海外マンガフェスタ雑感

 海外マンガフェスタに関しての意見を纏めてみました。あまりどっぷり浸かれなかったので、ちょっと距離をおいた視点で。良い所と悪い所、二つの視点で考えてみようかと思います。

 良い所は、まず行ったかいがあると言わしめるだけの情報と顔ぶれですね。去年よりスペースは狭く、ベラボーマンのゲーム筐体やイラスト持ち込み受付は今回無かったのですが、その分を補おうとする姿勢。コンパクトに、出来るだけのことを。まあ、情報に関しては、今回初参加のヴィレッジブックスが全部持って行った気もしますけど!
 ここぞとばかりの、邦訳情報のラッシュ。ロケットラクーン、パニッシャーとデッドプールのキルズ・ザ・マーベルユニバース、クライシス オン インファナイト アースズ……しかも、常に設置したモニターで情報を流すことにより、間断ない発信を実現。そして地味に楽しかった、コスプレコーナー。いやー、気がついたら、キャップの盾とムジョルニアを手に、ポーズ取ってましたよ。JLA/Avengersのスーパーマン仕様ですね。ブースにドキドキとワクワク感を用意。ヴィレッジブックスのブースは、ある種の理想形でした。今回のMVP。
 トークライブは、別枠ですね、もはや。海外マンガフェスタでもなくコミティアでもない、日本と海外をそれぞれの有名クリエーターで繋げる国境線。ずっと聞いたり見たりは出来なかったのですが、多くの人が集まる様、またプロジェクターで壁面に映されたトークショーの光景を見ることで、雰囲気と活気は伝わってきました。週刊連載とモンハンをこなしつつ、トークショーに参加していた真島ヒロ先生は、ある種のオンリーワンかと。仕事をこなす速度で言ったら、マジで世界の五指に入るかも知れん。
 そして助かったのが、ブリスターの存在。今回は洋書ではなく、アメコミ邦訳本メインの販売でした。何が有難いって、当日自分が頒布していたアメコミ邦訳本ガイドに記載した本が、だいたい売っていたこと。よかった、企画倒れにならんで。なお、日米マンガ比較論+アメコミ邦訳本ガイドはちょっとだけ余ったので、余った分は次のイベントのおまけとして使います。
 コミティア創作サークルとしての自分もあるので、殆ど自スペースに詰めつつ時折フラリと行った感じでしたが、それでもイベントの楽しげな空気は感じ取ることが出来ました。

 良い所と違って、悪い所はあまり言いたくないんですが……黙してスルーするよりも、最終的に得になると信じ、絞り出させていただきます。
 まず第一の弱点は、イベントとしての練度の問題、そして第二の弱点は海外コミックスを初めて目にするような新規層へ訴えかける力の弱さでしょうか。
 練度の問題ですが、少し細かく言うと、配置や列形成や参加者の意識と言った問題です。人がひしめき合っていると一見盛況に見えるのですが、少し遠くから見てみると、場所が狭い場所にサイン会の列が重なってひしめき合っているだけ、入り口は混雑しているものの足を踏み込んでみると奥が空いている。ブース内に入れない原因は、ごく少数の人間がずっと話し込んでいるから。一歩引いた所から観察していると、少しの改善でぐっと多くの人間が快適になるであろうポイントが幾つもありました。
 ただ、この問題は、前回に比べてのイベント規模縮小による詰め込みや運営上の都合と言った事情もあるので、一概に駄目だったと非難することは出来ません。しかし、意識することでほぼ確実に解消に繋がっていく問題でもあります。誘導により列を邪魔にならない場所へ、はしゃぐ前に一旦回りを見てみる。
 練度に関しては、全てのイベントが回数を重ねていくことで徐々に上げてきたものです。海外マンガフェスタはまだ二回目、全て今後の話かと。
 当面の問題は、新規層への訴えかけの弱さでしょう。地図がなかったことやガイドブックが中々見つからないような場所にあったこと、いったいブースで何をしているかわからないスペース、この辺りが響いた結果、コミティア参加者で海外マンガに興味を持ってくれた人は少なかったんじゃないかなと。
 こういう時のリアクションを知るのに便利なのは、Twitterです。海外マンガフェスタでツイートを検索してみると、だいたい関連の発言をしている人は「関係者」か「海外マンガに元より興味がある人」のどちらかなんですよね。時折キーワードのチェックをしていますが、開催から今まで、プロフィール欄にアメコミの文字もなくアイコンにもそういう匂いのしない方は、一人か二人と言ったところでした。時間帯にもよるでしょうが、おそらく用意周到にチェックしても、両手、下手をすれば片手で数えられる範囲から抜け出られそうにはありません。
 確かに既存層の満足は大事です、ですがそれと同じくらいに、新規層を引っ張り込むことも大事なことです。幸い、コミティア参加者という、引きずり込みやすい人たちが居るわけですし。ジャンルや作家に固執せず、単に面白い物を探しに来ている方が多いですから。サークルスペースに、簡易地図を配るだけでも変わるかと。
 コミティアと共催している以上、新規層の獲得は大事だと思うんですよね。もし既存層特化を目指すのであれば、いっそ単独開催の方が向いてますし。一人あたりの接客時間が長いアーティストアレイと小規模な会場の自由度や参加者への親しみ易さは親和性があり、単独開催ならコスプレの解禁も自由。これはこれで、上手く回る気が。ちなみに、小さな会場でやったほうがいいんじゃないかと言うのは、決して馬鹿にしているわけではありません。小さな会場には会場で、大会場には無い利点があるのです。

 第三回があるのかどうかは分かりませんが、もしあるとしたら、次までの一年という期間を、上手く使いたいところです。一年あれば、1参加者でも有益な宣伝ができる。コミティアに元来参加している海外作家さんとの連動なんかも、面白いかもしれませんね。なにげに向こうのプロの方も、一同人作家として参加してますし。イベントが上向きのまま、次に繋がることを、願っております。