マリみて新刊展開予想

「ねえ。このロザリオ、受け取ってくれるかな?」
この台詞を言うまでにどれほどの困難があっただろうと祐巳は思い返していた。

確かに彼女とは色々な事があった。楽しいことに嬉しかったこと、そしてつらかった事――
でも、それがあるからいまここで彼女の前で姉ぶってロザリオを掲げることができる。どんな事でもそれは二人の間であったかけがえのない事。このことに限っては親しい人も他人となり口出しすることはできない。二人の思い出は当事者の二人にしか進入できない、聖域のようなものなのだ。

目の前の彼女がどのような台詞を言うのかはわからない。素直に受け取ってくれるかもしれないし、もしかしたら拒むかもしれない。でも、きっと、彼女の口からどんな返答が出ても後悔する結末にはならない筈だ。姉妹という確かな絆はなかったけれども、見えない暖かい赤い糸は確かに存在していたのだから。

「ふざけた話ね……祐巳は何巻、貴女が妹になるのを待っていたと思うのよ。もっと早く決断していれば、妹関係の話題がすっぱり消えて、私と祐巳の絆の描写も助長と言われず描くことができたのに。貴女が無駄にした巻数、残りの出番で償ってもらうわ。令、真剣を頂戴。真剣がなければ木刀でもいいわ。とにかく殺傷力が高いやつをお願い」
「ちょっと待ってよ!! 山百合会の一大事ってなに、祐巳ちゃんの妹問題!?」
「妹じゃないわよ。認めないわよ、祐巳に妹ができるなんて姉の私が絶対に認めないわよ!!」
「私もいまの貴女を紅薔薇様なんて認めないよ!!」
「そうですよ。銀杏並木と桜並木を個人のわがままで撤去するなんて絶対に認められません」
「志摩子、それは関係ないから!! 全く、山百合会の一大事だから全員集合っていうから部活休んでまで来たって言うのに。それが祐巳ちゃんの妹問題? そういうのは祥子ならともかく直接の姉妹でもない私が口を出す問題じゃないから。帰るよ、私は」
「問題? それは既に結論が出ているわ。私はただあの娘を抹殺するのを手伝ってほしいだけよ」
「いや、それもっと出来ないから。だいたい、祐巳ちゃんに妹を作れって言ったのは祥子じゃない。今となって邪魔をするなんて、話としておかしいよ」
「……確かに私も深慮した上で祐巳に言ったわ、妹を作れと。でも、その後にも言う前以上に考えたのよ。山百合会の事に祐巳自身の事に、妹が出来た際の私の存在感の問題とか。そして、悩んで考えた結果……抹殺という結論に……」
「なにを色々考えたの!? 気に入らないから集団でリンチってさ、それはスケバンの思考じゃないか」
「支配者には力が必要なのよ、時には暴力も」
「全校生徒の代表者の薔薇様がすごいこと言ったよ」
「とにかく、妹のためなら模範生にでもスケバンにもなれるのが姉ってものじゃない?」
「とりあえず、私は違う。全く……由乃、貴女からもなんか姉馬鹿全開な祥子に言ってあげてよ」
「誰が由乃よ」
「はい!? 」
「仕置き屋世直し島津と呼んで」
「よ、由乃までいったい何を!? 仕置き屋って!?」
「ゴールデンタイムで順庵を放映していたから仕置き屋でいってみた。本来ならば始末屋の方が好きなんだけどね。祥子様、私も手伝います。私も親友として祐巳さんの妹問題には関心がありますし」
「流石ね、由乃ちゃんは。そこで呆然としているヘタれの数倍は役に立つわ」
「ええ。私もあの娘みたいな世の流行に迎合したツンデレ娘はどうかと思ってますから。祐巳さんには私みたいな祖母から姉を守ろうとするほどの気概に満ちた勝気な妹が合っている気がします」
「いえ。貴女に似た豪放磊落な妹はお断りよ」
「そうですね。祐巳さんには私のように神に身をささげられる程に献身的かつ清楚で可憐で控え気味な妹が合っている気がします」
「銀杏臭そうな妹もお断りよ」

「全く……三人ともいきり立って行っちゃった。私が止めるしかないのかなって。あれ、乃梨子ちゃん? 志摩子について行かなくていいの?」
「ううう……志摩子さんも大事だけど、邪魔をするのは友としてどうかと……でも志摩子さんを独りで……」
「姉と友の板ばさみで動けないか。仕方ない。ここは私が独りで何とかするしかない!!」
「その意気ですよ。それでこそ我ら一族の宿敵です」
「うわぁ!! 貴女どこから!? そして誰!?」
「私のことは仕置き人有馬とでもお呼びください、もしくはDECOⅡ世とでも」
「有馬だって!? ひょっとして由乃の妹問題で騒がれている……菜々ちゃん?」
「それはこの一件とは関係ありません。私は只、面白そうな臭いがしたからフライングして参上したしだいです。それでは私も参加してきます、縁のある由乃さまなら私を快く受け入れてくれそうですし(戦力増加として)」
「な!?」
「それでは失礼します」

「ふふふ……由乃と深い縁があるだって? 未だ一年生という赤ん坊にもなっていない、卵子と同レベルの中学生が言ってくれるじゃないか。祥子、貴女の気持ちが私にもいま理解できたよ。せっかく卒業して開放されたのに、またデコっぱちに苛まれてたまるかーー!!」
「こうなったら志摩子さんに招待がばれないように偽名でマスクを被って助けに向かうしか……生徒会つながりで銀河な隠密副会長か、仮面がデフォルトなすっとこ大戦でネルロイドなヒロインか、はたまた偽名つながりでスパロボな人造人間でWー17……」
妹問題、それは可憐な修羅の道。それに関われば、人は怪物になっていくだろう。

あとがき
1 銀魂の8巻とかが前半の元ネタ。
2 乃梨子が変装しようとする人物がわからん人は清水香里でググると吉。
3 あえて妹が誰になるかは断定していません、どこぞのジャイアントもツンデレだし。まあ本気で当たる様に予想するならドリルでしょうが。
4 所詮は世紀末的マリみてシリーズ
5 ゴメンナサイ