前回のあらすじ
デッドプールが765プロのプロデューサーになって、タスクマスターを連れて来た。
765プロの事務室、長椅子にデッドプール改めデッドプールPが寝転がっていた。こんなヒマそうなプロデューサー、たぶん前代未聞だ。
「あらすじって、荒い筋だぞ? つまり簡単でいいんだ。詳細を知りたければ前編を読めばいい、そしてみんなにデッドプールを布教すればいい。マブカプ3が発売される前に、デッドプールブームの下地を作ればいいのさ」
「プーさん? 誰に話してるの?」
ヒマそうなプロデューサーは前代未聞でも、ヒマそうなアイドルには前例がある。前例である彼女は、事務所の椅子をかき集めた簡易ベッドの上で、デッドプールPと同じく寝転がっていた。彼女の名は星井美希。やる気の無さと高いポテンシャルを兼ね備えた、天は二物を与えずを地で行くアイドルだ。この辺り、破綻した精神と優れた技術を兼ね備えたデッドプールPに似ている。だらけ気味の二人は、時たま妙に波長が合っていた。
「ヘイ! ミキティ! その呼び方は辞めてくれ。黄色いクマと間違われて、千葉浦安に攫われちまう」
「だったら、プーさんも、その呼び方を止めてほしいの。別のアイドルみたいで、ミキやだなあ」
「……」
「……」
無言となる両者、そして、
「ねえプーさん。ダラけてて大丈夫なの?」
「大丈夫だぜ、ミキティ。オレの代わりにタスキーが働いてるから」
二人揃って、呼び名の是正を諦めた。たぶん、どうでもよくなったのだろう。
「タスキーって、あのガイコツさん? あの人、スゴいの?」
「ああ。オレには(人気で)劣るが、タスキーは一流だぜ。一流だから、わざわざポケットマネーを使って呼んだんだ。タスキーが働くことにより、オレの野望は実現する」
デッドプールPは上機嫌だった。今のところ、事態は思うように進んでいる。少なくとも、計画を立てた本人はそう思っている。
「野望?」
「ハハハ、見てくれ、このマスク」
先程まで美希に背を向けていたデッドプールPが、くるりと美希の方に振り返った。いつもの赤いマスクではなく、黒を基調としたマスク。デッドプールPは、真っ黒なマスクを被っていた。まるで、高木社長みたいに黒いマスクを。
「いかにすれば真っ黒になるか、イカスミや墨汁を使って研究した結果がコレだ。いっそマスクを黒くすればいいという、ナイスアイディア。コレで黒さの基準は満たした。この世界、真っ黒じゃないと、社長になれないみたいだからな」
「プーさん社長になるの? どこの?」
「決まってるだろ、ミキティ。この765プロに決まってるじゃないか」
現在出張中の高木社長を追い落とし、オレが社長になってやる。デッドプールPは、堂々と765プロ乗っ取りを宣言した。
サボっているデッドプールPが唐突な野望をぶちあげたその頃。
「もうこれで、マコトは大丈夫だ。次は歌のうまい奴、この事務所で一番歌唱力があるのは?」
「それなら千早ですね。如月千早、今丁度、ボイスレッスンをしているハズです」
タスキーことタスクマスターと、真面目なアイドルの律子は、事務所の二人と反比例して一生懸命働いていた。
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