- 2011.12.14 Wednesday
- 告知
2011年冬コミ新刊、アメコミカタツキ2が完成しました。今回も、絵師はうみつきさんとなっております。ホント、俺のムチャぶりに今回も付き合っていただいた上、想定以上のものを書いていただき、足を向けて寝られない状況。なお、今回の表紙は、こちらの物となっております。
今回は、Fateをメインとし、Marvel全体とクロスオーバー。セイバーとアーチャー、ウルヴァリンとキャプテン・アメリカの四人がメインなものの、他にも出番や活躍のシーンがあるキャラは多数。今回目指したノリは、多数のキャラが入り混じって戦うスーパーロボット大戦のノリです。富士原昌幸先生のスパロボアンソロみたいな!
コミケは三日目、西地区“め”ブロック−26aが自スペース。頒布価格は前回と同じ1000円となっております。それでは、本文抜粋&多少の編集を施した予告編をどうぞ。
第二次世界大戦の中で行われた、第三次と呼ばれる争い。古き約定が錆びた鎖となり、熟成された憎悪は手に負えない悪意となる。
二つの冬木市とニューヨーク。三つの都市を舞台に繰り広げられる、聖杯を巡る新たな争い――。
「思えばセイバー」
感情を抑制したライダーの声。セイバーと同じく、生活に潤いと余裕を持ち始めた昨今では聞けぬ、ライダーの声色だった。
「貴女とは決着が付いていませんでしたね」
「馬鹿な。ライダー!」
「まさか、戦えないとでも? ならばこちらとしては、構いませんが。楽で、良い」
「ようこそ、アーサー王。我々による、我々の為の聖杯戦争へ。サーヴァント、ライダーとそのマスター、ドクター・ドゥームがお相手しよう」
「初めまして、アーサー王。私の名はドーマムゥ。闇の次元の支配者にして、魔王。此度の聖杯戦争のマスターの一人だ」
路上に落ちてきた銃を見た途端、セイバーの顔色が今までにないくらい、大きく変わった。
「いくらなんでも、これは。あってはならない」
路上に落ちてきたのは、キャリコM950と呼ばれる銃。そして頭上の射手は、懐から古い型の拳銃を取り出している。
「い、いったい、何を!?」
「何、簡単なことだ。一人の少女を苦しめている物を、全て取り除いてやろう」
「聖杯の力、未だ完全に手中にあらず。だがしかし、私にとって時空や因果律を捻る事は、元来出来ないことではない」
「更に余が持つデーターと毒婦仕込みの魔術があれば、このような芸当が可能になる。喜べ、貴公は普通の少女に戻れるのだ。剣を引き抜こうとした、英雄になる前の少女に」
円盤は弧を描く軌道で持ち主の元へと戻る。自然のまま腕に装着される円盤、謎の円盤の正体は、シールドだった。
スケイル状の青いコスチュームの胸には、魂を宿す星印。円状の盾には、同じ星印と人を守りぬく精神が込められている。現代の英雄にして、アメリカの理想。彼の名は、キャプテン・アメリカ。
ドーマムゥやドゥームにとって憎き男が、一変の曇りなき姿でこの世界に参上していた。
爪を出し、人をいきなり投げてくれた男を待ち構えるウルヴァリン。男は、重厚な足音を鳴らし、悠然と森の奥から姿を見せた。
「■■■■■―!」
体中の血管が浮き上がり、眼を血走しらせたバーサーカーが現れた。普段よりも一層激しく怒り狂っているバーサーカーの様子は、只事ではなかった。だが、普段を知らぬウルヴァリンが、そんな事を知る筈もなく。
「来な。あいにくこちとら、馬鹿力との戦いにゃあ、慣れていてな」
「こんな物か! この程度なのか!」
セイバートゥースは、自らめがけ振るわれた刃を、口で受け止め噛み砕いた。
アーチャーは柄だけとなった剣を投げ捨て、即座にローアイアスを貼る。咄嗟に貼った二枚の盾を、セイバートゥースは凶暴な乱打で、破壊した。
「俺様は、手品師じゃなくてウルヴァリンと戦いてえんだよ! さっさと死ねよ、このエンターティナーがぁ!」
バーサーカーはクラスのせいで狂い、ウルヴァリンは敵めがけて狂い咲く。狂気の他律や自立が出来る二人とは違い、セイバートゥースは底無しの狂気を、思う存分まき散らしていた。
「私ほど、世界のことを考えている者はいないよ。彼ら邪悪な魔術師は、世界から排他されるべきだ。正義の味方の手によってね」
――戦いは混沌を極め、各地で英雄や英霊が、聖杯から流れでた悪意に立ち向かう。聖杯の毒素は、二つの街を殺そうとしていた。
「誰でもいい、今直ぐ連絡の付く奴全員呼べ。嬢ちゃんでもライダーでもキャスターでもなんでもいい、全員だ!」
一台のパトカーが宙に浮き、強烈に圧縮され球体状の鉄くずとなる。鉄くずを、燃える岩石状の手が、力ずくで割った上に融解させた。
鋼鉄のコスチュームを着た老人と、緑色の宇宙人が事故現場から進み出てきた。魔術でも武術でもない、ただ彼らは強かった。ランサーが初見で、猛る程に。
NYの薄暗い路地に、無数の仮面が浮かぶ。彼らはみんな、投擲用の短剣ダークを持ち、スパイダーマンを狙っている。
彼らは皆、ハサン・サーバッハ。アサシンだった。
「みんな、短剣を投げることしか出来ないのかい? もっとこう、バリエーションがあるといいと思うよ? モノマネなんてどうだろう、関節を鳴らすダンスなんかもいいね」
「手が空いたのなら、主よ。この砂男を頼めまいか? どうやら拳と剣では、こやつを倒せぬようだ」
「……うむ」
「今行きます、宗一郎様! そのサンドマンは、このキャスターめが、一粒残らず消滅させますので!」
「深き者の眷属よ! 何故、地上に出てきたのか! 我が父オーディーンの名に置いて、貴様らを誅滅する!」
ムジョルニアの雷が、邪悪なるヒトデを全て焼き払う。既にソーの目は、奇妙な本を手に怪物を操る術者に向けられていた。
「しかたねえ、ここは一発。ゲイ・ボルグ!」
刺し穿つ死棘の槍が、空に放たれる。敵の心臓を貫く槍は、これまた空中に浮いていた。
「な、なぜ分かったんだ。下等種族め……」
槍が刺さった箇所から現れたのは、透明になっていたスーパースクラルだった。
燃える車輪を持つバイクが駆け抜けて行く。死霊の王に触れた王の配下は、それだけで消滅してしまう。
「心象風景がだだ漏れだな、征服王。英霊も邪霊も、俺の前では関係ない。贖罪の時が来たのだ!」
敵陣を突破したゴーストライダーが、黒きイスカンダルに単独で突貫を仕掛けた。
『無事のようだな』
赤と青と白。アメリカ国旗のようなカラーリングのスーツを着たアイアンマンが、士郎を助けた。後ろには、弓の達人ホークアイと、黒いコスチュームのスパイダーマンが居る。
『皆さん、我々は正義の味方、アベンジャーズです! 悪党の敵は我らの仕事、此処から先はお任せ下さい!』
「ありがとうございます。でも俺もまだ、手伝えますから!」
多少興奮した様子の士郎は、三人のヒーローに背を向ける。三人はそれぞれの武器を構え、戦闘態勢を取る。武器の照準は全て、無防備な士郎を狙っていた。
『NYは、終わるのか……?』
力なく呟くトニー。落ちてくるヘルキャリアーの頂上に、黒きフルプレートで見を固めた狂戦士が乗っていた。
勝敗を分かつのは彼らではなく、聖杯に蔓延る悪党共と、聖杯に飲まれた二人の英雄と二人の英霊。四人は窮地や試練を乗り越え、ただ勝利のために突き進む。果たして、勝利は、誰の手に。
「防ぎきれまい」
「ローアイアスを出せる力も無し」
「魔力が切れたサーヴァントなど」
「人間以下」
機械らしい口調で、ドゥームボット達はアーチャーを見下ろす。ドゥームの操るデコイは、疲弊するアーチャーをじっくりと観察していた。
サーヴァント二人と、ウルヴァリンの力を持ってしても、魔王は揺らがなかった。
「皆にとって、聖杯は必要な物だ。しかし、私にとっては、便利な物止まり。協力したのも戯れならば、君達と戦うのも戯れなのだよ」
態度も身体も実力も、ドーマムゥは全てが強大であった。
セイバーは、目の前の男の脅威に気がついた。
「貴方は、他人の技を盗む能力を」
「その通りだ。直接戦わずとも、我輩は見るだけで技を盗める。この冬木市とは、素晴らしい街だ。なにせ、盗むに値する達人が大量にいるのだからな!」
葛木宗一郎の暗殺拳から始まり、バゼットのボクシングを経由し、最後は言峰綺礼や凛が学ぶ八極拳で終える。なんという、無茶苦茶な技の流れを見せてくれたものか。
全てを失ったセイバーにとって、このタスクマスターという男は大敵だった。
「一度やってみたかったんだよ。正義の味方ってヤツをさ」
この世の全ての悪は、決して叶わぬ筈の願望を口にし、キャップに託した。
「ああ。今日は君と私、二人だけのアベンジャーズだ」
本来相入れぬ筈の友誼を武器に、キャプテン・アメリカは敵わぬ敵に立ち向かおうとしていた。
善悪入り混じる中、黒幕が吐き出す、怨念と野望。全てを終わらせるのは、果たして一体、誰なのだろうか――。
「アイム、リスペクト。タイガをリスペークト! でも、でっぷー知ってるよ? 実はこの道場が、今回風前の灯だって。あと残念ながら、全てを終わらせるのはオレじゃないって」
「……にゃんですと?」
「うむ。その通りだ。全てを終わらせるのは、王と余だ!」
「オメーでもねえから。座ってろよ、皇帝ちゃん」
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