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読解 ワールド・ウォー・ハルク〜開戦〜

 前回のあらすじ
 ハルク追放事件の裏には自称善人集団のイルミナティがいた。


F「前回、事件の裏は話したので、早速本題に入るぞ」

S「ついに開戦だな!」

F「いや、まだだ! 先に、宇宙追放から帰還の決意までを書いたエピソード。“プラネット・ハルク”の説明だ。開戦はそれから」

S「どうも話が先に進まんなあ。まあ、しゃあないけど」

F「そうだなあ。じゃあ少し書き方を変えて、ストーリーの概略を話した後に、随時補足とツッコミを入れていく形に変えようか。その方が、分かりやすいし話も縮まるだろ。という訳で、プラネット・ハルク開始。と、その前に、日本未発売のOVA“Planet Hulk”のトレーラーを紹介だ。だいたいこんな感じの話ですってことで。大スペクタクル!」

 もう戦いは嫌だと、カナダに隠棲していたブルース・バナーの元へとやって来た、ニック・フューリー。彼はハルクに、衛星軌道上の古い人工衛星の解体作業をを依頼する。 中々に平和的な仕事だと、依頼を承諾し宇宙へと向かうブルース。ハルクに変身した彼は、原型を残した人工衛星の中へと入っていく。
 ハルクが中に入った直後、宇宙船へと変形する人工衛星。ハルクは困惑し暴れるものの、宇宙船はビクともしない。壊れていると思っていたモニターに明かりが灯る。モニターに映るのは、アイアンマン、Drストレンジ、Mrファンタスティック、ブラックボルトの四人。イルミナティの四人は、ニック・フューリーが偽物であったことと、仕事が嘘であったことをハルクに告げる。そして、ハルクにとって地球は、狭すぎる星であるということを。
 怒りに燃えるハルクを乗せた宇宙船は、外宇宙めがけ超高速航行を始めた。




S「あれ? イルミナティって6人だよな。ネイモアと教授の姿が見当たらないが」

F「ネイモアは「そんな下らない議題に余が出席する価値は無い!」とこの件を議論する会議への参加を拒否。積極的ではないものの、反対票に数えて良いと思う。プロフェッサーXは、X−MEN本編の事件が忙しくて会議に出席できなかった。実行犯は、この4人でOK。あとネイモアは今後出てこないので忘れていい」

S「ん? ネイモア……は?」

F「話を戻すか。一応、イルミナティをフォローするとしたら、正確な計画の内容は“ハルクを外宇宙の平和な星に追放する”ってことだったってことかなあ。知的生命体が存在しない惑星で、ハルクは平和に暮らすんだ。俺達も別れるのは辛いけど、この方がハルクも幸せなんだ。さあ、森へお帰り」

S「いやー無断の時点でダメだろ。しかもひっそり暮らしていた人間をわざわざ引っ張り出しての追放だし」

F「地球にいる以上、誰かに利用される可能性は常に存在するってことなんだろ。あとまあ、もしこのままハルクが予定通りの惑星に到達していた場合、惑星の守護者となり、後に生まれた知的生命体を見守りながら平和に暮らすというGOOD ENDだったんだけどな。“what if”という、もしもの可能性を書く話で、平和に暮らすハルクがちゃんと書かれている」

S「まーもしもってことは、平和な惑星には着かなかったってことだな」

F「めでたしめでたしじゃ、何も始まらんからねえ」




 宇宙船は壊れなかったものの、ハルクが暴れ続けるせいで軌道に誤差が発生。偶然発生していたワームホールに飲み込まれ、ハルクは全く別の惑星に辿り着いてしまう。
 ハルクを出迎えたのは、豊かな緑ではなく、荒涼とした大地と吹きすさぶ風。暴虐の王レッドキングが支配する戦いの星、サカール星だった。ハルクは捕らえられ、奴隷の証にして反逆防止装置でもあるスレイブディスクを付けられて奴隷に。しかも、なんと剣闘士に仕立て挙げられてしまう。
 ハルクだけではない。サカールの闘技場には精強なサカール人の闘士に加え、他の惑星より集められた強者も奴隷として囚われていた。戦いや調練を通し、ハルクはこれ以上無いと思われていた強さを、メキメキと上げていく。そしてついに、全力を出したまま理性を保てるようになってしまう。
 育まれていく、戦友“ウォーバウンド”との絆。新たな力と仲間を、ハルクは得ようとしていた。




S「よくよく考えて見れば、社長やリードの計画が額面通りに進んだことってないな……」

F「でも、サカールに着いたのがハルクでよかったぜ。なにせこの星、元々環境が厳しいせいで、余程の身体能力がないと生き延びられないからな。言うなれば、幽遊白書の魔界みたいなもんだ。あれだけ強かった戸愚呂がB級妖怪だと!? なお、この星に着いてからずっと、ブルースはハルクに変身したままです。サカールでブルースになったら、環境的な問題で即死だからね」

S「追放編というより、修行編だなあ。理性を得ることで武器や防具も使えるようになったみたいだし」

F「ついでに知性も手に入れたよ! サカール星を支配する帝国のイメージは古代ローマかね。高度な文明とコロッセオという野蛮な文化が同居した星。当然のように階級社会で奴隷制度アリ。主な人種は人型の桃色人種と虫型の昆虫人種で、王のレッドキングは桃色人種。なので制度は桃色人種優先で、昆虫人種は常日頃差別されている。こんなもんだな」

S「ふーん。まあ、ローマの堕落に習い、どうせレッドキングもロクな王様じゃないんだろ。ダメだ、口にする度に、あのどくろ怪獣のツラが思い浮かんでくる……」

F「そりゃ日本人ならしょうがない。一応ウォーバウンドの仲間達を挙げてみる。剣闘士時代の仲間だけでなく、追加メンバーもいっしょくたにしてしまうが、勘弁してくれい。岩石男コーグ、赤色の女戦士エローエ、原初の力を持つ神官戦士ヒロイム、列強種族ブルードの女王ノーネーム、昆虫戦士ミーク。以上の五人はワールド・ウォー・ハルクにも参戦している」

左から、ヒロイム、コーグ、エローエ、ミーク

S「X−MENのOPでマグニートが召喚する、いかにもエイリアンなモンスター。アレがグリードだな。この絵だと、なんか見切れてるけど」

F「あと忘れちゃならないのが、レッドキング配下にしてサカール最強の女性、カイエラ。ヒロイムと同じ人種、シャドウ・サカーリアンである彼女は、原初の力も使える上に、不死身に近い生命力とハルクにひけを取らぬ腕力およびタフネス。プラネットハルクにおける敵がレッドキングなら、好敵手はカイエラでいいだろ。レッドキング自身は、そんなに強くないしな」

カイエラさん




 ある日、闘技場にいる奴隷全員のスレイブディスクが破壊された。奴隷を引き連れ、脱出するハルク。ハルクは反乱軍を結成し、レッドキングの帝国軍に立ち向かう。
 帝国軍の怪物を物ともせず、レッドキングに逆らう昆虫人種との同盟にも成功し、カイエラ率いる討伐軍をカイエラごと引き入れたハルク。やがて人々は、彼こそサカール星の伝説で語られる緑の勇者、証を持つものサカールソンなのではないかと噂する。
 ハルク率いる反乱軍は、ついに帝国軍を撃破し、レッドキングの治世を転覆させた。サカールソンを称える歓声、ハルクは新たな王となり善政を敷く。復興し平和な星となるサカール。やがて王妃となったカイエラがハルクの子を懐妊。サカール星を蝕む暴力の風は、消えようとしていた。


F「なんという一大サーガ。伝説! 帝国軍! 反乱軍! プラネットハルク完!」

S「あれ? ところでいつの間にカイエラとのフラグが? 相思相愛?」

F「どうやら異性同士のライバル関係が恋愛関係に発展するというのは、世の東西を問わないようで。まあ、紆余曲折あったけど、ハッピーエンドだよな!」

S「ところで勇者の証ってなんなん?」

F「神話に書かれていた、“勇者の血を浴びた花が育つ”の一文。この神話の通り、ハルクの血を浴びた芽が一気に育ち花を咲かせたから、ハルク=勇者サカールソンという話になった」

S「それ、ガンマ線の影響じゃなかろうか」

F「伝説なんてこじつけさ。そして物語は急転直下、ハルクにとってあまり酷すぎる展開となる……」




 復興した街に飾られているのは、勇者を星へと導いた船。ハルクが追放の際に乗ってきた宇宙船。ある日何の前触れもなく、宇宙船から聞こえてくるカウントダウン。ハルクが異常に気づいた時、数字は0となっていた。
 宇宙船は驚異的なまでの爆発を巻き起こし、平和となった星を飲む。爆心地にいたハルクは、必死で一緒に居たカイエラを庇うものの、カイエラはハルクへの愛を呟き、ハルクの腕の中で塵となった。
 爆発は数百万の犠牲者とハルクの築いた平和を全て吹き飛ばした。イルミナティの真意は、ハルクの追放ではなく、ハルクの処刑だったのだ。星をも揺るがす爆弾を使い、ハルクを抹殺する。だから彼らは、知的生命体のいない星を送り先へと選んだのだ。ハルクはイルミナティの殺意を確信した。
 ハルクの口から言葉が出る。それは、この星に来たばかりの時、さんざん口にした言葉。戦いの中、忘れていった言葉。幸せな暮らしの中、納得して捨てた筈の言葉。
「地球へ……帰りたい……!」
 生き延びたウォーバウンドが王の決意を耳にし、天高く吠えた。




S「……」

F「これが、サカール壊滅とハルクが地球への帰還を決意した一件だ」

S「いや、なんというか、言葉も出ないわ。そりゃハルクも切れるしかねえ」

F「正直、イルミナティのメンツならそれくらいやり兼ねないからなあ。質問、地球破壊爆弾をどうやって安全に使いますか? 答、地球以外の星で爆発させます」

S「全切れした上に知性と理性を持ったハルクの侵攻。想像するだけで恐ろしい」

F「ここで地球の状況を軽く説明。ハルク追放後に起こったスーパーヒーロー内戦シビル・ウォーにより、地球のヒーローはバラバラに。キャプテン・アメリカも死亡し、ソーも別件で死亡。スパイダーマンもトニーに唆され正体を公に明かしたせいで、メイおばさんが狙撃され重態。トニーの元に集まる、後悔と恨み」

S「ほんと社長はしょうがねえな!」

F「前夜で言ったように、イルミナティも解散寸前。独り苦悩するトニーの元に舞い込む凶報。謎の巨大な宇宙船が、月を経由し、マンハッタンに降りてきたと。ついにハルクがサカールの王として、地球に帰ってきた!」

ハルクの帰還




 ハルクの帰還。巨大な宇宙船がマンハッタン上空に静止し、人々は恐怖に震える。やがてプロジェクターに大写しにされる、ハルクの姿。ハルクの口から語られる、イルミナティによるハルクの追放計画、サカールでのハルクの戦いと平和な暮らし、悲劇的な終結。イルミナティの罪は、映像回線を通し、全世界に公開された。
 アイアンマン、Mrファンタスティック、Drストレンジ。復讐の対象となる三人の名前を挙げるハルク。最後、思い出したかのように、自分の足元に転がる男を晒し上げた。

消えた声

 復讐は既に始まっていた。半死半生のブラックボルトが世界に晒される。月に住む彼は先んじてハルクと戦い、そして負けたのだ。
 避難の為、人々に与えられた時間は24時間。24時間後ハルクは攻めこみ、マンハッタンは戦場となる。避難する市民を誘導するヒーロー達。
 一方イルミナティの三人は、相談し合うまでもなく自覚していた。ハルクを止める責任は、自分達にあると。




S「いや、ここで自覚も何もしてなかったら、流石にブッ殺されるだろ。最初の犠牲者はブラックボルトねえ、彼強いの?」

F「強いも何も、イルミナティで唯一、独りでハルクを倒した経験のあるヒーローだぜ? 音波を操るヒーローは多々いるが、ブラックボルトの破壊力は別格。呟きでさえ、大地を削り山をも崩す。あんまりにヤバいから、普段は無言で意思疎通には手話を使っているぐらいだ」

S「そんな男があっさり敗れる。つまり、以前よりハルクはパワーアップしてるってことを示す演出だな。自覚するのは結構だが、残りの三人はハルクに勝つことが出来るのだろうか」

F「おーっと! 事態はそれだけじゃ終わらんぜ!って所で次回へ続く。最後に次回予告だ!」




 マンハッタンから逃げ出す車により、ハイウェイは大渋滞となる。
「何が起きている!?」
 ニュースを見て、事情を知った男を包む獄炎。罪を裁くのはお前ではない、俺の仕事だ! ゴーストライダーはハイウェイを逆走。軍の包囲を突破し、マンハッタンへと向かう。
 一方ハルクは、誰にも告げずニューヨークを離れていた。ある男に、自分の罪を問いただしに行く為。追放の実行犯ではないが、もし議題に関わっていたら、賛成票を投じたであろう男の元へ。ハルクが一路向かうのは、X−マンション。そこには、プロフェッサーXと、X−MENがいる――。
 アイアンマンは未完成の対ハルク用アーマーを装備。Mrファンタスティックもハルクを倒せる兵器の制作に取り掛かる。一方、Drストレンジは、二人とは違うアプローチの仕方で、ハルクの沈静化を狙う。
 次回、読解 ワールド・ウォー・ハルク〜激闘〜 本戦 番外編

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