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デッドプール チームアップ! 艦隊これくしょん〜艦これ〜 その1

 事件は、主力艦隊の帰港間近、鎮守府近海にて発生した。
「Shit! 提督に貰った大切な装備がッ!」
「下がれ、金剛!」
 中破した金剛の前に、長門が割り込む。己の肉体と重装備で金剛を攻撃から庇うものの、長門自身もあちこちに損傷を負っていた。
「長門型の装甲は伊達ではない……と言いたいところなんだがな」
 全ての艦娘が満身創痍であり、弾薬も枯渇同然。これが、艦隊の現状であった。装甲や弾薬は、出征先の西方海域で使い果たしてきた。戦果や得た資源を曳航し、後は帰るのみ。この段階、作戦達成間近で、有り得ぬ敵が仕掛けてきたのだ。
 せいぜい深海棲艦の駆逐や軽巡しか存在しない鎮守府正面海域。ここで疲弊した艦隊を待ち構えていたのは、戦艦や空母に分類される、強敵たちだった。万全なら勝てる相手でも、今の状況では、もはや生き延びるのが精一杯だ。
「警備の手抜かりで済む話ではない。いったい、海で何が起きているんだ!?」
 旗艦である長門の叫び。海からの返答は、まるで怪物の鳴き声のような、深く重い音であった。


 入渠と遠征により、人の気配が薄れた鎮守府。そんな建物、廊下のど真ん中を堂々と歩く艦娘が居た。
 何やらメカニカルな髪飾りは、狼の耳でも模しているのか。身体の線にぴったりと張り付いた黒基調ネクタイ付きの制服は魅力的だが、迫力を感じさせる左目の眼帯は添え物としては強すぎる迫力を醸し出していた。
 自らの名を冠するカテゴリー、天龍型軽巡洋艦の一番艦、天龍。それが彼女の名前であった。
「いやー……遂に出番が来たかぁ。でも、喜んでいられる状況じゃないな、アイツにナメられないよう、しっかりとしないと」
 現在、鎮守府は危機的状況にあった。近海に居るはずのない、謎の深海棲艦による襲撃で、主力艦隊は大きなダメージを追った。幸い撃沈は避けられたが、大破続出の上、持っていた資源物資の大半を持って行かれてしまった。修繕に使う物資もあって鎮守府は急遽火の車に。
 資源を得るに最も簡単な手段は軽巡洋艦と駆逐艦による遠征、本来天龍はこちらに回されている人材であり、当然早急に遠征に向かうこととなる。と周りも本人も思っていたのだが、今回、遠征に行くよう指示され、駆逐艦の面倒を見ることとなったのは姉妹艦の龍田だった。それだけでなく、空いた天龍は、指揮官である提督が最も信頼し、最も近くに居る秘書艦に任命された。
 危機的な状況の中での、秘書艦就任。これはどうにも、提督からの期待を感じざるを得ない。あまり喜ばしい状況ではないが、期待されていると思うと、どうにも嬉しいものが湧き出てくる。複雑な、心持ちであった。
 顔を何度も叩き、緩みそうな顔を引き締める。
「天龍、秘書艦、着任したぜ……?」
 提督の部屋の扉を開けた天龍を出迎えたのは、提督ではなく、バカにデカいケーキであった。段々の洋風なバースデーケーキ。鎮守府の巡洋艦全員で食べても、中々難儀であろう大きさのケーキだ。
「なんだコレ? 長門の注文品? それとも赤城のおやつか?」
 疑問符ばかりの天龍の耳に、妙な音楽が聞こえてくる。妙にテンポよく、妙に艶かしい、聞いたことのないミュージック。そんな音楽のリズムに合わせて、部屋の真ん中にあったケーキが割れ始めた。
 ドンドコドンドコ、ズンズンズン。ケーキの中から現れたのは、赤いマスクを被ったビキニパンツ一丁の男であった。リズムよく腰を振り、ケーキの中から徐々ににゅっと出てくる。
「ハァッ!」
 ケーキが完全に割れ、ミュージックが終わったところで男は決めポーズを取る。汚い肌と尻が、どこからともなくいつの間にか出てきたスポットライトで照らされている。
 動けない天龍と、しばし目の合う謎の男。ただの不審者ではなく、超弩級の不審者。衛兵隊を呼ぶにも、どう説明すればいいのか。
 ドンドコドンドコ、ズンズンズン。再び聞こえてきたミュージックに合わせ、男はケーキの中に戻っていく。全て逆回しのように、割れたケーキも再び閉じようとしていた。
「待て! 戻るな……いや、また出てこられても困るけど! とにかく、俺に何が起きたのか説明しろ!」
 言われた方も困るぐらいの困惑さを隠さぬまま、天龍はひとまずケーキの割れ目に手をかけた。
 この謎のストリッパーもどきであるデッドプールが、臨時に鎮守府提督となったと知らぬまま。


 後に、ここから始まる一部始終を聞いた、天龍の姉妹艦である龍田は語る。
「天龍ちゃんでよかったですね〜。私だったら、きっと出会って早々、もいでましたし」
 何処を? 何を? その時の龍田には、詳細を聞けぬ迫力があった。


次回

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