お題~漫画の線と面って?~

ふじい(以下F)「この形式は、久々な気がする」

サイレン(以下S)「そうですね」

F「始めた頃は、解説役&聞き役というバランスが取れてたものの、最近は聞き役のサイレンさんの知識が高まったせいで、解説するようなことが殆ど無いんですもん。もうほんと、死ねばいいのに……」

S「理不尽かつ辛辣過ぎるだろ!」

F「それはさて置き」

S「流された!」

F「今日は少し日本の漫画とアメコミの違いを解説してみようかなと。絵や話の作り方でなく、展開の形式をね、ちょっと。日本は線で、アメリカは面。以前呟いたこの言葉を、少し掘り下げてみようかと」

S「ほう」

F「とりあえずサンプルとして、こんな状況を用意してみた。これを叩き台にするぞ」

『一大シリーズ。敵のボスと幹部が現れる。主人公の仲間が幹部と戦い、主人公自身はボスと戦う流れに』

F「じゃあまず、日本の場合を考えてみようか」

S「そうだなあ。普通だったら、仲間と幹部の戦いを書いていって、最後に主人公対ボスを持ってきてシメかな」

F「時系列的に同時進行の戦いがあったとしても、時系列を整理しながら順繰りに書いていって、クライマックスの流れに持って行く。一つの視点で、ずっと物語を追って行く、これが線の流れだ」

S「幹部が二人まとめて瞬殺されたり、四天王筆頭だけやけに強かったりと、多少展開に差異はあるだろうが、そこいらへんは作者の裁量次第だな。タッグマッチという手もあるし」

F「まあ、ここはオーソドックスに、仲間と敵の一対一で仮定してみよう。もし幹部が四人居た場合、一人に一話使ったとして……週刊誌なら一ヶ月、月刊誌なら四ヶ月かかる」

S「二話使った場合、二ヶ月に八ヶ月。長いな、そりゃ」

F「前哨戦に見応えがあるならかまわんけど、中身スッカスカだと見ていて悲しくなってくるけどな。とにかく、じっくりと戦いを描くのは時間がかかる。しかも、この戦いがダレたら悲惨だぞ」

S「ジャンプだけの特権ってワケじゃないからなー、打ち切り」

F「そしてアメリカの場合。仲間対幹部、主人公対ボスの流れまでは一緒として、一つの戦いにひと月かけたとして、どれぐらいで終わる?」

S「一ヶ月だな。主人公の戦いが本誌展開だとしたら、おそらく他の雑誌で幹部対仲間は書くだろうよ。FEAR ITSELF本誌でソー対洗脳されたハルク&洗脳されたシングという戦いが書かれる中、X-MEN誌で同じく洗脳されたジャガーノートとX-MENの戦いが書かれたように」

F「複数視点で一気に戦いを描く。物語の1から順繰りに一年掛けて10に行くのではなく、最初に物語の1~5まで一気に用意して、二ヶ月でケリをつける。これが面の流れというわけだ」

S「なるほど。細く長い線と広い面と言うことか」

S「両者ともに、メリットとデメリットは当然有りそうだな」

F「ある。例えば線の場合、ひとつの視点に定まっているというのは、大きなメリットだな。読んでるこちらも話が理解しやすいし、後付や伏線も作りやすい」

S「逆に面の場合は、基本的に本誌を追えばどうにかなるよう作られているものの、他の視点も一緒に読まないと理解出来ない事象が起きたりするな。それに、結局のところ、本誌で物語が終わるわけで、タイイン誌だけではキリが悪いというのもある」

F「ワールド・ウォー・ハルクの時のアイアンマン誌は、社長が悩んで、ハルクと戦って、負けて投獄されて。これで終わりだからな。アイアンマン誌だけでは、ワケが分からん。というか、社長どうすんだよ。それに、安価に売られているとはいえ、複数視点を集めるのは金と手間がかかる。日本で買おうとすると、一冊400円前後の高い買い物になるしな。本国だと手間も金もまだマシだが」

S「ただ、一気呵成に書くことにより、どんな戦いも短期間で終わるのは大きいな。ダレないし、複数視点を使い、各地で戦っていることを描くだけで、戦いの規模が大きく見える」

F「昭和ライダーの“世界各地で戦っている先輩ライダー”をそれぞれ映像化するようなもんだからな。戦いが繰り広げられているのは、日本だけじゃないんですよ」

S「仮面ライダーSpiritsの展開は……まあアレも、ひと作品という一視点での物語か。時系列的には、日本全国で仮面ライダーが同時に戦ってるけど」

F「スピンオフは一件面に似ている気がするが、ギャグやパラレルや前日譚や後日談が多いからなあ。面ではなく、線を寄り合わせて広い面に見せていると言うか。本編と別視点での同じ物語、なおかつ同時進行は難しいんじゃないかな。長い年月を経て、ガンダムシリーズが面を形成している気がするけど、後付多いし。まあ、初見のファンから見れば、だだっ広い面と言えないこともない」

S「確かに。メディアミックスの結果、大きな面が出来ている作品もあるな」

F「逆にアメリカにも一大シリーズから外れた線の作品は沢山あるし、デッドプールのように、一応シリーズに組み込まれているものの、蓋を開けてみればデッドプールさんが好き勝手やってるだけというスピンオフレベルの作品もあるし。あくまで線と面と言うのは、日米それぞれが一大シリーズを消化するにあたっての、主流のやり方だな」

S「ふむ。それぞれ、絶対こうだ!という固定観念として持っておくべき知識ではないと」

F「結局のトコ、いつも通りの話半分の豆知識ということで。ある意味、ウチらしいオチだな」