎の存在、正義の味方である改造人間を自称する彼女と、知識と経験だけは熟練クラスの冒険者であったネロ。不全の二人が出会った時、物語は始まる。

「オークが恐れているのは、力だ。強者である筈の自分達よりも、遥かに強い力。改造人間という、異世界の力をな!」

「お前は、人に感謝されたことがあるのか?」
「……え?」
「お前は、この世界でその力を使って、誰かにありがとうと言われたのか?」

「怪物は、決して英雄や勇者にはなれないし、讃えられない。今のお前、怪物にしか見えないよ」

「本当に」
「ん?」
「本当に今の状態をどうにか出来て、私は、私は……この世界でヒーローになれるのか?」
「なれるかどうかは知らん! でも、近づけさせてやるよ。この世界じゃ聞き慣れないヒーローって言葉に、勇者や英雄と並ぶ価値を持たせてやる」
「なら、頼む。私をそんなヒーローにさせてくれ!」

 敵は地獄のオーク軍。戦う正義は、何処にあるのか。怪しき正義の味方と、弱き冒険者の行末はいかに。

 特撮✕ファンタジー 「かくして不全の鐘は鳴る~Prologue~」(予定価格:300円)
 コミティア105 “ね01a”肉雑炊で頒布予定。

「赤いマフラー、正義の印」
「なんだそりゃ?」
「向こうの世界で聞いたことの在る文句さ。今では思うよ、いい言葉だって」