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デッドプール チームアップ! 幕間

 トニー・スタークは鋼のスーツを身に纏い、空を飛んでいた。人は彼を、鋼鉄の男、アイアンマンと呼ぶ。
 アイアンマンは、ジェット飛行で厚い雲を切り裂き、この辺りに潜んでいるであろう、デッドプールを探していた。
「デッドプールは発見出来ない」
 地上と通信するアイアンマン。
「だが気をつけろ。ヤツは悪魔だ」
 地上班のキャプテン・アメリカがアイアンマンに忠告する。キャプテン・アメリカの傍らには、雷神ことマイティ・ソーがいる。アイアンマン、キャプテン・アメリカ、マイティ・ソー、アメリカ最大のヒーローチームことアベンジャーズの中でも、BIG3と呼ばれる偉大な三人。そんな三人が、必死でMAD1のデッドプールを探していた。
 飛行するアイアンマンを追尾する、謎のフォログラムカード。カードは一枚ではなく複数。何枚ものカードが連なり、アイアンマンを追っている。カードに気づいたアイアンマンは速度を上げるものの、カードはジェット以上の速さとスティンガー以上の正確さでアイアンマンを追尾する。
“ファイナルアタックライド ディディディ ディケイプール!” 
 カードを貫く光弾。光弾は、全てのカードを貫き、先を飛ぶアイアンマンをも貫いた。
「アイアンマーーーン!!」
 アイアンマンの爆発は地上からでも確認できた。キャップが友の名を絶叫する。燃え盛るアイアンマンは、隕石のように墜落。そのまま接地し、爆散した。
「ハハハ、まるでデアデビルの興行成績みたいだ。アイアンマン2がこうならなきゃいいが」
 アイアンマン墜落で出来たクレーターから現れるデッドプール。彼を探していたキャップもソーは、その姿を見て躊躇する。二人の記憶にあるデッドプールは、頭に妙なプレートを埋め込んでいなかった。ベルトももっと地味だった。
「アベンジャーズ、BIG3の時代は終わった! これからは、日米合作ヒーロー! 仮面ライダー・ディケイプール様の時代だぜ!」
 キャップとソーを一蹴して、デッドプール改めディケイプールは高らかに宣言した。


 グースカと寝ているデッドプール。
「オールデッドプール対マーベルユニバースだと!? ……むにゃむにゃ、なんだ夢か」
 よっこいせと起き上がるデッドプール。彼は道路脇のドブで寝ていた。酔っ払っていたのか、ケンカでもしたのか、なんとなくなのか。とにかく昨晩、ドブに落ちてハマって、そのまま寝てしまったらしい。
「どうも身体が痛い、ハリガネみたいだ。それに臭い、セントウというヤツに行ってみるか。そして、ここは何処なんだ」
 ペタペタと、立ち上がった際に支えにした電柱を触るものの、ここが何処か分からなかった。電柱に書いてある住所は、英語ではなく、漢字とひらがなで書かれていた。
「日本だな。間違いなく、日本だ。オレの国はアメリカなのに。でも、メキシコのチミチャンガも好きだし、イギリスのキャプテン・ブリテンは知り合いだ。ってことは、日本以外はみんなデッドプールの国なんだな。うん」
 勝手なことを言い、てくてくと歩き出すデッドプール。目的も予定もない彼が求める物は一つだけ。この国でビッグになってやるという、まるで中学生のようなアメリカンドリームだった。


 日本で有名なヒーローは、サンファイアーやシルバーサムライ。デッドプールは、こう聞いていた。しかしながら、よく調べてみれば、多少名の知れているシルバーサムライはともかく、サンファイアーにいたっては、誰も知っている人間がいなかった。デッドプール自ら、通行人100人にアンケートを取ったのだから間違いない。今デッドプールがいる日本では、彼らはマイナーヒーローなのだ。
 それどころか、この国の住人はBIG3でさえ知らない。アイアンマンがそれなりに知れていて、キャプテン・アメリカがその次、マイティ・ソーにいたっては、シルバーサムライ以下だった。現時点で一番有名なのは、スパイダーマンか。まあ、スパイディは、日本で巨大ロボを乗り回し暴れていたそうだし、有名なのは当然だ。
 そして肝心のデッドプールは、超マイナーだった。なにしろ、マスク装備タイツ装備武器装備のフル装備でアンケートを取っているのに、通行人は平気で知らないと言う。おかげで、アンケートの最後の方では、ショットガンを相手の額に突きつけ、「俺の名を言ってみろ!」と半ば脅迫になっていた。それでも相手は知りませんというのだから、デッドプールでさえ、あまりの自分の知名度の無さにヘコんだ。
 しかしそこはデッドプール、すぐに立ち直った。むしろ、ポジティブに希望を持って。現在のこの国の状況はサイコーだと思いついて。
 アメリカでいくら活躍しても、デッドプールは目立たない。何故なら、キャップやアイアンマンといった先駆者や有名人の行動がデッドプールの業績を隠してしまうからだ。それに、いくら事件を解決しても、スパイディやウルヴァリンならもっと上手くやっていたと言い、デッドプールを認めてくれない。
 しかし、この日本であれば、デッドプールの業績や活躍を邪魔する者は、誰もいない。むしろ今のうちに活躍しておけば、アイアンマンやキャップが後に来たとしても、「デッドプールに比べれば大したことはない」「そんなことはどうでもいいから、デッドプールの話でもしようぜ!」という事になるはず。立場は逆転だ。
 日本という国は、デッドプールにとってサイコーの国なのだ。


「キャップがいない! ソーがいない! アベンジャーズもいない! 日本サイコーーッ!」
 イヤッホゥ!と叫ぶデッドプール。意気揚々と歩く彼の先を、美しい朝日が照らしていた。

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