モメンさま

 或る女生徒が死んだ。
 夕方学校の屋上から飛び降りた彼女は、昇降口辺りに赤く散った。
 別に彼女と付き合いがあった訳ではないので彼女が何で死んだのかは知る由も無い。ただ、うっかり彼女が潰れる瞬間を見てしまった僕は、あの光景は一生忘れられないだろう。人が死ぬ瞬間を見せ付けられたのは流石にショックだったが、その後の光景は残虐を通り越してもはや奇異としか表せないものだった。
 僕は一生忘れられないだろう。ぐしゃりと潰れた彼女を悼むように、屋上からばら撒かれる色とりどりの布の切れ端。そして、屋上で潰れた彼女を見下ろす謎の人影を――

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妖怪百景

近世百鬼夜行の世界観を広げるためのSS。
同人誌のネタなんかも織り交ぜられているが勘弁してくれい。
とりあえず、この世界最強クラスの妖怪はこんな感じです。

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近世百鬼夜行~七~

 那々は忙しげな物音を聞き、目を覚ました。手を中空に伸ばし二・三回空を掴む。思考に動きが付いて来ている事を確かめてから、物音の源である事務所へと向かう。五木清掃所は三階立てであり、一階が営業用の軽トラが置かれている駐車場、二階が事務所兼共用スペースの居間、三階がそれぞれの私室となっている。五木も那々も私室には寝に来るだけぐらいなので殆ど装飾も何も無いが。
「おう、起こしちまったか。悪いなあ」
 事務所の鏡で五木はヒゲを剃っていた。来客用に一応まともな体裁を整えてあるソファーには旅行用のカバンが転がっている。出張なのだろうか、昨日寝る前にはそれらしい事は一切言わずに実入りの良い仕事がねーよと頭を抱えていたのに。
「出張か?」
「ああ。昨日、お前が寝てから電話が来たんでな」
「これまた急な話だ」
「だが、ギャラを考えれば例え徹夜後の睡眠5秒後に叩き起こされても機嫌良くなる仕事だぜ。まあ、他人の事を考えると素直に喜べないんだがな」
 五木は一枚の古新聞を那々の眼前に差し出す。安そうなスポーツ新聞の一面には『史上マレにみる大規模な山火事発生!! 御社様のタタリか!?』と書かれていた。
「ああ、この記事なら覚えている」
 確かカマイタチとの決闘後の夜だったか、何処か山奥の街で大規模な山火事が起こり街の大半が焼けてしまったらしい。深夜の火災であったせいで対応が遅れに遅れかなりの数の住民が焼死したとアナウンサーが悲壮そうな顔で伝えていた。
「ほら、いつもの社長がさこの火事の後始末に参加する事になってな、どうせだし一枚かませてもらおうかと持ちかけたらすんなりOKが。で、今日下見に付き合うことに急遽決まったんだ。夜には帰ってくるから、今日は休日で」
「今日はと言うか、最近は毎日がホリデイだったんだが」
「それはそれとして! 土産がっちり買ってくるからお腹を空かせて待ってなさい」
 カバンを掴みサッと去っていく五木。お約束として食パンを一切れ口に咥えている辺りは分かっている。
「土産か。肉ならいいなあ」
 カマイタチとの戦闘後に肉を食いたいといった那々の要望は未だ叶えられていなかった。まだ時刻は早朝、軽くアクビをしてから那々は布団に包まるために自室へと戻っていった。

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近世百鬼夜行~六~

 「この13番のオービスの写真おかしくね?」
「え? 先日の検査では異常ありませんでしたが」
「一応確認しておくが、オービスは通過車両の走行速度をレーダーで計測し、違反車両を撮影するってシステムだよな」
「ええ」
「13番のオービスは高速道路のだ」
「そうですね」
「なんで高速に原付が乗ってんだよ、しかもコイツのスピード100km以上になってんぞ!!」
「ええ!? そんな馬鹿な!!」
 その後、厳密な検査の結果オービスには異常が無いと判明し、件の写真は闇に葬られた。

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近世百鬼夜行~伍~

「おいカメラ廻せ!」
「おいスッゲエの出たぞ、ケータイで撮って送るから!」
 テカりのある黒い肌、複眼に長い触角に翅、いままで超人的な戦いをしていた二人は仮装で済むがコックローチGの外見はもはやSFXでも解せるレベルでは無い。野次馬やマスコミが一斉にカメラを構える。
 大小種類様々なカメラが映し出したのは、混色の砂嵐。あたり一面を突如極彩の微小な何かが覆い尽くす、金、黒、茶、赤……色とりどりのそれは群集の視界を完全にシャットアウトした。
 群集の何人が気付いただろうか、自分の髪の毛が各々数cmずつ切り取られたことに。

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