- 2010.06.23 Wednesday
- 肉雑炊コンビの放談 > アメコミ
前回までのあらすじ
サイレン(以下S)「すげえ。英語を読まなくても、ガンガン意味が伝わってくる……」
ふじい(以下F)「読むと、一層ロクでも無いぞ」
F「というわけで、前回の基本編とデッドプールのルーツことデスストローク編を経由して、今回でデッドプール編は終わりです。まずX−MEN大迷惑編を経由して、最後に彼の本質を語ってみようじゃないかと」
S「だ、大迷惑だ!」
F「いかんいかん。これは別の回だった。今回は別の大迷惑だったな」
S「複数回? 複数回なの、迷惑?」
F「話を始める前に、軽く現状の説明を。現在、X−MENの皆様方は、サイクロップスをリーダーとして、ミュータントの独立国家(ユートピア)を形成しています。場所はサンフランシスコ沖の人工島な」
S「独立国家って、それはまた随分と」
F「話すと長くなるので、そうしなければいけない状況になったと言うことだけ理解してくれ。そこに触れるとなると、スラクル人の一大侵攻作戦“シークレット・インベージョン”の解説から始めて、偽物軍団ダークアベンジャーズの話までしなきゃならんことになる。これらの大事件の裏で繰り広げられた、“量産デッドプール軍団爆誕!”や“デッドプールのアベンジャーズタワー殴り込み大作戦!”まで語ったら、それだけで記事が終わってしまう」
S「正直、どっちも面白そうなんですが」
F「デッドプールはさて置いて。とにかく、X−MENは現状、そういう状況に置かれているというわけだ。ミュータント国家はミュータントにとっての一つの理想。磁界王マグニートーがかつて目指した物でもある。結果マグニートーも投降して、X−MEN入りをした」
S「えー。信用できんのか? マグニートーって言ったら、X−MEN最大の宿敵じゃないか」
F「ただ、その能力や指導力は折り紙付きだ。国家を運営するにあたっては、絶対に必要な人材だろ。国家の、そしてミュータントという種族のリーダーとして、必死で働くサイクロップス。そしてある日、小舟に乗って一人のミュータントがやって来た――」
デッドプール「俺もX−MENに入れてくれ!」
サイクロップス「だがことわる」
S「断られた―! てーか、マグニートー以下!? マグニートー以下の信用度!?」
F「わざわざ、島にいたX−MEN全員を引き連れてのお断りだからなあ。暴れられたらマズいし。その場に居合わせなかったウルヴァリンも、後にデッドプール来訪の話を聞くことになるが、その時のサイクロップスとの会話が、X−MENから見た、デッドプールを端的に表してるぞ。ちなみにダガーって言うのは、ミュータントではないけどユートピア運営に協力しているヒーローな」
ダガー「わたしは、彼のことを良く知らないのですが、デッドプールの何処がいけないんですか?」
サイクロップス「……」
ウルヴァリン「……」
サイクロップス&ウルヴァリン「「全部だ」」
S「取り付く島もねえ。言葉通りに」
F「二人はデッドプールと付き合い長いからねえ。特にウルヴァリンはウェポンX関係で、何度もやりあってるし。映画でもやりあうくらいだ。ちなみにX−MEN ZERO放映当時は、あんなんデッドプールじゃねえよと、向こうの国で“映画デッドプールを惨殺する原作デッドプール”のファンアートが流行りました。改造前は似ていたような、でも後天的にミュータントとなった原作とは違って、映画だと生まれつきのミュータントにされてたし……」
S「まあ、サイクロップスの気持ちも分からんでもないな。団体の長であるリーダーが、団体行動を取れない人間を受け入れちゃマズいだろ」
F「とにかく、失意のデッドプールはサンフランシスコをさ迷う。そしてある日、記者会見を目撃する。娘を誘拐されたと叫ぶ父親、父曰く誘拐犯の名はサイクロップス」
S「おいおい、前々から女癖の悪さは知っていたが。サイクロップスめ、ついにやりやがったな!」
F「誤解よ!? 確かにサイクロップスの女癖は悪いけど誤解よ!? 娘はミュータントで、父親は常人。娘は自らの意志でX−MEN入りしただけだからな! 父親を扇動した黒幕はいるんだが、それはさて置いて。その光景を見たデッドプールはあることを思いつく。この思いつきにより、サイクロップスも父親も黒幕も、予想外の混沌へと陥れられることになる」
デッドプール「俺があの父親を暗殺しようとすれば、サイクロップスも喜んでX−MEN入りを認めてくれる筈だ。絶対、いい方向に向かうから。いやーこんなこともあろうかと、自前でX−MEN仕様のタイツ作っておいたのよ。ちゃんとロゴも入ってるだろ? 暗殺当日は、ちゃんとこれ着るね!」
S「あのそれひょっとして、“サイクロップスの命令を受けたデッドプールが邪魔な父親を暗殺した”って話にならないか? 暗殺の状況によるけど、もし目撃者がいたら、絶対そう証言するよなー」
F「目撃者ねえ、数百万人じゃね? ニュース番組の生中継に出ている父親に、カメラの前で銃を突きつけたから。X−MENのタイツ着用かつ、サイクロップス! お前の心配を取り除いてやるぜ!の台詞付きで」
S「ありえねえレベルで最悪だー!」
F「だってスットコもといスコットさん、今回ずっとこんな表情なんだぜ?」
S「えーって感じだな。えーっなにしてくれてんの!?って感じ」
F「TV中継を見て現場に急行するX−MEN。必死に逃げる問題の父親。自分の思惑を越えた事態に驚愕しながらも、軌道修正を図る黒幕。デッドプールという男のせいで、事件は最悪の方向へと向かってしまった……」
S「もう、X−MEN入りもクソもねえな。決別エンド以外思い浮かばねえ」
F「……オチを予想するのはまだ早い、では少し時間を戻して、デッドプールのユートピア来訪前の話でもしようか」
海賊になるのも上手くいかなかった。宝も女も、友に譲ってしまった。
一人、海を漂流するデッドプールは悩む。自分は一人ではないのか、このまま一人で孤独な生を生きていくのではないか。
孤独は幻覚を見せる、デスがサノスを選び、自分を見捨ててしまうという夢を。彼女に見捨てられてしまえば、孤独は一層深くなる。
やがてサンフランシスコに漂着したデッドプールは、陽気に遊びまわるものの、外見への嘲りを聞き、すさんでしまう。酒場で、陰鬱に酒を飲むデッドプール。
「俺はもうダメだ」
遂に出る言葉。しかし偶然TVに映っていた映像が、彼に希望を繋ぐ。
TVに映っていたのは、ユートピアの代表として演説をするサイプロックス。彼は俺に語りかけているんだ、X−MENは俺の助けを必要としている。デッドプールは眼を輝かせ、叫んだ。
「俺もX−MENに入れてもらおう!」
S「あれ? あれぇ!?」
F「実はX−MEN入りの前に、デッドプールの孤独をきっちり一話かけて書いてるんだよねえ。いきなりじゃなくて、孤独に苛まれたデッドプールが選んだ選択肢、それがX−MEN入りだったという訳だ」
S「いやその……此の話を聞いた後だと、サイクロップスが冷たすぎる気がするんですけど」
F「と言うより、矛盾なんだよな。何が悪い、全て悪い。こう言われてきたミュータントが集まって作った国がユートピア。そう思っていたダガーは、デッドプールを拒絶する二人に疑問を呈している。かつてデッドプールとコンビを組んでいた女性ミュータントのドミノも、デッドプールを止めることには同意したものの、ウルヴァリンがデッドプールを殺そうとしていると勘違いして、捕まえたデッドプールを逃がしている。全員が、デッドプールを拒絶しているワケじゃないんだよ」
S「愛すべきキチガイと、嘗てお前は呼んでいた」
F「現行シリーズにおけるデッドプールの行動原理は、ひたすら純だ。友を殺されたから復讐を誓う、孤独だからX−MENという仲間を求める、愛されたいからスパイダーマンにヒーローの秘訣を習いに出かける。だから、アメリカでも彼は愛されている。何をするか分からないが、根底にはシンプルで幼稚じみた純粋さが有る。その純粋さが愛されている」
S「そこいらへんは、あまり日本に伝わってない部分だな」
F「そういうのは、どうしても目立たないからねえ」
S「ところで、物語のオチは?」
F「全てはTV中継された。サイクロップス率いるX−MENがデッドプールと戦い、デッドプールがサイクロップスのコメカミに銃口を突きつけるまで。デッドプールは再度X−MEN入りを直訴するものの、サイクロップスは毅然とNOを突きつけ、アイビームでデッドプールを弾き飛ばす。ここまで中継すれば……」
S「完全にX−MENへの嫌疑は晴れた上に、X−MENはヒーローだな。死んだ方が都合の良い人間を、わざわざ助けに来たヒーロー。デッドプールは、X−MENの名前を勝手に語っただけ、そうなるな」
F「自分を悪役にして、X−MENの問題を解決する。TVで公言されることにより、自分のX−MEN入りの可能性が完璧に0になるとしても。それがデッドプールの目的だったんだ。彼らは俺を必要としている。その思い込みだけで、自分を青鬼にしてX−MENの立場を回復させる。純すぎるぜ」
S「泣いた赤鬼がX−MENなら、悪い青鬼がデッドプールか」
F「父親はX−MENに感謝を捧げ、黒幕は歯噛みして、X−MENはヒーローに戻った。長距離バスで旅立つデッドプールを自ら見送るサイクロップス。普通に良い話だろ? ちなみに大分端折っているからな。本当はもっと肉厚なストーリーだ。この本に収録されているので、良ければ是非」
S「あ。上に載ってる画像が表紙なのね」
F「左にいるのが元相棒のドミノさん、右にいるのが現サイクロップスの嫁のエマ=フロストさんね。普段は美人なんですよ?」
S「いやー、これで俺もデッドプールの見方が変わりそうだよ」
F「そりゃあよかった」
S「ところでさ、お前今、マーベルアライアンス2やってるんだろ?」
F「ああ。やってんねえ。洋ゲーなせいで、フィーリングと勘だよりだけど、シンプルで楽しいゲームだよ。ジャンルはアクションRPGかな。アクション要素が強い」
S「パッケージにもいるし、デッドプール仲間になるんだよな? どんな感じで仲間になるんだ? やっぱ、それなりに深い意味があってか?」
F「えーと。ワシントンでテロ集団と戦ってたら、“俺はバカンスに来たんだぞ! 花見だ花見! だいたい、なんで木から桜が生えてるんだよ!”みたいなこと言って襲いかかってきて、倒したら付いてきて、押しかけで仲間になった」
S「……見方、戻した方がいいのかな」
F「基本、適当に相手すべきだ。良いも悪いも真面目も不真面目も、気分次第よ」
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